2023年レスリング世界選手権

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2023年レスリング世界選手権は、2023年9月16日から24日までセルビアベオグラードで開催された[1]。当初、2023年の世界選手権はロシアクラスノヤルスクで開催予定だったが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻により、2年連続でベオグラードでの開催となった[2]

開催日程[編集]

16日
  • 男子フリースタイル61・70・86・125kg級 予選
17日
  • 男子フリースタイル61・70・86・125kg級 決勝
  • 男子フリースタイル57・74・79・92kg級 予選
18日
  • 男子フリースタイル57・74・79・92kg級 決勝
  • 男子フリースタイル65・79kg級 予選
  • 女子55・59kg級 予選
19日
  • 男子フリースタイル65・79kg級 決勝
  • 女子55・59kg級 決勝
  • 女子50・57・65・76kg級 予選
20日
  • 女子50・57・65・76kg級 決勝
  • 女子53・62・68・72kg級 予選
21日
  • 女子53・62・68・72kg級 決勝
  • 男子グレコローマン55・77・82・130kg級 予選
22日
  • 男子グレコローマン55・77・82・130kg級 決勝
  • 男子グレコローマン60・72・97kg級 予選
23日
  • 男子グレコローマン60・72・97kg級 決勝
  • 男子グレコローマン63・67・87kg級 予選
24日
  • 男子グレコローマン63・67・87kg級 決勝

国別獲得メダル数[編集]

国・地域
1 日本の旗 日本 6 3 3 12
2 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 4 3 7 14
3 キルギスの旗 キルギス 3 1 1 5
4 アゼルバイジャンの旗 アゼルバイジャン 2 5 0 7
5 イランの旗 イラン 2 3 4 9
- 中立選手(AIN) 2 2 2 6
6 トルコの旗 トルコ 2 1 4 7
7  ハンガリー 2 1 0 3
8  キューバ 2 0 1 3
9 ジョージア (国)の旗 ジョージア 1 3 2 6
10 セルビアの旗 セルビア 1 0 4 5
11 中華人民共和国の旗 中国 1 0 3 4
12 カザフスタンの旗 カザフスタン 1 0 2 3
13 フランスの旗 フランス 1 0 1 2
14 バーレーンの旗 バーレーン 1 0 0 0
15 モンゴルの旗 モンゴル 0 3 0 3
16 アルメニアの旗 アルメニア 0 1 4 5
 ウクライナ 0 1 4 5
18 モルドバの旗 モルドバ 0 1 2 3
19 プエルトリコの旗 プエルトリコ 0 1 0 1
20  ブルガリア 0 0 3 3
21  ノルウェー 0 0 2 2
ウズベキスタンの旗 ウズベキスタン 0 0 2 2
23 アルバニアの旗 アルバニア 0 0 1 1
 コロンビア 0 0 1 1
 チェコ 0 0 1 1
エクアドルの旗 エクアドル 0 0 1 1
 エジプト 0 0 1 1
ドイツの旗 ドイツ 0 0 1 1
ナイジェリアの旗 ナイジェリア 0 0 1 1
サンマリノの旗 サンマリノ 0 0 1 1
UWW 0 0 1 1
Total 30 30 60 120
  • UWWは今大会に中立選手(AIN)で出場してメダルを獲得した6名のロシア及びベラルーシの選手をメダル一覧表に含めなかった。

国別順位[編集]

Rank 男子フリースタイル 男子グレコローマン 女子フリースタイル
Team Points Team Points Team Points
1 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 148 アゼルバイジャンの旗 アゼルバイジャン 120 日本の旗 日本 195
2 イランの旗 イラン 110 イランの旗 イラン 102 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 135
3 ジョージア (国)の旗 ジョージア 80 トルコの旗 トルコ 93 モンゴルの旗 モンゴル 80
4 カザフスタンの旗 カザフスタン 74  キューバ 73 中華人民共和国の旗 中国 65
5 アゼルバイジャンの旗 アゼルバイジャン 66 アルメニアの旗 アルメニア 65  ウクライナ 59
6 日本の旗 日本 61 キルギスの旗 キルギス 60 モルドバの旗 モルドバ 58
7 アルメニアの旗 アルメニア 49 ジョージア (国)の旗 ジョージア 59 トルコの旗 トルコ 55
8 トルコの旗 トルコ 42  ハンガリー 52 キルギスの旗 キルギス 47
9 セルビアの旗 セルビア 40 ウズベキスタンの旗 ウズベキスタン 52 UWW 39
10  ハンガリー 37 セルビアの旗 セルビア 49 ドイツの旗 ドイツ 35

メダル獲得者[編集]

男子フリースタイル[編集]

階級
57 kg セルビアの旗 ステバン・ミシッチ 日本の旗 樋口黎 アルメニアの旗 アルセン・ハルチュニャン
アルバニアの旗 ゼリムハン・アバカロフ
61 kg アメリカ合衆国の旗 ビト・アルジャウ 中立選手(AIN) アバスガジ・マゴメドフ キルギスの旗 タイルベク・ジュマシュベクウール
ジョージア (国)の旗 ショータ・ファルテナーゼ
65 kg ハンガリーの旗 イスマイル・ムスカエフ プエルトリコの旗 セバスチアン・リベラ 中立選手(AIN) シャミル・マメドフ
アルメニアの旗 バズゲン・テバニャン
70 kg アメリカ合衆国の旗 ザイン・レザーフォード イランの旗 アミル・モハマド・ヤズダニ ブルガリアの旗 ラマザン・ラマザノワ
アルメニアの旗 アルマン・アンドレアシャン
74 kg 中立選手(AIN) ザウルベク・シダコフ アメリカ合衆国の旗 カイル・デイク 日本の旗 高谷大地
セルビアの旗 ヘタグ・ツァボロフ
79 kg 中立選手(AIN) アフメド・ウスマノフ ジョージア (国)の旗 ウラジーメリ・ガムクレリゼ ウクライナの旗 バシル・ミハイロフ
イランの旗 モハンマド・ノクホジ
86 kg アメリカ合衆国の旗 デビッド・テイラー イランの旗 ハッサン・ヤズダニ カザフスタンの旗 アザマト・ダウレトベコフ
サンマリノの旗 マイルス・アミネ
92 kg カザフスタンの旗 リザベク・アイトムハン アゼルバイジャンの旗 オスマン・ヌルマゴメドフ トルコの旗 フェイズラー・アクチュルク
アメリカ合衆国の旗 ザヒド・バレンシア
97 kg バーレーンの旗 アフメド・タジュディノフ アゼルバイジャンの旗 マゴメドハン・マゴメドフ ジョージア (国)の旗 ギビ・マチャラシビリ
アメリカ合衆国の旗 カイル・スナイダー
125 kg イランの旗 アミル・ホセイン・ザレ ジョージア (国)の旗 ゲノ・ペトリアシヴィリ トルコの旗 タハ・アクギュル
アメリカ合衆国の旗 メイソン・パリス

男子グレコローマン[編集]

階級
55 kg アゼルバイジャンの旗 エルダニズ・アジズリ ジョージア (国)の旗 ヌグザリ・ツルツミア ウズベキスタンの旗 ジャスルベク・オルティクボエフ
イランの旗 ポヤソウラト・ダドマルツ
60 kg キルギスの旗 ジョラマン・シャルシェンベコフ 日本の旗 文田健一郎 ウズベキスタンの旗 イスロミョン・バフロモフ
中華人民共和国の旗 カオ・リグオ
63 kg ジョージア (国)の旗 レリ・アブラゼ アゼルバイジャンの旗 ムラド・ママドフ セルビアの旗 ゲオルギ・ティビロフ
トルコの旗 エネル・バシャフ
67 kg キューバの旗 ルイス・オルタ アゼルバイジャンの旗 ハスラト・ジャファロフ セルビアの旗 マテ・ネメシ
イランの旗 モハマド・レザ・ゲラエイ
72 kg フランスの旗 イブラヒム・ガネム ハンガリーの旗 フリッチュ・ロベルト セルビアの旗 アリ・アルサラン
トルコの旗 セルチュク・カン
77 kg キルギスの旗 アクジョル・マフムドフ アゼルバイジャンの旗 サナン・スレヤマノフ 日本の旗 日下尚
アルメニアの旗 マルカス・アモヤン
82 kg アゼルバイジャンの旗 ラフィグ・フセイノフ イランの旗 アリレザ・アジジズフーン・モフマディピアニ ウクライナの旗 ヤロスラフ・フィルチャコフ
中立選手(AIN) アウエス・ゴニボフ
87 kg トルコの旗 アリ・センジズ
ハンガリーの旗 ダビド・ロソンチ
該当者なし ウクライナの旗 ジャン・ベレニウク
ブルガリアの旗 セメン・ノビコフ
97 kg キューバの旗 ガブリエル・ロシージョ アルメニアの旗 アウトゥール・アレクサニャン ブルガリアの旗 アウトゥール・オマロフ
イランの旗 モハンマド・ハジ・サラビ
130 kg イランの旗 アミン・ミルザザデフ トルコの旗 リザ・カヤールプ エジプトの旗 アブデラティフ・モハメドアーメド・モハメド
キューバの旗 オスカル・ピノ・ヒンズ

女子フリースタイル[編集]

階級
50 kg 日本の旗 須﨑優衣 モンゴルの旗 ドルゴルジャビン・オトゴンジャルガル 中華人民共和国の旗 フェン・ジキ
アメリカ合衆国の旗 サラ・ヒルデブラント
53 kg 日本の旗 藤波朱理 中立選手(AIN) バネサ・カラジンスカヤ エクアドルの旗 ルシア・エペス・グスマン
インドの旗 アンティム・アンティム
55 kg 日本の旗 奥野春菜  アメリカ合衆国の旗 ジャカッラ・ウィンチェスター モルドバの旗 マリアナ・ドラグタン
ドイツの旗 アナスタシア・ブライバス
57 kg 日本の旗 桜井つぐみ モルドバの旗 アナスタシア・ニキタ ナイジェリアの旗 オドゥナヨ・アデジュオロエ
アメリカ合衆国の旗 ヘレン・マルーリス
59 kg 中華人民共和国の旗 チャン・チ ウクライナの旗 ユリア・トカチ ノルウェーの旗 オテリー・ヘイエ
アメリカ合衆国の旗 ジェニファー・ペイジ・ロジャーズ
62 kg キルギスの旗 アイスルー・ティニベコワ 日本の旗 元木咲良 ウクライナの旗 イリナ・コリアデンコ
ノルウェーの旗 グレイス・ブレン
65 kg 日本の旗 尾﨑野乃香 アメリカ合衆国の旗 メイシー・キルティ ブルガリアの旗 ミミ・フリストワ
中華人民共和国の旗 リリ・リリ
68 kg トルコの旗 ブセ・トスン モンゴルの旗 デルゲルマー・エンフサイハン フランスの旗 クムバ・ラロク
モルドバの旗 イリーナ・リンガチ
72 kg アメリカ合衆国の旗 アミタ・エラー モンゴルの旗 ダバーナサン・エンフアマル 日本の旗 森川美和
カザフスタンの旗 ジャミラ・バクベルゲノワ
76 kg 日本の旗 鏡優翔 キルギスの旗 アイペリ・キジ コロンビアの旗 タチアナ・レンテリア
アメリカ合衆国の旗 アデリン・グレイ

備考[編集]

  • UWWはロシアによるウクライナへの軍事侵攻により国際舞台から除外されていたロシア及びその協力者であるベラルーシの選手が、中立の立場(AIN)で今大会に参加することを容認した。各種言動を調査した上で、軍や政府機関と関わり合いを持たず、戦争を支持していないと判断された選手及び役員には参加資格が付与される。2023年3月にIOCが中立の条件付きながら両国選手の国際大会への復帰を容認しており、UWWもそれに追従する形となった[3][4]。UWWは調査の結果、ロシア及びベラルーシの関係者26名を不適格と判断した。しかしながら、戦争支持集会に出席したオリンピックチャンピオンのザウル・ウグエフ、ザウルベク・シダコフ、アブドゥルラシド・サドゥラエフの3名に関しては、本人の意思で集会に参加したとは判断できないとして、不問に付した[5][6]。なお男子フリースタイル61キロ級では、ウクライナの選手がAIN名義で出場したロシア選手と対戦するも、握手を拒んだ。この行為は通常ならばスポーツマンシップに反する行為として失格処分になる可能性もあるが、今大会では特別な理由を有する場合に限って握手をしなくてもよいという取り決めが審判会議によって事前になされていたため、問題にならなかった[7]
  • 今大会の男子グレコローマンスタイル67㎏級3回戦でが日体大4年の曽我部京太郎が、東京オリンピックで優勝したイランのモハマド・レザ・アブドルハム・ゲラエイと対戦すると、試合中に兄のモハマダリ・アブドルハミド・ゲラエイがペットボトルをマットに投げ込む妨害行為が起こり、試合が一時中断する事態となった。この行為に対して、日本レスリング協会はUWWに正式抗議した[8][9][10]。2023年10月にUWWは、兄のゲラエイに対して暫定的な活動停止処分を下した。なお2022年9月にゲラエイは、ドイツの独裁者だったアドルフ・ヒトラーを自分の英雄だと発言して物議を醸していた[11][12]。11月にUWWはゲラエイに1年間の活動停止及び1,000スイスフラン(約16万9,000円)の罰金、イランレスリング協会にも5,000スイスフラン(約84万4,000円)の罰金を科すことに決めた[13]
  • UWWは2023年11月に今大会の男子グレコローマン87kg級決勝で判定ミスがあったとして、両者を勝者とした。決勝ではトルコのアリ・センジズがハンガリーのダビド・ロソンチに8-7で勝利したものの、ロソンチがフォールの態勢に入っていたにもかかわらず、マットチェアマンがそれを認めなかった点が誤りであったと結論付けられた。その後UWWは、この試合においてマットチェアマンが「重大な誤審」を引き起こしたとして、1年間の活動停止処分を科した[13][14][15]
  • UWWはインドレスリング連盟(WFI)に対して、暫定的な資格停止処分を科した。WFIの元会長であるブリジ・ブシャン・シャラン・シンが選手へのセクハラ行為で起訴されたことに伴う混乱により、定められた期間内に会長選挙が実施されなかったため、この措置が発動された。そのため、インドの選手は今大会にUWW名義で出場することになり、国旗や国歌を使用できない[16][17]

脚注[編集]

  1. ^ 2023年世界選手権
  2. ^ レスリング世界選手権 来年の開催地 ロシアからセルビアに変更
  3. ^ レスリング、ロシア勢復帰を容認 馬術連盟は除外継続 日本経済新聞 2023年4月5日
  4. ^ UWW to readmit Russian and Belarusian wrestlers as neutrals
  5. ^ Questions unanswered over Russian participation at World Wrestling Championships
  6. ^ Wrestling body explains why it let Russian champions compete at world champs despite pro-war rally
  7. ^ 初日から握手拒否 ロシアが2大会ぶり復帰―世界レスリング 時事通信 2023年9月18日
  8. ^ 曽我部、五輪王者に惜敗 世界レスリング 時事通信 2023年9月23日
  9. ^ 日本、UWWに抗議 試合中のペットボトル投げ込みで―レスリング 時事通信 2023年9月24日
  10. ^ イラン関係者がペットボトルを投げ入れ 日本協会、曽我部京太郎の試合妨害に抗議/レスリング サンケイスポーツ 2023年9月24日
  11. ^ UWWがモハマダリ・アブドルハミド・ゲラエイ(イラン)に暫定活動停止処分
  12. ^ Iran Wrestling Federation to appeal after Geraei banned over World Championships bottle-throwing incident
  13. ^ a b ペットボトル投げ入れのイラン選手と、フォール見逃しの審判員に、1年間の停止処分
  14. ^ 重大な誤審があり、男子グレコローマン87kg級は両者優勝へ…2023年世界選手権
  15. ^ International Federation Has Decided: Hungarian Wrestler World Champion after All
  16. ^ インド連盟に暫定的出場停止処分、選手はUWW選手として出場へ…UWWが報じる
  17. ^ Wrestling Federation of India suspended; Indian wrestlers to compete as neutral athletes at World Championships 2023

関連項目[編集]