92式浮橋
92式浮橋(きゅうにしきふきょう、英語: Type 92 heavy pontoon bridge)は、陸上自衛隊施設科の保有している架橋器材。
概要
[編集]これまで使用してきた70式自走浮橋や81式自走架柱橋などの架橋器材では重量が50tの90式戦車は重量の問題で通過が不可能であった。後継装備の検討は、技術研究本部の部内研究として1983年に開始[1]、試作開発は1989年から行われ[1][2][3]、1992年に制式化された[2]。
システムは橋間橋節、橋端橋節、動力ボート(全長8.6m[1])、道路マット(全長12.5m[1])、道路マット敷設装置[3]から構成され、これらは7tトラックなどの車両に積載されており、機動性が高くなっている。水面に浮かべる橋節は折り畳まれて運搬車に積載される。運搬車は水際まで自走し、荷台を傾斜させることによって橋節を水面に滑り落とすことによって橋節は自動で展開し、フロートとして機能する[4]。
展開した橋節は動力ボートを使用して動かすことによって、連結が可能である。連結された橋節に車両などを乗せ対岸まで輸送する門橋(艀)として使用する方法や、両岸まで橋節(両端はスロープのついた橋端橋節、それ以外は橋間橋節)をつなぎ合わせ、水流で流されないように動力ボートを使用してバランスをとる[2][4]。そして、車両が通行しやすいように道路マットを敷設装置で敷設することで浮橋として使用することができる。システム1式には長さ約7.5mの橋間橋節が12基と約7mの橋端橋節が2基であるため最大で約104mの浮橋を設置できる[2]。約80mの架橋作業時間は約2時間[2]。橋節及び運搬車12両、橋端橋節及び運搬車2両、動力ボート及び運搬車7両、道路マット敷設装置搭載車2両の計23両(ボート7隻)で1セットとなる[1][2]。
架橋器材は橋がないか、損傷して使えなくなった水域で人や車両を対岸へ渡すことができるため、災害派遣でも使用される。92式浮橋は防災訓練で帰宅困難者対策用などに登場する[5]ほか、東日本大震災では実際に橋が崩落して孤立した宮城県東松島市の宮戸島に対し、門橋として重機などを輸送した[4][6]。
道路マット敷設装置は海上自衛隊のLCACが砂浜に装輪式車両を下ろす際にも展開して支援する[7]。
諸元
[編集]登場作品
[編集]漫画
[編集]- 『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』
- 自衛隊が特地に持ち込んだ装備の一つとして登場。炎龍退治に向かう部隊の支援に出動し、河に展開して各種車両を渡河させた。
小説
[編集]脚注
[編集]- ^ a b c d e 技術開発官(陸上担当),技術研究本部50年史P40-41 (PDF)
- ^ a b c d e f PANZER 臨時増刊 陸上自衛隊の車輌と装備2012-2013 2013年1月号,アルゴノート社,P110
- ^ a b c d e 自衛隊装備年鑑 2006-2007 朝雲新聞 P96 ISBN 4-7509-1027-9
- ^ a b c 組立式応急橋梁システム (PDF) 上野俊明 北島昭 中村富男 川宿田敬大,日立評論2012年9月号,P64-67
- ^ “葛飾区で防災訓練 帰宅困難者対策、江戸川に浮橋架設”. 産経ニュース. (2018年10月15日) 2018年10月20日閲覧。
- ^ “橋崩落の島、孤立解消へ”. 47NEWS. (2011年3月23日). オリジナルの2012年7月23日時点におけるアーカイブ。
- ^ “ホバークラフトどんどん送ればいいじゃん←そうじゃない! 能登への物資輸送の難しさ 陸海空全てで”. 乗りものニュース (2024年1月14日). 2024年1月14日閲覧。
参考文献
[編集]- 『自衛隊装備年鑑 2006-2007』 朝雲新聞社 P96 ISBN 4-7509-1027-9