交通信号機

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日本の信号機の一例(LED式)
信号機(縦型)

交通信号機(こうつうしんごうき)とは、道路における交通の安全の確保、若しくは交通の流れを円滑にするために、進行許可・停止指示などの信号を示す装置である。

概要[編集]

道路の交差点などで、自動車自転車、歩行者の通行の優先権を伝えるための装置で、道路交通の安全を図りつつ、自動車を円滑に走行させることを目的に設置される道路の付属施設である[1]。交通事故の危険性が予測される交差点は優先道路一時停止などの規制を実施するが、多量な交通需要は交通信号を設置し、交互に通行権を割り振ることで積極的に交通を処理[2]し、交通流の安定、排気ガス騒音など交通公害の低減、交通環境の改善[3]、などを見込む。

識別は世界で共通して)・の三色を用いる。世界的に統一された基準として道路標識及び信号に関するウィーン条約が存在するが、日本アメリカ合衆国などは批准せずに独自に定めている。

内部に光源が収められて灯火を行う信号本体の装置を灯器と称する。

灯色について[編集]

国別で信号機の灯色の表現が異なる[4]

日本における呼称
中国
アメリカ green yellow red
イギリス green amber red

日本の法令は、進行許可の「」を「」としている。本項目は日本の法令に関して記述し、誤解のおそれが無い場合は「青」と記述する。

信号機の配列・意味・点灯パターン[編集]

ウィーン条約で定められている信号機の点灯パターン ウィーン条約で定められている信号機の点灯パターン
ウィーン条約で定められている信号機の点灯パターン

国際ルール[編集]

日本は批准していないウィーン条約で信号機に関する国際的基準が示されている。

日本[編集]

アメリカ[編集]

赤信号は安全を確認して右折が許容されている[5]が、「NO TURN ON RED」(赤信号で右折禁止)の標識が設置されている場合は赤信号時の右折が不可であり、赤信号時の右折が全く認められない地域も存在する[5]

青矢印信号と赤信号の間に黄矢印信号が設けることもある[6][7]

韓国[編集]

法律上の扱い[編集]

日本[編集]

設置基準[編集]

日本[編集]

アメリカ[編集]

アメリカ合衆国での信号機の設置基準として、『MUTCD2000』で以下の7つの項目があり、その内1つでも条件を満たす場合に信号機が設置できるとされている[8]

  • 平均的な週日の任意の8時間交通量
  • 平均的な週日の任意の4時間交通量
  • ピーク時間交通量が一定以上(大規模商業施設で一定の短時間で交通が集中する場合を想定)
  • 歩行者交通量
  • 通学横断歩道
  • 系統化信号システム
  • 交通事故件数
  • 道路ネットワーク

制御システム[編集]

概要[編集]

交差点で交通流に対して同時に与えられる通行権またはその通行権が割り当てられている状態を、信号現示(現示)と言う[9]

信号交差点の制御対象範囲で3種類に分類される[10][11]

  • 地点制御(点制御):交差点ごとに単独で制御する方式。
  • 系統制御(線制御):連続して設置されている信号機を互いに制御する方式。車両の停止を減らし、交通の安全と円滑を図る。
  • 地域制御(面制御):面的に広がる道路網に設けられた多数の信号機を一括して制御する方式。

信号現示を切り替える条件で2種類に分類される[12][13]

  • 定周期制御:予め定められた現示構成、サイクル長、スプリット、オフセット(後述)によって制御する方式。
  • 交通感応制御:車両や歩行者などのセンサ情報によって制御する方式。

変数は以下の3種類である[14]

  • サイクル長:信号表示が一巡する時間
  • スプリット:各現示に割り当てられる時間または割合
  • オフセット:隣接する交差点どうしで系統制御するために、系統方向の各交差点における青の開始時間の差

ドイツでは「オフセット」設定は、1926年ベルリンライプツィヒ通りで「緑の波」として導入された[15]

日本[編集]

イギリス[編集]

イギリスTRLが開発した「SCOOT」(Split Cycle Offset Optimization Technique)が、英国および国外の200以上の都市で運用されている[16]。停止線上流に設置された感知器で感知された車両は、一定の走行速度で停止線に至ると仮定し、車両の到着時間や渋滞長を推定して信号制御の変数を調整する[17]

オーストラリア[編集]

オーストラリアニューサウスウェールズ州RTAで開発された「SCATS」(Sydney Coordinated Adaptive Traffic System)が80以上の都市で運用されている[16]。停止線の直近にループ式車両感知器を設置して交通流を読み取り、サイクル長やスプリットのパターンを選択している[18]

車両用信号[編集]

歩行者用信号が存在しない場合は、歩行者もこの信号機に従わなくてはならないが、便宜上「車両用信号」として扱う。

車両用は横型と縦型があり、横型が主流となっている。縦型は横型に比べて雪の付着が少ないために積雪地で多く用いられ[注 1]、視認性に優れるために狭隘地点や路地、陸橋、側道などに見られる。

台湾韓国も横型が多用され、欧米や中国は環境を問わず縦型が多用される。

日本[編集]

アメリカ[編集]

アメリカの車両用信号は赤、黄、青、青矢印、黄矢印に追加して赤矢印も使用される[19]。黄矢印は青矢印から赤矢印になる間に挟まれる。

レンズのサイズは8インチまたは12インチが基本である[19]。舗装面から25.6フィート以上の高さに設置するよう定めらている[20]

自転車用信号[編集]

多くのヨーロッパの国では自転車用信号が採用され、自動車と自転車で動線が交錯しないようなされている[21]

日本[編集]

イギリス[編集]

イギリスでは車両用灯器の黄・青の部分に自転車のピクトグラムを用いたものが採用されている[22]。横断歩道と自転車横断帯を併設した信号である「Toucan Crossing」場合、赤・青の2色の信号に歩行者と自転車のピクトグラムが用いられている[23]

歩行者用信号[編集]

日本[編集]

ドイツ[編集]

ドイツでは1933年コペンハーゲンで初めて導入されたが、この当時は自動車用信号機を小さくして緑と赤の灯火を設けたものだった[15]。その後、アメリカにならって「Warten」(待て)と「Gehen」(進め)の文字が光るタイプが取り入れられた[15]1961年東ドイツで歩行者用信号機の図柄に交通心理学者のカール・ペルラウが考案した「アンペルマン」が導入される[24]。東西ドイツの統一直後は旧東ドイツでも西ドイツで既に導入が進んでいた図柄に変更される予定であったが、デザイナーのマルコス・ハックハウゼンの運動により変更は中止となった[25]


台湾[編集]

路面電車用信号[編集]

日本[編集]

歴史[編集]

世界[編集]

灯火方式による世界初の信号機は、1868年ロンドン市内のウエストミンスターに設置された信号機である[26]。これは光源にガスを使い、緑色と赤色を手動で表示するものであった。この信号は馬車の交通整理のために置かれたが、起動から3週間後に爆発事故を起こし、撤去されている。1914年8月8日、オハイオ州クリーブランドに世界初の電気式信号機が設置された。1918年に黄色が加えられた3色灯式信号機がニューヨークで初めて設置された[26]

日本[編集]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 主に北海道、本州の日本海側では道幅の広い道路でも縦型が主流。庇は積雪で見えにくくならないよう一番上の赤部分だけ若干長めにしている灯器もある。

出典[編集]

  1. ^ 浅井建爾 2001, p. 256.
  2. ^ 宮城紘一 1977, p. 8.
  3. ^ 信号機の役割”. 日本交通管理技術協会. 2017年10月12日閲覧。
  4. ^ 時崎賢二 2000, p. 29.
  5. ^ a b アメリカドライブの注意点”. BehoRoton, Inc. 2017年10月19日閲覧。
  6. ^ Ruth Johnson (2017-01-03). What Every Driver Must Know. State of Michigan. http://www.michigan.gov/sos/0,1607,7-127-1642-103522--,00.html. 
  7. ^ Ohio Department of Public Safety. Digest of Ohio Motor Vehicle Laws. Ohio Department of Public Safety. http://publicsafety.ohio.gov/links/hsy7607.pdf. 
  8. ^ 斎藤威 2004, p. 85.
  9. ^ 交通工学研究会 2007, p. 176.
  10. ^ 交通工学研究会 2006, p. 179.
  11. ^ 信号機とは”. 静岡県警察本部交通部交通規制課. 2017年10月10日閲覧。
  12. ^ 交通工学研究会 2006, p. 68.
  13. ^ 交通工学研究会 2006, p. 70.
  14. ^ 交通工学研究会 2007, p. 177.
  15. ^ a b c 高橋徹 2015, p. 7.
  16. ^ a b 交通工学研究会 2006, p. 131.
  17. ^ 交通工学研究会 2006, pp. 131-133.
  18. ^ 交通工学研究会 2006, p. 133.
  19. ^ a b United States Department of Transportation (2009). Manual on Uniform Traffic Control Devices (2009 ed.). p. 456. 
  20. ^ United States Department of Transportation (2009). Manual on Uniform Traffic Control Devices (2009 ed.). p. 465. 
  21. ^ Robert K. Seyfried (2013). Traffic Control Devices Handbook (2nd Edition ed.). Institute of transportation engineers. p. 341. ISBN 978-1-933452-67-8. 
  22. ^ Department for Transport (2007). Know Your Traffic Signs (Fifth ed.). The Stationery Office. p. 120. ISBN 978-0-11-552855-2. 
  23. ^ Department for Transport (2007). Know Your Traffic Signs (Fifth ed.). The Stationery Office. p. 124. ISBN 978-0-11-552855-2. 
  24. ^ 高橋徹 2015, p. 15.
  25. ^ 高橋徹 2015, pp. 56-66.
  26. ^ a b ロム・インターナショナル(編) 2005, p. 205.

参考文献[編集]

書籍[編集]

  • 浅井建爾 『道と路がわかる辞典』 日本実業出版社2001年11月10日、初版。ISBN 4-534-03315-X
  • ロム・インターナショナル(編) 『道路地図 びっくり!博学知識』 河出書房新社〈KAWADE夢文庫〉、2005年2月1日ISBN 4-309-49566-4
  • 交通工学研究会 『道路交通技術必携2007』 建設物価調査会、2007年8月
  • 高橋徹 『アンペルマン 東ドイツ生まれの人気キャラクター』 郁文堂、2015年11月9日ISBN 978-4261073263

記事[編集]

  • 宮城紘一「信号機による交通整理」、『月刊交通』第8巻第6号、1977年、 8-17頁。
  • 時崎賢二「信号機の灯色(2)」、『人と車』第36巻第10号、2000年、 29頁。
  • 斎藤威「これからの信号制御 第2回 信号制御の基本(1)」、『交通工学』第40巻第2号、2004年、 82-89頁。
  • 吉崎昭彦「「信号機設置の指針」の改正,試行について」、『交通工学』第50巻第2号、2015年、 46-51頁。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]