待機児童

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待機児童(たいきじどう)とは、子育て中の保護者保育所または学童保育施設に入所申請をしているにもかかわらず、入所できない状態にある児童をいう。

定義[編集]

保育所の待機児童は、保育所への入所・利用資格があるにもかかわらず、保育所が不足していたり定員が一杯であるために入所できずに入所を待っている児童のことと定義される[1]。古くは1960年代から1970年代にかけて第二次ベビーブームをうけた保育所不足の際に多数発生している(当時は同様の状態にある児童を「保留児」とも呼んだ[2])。1980年代には保育所不足はいったん沈静化したが、1990年代後半以降特に都市部で待機児童が増加している。

厚生労働省の統計では2003年度以降、“他に入所可能な保育所があるにもかかわらず第1希望の保育所に入所するために待機している児童”や“地方単独保育事業を利用しながら待機している児童”は、待機児童から除かれている。このため実質的な待機児童数は公表されている統計よりも多いとみられ、「潜在的待機児童」として取り上げることもある。

問題の概要[編集]

1990年代後半以降、一部の都市における待機児童数の急増が問題化している。2015年4月1日時点の待機児童数は全国で23,167人[3]で、10年前の2003年(26,383人)と比較すると数自体は減っている[4]が、2014年4月1日時点の21,371人[5]から5年ぶりの増加となった。その半年後の2015年10月1日時点では45,315人[3]と春より秋が多い傾向があり、年度内の変動も大きい。2013年時点で待機児童が最も多いのは東京都(8,117人)で、沖縄県は待機児童数で2位(2,216人)、待機児童率(保育所定員に対する待機児童の割合)で全国1位(6.35%)である。待機児童率1%以上が9都道府県存在し、東京都、沖縄県、宮城県の3都道府県が2.5%以上と他都道府県に比べて桁違いに高い。待機児童問題は都道府県により深刻さが大きく異なる[4]。待機児童がゼロの県は2015年4月1日時点で、青森群馬新潟富山石川福井山梨長野鳥取香川宮崎の11県となっているが、同年10月1日時点では富山・石川・福井・山梨・長野の5県にとどまっている[3]

なお学童保育(放課後児童クラブ・学童クラブ)においても待機児童が発生しており、その数は2015年5月1日現在で16,941人[6]であった。特に公立小学校では少子化や都市部のドーナツ化現象により学校統廃合が進行しており、公設学童クラブ(運営を民間に委託しているものを含む)において定員を大きく超えているケースが東京都中野区世田谷区八王子市等でみられる。待機児童がゼロの県は石川の1県のみだった[7]

人口の多い都心部を中心に待機児童が多い傾向にあるが、愛知県は東京や大阪と比較して待機児童が少ない傾向にある[8]

問題の原因[編集]

人気のある都市への流入による人口集中も原因であるが、それ以外にも、共働き家庭の増加や家庭環境の多様化など社会構造が大きく変化したために夫婦が時間の融通がない正社員の家庭が急増する中で、保育所の増設や受け入れ数増加など施設整備が立ち遅れたことなども原因の一部である。高度経済成長期頃まではいわゆる専業主婦モデルが最も豊かに経済成長させる仕組みだったが、日本国憲法第14条(平等権)、女子差別撤廃条約男女雇用機会均等法育児休業制度等の理念や制度の普及により離職が減少し、出産後も正社員として働く女性の数は長期的にみると増加している[9]。既婚女性・乳幼児期子育て中の就業率は高度成長期でも50%以上だったが、時間に融通がきくパートタイムが圧倒多数だった平成23年版働く女性の実情, 厚生労働省</ref>。一般的には、社会進出と男性タイプの労働形態で働く女性が増えたことに加え、1990年代以降の共働き家庭が増加や、一人親家庭など日中の保育に欠ける家族形態があることで、保育のニーズが増加も保育の需要の増加の理由にあげられている。収入の多い女性が働いて、夫が家庭で子育てに専念する「専業主夫」という形態もあるが、割合としてはごく少数である。

住民の保育園反対[編集]

国や地方自治体は2010年代から特に待機児童対策に力を入れているが、説明会に来るような平日に日中も家にいて『静かな余生』を主張する高齢者など一部の住民らの市民団体などに保育園の新設は騒音や迷惑だと反対されて自治体が断念するケースが頻発しているなど国や自治体の努力の範疇である『子供への社会保障・福祉こそが高齢者よりも優先されるべきだ』という住民の根本的な理解が求められてる。保育所関係者はこのような反対者らを「説明しても理由をつけて建設中止を要求してくる」と批判している。為末大は「園児の声は無条件で騒音とは見なさないとする条例を作ってくれたら」と国や自治体が一部の近隣住民の反対運動などは無視出来るような法令の制定にしようとの声が出ている程である。更に、いったんは当初の待機児童解消させても、そのうよな福祉が充実している自治体への他地域から移住者の増加や補助金の増加や入れ人数の拡大が「子どもを預けて働きたい」という働きたいという「潜在的需要の掘り起こし」で待機児童が続々と出てくるなど結果的に『鼬ごっこ』になっている。そのため、国や自治体が力を入れてるのに減るどころか逆に希望者が増加する状況に地域住民の建設反対運動など解決するには難しい問題になっている[10][11][12][13][14][15][16][17][18]

解決策[編集]

待機児童問題では、0歳児保育にどれだけ公的コストがかかっているのかを多くの人は知られていない。待機児童で増加の理由になっているのは0歳児であるため、『0歳児のみ保育料適性化』だけで状況はかなり改善されると指摘されている。実際に、東京の大田区のケースを例にすると0歳児を1人の保育に行政側は月額約62万円のコストが掛かっているのに対して、保護者が支払う保育料は月額上限6万円強で実質的に毎月56万円も公的な補助を受け取っている構図である。これが国や自治体など行政は保育所を増やしているのに「子どもを預けて働きたい」という潜在需要を掘り起こされていて、希望者が殺到し続けて待機児童が減らない理由になっている。他の1児童当たりに大田区が負担している額は、1歳児27万円、2歳児24万円、3歳児12万円、4~5歳児10万円と年齢が上がるごとに行政の負担が軽くなっている。そのため、現状の保育所制度は利用出来ている者には非常に手厚く圧倒的に得であるため、利用者が適度な負担をする原則で利用料の適性化が提案されている。0歳児保育への負担が突出して高いことを国民が理解して、コストに対して異常に安い0歳児保育の利用料適性化で増収した分を保育士の賃金に回せば保育士不足の緩和も出来て一石二鳥だと指摘されている [19]

問題の経過[編集]

日本では少子化が進行しつつあり、労働力人口は将来確実に減少するため、日本政府は育児世代の女性を労働力として活用することを推進している[20]。また価値観や消費者ニーズが多様化しているために保護者の就労形態・就労時間も多様化しており、0-2歳児保育、長時間・夜間保育の拡充を求める意見[要出典]が多い。

1980年代までは保育所は3歳児以後の入所が中心となっており、0歳児保育(出産休暇期間後)や1歳児保育(育児休業期間後)に対応する事は難しかった。第二次ベビーブーム世代の卒園とその後の少子化により保育所定員は1981年をピークに減少、保育所数も1985年をピークに減少傾向にあった。

子育て世代の就労支援のため、政府は1994年以降「エンゼルプラン」をはじめとする保育所待機児童対策を打ち出した。2003年より待機児童数はいったん減少に転じたが、2009年には2002年当時の水準まで増加した。これは保育所の整備によって潜在的保育需要(働いてはいないが就労を希望する子育て世代)[21]が掘り起こされたことや、認可外保育施設利用者が認可保育所に入所を希望するようになったことが原因と考えられる。

内訳でみると、3歳以上児の待機児童数は1999年以降は減少を続けており、2009年には4,588名(1998年の約3分の1)となったのに対し、3歳未満児は2009年には2001年と同水準であることから、現在の待機児童は1歳児を中心とした低年齢児が多いといえる。

待機児童数の推移[編集]

保育所数・定員数の推移[編集]

保育所数・定員数の推移 (1985年~2001年)
1980 1981 1985 1990 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001
保育所数 22,899 22,703 22,526 22,488 22,438 22,387 22,332 22,270 22,195 22,218
定員数 2,168,811 2,078,765 1,979,459 1,934,670 1,922,835 1,917,206 1,915,599 1,913,951 1,917,536 1,923,157 1,937,132
保育所利用数 1,996,082 1,843,550 1,723,775 1,675,877 1,678,866 1,701,655 1,738,802 1,695,908 1,740,607 1,788,302 1,828,312
(内、3歳未満児) 480,520 503,163 526,730
(内、0歳児) 59,062 62,882 65,798
(内、1・2歳児) 421,458 440,281 460,932
(内、3歳以上児) 1,210,750 1,233,118 1,261,572
定員充足率 88.7% 87.1% 86.6% 87.3% 88.8% 90.8% 88.6% 90.8% 93.0% 94.4%
待機児童数 28,481 32,855 40,523 39,545 32,225 32,933 21,201
(内、3歳未満児) 25,601 21,111 21,999
(内、0歳児) 6,479 4,447 4,415
(内、1・2歳児) 19,122 16,664 17,584
(内、3歳以上児) 13,944 11,114 10,934
保育所数・定員数の推移 (2002年~2012年) [22] [23] [24] [25] [26] [27] [28] [29]
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011[30] 2012
保育所数 22,272 22,355 22,490 22,570 22,699 22,848 22,909 22,925 23,068 23,385 23,711
定員数 1,957,626 1,990,295 2,028,045 2,052,729 2,079,406 2,105,453 2,120,889 2,132,081 2,157,890 2,204,393 2,240,178
保育所利用数 1,879,349 1,920,591 1,966,929 1,933,684 2,003,610 2,015,382 2,022,173 2,040,974 2,080,114 2,122,951 2,176,802
(内、3歳未満児) 572,863 594,759 618,175 632,011 640,293 654,754 676,590 709,399 742,085 773,311 798,625
(内、0歳児) 71,146 73,085 76,436 78,658 78,420 84,297 88,189 92,606 99,223 105,366 108,950
(内、1・2歳児) 501,717 521,674 541,739 553,353 561,873 570,457 588,401 616,793 642,862 667,945 689,675
(内、3歳以上児) 1,306,486 1,325,832 1,348,754 1,361,673 1,363,317 1,360,628 1,345,583 1,331,575 1,338,029 1,349,640 1,378,177
定員充足率 96.0% 96.5% 97.0% 97.1% 96.4% 95.7% 95.3% 95.7% 96.4% 96.3% 97.2%
待機児童数 25,447 26,383 24,245 23,338 19,794 17,926 19,550 25,384 26,275 25,556 24,825
(内、3歳未満児) 16,792 17,893 16,446 15,831 13,650 12,942 14,864 20,796 21,537 21,109 20,207
(内、0歳児) 2,915 2,932 2,417 2,417 1,981 2,069 2,404 3,304 3,708 3,560 3,170
(内、1・2歳児) 13,877 14,961 14,029 13,414 11,669 10,873 12,460 17,492 17,829 17,549 17,037
(内、3歳以上児) 8,655 8,490 7,799 7,507 6,144 4,984 4,686 4,588 4,738 4,447 4,618
保育計画策定都市数 119 95 94 81 74 84 101 101 94 107

保育計画策定都市(上位10都市)の変遷[編集]

保育計画策定都市(上位10都市)の変遷 (2001年~2008年)
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
1位 大阪府
大阪市
1,364人 大阪府
大阪市
1,337人 大阪府
大阪市
1,355人 神奈川県
横浜市
1,190人 大阪府
大阪市
904人 大阪府
大阪市
846人 大阪府
大阪市
744人 宮城県
仙台市
740人
2位 大阪府
東大阪市
1,076人 神奈川県
横浜市
1,140人 神奈川県
横浜市
1,123人 大阪府
大阪市
919人 大阪府
堺市
752人 兵庫県
神戸市
560人 神奈川県
横浜市
576人 神奈川県
横浜市
707人
3位 神奈川県
横浜市
1,040人 兵庫県
神戸市
1,076人 兵庫県
神戸市
934人 大阪府
堺市
868人 兵庫県
神戸市
652人 神奈川県
川崎市
480人 兵庫県
神戸市
489人 大阪府
大阪市
696人
4位 兵庫県
神戸市
778人 神奈川県
川崎市
705人 大阪府
堺市
832人 神奈川県
川崎市
755人 神奈川県
横浜市
643人 大阪府
堺市
463人 神奈川県
川崎市
465人 神奈川県
川崎市
583人
5位 神奈川県
川崎市
655人 大阪府
東大阪市
631人 神奈川県
川崎市
699人 兵庫県
神戸市
623人 神奈川県
川崎市
597人 福岡県
福岡市
403人 宮城県
仙台市
390人 兵庫県
神戸市
487人
6位 大阪府
堺市
626人 愛知県
名古屋市
618人 宮城県
仙台市
637人 大阪府
東大阪市
489人 福岡県
福岡市
432人 愛知県
名古屋市
362人 沖縄県
那覇市
379人 愛知県
名古屋市
428人
7位 宮城県
仙台市
488人 宮城県
仙台市
604人 愛知県
名古屋市
499人 宮城県
仙台市
462人 東京都
足立区
427人 神奈川県
横浜市
353人 東京都
江東区
千葉県
千葉市
352人 東京都
世田谷区
335人
8位 東京都
足立区
380人 大阪府
堺市
536人 大阪府
東大阪市
485人 愛知県
名古屋市
461人 愛知県
名古屋市
423人 鹿児島県
鹿児島市
350人 大阪府
堺市
349人
9位 東京都
世田谷区
360人 神奈川県
相模原市
452人 福岡県
福岡市
435人 福岡県
福岡市
447人 神奈川県
相模原市
383人 東京都
足立区
348人 愛知県
名古屋市
342人 東京都
八王子市
336人
10位 東京都
江東区
318人 福岡県
福岡市
433人 神奈川県
相模原市
402人 神奈川県
相模原市
410人 奈良県
奈良市
352人 愛知県
名古屋市
320人 東京都
八王子市
336人 大阪府
堺市
349人
保育計画策定都市(上位10都市)の変遷 (2009年~2012年)
2009 2010 2011 2012
1位 神奈川県
横浜市
1,290人 神奈川県
横浜市
1,552人 愛知県
名古屋市
1,275人 愛知県
名古屋市
1,032人
2位 神奈川県
川崎市
713人 神奈川県
川崎市
1,076人 神奈川県
横浜市
971人 北海道
札幌市
929人
3位 宮城県
仙台市
620人 北海道
札幌市
840人 北海道
札幌市
865人 福岡県
福岡市
893人
4位 東京都
世田谷区
613人 東京都
世田谷区
725人 神奈川県
川崎市
851人 東京都
世田谷区
786人
5位 大阪府
大阪市
608人 愛知県
名古屋市
598人 福岡県
福岡市
727人 大阪府
大阪市
664人
6位 愛知県
名古屋市
595人 宮城県
仙台市
594人 東京都
世田谷区
688人 神奈川県
川崎市
615人
7位 兵庫県
神戸市
483人 東京都
練馬区
552人 東京都
練馬区
564人 兵庫県
神戸市
531人
8位 東京都
板橋区
481人 神奈川県
相模原市
514人 宮城県
仙台市
498人 東京都
練馬区
523人
9位 福岡県
福岡市
473人 東京都
八王子市
496人 沖縄県
那覇市
493人 大阪府
堺市
457人
10位 東京都
八王子市
453人 福岡県
福岡市
489人 東京都
足立区
485人 沖縄県
那覇市
436人

国の対策[編集]

待機児童問題は国の少子化対策・子育て支援政策の中で継続的に対策が練られているが、2014年現在でも根本的な解決には至っていない。1994年に策定された厚生省(当時)の「エンゼルプラン」以後、1999年の「新エンゼルプラン」、2001年の「待機児童ゼロ作戦」、2004年の「子ども・子育て応援プラン」、2008年の「新待機児童ゼロ作戦」によって、保育所数・定員数ともに第二次ベビーブームや男女雇用機会均等法施行を受けた1980年代を上回った。保育所利用数は過去記録の更新を続けている。東京都独自の制度である認証保育所制度(2001年開始)や保育の資格を有する者が自宅で児童を預かる保育ママ制度(2001年に国の制度化、2008年11月に児童福祉法改正により法制化)、事業所内・病院内保育施設など保育の場そのものは整備されつつある。

エンゼルプラン[編集]

少子化対策として、1994年12月に文部省・厚生省・労働省・建設省(いずれも当時)が合同で制定した子育て支援施策[施策 1][施策 2]。「低年齢児(0〜2歳児)保育、延長保育、一時的保育の拡充等ニーズの高い保育サービスの整備を図るとともに、保育所制度の改善・見直しを含めた保育システムの多様化・弾力化を進める」「保育所が乳児保育、相談指導等多様なニーズに対応できるよう施設・設備の改善・整備を図る」「低年齢児の受入の促進及び開所時間延長の促進のため保育所の人的な充実を図るとともに乳児や第3子以上の多子世帯等の保育料の軽減を図る」と謳い、具体的には1999年度末の目標を「3歳未満児の保育所収容数60万人、延長保育実施7,000ヶ所、一時保育実施3,000ヶ所、多機能保育所1,500ヶ所」とした。

新エンゼルプラン[編集]

エンゼルプランを承継する計画として1999年12月に制定[施策 3]。「多様な需要に応える保育サービスの推進」が打ち出された。2004年度末の目標を「3歳未満児の保育収容数68万人、延長保育実施10,000ヶ所、一時保育実施3,000ヶ所、多機能保育所2,000ヶ所、休日保育300ヶ所、病後児保育500ヶ所」とした。

待機児童ゼロ作戦[編集]

2001年7月に制定[施策 4]。待機児童の解消を目指すと明記され、特に都市部の保育施設を重点整備するとした。公設保育施設の運営を民間事業者に委託する公設民営型を推進し、学校の空き教室や駅など拠点施設の保育への活用の支援・助成が打ち出された。2004年度末までに「児童受け入れ数15万人増加させる」とした。

少子化対策プラスワン[編集]

2002年9月に厚生労働省が立案[施策 5]。パートタイム労働者のための特定保育事業の創設、民間事業者の参入規制の緩和、幼稚園における預かり保育の推進などを策定した。

次世代育成支援に関する当面の取組方針[編集]

従来の取り組みに加えた取り組みとして2003年3月に立案[施策 6]。一定の待機児童を有する市町村及び都道府県に対し、保育計画を策定するよう法制化して義務付けた。

子ども・子育て応援プラン[編集]

新エンゼルプランを受けたものとして2004年12月に制定された[施策 7]。2009年度末の目標を「一時保育実施9,500ヶ所、延長保育実施16,200ヶ所、休日保育2,200ヶ所、夜間保育140ヶ所、保育所受け入れ児童数拡大215万人」とした。

新待機児童ゼロ作戦[編集]

2008年2月に制定[施策 8]。量的な整備拡充だけでなく、子どもの健やかな育成と保護者の安心確保のために質的なサービス拡充の保障を謳った。2018年度末までに3歳未満児への保育サービス提供割合を38%に拡大(現行20%)すること、保育サービス利用児童数を100万人増やすことを目標とした。

次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に向けて[編集]

2009年2月に厚生労働省の少子化対策特別部会が取りまとめた第1次報告[施策 9]。保育所事業への市町村の実施責務を明示し、市町村が個別ケースの保育の必要性や優先的利用ケース(母子家庭や虐待ケース等)の要否を認定するとした一方、保育契約は利用者が保育所と直接締結するとし、受け入れの応諾等は保育所に義務化した。また、保育の質を保障するため利用料は所得によらず公定価格とすること等が明記された。

子ども・子育てビジョン[編集]

子ども手当の導入や高校教育の実質無償化等の実施に向けて、保育サービス等を含めた総合的な「子ども・子育てビジョン」を2010年2月に制定[施策 10]。幼児教育と保育の総合的な提供、いわゆる「幼保一体化」が盛り込まれた。2014年度末の目標を「平日昼間の保育サービス利用241万人、3歳未満児の利用102万人、延長・夜間等保育サービス96万人、病児・病後児保育200万人日(のべ日数)」とし、2012年度末までに認定こども園を2,000ヶ所以上設置するとした。

現状[編集]

2013年、政府と厚生労働省は2015年の待機児童ゼロに向けて数値と時期を明示した政策を発表した[31]。2010年に待機児童数1位だった横浜市は2013年5月、同4月1日時点での待機児童ゼロを達成したと発表して大きな注目を浴びた[32]。しかし注目されたことで「預けられるのなら働きたい」と利用申請が殺到し、翌2014年4月1日現在では待機児童が生じた[33]

訴訟[編集]

東大阪保育所入所裁判[編集]

  • 平成10年10月 東大阪市において父母8組が原告となり、保育所入所保留処分の取消を求める行政訴訟を起こした。
東大阪市では、毎年数百名の待機児童があったが、公立保育所は昭和52年、私立保育所は昭和59年を最後に新設がなかった。
翌11年の3月までに、原告たちの養育する児童は全員保育所に入所した。
  • 平成11年3月 訴えの内容を10年度の保育所入所保留処分の違法による損害賠償を求める国家賠償請求に変更した。原告は3組となった。
  • 平成14年6月、大阪地裁は、東大阪市の行政手続が行政手続法第5条3項(審査基準の公開)、同法第8条1項(処分理由の提示)、行政不服審査法第25条1項ただし書(審査請求人の口述機会)、同法41条1項(裁決理由の通知)に違反したとして、原告らに15万円ずつ(総額90万円)の慰謝料の支払を東大阪市に命じた。[34]


脚注[編集]

  1. ^ 庄司洋子他編『福祉社会辞典』p.668, 弘文堂, 1999年.
  2. ^ 待機児童とは何か(PDF), 『現代社会における保育所入所待機問題』第1章, 大畑陽平(京都学園大学), 2012年.
  3. ^ a b c 厚労省 平成27年4月の保育園等の待機児童数とその後
  4. ^ a b 保育所整備と待機児童解消及び出生率向上の関係分析(PDF), 三重県戦略企画部統計課, 2014年4月.
  5. ^ 厚労省 保育所関連状況取りまとめ(平成26年4月1日)
  6. ^ 産経ニュース 学童保育の待機児童、最多の1万6941人 厚労省「6年生まで対象拡大など影響」 厚生労働省,2015年12月18日発表
  7. ^ 厚労省 平成27年 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況(5月1日現在)
  8. ^ mw.nikkei.com/sp/#!/article/DGXLASFD02H2T_S6A900C1L91000/
  9. ^ 厚生労働省 (2008年3月28日). “「平成19年版 働く女性の実情」 (PDF)”. 図表1-1-6 勤続年数階級別一般労働者構成比の推移. pp. 4頁. 2009年2月20日閲覧。
  10. ^ [1]
  11. ^ [2]
  12. ^ [3]
  13. ^ [4]
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  15. ^ [6]
  16. ^ [7]
  17. ^ [8]
  18. ^ [9]
  19. ^ [10]
  20. ^ 社会保障審議会少子化対策特別部会 (2009年2月24日). “次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に向けて (PDF)”. 労働市場参加が進まない場合の労働力の推移. pp. 10頁. 2009年6月30日閲覧。
  21. ^ 社会保障審議会少子化対策特別部会 (2009年2月24日). “次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に向けて (PDF)”. 子どものいる女性の就労希望. pp. 9頁. 2009年6月30日閲覧。
  22. ^ 保育所待機児童数(平成24年10月), 厚生労働省, 2013年3月
  23. ^ 保育所関連状況取りまとめ(平成24年4月1日), 厚生労働省, 2012年9月
  24. ^ 保育所待機児童数(平成23年10月), 厚生労働省
  25. ^ 保育所関連状況取りまとめ(平成23年4月1日), 厚生労働省
  26. ^ 保育所待機児童数(平成22年10月), 厚生労働省
  27. ^ 保育所関連状況取りまとめ(平成22年4月1日), 厚生労働省
  28. ^ 保育所待機児童数(平成21年10月), 厚生労働省
  29. ^ 保育所関連状況取りまとめ(平成21年4月1日), 厚生労働省
  30. ^ 東日本大震災の影響により、岩手県陸前高田市・大槌町、宮城県山元町・女川町・南三陸町、福島県浪江町、広野町、富岡町については未集計
  31. ^ 待機児童の速やかな解消に向けて, 厚生労働省, 2013年3月21日.
  32. ^ 平成25年4月1日現在の保育所待機児童数について, 横浜市子ども青少年局, 2013年5月20日.
  33. ^ 横浜市の待機児童、2年連続ゼロはならず 注目され殺到, 朝日新聞2014年5月20日付(2014年7月11日閲覧).
  34. ^ 大阪地方裁判所 (2002年6月28日). “平成10(行ウ)62 損害賠償請求事件 (PDF)”. 2009年6月23日閲覧。

待機児童解消施策[編集]

  1. ^ 文部省・厚生省・労働省・建設省 (1994年12月16日). “今後の子育て支援のための施策の基本的方向について”. 2009年7月21日閲覧。
  2. ^ 大蔵・厚生・自治3大臣合意 (1994年12月18日). “当面の緊急保育対策等を推進するための基本的考え方”. 2009年7月21日閲覧。
  3. ^ 大蔵・文部・厚生・労働・建設・自治6大臣合意 (1999年12月19日). “重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について”. 2009年7月21日閲覧。
  4. ^ 閣議決定 (2001年7月6日). “仕事と子育ての両立支援策の方針について”. 待機児童ゼロ作戦 -最小コストで最良・最大のサービスを-. 2009年7月21日閲覧。
  5. ^ 厚生労働省 (2002年9月20日). “少子化対策プラスワン ―少子化対策の一層の充実に関する提案―”. 2009年8月29日閲覧。
  6. ^ 少子化対策推進関係閣僚会議 (2003年3月14日). “次世代育成支援に関する当面の取組方針”. 2009年8月29日閲覧。
  7. ^ 少子化社会対策会議決定 (2004年12月24日). “少子化社会対策大綱に基づく重点施策の具体的実施計画について”. 2009年7月21日閲覧。
  8. ^ 厚生労働省 (2008年2月27日). “「新待機児童ゼロ作戦」について (PDF)”. 2009年7月21日閲覧。
  9. ^ 厚生労働省社会保障審議会少子化対策特別部会 (2009年2月21日). “社会保障審議会少子化対策特別部会 第1次報告 -次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に向けて-”. 2009年8月29日閲覧。
  10. ^ 子ども・子育てビジョン~子どもの笑顔があふれる社会のために~ (PDF)”. 内閣府政策統括官(共生社会政策担当) (2010年1月29日). 2010年4月1日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]