水尾順一

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水尾 順一(みずお じゅんいち、1947年8月12日[1] - )は、日本の経営学者駿河台大学名誉教授。専攻はCSR、経営倫理、コーポレート・ガバナンスブランド論など。

略歴[編集]

香川県善通寺市出身[1]。1970年に神戸商科大学(現・兵庫県立大学)商経学部卒業後、同年4月に資生堂に入社し、同社でコーポレート・デザイン室課長、経営企画部課長、ビューティーサイエンス研究所課長、企業倫理委員会事務局リーダ等を歴任した。

1999年3月に同社を退職し(資生堂社友となる)、駿河台大学経済学部助教授に就任する。2000年に同大学教授に昇格後、2001年から大学院経済学研究科(現・大学院総合政策研究科)教授を務める。2002年~2008年は全学企画広報委員長、2006年~2010年に駿河台大学経済研究所長を兼任した。2013年4月から駿河台大学経済経営学部教授(学部の改組)。

この間に、1997年~2001年に学習院大学非常勤講師、1998年~2011年専修大学兼任講師、2004年3月専修大学より博士(経営学)を取得。2001年~2006年立教大学大学院兼任講師、2006年~2008年東京工業大学大学院特任教授、2008年~2012年同大学院兼任講師、2008年~2009年早稲田大学企業倫理研究所客員研究員、2010年ロンドン大学客員研究員、2011年(一社)経営倫理実践研究センター上席研究員(現・首席研究員)、2013年~2017年東洋大学兼任講師。

2018年3月駿河台大学を退官、2018年4月MIZUO コンプライアンス&ガバナンス研究所代表(現任)、2018年5月駿河台大学名誉教授の称号を授与。

企業との関わりでは、2004年から西武鉄道株式会社(現・株式会社西武ホールディングス)の企業倫理委員会社外委員(現任)。

2015年~2018年株式会社アデランス社外取締役。

2018年6月 株式会社ダイセル社外監査役(現任)。

2019年10月 一般社団法人 日本コンプライアンス&ガバナンス研究所<JACGI:Japan Compliance & Governance Institute>代表理事/会長(現任)。

2022年6月 株式会社リヴァンプ社外取締役(監査等委員)(現任)。

人物[編集]

資生堂在職時にブランド研究の他、環境問題、社員の働き方支援、社会貢献活動などCSRの仕事を経験。1997年以降に日本企業として初の企業倫理の立ち上げに関与、その責任者として浸透・定着活動を推進したとされる。

その後、マーケティングと経営倫理の理論と実務を融合させた「マーケティング倫理」を構築し、実務に基づく経験と、学際的理論構築の双方からの実践的指導を行っている。

大学ではCSR、コーポレート・ガバナンス、経営倫理論、マーケティング(ブランド)論などを専門領域とし、理論と実践を融合させた指導・研究で著名である。

2008年に経済産業省の「グローバル企業と経済協力に関する研究会」座長に就任し、日本でBOPビジネスの立ち上げに注力したことから、現在はBOPビジネス研究の先駆者ともいわれている。

近年は消費者庁の公益通報者保護法に関する研究会で委員・座長等をつとめ、精力的に取り組んでいる

研究活動[編集]

2004年に専修大学より博士(経営学)を取得した。元・日本経営倫理学会副会長(現常任理事)、これまでも元・日本経営品質学会副会長、元・日本マネジメント学会理事、元・日本営診断学会理事、元・企業社会責任フォーラム理事などを務めた。

諸活動[編集]

CSR、マーケティング倫理などの第一人者として、活動領域は広く、以下のように多方面にて活動している。

  • 中小企業診断士第3次試験委員(1994年,1996年~1998年)
  • 産能大学総合研究所企業倫理研究会委員(1998年~1999年)
  • 麗澤大学経済研究センター「企業倫理プロジェクト(ECS2000)委員」(1998年~2000 年)
  • 全日本能率連盟論文審査委員(1999年~現在)
  • オフィスオートメーション学会(現・情報経営学会)理事(2000年~2010年)
  • 財団法人アジア生産性本部国際プロジェクト「アジアのコーポレート・ガバナンス 研究調査」日本代表(2001年~2004年)
  • 戦略経営協会理事(2002年~2006年)
  • 経営情報学会理事(2003年~2004年)
  • 企業研究会参与(2004年~現在)
  • 神奈川県保険医協会治験審査委員・倫理審査委員(2004年~現在)
  • 埼玉県飯能市総合振興計画審議会委員(2005年)
  • CSRイニシアチブ委員会代表(2005年~現在)
  • 財団法人電力中央研究所「電力問題自由化研究会」委員(2006年)
  • 内閣府公益通報者保護法等研究会委員(2007年)
  • 日本生産性本部「次世代のための民間運動~ワーク・ライフ・バランス推進会議」 委員(2008年~2011年)
  • 経済産業省(2008年)「グローバル企業と経済協力に関する研究会」座長
  • 経済産業省「BOPビジネス政策研究会」委員兼ワーキンググループ座長(2009 年)
  • 原子力と社会に関するプラットフォーム委員(2010年~現在)
  • 東洋経済新報社「サスティナビリティ報告書審査委員」(2010年~現在)
  • 公益社団法人企業市民協議会(CBCC)プロジェクト選考委員会委員(2012年~現在)
  • 日本生産性本部「次世代のための民間運動~ワーク・ライフ・バランス推進会議~民間会議メンバー」(2012年~現在)
  • 消費者庁「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」委員(2015年4月~2017年3月)
  • 経済産業省「ボランティアを活用した共助社会の構築に向けた研究会」委員(2017年11月~2018年3月)
  • 消費者庁「内部通報制度に関する認証制度検討会」座長(2017年12月~2018年3月)

資格[編集]

  • 1979年4月:「中小企業診断士」(経済産業省認定)
  • 2000年4月:「マネジメント・コンサルタント」((社)全日本能率連盟 認定)
  • 2003年4月:「マスターマネジメント・コンサルタント」、「CMC[要曖昧さ回避](国際資格)」(同上)
  • 2009年7月:「余暇開発士」((財)日本レクリエーション協会認定)
  • 2009年9月:「アロマテラピー・アドバイザー」((社)日本アロマ環境協会認定)

賞罰[編集]

  • 1993年:中小企業診断協会会長賞
  • 1999年:日本経営診断学会賞(研究奨励賞)
  • 2001年:Ansoff Award(アンゾフ・アワード)特別文献賞受賞
  • 2021年:日本経営倫理学会学会賞(共著:研究奨励賞)

著書[編集]

単著[編集]

  • 『流通業・サービス業の市場予測・調査 』(同友館, 1996年)
  • 『化粧品のブランド史』(中央公論社, 1998年)
  • 『マーケティング倫理』(中央経済社, 2000年)
  • 『セルフ・ガバナンスの経営倫理』(千倉書房, 2003年)
  • 『CSRで経営力を高める』(東洋経済新報社, 2005年)
  • 『逆境経営7つの法則』(朝日新聞出版, 2009年)
  • 『マーケティング倫理が企業を救う』(生産性出版,2014年)
  • 『サスティナブル・カンパニー:「ずーっと」栄える会社の事業構想』(宣伝会議,2016年)
  • 他多数

共編著[編集]

  • 『経営計画と事業戦略の策定』(共著,企業研究会,1994年)
  • 『流通業デジタル情報ネットワーキング』(編著,産能大学出版部,1998年)
  • 『パワーイノベーション』(編著,新評論,1999年)
  • 『 創造する経営』(共著,日科技連,1999年)
  • 『 複雑系の経営学』(共著,税務経理協会,1999年)
  • 『倫理法令遵守マネジメント・システム』(共著,麗澤大学出版会,2000年)
  • 『環境経営』(共著,同友館, 2000年)
  • 『JAPANESE DISTRIBUTION STRATEGY』(共著,Thompson Learning UK, 2000年)
  • 『ITフロンティアの企業変革と産業マップ』(編著,同友館, 2001年)
  • 『サイバーマーケティング』(共著,中央経済社, 2001年)
  • 『 経営倫理』(共著,同文館, 2003年)
  • 『経営品質の理論』(編著,生産性出版, 2003年)
  • 『メセナ・マネジメント』(共著,ダイヤモンド社, 2003年)
  • 『ビジョナリー・コーポレートブランド』(編著,白桃書房, 2003年)
  • 『CSRマネジメント』(編著,生産性出版, 2004年)
  • 『コンサルティング・イノベーション』(共著,同友館, 2004年)
  • 『Impact of Corporate Governance on Productivity: Asian Experience』(編著,Asian Productivity Organization, 2004年)
  • 『CSRイニシアチブ~CSR経営理念・行動憲章・行動基準の推奨モデル(日英対訳版)』(編著,日本規格協会, 2005年)
  • 『経営学)』(共著,創成社, 2005年)
  • 『内部統制Q&A』(共著,日経BP社, 2006年)
  • 『よくわかる企業論』(共著,ミネルヴァ書房, 2006年)
  • 『トップマネジメントのための経営品質講座』(共著,生産性出版, 2006年)
  • 『やさしいCSRイニシアチブ』(編著,日本規格協会, 2007年)
  • 『CSRとコーポレート・ガバナンスがわかる事典』(編著,創成社, 2007年)
  • 『コンプライアンスと企業文化を基軸としたやわらかい内部統制』(編著,日本規格協会, 2007年)
  • 『現代社会における倫理・教育・コンプライアンス』(共著,税務経理協会, 2007年)
  • 『マーケティングを学ぶ』(共著,中央経済社, 2008年)
  • 『CSRハンドブック』(編著,PHP研究所2009年)
  • 『経営教育論』(共著,中央経済社, 2009年)
  • 『コーポレート・ガバナンスと企業倫理の国際比較』(編著,ミネルヴァ書房, 2010年)
  • 『現代社会学事典』(共著・弘文堂,2012年)
  • 『人にやさしい会社―安全・安心、絆の経営』(編著・白桃書房,2013年)
  • 『グローバル企業の経営倫理・CSR』(共著・白桃書房,2013年)
  • 『ビジネスに広がりを!知恵のわ』(共著・日経BPコンサルティング,2013年)
  • 『環境会議2013秋』(共著・宣伝会議,2013年)
  • 『三方よしに学ぶ 人に好かれる会社』(編著・サンライズ出版,2015年)
  • 『経営診断の新展開』(共著・同友館,2015年)
  • 『100万社のマーケティング』(共著・宣伝会議,2015年)
  • 『渋沢栄一に学ぶ、「論語と算盤」の経営』(編著・同友館,2016年)
  • 『二宮尊徳に学ぶ報徳の経営』(編著・同友館,2017年)
  • 『 CSR, Sustainability, and Leadership』(共著・Routledge,UK,2017年)
  • 『『石田梅岩に学ぶ「石門心学」の経営』(編著・同友館,2019年)
  • 『上杉鷹山とイノベーション経営』(編著・同友館,2020年)
  • 他多数

論文[編集]

  • 2010年9月「CSRの価値を内包したBOPビジネスの実践に関する一考察~組織の持続可能性の視点から~」(駿河台経済論集、第20巻第1号)
  • 2011年8月「グローバルCSRとCSV」(JBCCホールディングス株式会社『Link Vol.207,Summer2011)
  • 2012年3月「グローバルCSRの視点によるBOPビジネスと共益の創造~ガーナにおけるカカオ・サスティナビリティの要諦と展開~」」(駿河台経済論集、第21巻第2号)
  • 2012年9月「グローバルCSRの視点によるBOPビジネスと人間開発に関する一考察~ガーナにおけるシアバタービジネスの要諦と展開~」(駿河台大学経済論集,第22巻第1号)
  • 2012年10月「時代とともに歩む、経営倫理20年の軌跡と将来展望~経営倫理(企業倫理)、コンプライアンス、コーポレート・ガバナンスそしてグローバルCSRの視点から~」(経営倫理15周年記念特別記念号,経営倫理実践研究センター、第68号)
  • 2013年3月「サスティナブル・コーヒーによるBOPビジネスとCSV(共益の創造)に関する一考察~スターバックスとそのサプライチェーンにおけるCSR活動の事例に学ぶ~」(駿河台経済論集、第22巻第2号)
  • 2013年9月,Changes in Business Ethics during “Lost Two Decades” and Prospects for the Future in Japan : From a View Point of Business Ethics, Compliance, Corporate Governance, and Global CSR(駿河台経済論集、第23巻第1号)(英語論文)
  • 2014年1月「グローバルCSRを機軸としたCSVに関する一考察」(日本マネジメント学会『経営教育研究』Vol.17、NO.1)
  • 2014年2月 「失われた20年、日本における経営倫理の軌跡と将来展望 ~経営倫理(企業倫理)、コンプライアンス、コーポレート・ガバナンスそしてグロ-バルCSRの視点から~」日本経営倫理学会誌、第21号
  • 2015年9月,“A study of strategic CSR and BOP business practice From the perspective of organizational sustainability” (駿河台経済論集、第25巻第1号)(英語論文)
  • 2016年3月,“Global CSR centered on BOP business and CSV:A consideration of its types and development” (駿河台経済論集、第25巻第2号)(英語論文)
  • 2016年9月 「グロ-バル三方よしと企業のサスティナビリティに関する一考察」(駿河台経済論集、26巻1号) 2017年4月「「守り」から「攻め」へ 今、企業に求められる責任と課題とは」(PHP研究所『衆知』2017.5-6)
  • 2018年3月「日本における経営倫理の過去・現在・未来ーその制度的枠組みと、ECSRによる三方よし経営を考えるー」(駿河台大学経済論集、第27巻第2号)
  • 2020年2月「内部通報制度の将来展望」(商事法務『旬刊商事法務』2223号)
  • 2021年4月「古くて新しい風、ステークホルダー資本主義」(PHP研究所『衆知』2021.5-6)
  • 2022年4月「SDGsを成功に導く、守りと攻めのサステナビリティ・ガバナンス」(商工総合研究所『商工金融』2022年4月号)
  • 2022年6月「企業における人権教育ー"人権ガバナンス"の内部制度化に関してー」(日本経営倫理学会『サステナビリティ経営研究』Vol.2)
  • 他多数

脚注[編集]

  1. ^ a b 『読売年鑑 2016年版』(読売新聞東京本社、2016年)p.345

参考文献[編集]