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{{Infobox film
| name = The Secret
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| director = Drew Heriot
| producer = [[ロンダ・バーン]] (エグゼクティブ・ディレクター), ポール・ハリントン (プロデューサー)
| budget = 35万ドル<ref>{{cite web|url=http://www.the-numbers.com/movies/2006/0SECD.php |title=budget |publisher=The numbers |date= |accessdate=2013-07-29}}</ref>
| gross = 656万ドル<ref>{{cite web|url=http://www.the-numbers.com/movies/2006/0SECD-DVD.php |title=Gross |publisher=The numbers |date= |accessdate=2013-07-29}}</ref>
| distributor = Prime Time Productions, Dragon 8 PR (Original Banned Edition)
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| runtime = 87 分
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}}
{{基礎情報 書籍
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| published = {{flagicon|USA}} [[2006年]][[11月26日]]<br />{{flagicon|JPN}} 2007年[[11月20日]]| publisher = {{flagicon|USA}} [[:en:Atria Books|Atria Books]]<br />[[:en:Beyond Words Publishing|Beyond Words Publishing]]<br />{{flagicon|JPN}} [[角川書店]]
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}}
『'''ザ・シークレット'''』(''The Secret'')は、[[ロンダ・バーン]]の[[自己啓発書]]である。原著は2006年に刊行され、日本語訳は2007年に[[角川書店]]から刊行された。「'''引き寄せの法則'''」を主題とする。書籍版だけでなく映画DVD版([[:en:The Secret (2006 film)]])もある。後者には書籍版で発言が引用される人々へのインタビューが収められている。
『'''ザ・シークレット'''』(''The Secret'')は、2006年のインタビューを集めた映画、または、これを下敷きに映画の後に出版された、[[ロンダ・バーン]]による2006年の[[自己啓発書]]である。ポジティブな姿勢を保ち「思考そのもの」を変えることで現実を変えることを目指す[[疑似科学]]的な'''[[積極思考]]'''(ポジティブシンキング)、「'''引き寄せの法則'''」を主題とする<ref name="Scientific American">{{cite web
| last = Shermer | first = Michael
| authorlink = Michael Shermer
| title = The (Other) Secret
| work = [[Scientific American]]
| date = 1 June 2007
| url = https://www.scientificamerican.com/article/the-other-secret/
| accessdate = 2 February 2018
}}</ref><ref name="Live Science">{{cite web
| last = Radford | first = Benjamin
| authorlink = Benjamin Radford
| title = The Pseudoscience of 'The Secret'
| work = [[Live Science]]
| date = 3 February 2009
| url = http://www.livescience.com/5303-pseudoscience-secret.html
| accessdate = 2 February 2018
}}</ref>。書籍は50か国で訳され、2000万部以上売り上げている<ref>{{cite web|url=http://www.thesecret.tv/creative-biography.html |title=Creative Biography :: Official Web Site of The Secret and The Power |publisher=Thesecret.tv |date= |accessdate=2011-11-29}}</ref>。19世紀半ばに[[アメリカ合衆国]]で生まれたキリスト教の異端思想である[[ニューソート]]に始まり、[[ニューエイジ]]で広まった、思考が現実になる・精神が物質化するという積極思考が再び注目を集めるきっかけになった{{sfn|加藤|2015|pp=142-143}}。


「引き寄せの法則」は科学的に証明されておらず、[[量子物理学]]などの科学概念が援用されているが、科学者は[[疑似科学]]であると述べている<ref name=sa>[https://www.scientificamerican.com/article/the-other-secret/ The (Other) Secret The inverse square law trumps the law of attraction] Scientific American</ref><ref name= Radford>Benjamin Radford [https://www.livescience.com/5303-pseudoscience-secret.html The Pseudoscience of 'The Secret'] Live Science</ref>。歴史認識の誤り、独断的な見解、共感や想像力の欠如、物質的豊かさに過度にフォーカスしていること、社会や政治など現実への関心を失わせるような論理・倫理、極度に単純化された教えなどの指摘・批判がある<ref name= Radford/>{{sfn|加藤|2015|pp=150-151}}。[[パロディー]]のネタとしても頻繁に取り上げられている。
バーンは、本書でいう「秘密」は[[ユダヤ教]]、[[キリスト教]]、[[イスラム教]]、[[仏教]]、[[ヒンドゥー教]]、[[バビロニア]]人や[[エジプト人]]の文明や[[錬金術]]でも伝えられている、と主張している。「秘密」とは「引き寄せの法則」の知識と実践である。古来から多くの有名な文人、芸術家がその作品を通じて「引き寄せの法則」の強力さを表現してきた、とも述べる。


==概要==
==主張される効用==
2006年3月に、インタビューを集めた低予算のインスピレーション映画『[[:en:The Secret (2006 film)|The Secret]]』が公開された<ref name=Sanneh/>。動機付け講演家(モチベ―ショナルスピーカー)、動機付けの教師、「引き寄せの法則」業界の人間のが中心で、他に風水、自己啓発、コーチング、心理学、形而上学、神学、哲学、金融、量子物理学、医学の専門家がインタビューを受けていた。この中にはウェブサイトで映画を宣伝している者もいた。短いインタビューの中で引き寄せの法則に触れていない人もおり、視聴者は彼らが引き寄せの法則を支持しているだろうと推測して補う。歴史に隠されたキリストの謎を扱ったミステリ映画「[[ダ・ヴィンチ・コード]]」と同時期に公開され、謎として巧みにパッケージされており<ref name=Sanneh/>、インタビューを受けた人々は映画で「秘密の教師」と呼ばれていた。[[羊皮紙]]、筆記体、[[封蝋]]などで「ダ・ヴィンチ・コード」に似たイメージの美しいパッケージが作られていた<ref name=Sanneh/>。
自分と似た者同士が引き合うという「'''引き寄せの法則'''」を掲げ、例えば富についてのみ考えることで富を得、豊かさのみ考えることで豊かさを引き寄せることができるとする。不快な気持ちを抱くと同じような思考が延々と続いてしまうのも、「引き寄せの法則」が発動するからであるとしている。


続いて2006年の後半に、ロンダ・バーンによって同名の自己啓発書が出版された。書籍では映画のインタビューが引用されている。書籍の日本語訳は2007年に[[角川書店]]から刊行され、「([[脳科学者]]の)[[茂木健一郎]]氏 絶賛!」という帯がつけられていた。例として挙げられる悩みはかなり軽いものが多く、比較的高学歴で裕福な層に人気がある{{sfn|加藤|2015|pp=150-151}}。
「引き寄せの法則」によれば、欲しいものをイメージし、なおかつほとんどそれのみを考え続けることができれば、その欲しいものを手に入れることができる。


トーク番組「[[オプラ・ウィンフリー・ショー]]」での紹介を一因に、発売半年でDVD200万枚、書籍400万冊が売れ、2009年で映画と書籍は3億円売り上げた<ref name=Dunning/><ref>{{cite web|url=https://www.forbes.com/2009/01/15/self-help-industry-ent-sales-cx_ml_0115selfhelp.html |title=What People Are Still Willing To Pay For |publisher=Forbes.com |date= |accessdate=2013-07-29}}</ref>。宣伝には[[ティーザー広告]]や[[バイラル・マーケティング]]、秘密を部分的にほのめかすテクニックが使われた。『ザ・シークレット』はある種のブランドになり、教えを布教する教師には、アメリカ全土でセミナーや教室を開いている人もいる<ref name=Lampman/>。
己の思考を知り、それを変えるための助けとして[[瞑想]]が勧められている。


思考が現実になるという[[積極思考]]「引き寄せの法則」を主張している。18世紀後半に始まったキリスト教異端的潮流[[ニューソート]]の書籍をアイデアの歴史的な拠り所として引用しており<ref name="usatoday">{{cite news
==主張される原理==
| last = della Cava
思考や事象には特定の周波数が存在しており、思考やイメージが宇宙に放たれることによって、その周波数に対応する事象が引き寄せられる。本書によれば思考が全ての原因である。この考えによれば肥満の原因は過食や遺伝子の特徴や体内器官の失調によるものでは無い。それは「太った考え」を隠すために人々が当てはめているものにすぎない。
| first = Marco R.
| title = ''Secret history of 'The Secret' ''
| publisher = USA Today
| date = 2006-03-29
| url = https://www.usatoday.com/life/books/news/2007-03-28-the-secret-churches_N.htm
| accessdate = 2007-05-04}}</ref><ref name="Illuminati" />、本質的にはニューソートやニューソート系・キリスト教系[[新宗教]]{{仮リンク|ユニティ (新宗教)|en|Unity Church}}が説く法則の宣伝と評されている<ref name="Illuminati" />。


本書でいう「秘密」、「引き寄せの法則」の知識は、葬られ、切望され、抑圧されてきたとされている。[[ユダヤ教]]、[[キリスト教]]、[[イスラム教]]、[[仏教]]、[[ヒンドゥー教]]、[[バビロニア]]人や[[エジプト文明]]や[[錬金術]]でも伝えられていると主張し、それを実践していたとする先人たちの名前を挙げている。[[ブッダ]]、[[プラトン]]、[[アリストテレス]]、[[シェイクスピア]]、[[ベートーベン]]、[[ガリレオ・ガリレイ]]、[[マーティン・ルーサー・キング・ジュニア]]、[[カール・ジョン・ニューマン]]、[[ヘンリー・フォード]]、[[ラルフ・ウォルド・エマーソン]]、[[トーマス・エジソン]]、[[アルバート・アインシュタイン]]、[[ウィンストン・チャーチル]]、[[アンドリュー・カーネギー]]、[[ジョセフ・キャンベル]]、[[アレクサンダー・グラハム・ベル]]らが「秘密の教師」として挙げられているが、引き寄せの法則が考案される前の人物も多く、知っていた証拠はない<ref name=Dunning/>。
「明かされた秘密」という章には[[量子力学|量子物理学]]者フレッド・アラン・ウオルフの発言が引用されており、それによると「マインド(創造的思考力)なくしては宇宙は存在し得ないことが、量子力学によって発見されています」。他の量子物理学者ジョン・ハガリンの名と言葉も挙げられており、量子力学が説明原理として援用されていることが伺える。


『ザ・シークレット』のサイトでは、[[ヘルメス・トリスメギストス]](秘密の教師とされる)によって書かれたという伝説の[[エメラルド・タブレット]]が引用され、最も重要な歴史文書であるとされる<ref name="past_teachers" />。映画の冒頭では、ニューソート思想家の{{仮リンク|エリザベス・タウン|en|Elizabeth Towne}}、[[テンプル騎士団]]、錬金術師の[[サンジェルマン伯爵]]との関連が示され、現代のビジネエリートのような人間によって抑圧されてきたことがアピールされる<ref name="life_power">{{cite book
==批判==
| last = Towne
ウオルフは『ザ・シークレット』では科学的な発言が大量に削られ単純な内容だけが残されたと語っている。彼自身は引き寄せの法則が物理学に則っているとは全く言っていないという<ref>カレン・ケリー著『ザ・シークレットの真実』144-145ページ</ref>。著書の中ではむしろ「量子力学は、人間の力の限界を指示しているようである。」「今のところ、我々が観察するものの大半は、その観察によってなんの影響も受けていない」<ref>カレン・ケリー著『ザ・シークレットの真実』157ページ</ref>と記している。宗教についても、「引き寄せの法則」の現世での願いの実現、人間の力を巨大とみなす発想と、キリスト教における神と来世を重視する発想の違いが指摘されている。ザ・シークレットの批判書『ザ・シークレットの真実』には「神は私利私欲に応えてくれる万能の[[サンタクロース]]ではない」と述べる牧師オリヴァー・トーマスの言葉が引用されている<ref>カレン・ケリー著『ザ・シークレットの真実』184ページ</ref>。このほか、同書では「引き寄せの法則」に結び付けられる過去の著名人の事例を挙げ、彼らの生涯や成功を収めるまでの実践との間に大きな差異があることを指摘している。
| first = Elizabeth
| authorlink = Elizabeth Towne
| title = The Life Power And How To Use It
| origyear = 1906
| year = 1997
| publisher = Kessinger
| isbn = 978-1-56459-958-2
}} [http://www.yourlifepower.com/the-life-power-and-how-to-use-it-intro.html Use this link] for an online version of the book.</ref><ref name="thesecret_presskit">{{cite news
| title = The Secret ''Press Release''
| publisher = TS Production LLC
| year = 2006
| url = http://www.thesecret.tv/ts_presskit.pdf
| accessdate = 2007-05-21|format=PDF |archiveurl = https://web.archive.org/web/20070421201643/http://thesecret.tv/ts_presskit.pdf <!-- Bot retrieved archive --> |archivedate = 2007-04-21}}</ref>。「秘密」はエメラド・タブレットによって始まり<ref name="QPIX_news">{{cite news
| last = Sunderland
| first = Kerry
| title = ''The secret to self distribution''
| publisher = QPIX News
| date = 2007-03-07
| url = http://cms.evolvemedia.com.au/files/pdfs/2007/qn_summer_2007_the_secret.pdf
| accessdate = 2007-05-17|format=PDF}}</ref>、「秘密」の教えを守る[[薔薇十字団]]に伝えられ、[[ヴィクトル・ユゴー]]と[[ベートーベン]]は、[[アイザック・ニュートン]]のエメラルドタブレット翻訳作業を助けるための会に属していたと想定されている<ref name="Illuminati">{{cite news | last = Melanson | first = Terry | title = '' Oprah Winfrey, New Thought, "The Secret" and the "New Alchemy"'' | publisher = Illuminati Conspiracy Archive | date = 2007-04-11 | url = http://www.conspiracyarchive.com/Commentary/Oprah_The_Secret.htm | accessdate = 2007-05-02}}</ref><ref name="past_teachers">{{cite web| title = The secret teachers| publisher = TS Production LLC| year = 2006| url = http://www.thesecret.tv/pastteachers.html| accessdate = 2007-06-06}} — page at official website of ''The Secret'' film.</ref>。しかし、この主張の根拠はない。アスペンタイムズの Carolyn Sackariason は、バーンが「秘密」をシェアする意図についてコメントした際に、薔薇十字団を「秘密」の継承者であると特定して語っていた<ref name="aspen_times">{{cite news| last = Sackariason| first = Carolyn| title = ''The big 'Secret' is finally out''| date = 2007-02-06| url = http://www.aspentimes.com/article/20070206/COLUMN/102060041&SearchID=73282611489273| accessdate = 2007-06-04}}</ref>。エメラルド・タブレットと薔薇十字団は、映画では言葉では語られていないが、重要なポイントで「薔薇十字団」という文字のイメージが使われている<ref name="Illuminati" />。

最初の映画と書籍のほかに、複数の関連書籍が出版されている<ref name=Lampman/>。続編の『ザ・パワー』ではバーンのスタンスはやや変わり、科学者や非キリスト教徒より、キリスト教徒と識別されている人々が取り上げられ、[[キリスト教神秘主義]]に傾斜している。また、インタビューを受けないと宣言しており、以前より読者との間に距離を置いている<ref name=Sanneh>{{cite web|url=https://www.newyorker.com/magazine/2010/09/13/power-lines-2|last=Sanneh|first=Kelefa|title=Power Lines What’s behind Rhonda Byrne’s spiritual empire?|publisher=The New Yoker|accessdate=2018.02.14}}</ref>。

==教え==

似たもの同士が引き合うという「'''引き寄せの法則'''」を説いており、近代[[神智学]]を創始したオカルティストの[[ヘレナ・P・ブラヴァツキー]]や積極思考を説いた牧師{{仮リンク|ノーマン・ヴィンセント・ピール|en|Norman Vincent Peale}}らによって普及した疑似科学的概念を再導入したもので、特定の傾向の思考を持つことが、現実に影響を及ぼすことを示唆している。バーンは引き寄せの法則を、全ての宗教と合致する教えであるとしている<ref name=Sanneh/>。ニューソート運動の精神的な方向と異なり、物質的に豊かになることに焦点を当てパッケージされている。

『ザ・シークレット』によると、人間の思考は磁気であり、何らかの[[波動 (オカルト)|波動]]を発しており、宇宙がそれを何らかの方法で解読し、何らかの方法で願いを叶えるとされる<ref name=Sanneh/><ref name= Radford/>。思考の「周波数」に対応する事象が、何らかの方法で引き寄せられるという。欲しいものをイメージし、なおかつほとんどそれのみを考え続けることができれば、その欲しいものを手に入れることができる。例えば富についてのみ考えることで富を得、豊かさのみ考えることで豊かさを引き寄せることができるとする。従来の積極思考・引き寄せの法則をさらに推し進めたもので、宝くじが当たるように、終末期の病気から快復するように十分に思考すれば、それがそのまま実現するとされている<ref name=Dunning>{{cite web|last1=Dunning|first1=Brian|title=What's Wrong with The Secret|url=https://skeptoid.com/episodes/4096|publisher=Skeptoid Media|date=2008.04.15|accessdate=2018.02.13}}</ref>。バーンは、欲望の実現のために感謝とイメージの視覚化が重要であるという主張を、信憑性の低い事例と共に説いている<ref name=Sanneh/>。己の思考を知り、それを変えるための助けとして[[瞑想]]が勧められている。後の章では、宇宙の法則を使って、成功、人間関係、健康を改善する方法が説明されている。バーンは[[オスカー・ワイルド]]を引用して「わたしは慈悲の感情に屈したくない。わたしは利用するために、楽しむために、感情を支配したい」と語り、自分の感情を支配することの重要性が説かれている<ref name=Sanneh/>。

『サ・シークレット』によれば、思考が全ての現実の原因である。この考えによれば、肥満の原因は過食や遺伝子の特徴や体内器官の失調によるものではない。バーンによれば、肥満の原因と考えられているものは、「太った思考」を隠すための言い訳にすぎず、医学も治療も誤りである<ref name=Blue/>。事故や病気はその人自身の欠点である<ref name= Radford/>。「お金がない」という悩みに対し、バーンは、お金がない「唯一」の理由はその人自身の後ろ向きな思考であると答えており、経済状況や社会制度などの内面以外の要因は全く認められていない{{sfn|加藤|2015|pp=150-151}}。

バーンは実践方法を、尋ね、信じ、受け取るという3段階に分けており<ref>The Secret, p. 47.</ref>、これは[[新約聖書]]の[[マタイによる福音書]]の「また、祈りの時、信じて求めるものは、みな与えられるであろう」という言葉に基づいている。聖書は、祈りではなく、思考の視覚化という個人的プロセスの助けとして利用されている<ref name=Lampman/>。

==背景・文脈==
バーンは、2004年につらい体験をした時に、娘が19世紀の[[ニューソート]]思想家[[ウォレス・ワトルズ]]の『{{仮リンク|富を引き寄せる科学的法則|en|The Riching Getting Science}}』を贈ってくれ目覚めたと語っており、この本の影響を受けている<ref name=Lampman>Jane Lampman [https://www.csmonitor.com/2007/0328/p13s01-lire.html 'The Secret,' a phenomenon, is no mystery to many] The Christian Science Monitor</ref><ref>{{citation |author=Jerry Adler |title=Decoding 'T |year=2007 | newspaper=Newsweek | url = http://www.mindstudio.net/downloads/Newsweek%20Article%20on%20The%20Secret%20-%20Law%20of%20Attraction%20DVD.doc }}</ref><ref>The Secret, p. ix.</ref>。ただし、ワトルズが持っていた政治性や社会性は、バーンには見られない<ref name=Sanneh/>。映画では『富を引き寄せる科学的法則』や{{仮リンク|ウィリアム・ウォーカー・アトキンソン|en|William Walker Atkinson}} (1862 – 1932、別名ヨギ・ラマチャラカ)などの先行するニューソートの書籍から引用されている<ref name="thought_vibration">{{cite book| last = Atkinson| first = William Walker| title = Thought Vibration or the Law of Attraction in the Thought World| year = 1906| publisher = Cornerstone| isbn = 978-1-56459-660-4}} (Out of copyright, [http://website.lineone.net/~cornerstone2/tvib.htm published on the Internet])</ref>。

宗教学者の{{仮リンク|ダグラス・E・コーワン|en|Douglas E. Cowan}}は、この本は1993年に出版された{{仮リンク|ジェームズ・レッドフィールド|en|James Redfield}}のスピリチュアル小説『{{仮リンク|聖なる予言|en|The Celestine Prophecy}}』を10年たってパッケージし直したもので、古い[[ニューエイジ]]の再来だと述べている<ref name=Lampman/>。

宗教と近代文化を研究するショーン・マクラウドは、本書は19世紀中ごろ以降のアメリカの宗教の伝統に連なっており、ニューソートや{{仮リンク|ノーマン・ヴィンセント・ピール|en|Norman Vincent Peale}}『積極思考の力』(1952年)と比較し得るもので、自分の思考によって自分の現実を創造するという「積極思考」というアイデアを共有していると指摘している<ref name=Lampman/>。

学者・作家の{{仮リンク|ジョン・G・スタックハウス・ジュニア|en|John G. Stackhouse Jr.}}は、ニューソートとポピュラー宗教の伝統の系譜に『ザ・シークレット』を置いて歴史的な文脈を示し、「新しい考えではなく、秘密ではない」と結論付けた<ref>{{cite web|author=John |url=http://www.johnstackhouse.com/2007/02/21/oprahs-secret-new-old-good-bad/ |title=Oprah’s Secret: New? Old? Good? Bad? &#124; John G. Stackhouse, Jr |publisher=Johnstackhouse.com |date= |accessdate=2013-07-29}}</ref>。

==科学概念の誤用==
「明かされた秘密」という章には[[量子力学|量子物理学]]者フレッド・アラン・ウオルフの発言が引用されており、それによると「マインド(創造的思考力)なくしては宇宙は存在し得ないことが、量子力学によって発見」されているという。他に量子物理学者{{仮リンク|ジョン・ヘーゲリン|en|John Hagelin}}(ジョン・ハガリン)の名と「宇宙は本質的に思考でできている」などの言葉も挙げられており、量子力学が説明原理として援用されていることが伺える。(なお、ジョン・ヘーゲリンは、瞑想による能力開発と地上天国の実現を目指す[[超越瞑想]]運動のリーダーである)

バーンの科学的主張は、主に量子物理学に関するものであるが、ニューヨークタイムズのChristopher Chabris と Daniel Simons<ref>{{cite web|last1=Chabris|first1=Christopher|last2=Simons|first2=Daniel|title=Fight ‘The Power’|url=https://www.nytimes.com/2010/09/26/books/review/Chabris-t.html?_r=0|publisher=''The New York Times''|date=24 September 2010|accessdate=2018.02.13}}</ref>、ハーバード大学の[[:en: Lisa Randall|Lisa Randall]]<ref>Randall, Lisa. 2011. ''Knocking on Heaven’s Door: How Physics and Scientific Thinking Illuminate the Universe and the Modern World''. (Page 10)</ref>ら多くの著者によって否定されている。Mary Carmichael と Ben Radford は [[:en:the Center for Inquiry|the Center for Inquiry]] に書いた文章で、科学的根拠はないと指摘し「自明の理と[[魔術的思考]]をミックスし、ある種の隠された謎として提示する、時間をかけたトリック」と結論付け、基本的に新しいニューソートであるとした<ref>{{cite web|url=http://www.csicop.org/specialarticles/show/secrets_and_lies/|title=Secrets and Lies|publisher=Committee for Skeptical Inquiry|date=29 March 2007|accessdate=2018.02.13}}</ref>。

フレッド・アラン・ウオルフは、『ザ・シークレット』では科学的な発言が大量に削られ、単純な内容だけが残されたと語っている。彼自身は引き寄せの法則が物理学に則っているとは全く言っていないという<ref>カレン・ケリー著『ザ・シークレットの真実』144-145ページ</ref>。著書の中ではむしろ「量子力学は、人間の力の限界を指示しているようである。」「今のところ、我々が観察するものの大半は、その観察によってなんの影響も受けていない」<ref>カレン・ケリー著『ザ・シークレットの真実』157ページ</ref>と記している。

ジョン・ヘーゲリンの考えには、大多数の量子物理学者は反対しており、カリフォルニア大学のブルース・シュムンは、量子力学や量子宇宙学で宇宙の思考を確認できると考える物理学者や宇宙研究者を見つけることは難しく、「これは科学が取り組んでいないテーマであり、科学者は現時点では証明できないと考えている」と述べている<ref name=Lampman/>。量子力学によると、観察者が意図的に宇宙に影響を与えることはできない<ref name=Lampman/>。シュムンによると、ヘーゲリンの研究には主流の科学者が評価するものもあるが、偽科学的なものもあり、そうした研究は大多数から評価されていない<ref name=Lampman/>。

==反応・批判・批評==
本節では、科学概念の誤用の指摘、疑似科学という反応以外について述べる。

出版から1年半たった時点で、amazon.comのレビューは半分が星5、1/4は星1で、熱愛する読者と全くナンセンスだと考える読者に分かれている<ref name=Dunning/>。「オプラ・ウィンフリー・ショー」の[[オプラ・ウィンフリー]]は『ザ・シークレット』を支持しており、彼女が番組を通じて伝えようとしてきたメッセージと同じであると語った<ref>{{cite web|url=https://www.youtube.com/watch?v=-Zm3-exDWIg|title=Oprah Winfrey speaks about The Secret - Law of Attraction and how to use it!|first=|last=LearningTheSecret|date=9 May 2013|accessdate=11 January 2018|publisher=[[YouTube]]}}</ref>。バーンはのちに番組に招待された<ref>{{cite web|url=http://www.oprah.com/spirit/_75|title=Discovering The Secret|website=Oprah.com|accessdate=11 January 2018}}</ref>。エスター・ヒックスにインタビューし、バーンに利用され虐げられていたいう話を聞いたこと、『ザ・シークレット』の教えの指導者のイベントでの3人の参加者の死(この教師は過失致死で起訴され、無罪を主張している)などの出来事があり、ウィンフリーは『ザ・シークレット』運動から距離を取るようになり、2008年にはやや懐疑的なコメントを出している<ref name=Sanneh/>。

角川出版は、モデルの[[道端ジェシカ]]、女優の[[小雪]]、脳科学者の[[茂木健一郎]]、経済評論家の[[勝間和代]]などの数多くの著名人に人生の指南書として愛読されていると述べている<ref>{{cite web|title=ザ・シークレット TO TEEN ポール・ハリントン|url=https://www.kadokawa.co.jp/thesecret/teen/|publisher=KADOKAWA|accessdate=2018.02.15}}</ref>。

エリザベス・スコットはVerywellの批評で、長所と短所について次のように述べている。悪い状況でもできることがたくさんあることを思い出させてくれる。高価なものを手に入れるために、直接行動せずに引き寄せの法則を利用する方法について、かなりのページが割かれているが、多くの人は、外的なことや物質的な豊かさに焦点を当てることは、引き寄せの法則の精神的な知恵に反すると考えている。また、極度の貧困状態で生まれた人でも、現実はすべてその人が作っていると言えるのか、科学的に証明されていないがエピソードから観察される現象という点に注意を促している。とはいえ、『ザ・シークレット』の教えにはいくつもの支障があるが、ストレスを取り除く良い機会と、より良い生活のための雑な指針になりうると評した。<ref>{{cite web|url=https://www.verywell.com/the-secret-by-rhondy-byrne-book-review-3144495|last=Scott|first=Elizabeth|title=Book Review: The Secret by Rhonda Byrne|website=Verywell|accessdate=2018.02.13}}</ref>

Good Housekeeping の Valerie Frankel は、「秘密」を4週間実践し、いくつかの目標は達成され、いくつかは改善した。祝福を数えることは、人生の素晴らしい点を見直させてくれ、視覚化で自分の望みに注意を払いやすくなった。人は悪い考えに苦しむ必要はない。『ザ・シークレット』の極端で単純化が過ぎる格言を無視すれば(宇宙は車をプレゼントしてくれやしないだろう、忙しいのだ)、役に立つアドバイスは含まれている。しかし、目新しい内容はないと評した。<ref>http://www.goodhousekeeping.com/life/inspirational-stories/a12415/the-secret-1007/</ref>

Brian Dunning は、『富を引き寄せる科学的法則』の自己啓発のアイデアを「古代の知恵」として巧みに提示しており、大衆は古代の叡智に拠るものが好きなので、この設定は不思議ではないと述べている<ref name=Dunning/>。また、「犠牲者を責める」アイデアが、利己的な我々の自我には魅力的で、恥ずかしいことだが、この暗い喜びが『ザ・シークレット』の心理的な魅力になっていると指摘している<ref name=Dunning/>。ポジティブな態度をとることに何の問題もなく、ネガティブな態度より通常は良いものだが、ファンタジーと現実を区別するべきであり、思考が物理的な物ごとに具現化するというのは疑わしい思想であるという<ref name=Dunning/>。

バーンのメッセージはナルシスティックであり、自己に焦点を当て、他人を助けることを軽んじ、結果を得るための努力を無視しているという批判がある<ref name=Lampman/>。

{{仮リンク|バーバラ・エーレンライク|en|Barbara Ehrenreich}}は『ポジティブ病の国、アメリカ』(''Bright-sided'' 、2009)で、悪夢のような逆境に個人が打ち勝つ場合があるからといって心で思っただけで物質を圧倒するわけではなく、『ザ・シークレット』のような自己啓発本は、資本主義の悲惨な側面のごまかしになり、政治における自己満足と現実での失敗を促進すると語った{{sfn|エーレンライク|2010|pp=248-249}}<ref name=Sanneh/><ref>{{cite book|last=Ehrenreich|first= Barbara|title=Bright-sided: how the relentless promotion of positive thinking has undermined America|url=https://books.google.com/books?id=wxJlvB7bCO4C|accessdate=4 April 2010|year=2009|publisher=[[Metropolitan Books]] |location= New York|isbn= 978-0-8050-8749-9 |page= 235}}</ref><ref>{{cite web| title=Author Barbara Ehrenreich on 'Bright-Sided: How the Relentless Promotion of Positive Thinking Has Undermined America' | date=13 October 2009 |publisher=[[Democracy Now!]]|url=http://www.democracynow.org/2009/10/13/author_barbara_ehrenreich_on_bright_sided|accessdate=29 October 2009}}</ref> 。困難な状況を無視し、現実がすべて自分の思考から生まれたと思い込めば、2006年の[[津波]]襲来の際にバーンが「津波などの災害に見舞われるのは『その災害と周波数を同じくする』人だ」とコメントしたような独善に、知らずに陥ってしまうと注意を促している{{sfn|エーレンライク|2010|pp=248-249}}。

ダグラス・E・コーワンは、悪い考えを持っているからひどい目に合うという論理で被害者を非難することを批判し、「この理屈に従うなら、誘拐された人やレイプされた人が、なにを言われることになるか想像してください」と語っている<ref name=Lampman/>。バーンの本で長らく引用されてきた引き寄せの法則の専門家 Bob Proctor は、ABCニュースでの「[[ダルフール紛争]]で餓死した子供たちは、その飢餓を自分自身で引き寄せましたか?」という質問に、「おそらく国のせいだと思う」と答えた<ref name=Blue>{{cite web|last1= Blue|first1=Jimmy|last2=Simons|title=Yes, The Secret DOES blame the victim|url=http://terribletruth-beautifullie.blogspot.jp/2009/06/yes-secret-does-blame-victim.html|publisher=Terrible Truth, Beautiful Lie|date=2008.06.30|accessdate=2018.02.14}}</ref>。しかし、彼らが主張する法則とこの答えは矛盾している<ref name=Blue/>。

表象文化研究者の加藤有希子は、「この洋服に何もこぼしたくない」「遅れたくない」など例示される悩みは浅薄なものばかりで、読者層にとって実感のある悩みはこの程度の軽さであり、多くの現代人に根本的に不幸に対する想像力が欠如していることを示していると述べている{{sfn|加藤|2015|pp=150-151}}。

エーレクラインは、バーンの一見無邪気な信仰に隠された、ネガティブな思考を監視するようにという要求を警戒している<ref name=Sanneh/>。ポジティブであらねばならないという思いが義務感に近いものになっており、[[積極思考]]がある意味では、[[カルヴァン主義]]のような前時代的な厳しい精神修養になっているという{{sfn|加藤|2015|p=146}}{{sfn|エーレンライク|2010|pp=248-249}}。

宗教面では、「引き寄せの法則」の現世での願いの実現、人間の力を巨大とみなす発想と、キリスト教における神と来世を重視する発想の違いが指摘されている。宗教指導者たちは、『ザ・シークレット』の倫理面での問題を批判している<ref name=Dunning/>。ザ・シークレットの批判書『ザ・シークレットの真実』には「神は私利私欲に応えてくれる万能の[[サンタクロース]]ではない」と述べる牧師オリヴァー・トーマスの言葉が引用されている<ref>カレン・ケリー著『ザ・シークレットの真実』184ページ</ref>。キリスト教徒からは、人間を神に成り変わらせ、罪を無視するよう仕向けているという批判もある<ref name=Lampman/>。

いくつかのニューソートの宗派は、「引き寄せの法則」で物質的に豊かになろうとするバーンの考えに反対している<ref name=Lampman/>。ニューソート系の{{仮リンク|ユニティ (新宗教)|en|Unity Church}}の歴史・神学研究者のトーマス・シェパードは、「引き寄せの法則」は神に近づくための精神的成長のためにあり、高級車の[[キャデラック]]を手にれたり個人的な力を得るためのものではないと述べている<ref name=Lampman/>。

このほか、『ザ・シークレットの真実』では、「引き寄せの法則」に結び付けられる過去の著名人の事例を挙げ、彼らの生涯や成功を収めるまでの実践との間に大きな差異があることを指摘している。

== パロディ==
オーストラリアのコメディ番組[[:en:The Chaser's War on Everything|The Chaser's War on Everything]]、[[ザ・シンプソンズ]]、[[ボストン・リーガル]]、[[サタデー・ナイト・ライブ]]でパロディのネタにされている。<ref name="chasers_tv">{{cite episode|title= Nut Job of the Week|url= http://www.abc.net.au/tv/chaser/war/|series= The Chaser's War on Everything|serieslink= The Chaser's War on Everything|network= Australian Broadcasting Corporation|location= Sydney, Australia|airdate= 2007-05-16}}[http://www.abc.net.au/tv/chaser/war/ Official site]</ref> <ref>{{cite web|url=http://www.imdb.com/title/tt0846789/movieconnections/?tab=mc&ref_=tt_trv_cnn|title=The Secret Connections|website=Imdb}}</ref><ref>{{cite web|url=https://books.google.ca/books?id=ul0kFIxtMfkC&pg=PT350&lpg=PT350&dq=the+secret+saturday+night+live+byrnes&source=bl&ots=0-_zszGfW9&sig=Vf9GLCbA_CGr2wzPvaM00YDusv4&hl=en&sa=X&ved=0ahUKEwiy_sfgt53ZAhVQ9mMKHfK_Cc0Q6AEISzAJ#v=onepage&q=the%20secret%20saturday%20night%20live%20byrnes&f=false|title=Nelson's Illustrated Guide to Religions}}</ref>

==紛争==
オーストラリアの作家、ヴァネッサ・J・ボネットは、バーンが自分の著作を盗んでおり、それは100件に及ぶと主張している。<ref name="aca_secret_stoush">{{cite video
| people = Ben Fordham (News Caster), Vanessa J. Bonnette (interviewee)
| date = 2007-05-14
| title = The Secret Stoush
| medium = Television production
| publisher = [[A Current Affair]]
| location = Sydney, Australia
| accessdate = 2007-06-12
| url = http://ninemsn.video.msn.com/v/en-au/v.htm?g=951FE3CE-D601-44BB-8508-705FA9669A08&f=&fg=copy
}} — requires Windows platform.</ref><ref name="web_Bonnette">{{cite web
| last =Vanessa J.
| first = Bonnette
| title = Secret Scandal
| url = http://www.shekinahtherapy.com.au/13.html
| accessdate = 2007-06-11
| quote = I have reason to believe that Byrne has infringed copyright of my work to the order of 100 (plus) citations that constitute as plagiarism according to [[Australian Copyright Council]]...
}}</ref><ref name="herald_sun_robinson" /><ref name="herald_sun_robinson">{{cite news
|last=Robinson
|first=Russell
|title=Self-help gurus take plagiarism battle to court
|publisher=Herald Sun
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|deadurl=yes
|archiveurl=https://web.archive.org/web/20090705224817/http://www.news.com.au/dailytelegraph/story/0,22049,21824989-5005941,00.html?from=public_rss
|archivedate=July 5, 2009
}}</ref>

2007年にオーストラリアのニュース番組 [[:en: A Current Affair|A Current Affair]] は、the Australian Securities Investment Commission (ASIC)の調査に基づき、「秘密の教師」の一人で、郵便で送られてくる小切手束の視覚化について語った「投資の専門家」David Schirmer の詐欺的行為を番組にした<ref name="aca_secret_con">{{cite video
| people = Ben Fordham (News Caster), David Schirmer (subject)
| date = 2007-06-01
| title = The Secret Con
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| location = Sydney, Australia
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| url = https://www.youtube.com/watch?v=8roWvmwuu7w&mode=related&search=
}}</ref><ref name="aca_secret_exposed">{{cite video
| people = Ben Fordham (Newscaster), David Schirmer (subject)
| date = 2007-05-28
| title = The Secret Exposed
| medium = Television production
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| location = Sydney, Australia
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| url = http://ninemsn.video.msn.com/v/en-au/v.htm?g=4B5F19F9-C20A-4A9C-869B-CC91304BB3F7&f=&fg=copy
}} — requires Windows platform.</ref>。LifeSuccess Productions, L.L.C は、 David Schirmer とその妻、いくつかの企業を「誤解を招く、または詐欺的な行為」をしていると見做した<ref>{{cite web|url=http://esearch.fedcourt.gov.au/Esearch?p=show&data_type=file&data_key=NSD173/2008&search_type=matter_search |title=LifeSuccess Productions, L.L.C. v Excellence in Marketing Pty Ltd ACN 087 507 695 & Ors |publisher=Esearch.fedcourt.gov.au |date= |accessdate=2012-12-11}}</ref>。

[[オーストラリアン]]は、『ザ・シークレット』の映画監督 Drew Heriot とインターネットコンサルタント Dan Hollings がバーンと法的に争っていることを伝えた<ref>{{cite news |url=http://www.theaustralian.com.au/news/features/the-secret-of-rhondas-success/story-e6frg8h6-1111117271174 |title=The secret of Rhonda's success |newspaper=The Australian |date=2012-09-28 |accessdate=2012-12-11}}</ref>。

自己啓発・スピリチュアル作家で「引き寄せの法則」のワークショップを行う{{仮リンク|エスター・ヒックス|en|Esther Hicks}}が映画には参加していたが、バーンと金銭的に揉めて切り離されたため、DVDにはヒックスが非物理的な異次元の存在・アブラハムのと交信して伝えられたという言葉、彼女をフィーチャーした映像は含まれておらず、書籍版にもヒックスは取り上げられていない<ref name=Sanneh/><ref name="australian">{{cite web | url=http://www.theaustralian.news.com.au/story/0,25197,24223394-5012694,00.html | title=The secret of Rhonda's success | first=Richard | last=Guilliatt | newspaper=The Australian | date=August 23, 2008 | accessdate=2009-04-05 }}</ref>。


==DVD==
==DVD==
45行目: 215行目:
*ロンダ・バーン『ザ・シークレット』[[山川紘矢]]、山川亜希子、[[佐野美代子]]訳、角川書店、2007年 ISBN 978-4047915572
*ロンダ・バーン『ザ・シークレット』[[山川紘矢]]、山川亜希子、[[佐野美代子]]訳、角川書店、2007年 ISBN 978-4047915572
*ポール・ハリントン『ザ・シークレット to TEEN』山川紘矢、山川亜希子、佐野美代子訳、角川書店、2010年 ISBN 978-4047916302
*ポール・ハリントン『ザ・シークレット to TEEN』山川紘矢、山川亜希子、佐野美代子訳、角川書店、2010年 ISBN 978-4047916302
*カレン・ケリー『ザ・クレットの真実 偉人たちが富を築いた「本当の秘密」子訳、PHP研究所2007年 ISBN 978-4569696805
*『ザ・パワー』 山川紘矢、山川亜希子、佐美代子訳、角川書店2011年 ISBN 978-4047916432

==出典==
==出典==
<references />
<references />


==参考文献==
* {{Cite book|和書|author=加藤有希子 |title=カラーセラピーと高度消費社会の信仰 ニューエイジ、スピリチュアル、自己啓発とは何か?|publisher=[[サンガ (出版社)|サンガ]] |year=2015 |isbn=978-4865640281 |ref={{harvid|加藤|2015}}}}
*{{Cite book|和書|ref={{SfnRef|エーレンライク|2010}} |author=バーバラ・エーレンライク |title=ポジティブ病の国、アメリカ|publisher=[[河出書房新社]]|date=2010}}
*カレン・ケリー『ザ・シークレットの真実 偉人たちが富を築いた「本当の秘密」』早野依子訳、PHP研究所、2007年 ISBN 978-4569696805

==関連項目==
*[[ニューソート]]
*[[積極思考]]
*[[類感呪術]]
* [[呪術的思考]]
==外部リンク==
==外部リンク==
*[http://www.kadokawa.co.jp/thesecret/ 日本語版公式サイト(角川書店)]
*[http://www.kadokawa.co.jp/thesecret/ 日本語版公式サイト(角川書店)]
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[[Category:アメリカ合衆国の書籍]]
[[Category:アメリカ合衆国の書籍]]
[[Category:2006年の書籍]]
[[Category:2006年の書籍]]
[[Category:2006年の映画]]

2018年2月15日 (木) 13:55時点における版

ザ・シークレット
The Secret
監督 Drew Heriot
製作 ロンダ・バーン (エグゼクティブ・ディレクター), ポール・ハリントン (プロデューサー)
配給 Prime Time Productions, Dragon 8 PR (Original Banned Edition)
公開
  • 2006年3月26日 (2006-03-26)
上映時間 87 分
言語 英語
製作費 35万ドル[1]
興行収入 656万ドル[2]
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ザ・シークレット
The Secret
著者 ロンダ・バーン
訳者 邦訳:山川紘矢、山川亜希子、佐野美代子
発行日 アメリカ合衆国の旗 2006年11月26日
日本の旗 2007年11月20日
発行元 アメリカ合衆国の旗 Atria Books
Beyond Words Publishing
日本の旗 角川書店
ジャンル 自己啓発書、スピリチュアル、オカルト量子神秘主義英語版
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語スペイン語
形態 ハードカバー
ページ数 318
公式サイト 日本語版公式サイト(角川書店)
コード ISBN 978-4047915572
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ザ・シークレット』(The Secret)は、2006年のインタビューを集めた映画、または、これを下敷きに映画の後に出版された、ロンダ・バーンによる2006年の自己啓発書である。ポジティブな姿勢を保ち「思考そのもの」を変えることで現実を変えることを目指す疑似科学的な積極思考(ポジティブシンキング)、「引き寄せの法則」を主題とする[3][4]。書籍は50か国で訳され、2000万部以上売り上げている[5]。19世紀半ばにアメリカ合衆国で生まれたキリスト教の異端思想であるニューソートに始まり、ニューエイジで広まった、思考が現実になる・精神が物質化するという積極思考が再び注目を集めるきっかけになった[6]

「引き寄せの法則」は科学的に証明されておらず、量子物理学などの科学概念が援用されているが、科学者は疑似科学であると述べている[7][8]。歴史認識の誤り、独断的な見解、共感や想像力の欠如、物質的豊かさに過度にフォーカスしていること、社会や政治など現実への関心を失わせるような論理・倫理、極度に単純化された教えなどの指摘・批判がある[8][9]パロディーのネタとしても頻繁に取り上げられている。

概要

2006年3月に、インタビューを集めた低予算のインスピレーション映画『The Secret』が公開された[10]。動機付け講演家(モチベ―ショナルスピーカー)、動機付けの教師、「引き寄せの法則」業界の人間のが中心で、他に風水、自己啓発、コーチング、心理学、形而上学、神学、哲学、金融、量子物理学、医学の専門家がインタビューを受けていた。この中にはウェブサイトで映画を宣伝している者もいた。短いインタビューの中で引き寄せの法則に触れていない人もおり、視聴者は彼らが引き寄せの法則を支持しているだろうと推測して補う。歴史に隠されたキリストの謎を扱ったミステリ映画「ダ・ヴィンチ・コード」と同時期に公開され、謎として巧みにパッケージされており[10]、インタビューを受けた人々は映画で「秘密の教師」と呼ばれていた。羊皮紙、筆記体、封蝋などで「ダ・ヴィンチ・コード」に似たイメージの美しいパッケージが作られていた[10]

続いて2006年の後半に、ロンダ・バーンによって同名の自己啓発書が出版された。書籍では映画のインタビューが引用されている。書籍の日本語訳は2007年に角川書店から刊行され、「(脳科学者の)茂木健一郎氏 絶賛!」という帯がつけられていた。例として挙げられる悩みはかなり軽いものが多く、比較的高学歴で裕福な層に人気がある[9]

トーク番組「オプラ・ウィンフリー・ショー」での紹介を一因に、発売半年でDVD200万枚、書籍400万冊が売れ、2009年で映画と書籍は3億円売り上げた[11][12]。宣伝にはティーザー広告バイラル・マーケティング、秘密を部分的にほのめかすテクニックが使われた。『ザ・シークレット』はある種のブランドになり、教えを布教する教師には、アメリカ全土でセミナーや教室を開いている人もいる[13]

思考が現実になるという積極思考「引き寄せの法則」を主張している。18世紀後半に始まったキリスト教異端的潮流ニューソートの書籍をアイデアの歴史的な拠り所として引用しており[14][15]、本質的にはニューソートやニューソート系・キリスト教系新宗教ユニティ (新宗教)英語版が説く法則の宣伝と評されている[15]

本書でいう「秘密」、「引き寄せの法則」の知識は、葬られ、切望され、抑圧されてきたとされている。ユダヤ教キリスト教イスラム教仏教ヒンドゥー教バビロニア人やエジプト文明錬金術でも伝えられていると主張し、それを実践していたとする先人たちの名前を挙げている。ブッダプラトンアリストテレスシェイクスピアベートーベンガリレオ・ガリレイマーティン・ルーサー・キング・ジュニアカール・ジョン・ニューマンヘンリー・フォードラルフ・ウォルド・エマーソントーマス・エジソンアルバート・アインシュタインウィンストン・チャーチルアンドリュー・カーネギージョセフ・キャンベルアレクサンダー・グラハム・ベルらが「秘密の教師」として挙げられているが、引き寄せの法則が考案される前の人物も多く、知っていた証拠はない[11]

『ザ・シークレット』のサイトでは、ヘルメス・トリスメギストス(秘密の教師とされる)によって書かれたという伝説のエメラルド・タブレットが引用され、最も重要な歴史文書であるとされる[16]。映画の冒頭では、ニューソート思想家のエリザベス・タウン英語版テンプル騎士団、錬金術師のサンジェルマン伯爵との関連が示され、現代のビジネエリートのような人間によって抑圧されてきたことがアピールされる[17][18]。「秘密」はエメラド・タブレットによって始まり[19]、「秘密」の教えを守る薔薇十字団に伝えられ、ヴィクトル・ユゴーベートーベンは、アイザック・ニュートンのエメラルドタブレット翻訳作業を助けるための会に属していたと想定されている[15][16]。しかし、この主張の根拠はない。アスペンタイムズの Carolyn Sackariason は、バーンが「秘密」をシェアする意図についてコメントした際に、薔薇十字団を「秘密」の継承者であると特定して語っていた[20]。エメラルド・タブレットと薔薇十字団は、映画では言葉では語られていないが、重要なポイントで「薔薇十字団」という文字のイメージが使われている[15]

最初の映画と書籍のほかに、複数の関連書籍が出版されている[13]。続編の『ザ・パワー』ではバーンのスタンスはやや変わり、科学者や非キリスト教徒より、キリスト教徒と識別されている人々が取り上げられ、キリスト教神秘主義に傾斜している。また、インタビューを受けないと宣言しており、以前より読者との間に距離を置いている[10]

教え

似たもの同士が引き合うという「引き寄せの法則」を説いており、近代神智学を創始したオカルティストのヘレナ・P・ブラヴァツキーや積極思考を説いた牧師ノーマン・ヴィンセント・ピールらによって普及した疑似科学的概念を再導入したもので、特定の傾向の思考を持つことが、現実に影響を及ぼすことを示唆している。バーンは引き寄せの法則を、全ての宗教と合致する教えであるとしている[10]。ニューソート運動の精神的な方向と異なり、物質的に豊かになることに焦点を当てパッケージされている。

『ザ・シークレット』によると、人間の思考は磁気であり、何らかの波動を発しており、宇宙がそれを何らかの方法で解読し、何らかの方法で願いを叶えるとされる[10][8]。思考の「周波数」に対応する事象が、何らかの方法で引き寄せられるという。欲しいものをイメージし、なおかつほとんどそれのみを考え続けることができれば、その欲しいものを手に入れることができる。例えば富についてのみ考えることで富を得、豊かさのみ考えることで豊かさを引き寄せることができるとする。従来の積極思考・引き寄せの法則をさらに推し進めたもので、宝くじが当たるように、終末期の病気から快復するように十分に思考すれば、それがそのまま実現するとされている[11]。バーンは、欲望の実現のために感謝とイメージの視覚化が重要であるという主張を、信憑性の低い事例と共に説いている[10]。己の思考を知り、それを変えるための助けとして瞑想が勧められている。後の章では、宇宙の法則を使って、成功、人間関係、健康を改善する方法が説明されている。バーンはオスカー・ワイルドを引用して「わたしは慈悲の感情に屈したくない。わたしは利用するために、楽しむために、感情を支配したい」と語り、自分の感情を支配することの重要性が説かれている[10]

『サ・シークレット』によれば、思考が全ての現実の原因である。この考えによれば、肥満の原因は過食や遺伝子の特徴や体内器官の失調によるものではない。バーンによれば、肥満の原因と考えられているものは、「太った思考」を隠すための言い訳にすぎず、医学も治療も誤りである[21]。事故や病気はその人自身の欠点である[8]。「お金がない」という悩みに対し、バーンは、お金がない「唯一」の理由はその人自身の後ろ向きな思考であると答えており、経済状況や社会制度などの内面以外の要因は全く認められていない[9]

バーンは実践方法を、尋ね、信じ、受け取るという3段階に分けており[22]、これは新約聖書マタイによる福音書の「また、祈りの時、信じて求めるものは、みな与えられるであろう」という言葉に基づいている。聖書は、祈りではなく、思考の視覚化という個人的プロセスの助けとして利用されている[13]

背景・文脈

バーンは、2004年につらい体験をした時に、娘が19世紀のニューソート思想家ウォレス・ワトルズの『富を引き寄せる科学的法則英語版』を贈ってくれ目覚めたと語っており、この本の影響を受けている[13][23][24]。ただし、ワトルズが持っていた政治性や社会性は、バーンには見られない[10]。映画では『富を引き寄せる科学的法則』やウィリアム・ウォーカー・アトキンソン英語版 (1862 – 1932、別名ヨギ・ラマチャラカ)などの先行するニューソートの書籍から引用されている[25]

宗教学者のダグラス・E・コーワン英語版は、この本は1993年に出版されたジェームズ・レッドフィールド英語版のスピリチュアル小説『聖なる予言英語版』を10年たってパッケージし直したもので、古いニューエイジの再来だと述べている[13]

宗教と近代文化を研究するショーン・マクラウドは、本書は19世紀中ごろ以降のアメリカの宗教の伝統に連なっており、ニューソートやノーマン・ヴィンセント・ピール『積極思考の力』(1952年)と比較し得るもので、自分の思考によって自分の現実を創造するという「積極思考」というアイデアを共有していると指摘している[13]

学者・作家のジョン・G・スタックハウス・ジュニア英語版は、ニューソートとポピュラー宗教の伝統の系譜に『ザ・シークレット』を置いて歴史的な文脈を示し、「新しい考えではなく、秘密ではない」と結論付けた[26]

科学概念の誤用

「明かされた秘密」という章には量子物理学者フレッド・アラン・ウオルフの発言が引用されており、それによると「マインド(創造的思考力)なくしては宇宙は存在し得ないことが、量子力学によって発見」されているという。他に量子物理学者ジョン・ヘーゲリン英語版(ジョン・ハガリン)の名と「宇宙は本質的に思考でできている」などの言葉も挙げられており、量子力学が説明原理として援用されていることが伺える。(なお、ジョン・ヘーゲリンは、瞑想による能力開発と地上天国の実現を目指す超越瞑想運動のリーダーである)

バーンの科学的主張は、主に量子物理学に関するものであるが、ニューヨークタイムズのChristopher Chabris と Daniel Simons[27]、ハーバード大学のLisa Randall[28]ら多くの著者によって否定されている。Mary Carmichael と Ben Radford は the Center for Inquiry に書いた文章で、科学的根拠はないと指摘し「自明の理と魔術的思考をミックスし、ある種の隠された謎として提示する、時間をかけたトリック」と結論付け、基本的に新しいニューソートであるとした[29]

フレッド・アラン・ウオルフは、『ザ・シークレット』では科学的な発言が大量に削られ、単純な内容だけが残されたと語っている。彼自身は引き寄せの法則が物理学に則っているとは全く言っていないという[30]。著書の中ではむしろ「量子力学は、人間の力の限界を指示しているようである。」「今のところ、我々が観察するものの大半は、その観察によってなんの影響も受けていない」[31]と記している。

ジョン・ヘーゲリンの考えには、大多数の量子物理学者は反対しており、カリフォルニア大学のブルース・シュムンは、量子力学や量子宇宙学で宇宙の思考を確認できると考える物理学者や宇宙研究者を見つけることは難しく、「これは科学が取り組んでいないテーマであり、科学者は現時点では証明できないと考えている」と述べている[13]。量子力学によると、観察者が意図的に宇宙に影響を与えることはできない[13]。シュムンによると、ヘーゲリンの研究には主流の科学者が評価するものもあるが、偽科学的なものもあり、そうした研究は大多数から評価されていない[13]

反応・批判・批評

本節では、科学概念の誤用の指摘、疑似科学という反応以外について述べる。

出版から1年半たった時点で、amazon.comのレビューは半分が星5、1/4は星1で、熱愛する読者と全くナンセンスだと考える読者に分かれている[11]。「オプラ・ウィンフリー・ショー」のオプラ・ウィンフリーは『ザ・シークレット』を支持しており、彼女が番組を通じて伝えようとしてきたメッセージと同じであると語った[32]。バーンはのちに番組に招待された[33]。エスター・ヒックスにインタビューし、バーンに利用され虐げられていたいう話を聞いたこと、『ザ・シークレット』の教えの指導者のイベントでの3人の参加者の死(この教師は過失致死で起訴され、無罪を主張している)などの出来事があり、ウィンフリーは『ザ・シークレット』運動から距離を取るようになり、2008年にはやや懐疑的なコメントを出している[10]

角川出版は、モデルの道端ジェシカ、女優の小雪、脳科学者の茂木健一郎、経済評論家の勝間和代などの数多くの著名人に人生の指南書として愛読されていると述べている[34]

エリザベス・スコットはVerywellの批評で、長所と短所について次のように述べている。悪い状況でもできることがたくさんあることを思い出させてくれる。高価なものを手に入れるために、直接行動せずに引き寄せの法則を利用する方法について、かなりのページが割かれているが、多くの人は、外的なことや物質的な豊かさに焦点を当てることは、引き寄せの法則の精神的な知恵に反すると考えている。また、極度の貧困状態で生まれた人でも、現実はすべてその人が作っていると言えるのか、科学的に証明されていないがエピソードから観察される現象という点に注意を促している。とはいえ、『ザ・シークレット』の教えにはいくつもの支障があるが、ストレスを取り除く良い機会と、より良い生活のための雑な指針になりうると評した。[35]

Good Housekeeping の Valerie Frankel は、「秘密」を4週間実践し、いくつかの目標は達成され、いくつかは改善した。祝福を数えることは、人生の素晴らしい点を見直させてくれ、視覚化で自分の望みに注意を払いやすくなった。人は悪い考えに苦しむ必要はない。『ザ・シークレット』の極端で単純化が過ぎる格言を無視すれば(宇宙は車をプレゼントしてくれやしないだろう、忙しいのだ)、役に立つアドバイスは含まれている。しかし、目新しい内容はないと評した。[36]

Brian Dunning は、『富を引き寄せる科学的法則』の自己啓発のアイデアを「古代の知恵」として巧みに提示しており、大衆は古代の叡智に拠るものが好きなので、この設定は不思議ではないと述べている[11]。また、「犠牲者を責める」アイデアが、利己的な我々の自我には魅力的で、恥ずかしいことだが、この暗い喜びが『ザ・シークレット』の心理的な魅力になっていると指摘している[11]。ポジティブな態度をとることに何の問題もなく、ネガティブな態度より通常は良いものだが、ファンタジーと現実を区別するべきであり、思考が物理的な物ごとに具現化するというのは疑わしい思想であるという[11]

バーンのメッセージはナルシスティックであり、自己に焦点を当て、他人を助けることを軽んじ、結果を得るための努力を無視しているという批判がある[13]

バーバラ・エーレンライクは『ポジティブ病の国、アメリカ』(Bright-sided 、2009)で、悪夢のような逆境に個人が打ち勝つ場合があるからといって心で思っただけで物質を圧倒するわけではなく、『ザ・シークレット』のような自己啓発本は、資本主義の悲惨な側面のごまかしになり、政治における自己満足と現実での失敗を促進すると語った[37][10][38][39] 。困難な状況を無視し、現実がすべて自分の思考から生まれたと思い込めば、2006年の津波襲来の際にバーンが「津波などの災害に見舞われるのは『その災害と周波数を同じくする』人だ」とコメントしたような独善に、知らずに陥ってしまうと注意を促している[37]

ダグラス・E・コーワンは、悪い考えを持っているからひどい目に合うという論理で被害者を非難することを批判し、「この理屈に従うなら、誘拐された人やレイプされた人が、なにを言われることになるか想像してください」と語っている[13]。バーンの本で長らく引用されてきた引き寄せの法則の専門家 Bob Proctor は、ABCニュースでの「ダルフール紛争で餓死した子供たちは、その飢餓を自分自身で引き寄せましたか?」という質問に、「おそらく国のせいだと思う」と答えた[21]。しかし、彼らが主張する法則とこの答えは矛盾している[21]

表象文化研究者の加藤有希子は、「この洋服に何もこぼしたくない」「遅れたくない」など例示される悩みは浅薄なものばかりで、読者層にとって実感のある悩みはこの程度の軽さであり、多くの現代人に根本的に不幸に対する想像力が欠如していることを示していると述べている[9]

エーレクラインは、バーンの一見無邪気な信仰に隠された、ネガティブな思考を監視するようにという要求を警戒している[10]。ポジティブであらねばならないという思いが義務感に近いものになっており、積極思考がある意味では、カルヴァン主義のような前時代的な厳しい精神修養になっているという[40][37]

宗教面では、「引き寄せの法則」の現世での願いの実現、人間の力を巨大とみなす発想と、キリスト教における神と来世を重視する発想の違いが指摘されている。宗教指導者たちは、『ザ・シークレット』の倫理面での問題を批判している[11]。ザ・シークレットの批判書『ザ・シークレットの真実』には「神は私利私欲に応えてくれる万能のサンタクロースではない」と述べる牧師オリヴァー・トーマスの言葉が引用されている[41]。キリスト教徒からは、人間を神に成り変わらせ、罪を無視するよう仕向けているという批判もある[13]

いくつかのニューソートの宗派は、「引き寄せの法則」で物質的に豊かになろうとするバーンの考えに反対している[13]。ニューソート系のユニティ (新宗教)英語版の歴史・神学研究者のトーマス・シェパードは、「引き寄せの法則」は神に近づくための精神的成長のためにあり、高級車のキャデラックを手にれたり個人的な力を得るためのものではないと述べている[13]

このほか、『ザ・シークレットの真実』では、「引き寄せの法則」に結び付けられる過去の著名人の事例を挙げ、彼らの生涯や成功を収めるまでの実践との間に大きな差異があることを指摘している。

パロディ

オーストラリアのコメディ番組The Chaser's War on Everythingザ・シンプソンズボストン・リーガルサタデー・ナイト・ライブでパロディのネタにされている。[42] [43][44]

紛争

オーストラリアの作家、ヴァネッサ・J・ボネットは、バーンが自分の著作を盗んでおり、それは100件に及ぶと主張している。[45][46][47][47]

2007年にオーストラリアのニュース番組 A Current Affair は、the Australian Securities Investment Commission (ASIC)の調査に基づき、「秘密の教師」の一人で、郵便で送られてくる小切手束の視覚化について語った「投資の専門家」David Schirmer の詐欺的行為を番組にした[48][49]。LifeSuccess Productions, L.L.C は、 David Schirmer とその妻、いくつかの企業を「誤解を招く、または詐欺的な行為」をしていると見做した[50]

オーストラリアンは、『ザ・シークレット』の映画監督 Drew Heriot とインターネットコンサルタント Dan Hollings がバーンと法的に争っていることを伝えた[51]

自己啓発・スピリチュアル作家で「引き寄せの法則」のワークショップを行うエスター・ヒックス英語版が映画には参加していたが、バーンと金銭的に揉めて切り離されたため、DVDにはヒックスが非物理的な異次元の存在・アブラハムのと交信して伝えられたという言葉、彼女をフィーチャーした映像は含まれておらず、書籍版にもヒックスは取り上げられていない[10][52]

DVD

  • THE SECRET アウルズ・エージェンシー販売、2008年

関連書籍

  • ロンダ・バーン『ザ・シークレット』山川紘矢、山川亜希子、佐野美代子訳、角川書店、2007年 ISBN 978-4047915572
  • ポール・ハリントン『ザ・シークレット to TEEN』山川紘矢、山川亜希子、佐野美代子訳、角川書店、2010年 ISBN 978-4047916302
  • ロンダ・バーン『ザ・パワー』 山川紘矢、山川亜希子、佐野美代子訳、角川書店、2011年 ISBN 978-4047916432

出典

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参考文献

  • 加藤有希子『カラーセラピーと高度消費社会の信仰 ニューエイジ、スピリチュアル、自己啓発とは何か?』サンガ、2015年。ISBN 978-4865640281 
  • バーバラ・エーレンライク『ポジティブ病の国、アメリカ』河出書房新社、2010年。 
  • カレン・ケリー『ザ・シークレットの真実 偉人たちが富を築いた「本当の秘密」』早野依子訳、PHP研究所、2007年 ISBN 978-4569696805

関連項目

外部リンク