知的生活論
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知的生活論(ちてきせいかつろん)とは、知的生活[注釈 1]の方法について論じたものを指す。
種類
[編集]知的生活論を必要とするものは大きく分けて二つある。一つはA学者・研究者がいかに研究するか、研究生活をいかに送るかであり、もう一つはB学者・研究者ではないが古典や学問することを重んじた生活をしたい者が、いかにしたらそういう生活を送れるか[注釈 2]である。この両方の課題に応える論述が知的生活論である。
概要
[編集]何が知的生活論かの一つの目安は、下記「知的生活論の領域」に触れるかどうかである[注釈 3]。当初は読書論とか本の検索・購入法とかが主流であったが、近頃はパソコン、インターネットの普及により、これらを利用した技術論が主流になりつつある。なお、本項目では読書論は大きな論題なので、それには触れないこととする。
日本で最初に知的生活論の領域を開拓したのは河合栄治郎である[注釈 4]。戦後になって、知的生活論に新境地を開いたのは、梅棹忠夫[注釈 5]の『知的生産の技術』(1969年)[注釈 6]と渡部昇一の『知的生活の方法』(1976年)である。著者たち自身の続編も含め、多くの論者により知的生活論が出版された。下記「知的生活論者」表記は、その一例である[注釈 7]。
領域
[編集]- 書斎の在り方、読書法、思索法、討論法、執筆法(原稿作法)、論文作成法
- 本の探し方(検索術)、本の購入法、古本活用法、図書館利用法
- アイディアの育て方、メモの取り方、知識の記述・保管・整理法
- 外国語学習法、辞書活用法、百科事典活用法
- セミナーの受け方、博物館活用法、フィールド・ワーク術
- パソコン術、インターネット術、ブログ・メールなど活用法
論者
[編集]- 河合栄治郎『学生に与う』日本評論社、1940年
- 野々村一雄『学者商売』中央公論社、1960年(新版は新評論、1978年)
- 川喜田二郎『発想法』中公新書、1967年
- 梅棹忠夫『知的生産の技術』岩波新書、1969年
- 樺島忠夫『情報・文章・システム』毎日新聞社、1970年(『書くことの意味』1972年)
- 板坂元『考える技術・書く技術』講談社現代新書、1973年
- 加藤秀俊『独学のすすめ』文藝春秋、1975年
- 渡部昇一『知的生活の方法』講談社現代新書、1976年
- 矢矧晴一郎『仕事のための読み方・書き方』日本能率協会、1976年
- 外山滋比古『知的創造のヒント』講談社現代新書、1977年
- 「知的生産の技術」研究会編[注釈 8]『わたしの知的生産の技術』講談社、1978年
- 水田洋『知の周辺』講談社現代新書、1979年
- 竹内均『私の知的鍛錬法』徳間書店、1980年
- 紀田順一郎『ワープロ書斎生活術』双葉社、1985年
- 野口悠紀雄『「超」整理法』中公新書、1993年
- 鷲田小彌太『現代知識人の作法』青弓社、1995年
- 立花隆『僕はこんな本を読んできた』講談社、1995年
- 鎌田浩毅『一生モノの勉強法』東洋経済新報社、2009年
- 読書猿
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 「知的生活」に代わるべく用語としては、「知的生産」「研究生活」「勉強」などがある。「知的生産」「研究生活」は「概要」でのAの学者には妥当かもしれないが、Bに当たる者には妥当しない。「知的生活」という言葉は渡部昇一がハマトンの『知的生活』(The Intellectual Life, 1873)にヒントを受けて、自身の最初の知的生活論である『知的生活の方法』(1976年)で使い出した用語であり、A、Bの両者に妥当し、今では市民権を得ていると言える。
- ^ 古典や学問することを重んじる態度は「教養主義」の思想である。
- ^ 「知的生活」は内容が問題であって、どう定義するかはさして重要ではない。渡部昇一は暫定的と断りながら、次のように定義している。「内省的ムードの濃い個人主義的生活で、そこに生じた知的確信を外的な条件に付和雷同させぬマイペースの生活」としている。渡部昇一「河合栄治郎の意義」日本文化会議編『日本の知識人』PHP研究所、1980年、158-159頁。
- ^ 河合はいくたの知的生活にかかわる学生指導書を出している。『学生叢書』(1936-41年)の中では、『学生と教養』『学生と読書』『学生と生活』を編集刊行しているし、単独では『学生に与う』(1940年)を出版した。同書は哲学書でもあり人生論の書でもある。
- ^ 秘書の藤本ますみ『知的生産者たちの現場』(講談社、1984年)もある。
- ^ 梅棹の『知的生産の技術』によって、「知的生産」「知的生産の技術」「京大型カード」「こざね法」などが普及した。
- ^ 戦後の知的生活論の詳細な著書記載例としては、青木育志『教養主義者・河合栄治郎』春風社、2012年、222-224頁参照。
- ^ 1970年に発足、2020年代もNPO法人として活動中