ベルベ (製パン)

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株式会社ベルベ
種類 株式会社
市場情報 非上場
本社所在地 日本の旗 日本
242-0017
神奈川県大和市大和東1-8-4[1]
本店所在地 242-0017
神奈川県大和市大和東3-13-3[1][2]
設立 1976年4月[2][3]
業種 小売業
法人番号 7021001025894
事業内容 パン、洋菓子の製造販売
代表者 破産管財人 若田順[4][5]
資本金 1200万円[2][3]
外部リンク http://www.bellbe.com/
特記事項:2022年3月8日破産手続開始決定。Az (製パン)が事業を継承。
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株式会社ベルベ (Bellbe) は、かつて存在した日本の製パン企業。神奈川県大和市に本社を置き、パンや洋菓子の製造・販売を行っていた。2021年に社長が突然失踪したことで事業を停止[3][6][7][8]。事業停止時点では、神奈川県を中心に、東京都静岡県で28店舗を展開していた[2]

概要[編集]

製パン業界で8年の経験を積んだ石川民夫が、1973年3月に神奈川県大和市で個人で創業[2][3][7]1976年4月に「手作りパン・洋菓子のベルベ」として法人へ改組[2][3]。「素材・品質・味わい」へのこだわり、「手造り製法に妥協しない」「1店舗・1工房」をモットーとし、リーズナブルな価格も相まって近隣住民から高い評価を得ていた[7][2][3]

2010年以降は積極的な出店攻勢をかけ、路面店商業施設駅ビルの他にも、足柄サービスエリア下り線、大手町ビル霞が関ビルにも出店し[2][3]、一定額の月商が目標を下回った店舗は閉店するなどスクラップアンドビルドにも積極的であった[7]2020年6月には25億6097万円の売上があった[2][3]

社長の失踪[編集]

しかし、新型コロナウイルスの影響で店舗の休業や営業時間の短縮を余儀なくされたため売上が低下[2][3]。人件費や賃料などの固定費負担も重くのしかかり、従業員に対する給与の遅配も発生するなど資金繰りが悪化したほか、2021年春頃からは賃貸料の未払いが散見されるようになり、一部の取引金融機関が債権回収に動いていた。さらには過去の決算内容に対する疑義も浮上した[8][2][3]。2021年10月下旬には、借入金の返済が遅延していたことや、複数の取引先に対する支払が遅延していたことが明らかとなった[7]

同年10月31日には、前日まで連絡が取れていた石川社長が行方をくらまし、石川社長の家族やベルべの関係者とも連絡が取れない状態に陥った[3][6][7]。石川社長の失踪を受けて、専務取締役などが取引先への対応に当たることになった[7]。後にフジテレビLive News イット!』やテレビ朝日グッド!モーニング』による取材により、石川元社長が「もう疲れた」などと書かれた書き置きや運転免許証、携帯電話を残していた事が明らかとなった[9][10]

債権者への弁済が不可能となったことから、ベルベは2021年11月8日に全店舗を閉鎖して事業停止し、事後処理を弁護士に一任[2][11]。従業員によれば、事業停止の翌日である同年11月9日に全店舗の店長が大和市にある本部に集められ、役員から倒産する事を告げられたという[8]。『グッド!モーニング』は、事業停止から1か月を経過した同年12月に石川社長の自宅へ赴いて取材を試みたが、応答はなかったという[8]

破産申請[編集]

経理を把握していたのは石川元社長のみであり、財務内容の把握は困難であったため、民事再生法の申請を断念した[6][1]。ベルべは代表者を交代し、幹部社員が社長に就任して破産申請を行うこととなり[6][1][12][4][5]2022年2月4日に横浜地方裁判所に破産申請の書類を郵送し、横浜地方裁判所は同年2月8日までに破産申請を受理[1][12]。同年3月8日に横浜地方裁判所から破産手続開始決定を受けた[4][5]。負債総額は約59億円でベーカリーチェーンの倒産としては過去最大となった[4][5][13]

ベルべが提出した破産申立書によれば、借入先は金融機関、企業、個人の合計で約30に及ぶほか、銀行口座に関しても98口座が確認されている[6]

破産手続開始決定後も、石川元社長の行方は一時所在不明となっていたため、破産管財人による調査も時間がかかるとみられていた[6]

破産から約2年後の2023年12月5日、石川元社長が横浜市瀬谷区の知人宅に潜伏していたことが明らかになり、不動産会社から3千万円相当の小切手をだまし取ったとして、詐欺容疑で神奈川県警捜査2課と大和署により逮捕された[9][10][14][15]2024年1月10日、金融機関に売り上げを水増しした虚偽の決算書を提出し、融資名目で約5000万円をだまし取ったとして石川が再逮捕された[16]

粉飾決算[編集]

ベルべの事業停止以前から信用調査会社である帝国データバンク東京商工リサーチは、ベルベが長年にわたり粉飾決算を行っていた疑いをかけており[3][7]、経理も石川元社長が会計事務所の従業員も取り込んで帳簿や決算書の粉飾を行っていた[6]。さらに石川元社長は、緻密な事業計画や収支計画を立てていなかった[6]

運転資金が枯渇したベルべは、複数の金融機関に新店舗向けの融資を依頼し、運転資金に充てる事にした[6]。手口は、金融機関ごとの異なる粉飾した決算書を提出し、当該銀行がメインバンクであるように偽装して資金を調達したほか、多重リースも行っていた[6]。ある取引金融機関は「関係先ごとに複数の決算書を提出していたようだ。問題のある融資先との認識もなく見破れなかった」とコメントしている[7]。金融機関からの融資が困難となったベルべは、2021年5月に石川元社長の友人から出資金の名目で資金を借り入れたが、その出資金も返済困難となる状況に陥った[6]

粉飾決算によりベルべは資金繰りに行き詰まり、2021年10月28日に石川元社長が東京都内の弁護士事務所を訪問して民事再生法申請を相談し、その際に不正会計を行っていたことを告白した[7][6]。その際に弁護士は、粉飾されていない真正の決算書や各店舗の収支がわかる資料の提供を求めた[6]。同年11月1日に再度打ち合わせを行うことになったが、前述の通り石川元社長が行方をくらましたため、弁護士と幹部社員で今後の方針が検討されることになった。帝国データバンクによれば、事業停止直後から取引金融機関から代理人弁護士に対して、借入金に関する問い合わせがあったという[7]

事業継承と計画倒産説[編集]

ベルベの事業は、2021年12月に設立された「Az」が引き継いでいる。事業を継承した「Az」の小嶋亮社長は、失踪した石川元社長の親族(娘婿)であることから「計画倒産だったのではないか」との憶測も流れた[17]

小嶋はこれに対し「自身は一店舗の責任者として勤務していただけで本社の経営には関与しておらず、そもそも本社の経営自体が独善的な人物だった石川1人の手によって抱えられ、他の幹部は経営状態すら把握できておらず、自身もの事業停止と全店舗閉鎖を知らされたのは当日の2日前だった」と述べ、疑惑を否定している[17]

店舗[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e TSR速報 (株)ベルベ 東京商工リサーチ、2022年2月8日
  2. ^ a b c d e f g h i j k l 倒産・動向速報記事 株式会社ベルベ 帝国データバンク、2021年11月16日
  3. ^ a b c d e f g h i j k l TSR速報 (株)ベルベ 東京商工リサーチ、2021年11月18日
  4. ^ a b c d 倒産・動向速報記事 株式会社ベルベ 帝国データバンク、2022年3月11日
  5. ^ a b c d TSR速報 (株)ベルベ 東京商工リサーチ、2022年3月10日
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m データを読む ベルベ破産、銀行ごとの決算書と「多重リース」 東京商工リサーチ、2022年3月25日
  7. ^ a b c d e f g h i j k 社長失踪で突如「全店閉店」人気パン屋倒産の顛末 東洋経済オンライン、東洋経済新報社、2021年12月11日
  8. ^ a b c d 【独自】人気パン店に何が?突然一斉閉店…社長失踪 テレ朝news、テレビ朝日、2021年12月16日
  9. ^ a b 人気パン店一斉閉店何が? 元社長が失踪...小切手詐取で逮捕FNNプライムオンライン 2023年12月7日
  10. ^ a b 人気パン屋の突如閉鎖から2年…失踪の元社長を詐欺容疑で逮捕 元従業員ら再出発の中テレ朝NEWS 2023年12月6日
  11. ^ TSR速報 (株)ベルベ 東京商工リサーチ、2021年11月8日
  12. ^ a b 倒産・動向速報記事 株式会社ベルベ 帝国データバンク、2022年2月8日
  13. ^ パン工房のベルベ、自己破産を申請 負債52億円超見込み 新型コロナ”. カナロコ. 神奈川新聞社 (2022年2月8日). 2022年2月8日閲覧。
  14. ^ “失踪のベーカリー創業者逮捕 3000万円詐取容疑―神奈川県警”. 時事通信. (2023年12月5日). https://www.jiji.com/amp/article?k=2023120500894 2023年12月6日閲覧。 
  15. ^ “製パン会社「ベルベ」元社長を逮捕 神奈川県警、小切手詐取容疑”. 産経新聞. (2023年12月5日). https://www.sankei.com/article/20231205-MS3F2FXJ2NLLZGAPGVJPWI2ZUE/ 2023年12月5日閲覧。 
  16. ^ “ベーカリー創業者再逮捕 5000万円詐取容疑―神奈川県警”. 時事通信. (2024年1月10日). https://www.jiji.com/amp/article?k=2024011001129 2024年1月11日閲覧。 
  17. ^ a b 社長失踪、負債59億円で「全店閉店」のパン店が復活。新オーナーに“計画倒産説”を直撃 bizSPA!フレッシュ扶桑社、2022年2月12日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]