山賊焼
山賊焼(さんぞくやき、「山賊焼き」とも表記)は、日本の鶏肉、特に鶏もも肉を用いた料理。主に2種類あるがレシピは全く異なる。
長野の「山賊焼」[編集]
一つは、長野県中信地方(塩尻市・松本市等)の郷土料理として広まったもので、鶏もも肉を、すり下ろしたニンニクやタマネギを効かせた醤油タレに漬け込み、片栗粉をまぶして油で揚げる。端的には「鶏もも肉の唐揚げの大きいもの」で、山賊揚げとも呼ばれる。ただし、もも肉だけでなく比較的安価な胸肉など他の部位が使われる場合もある。「山賊“焼き”」と称するが、実際に焼いた(あぶりやきにした)わけではなく、調理法としては揚げる料理である。
中信地方の居酒屋や食堂などのメニューのほか、家庭料理やスーパーの総菜としても一般的である。盛り付けの際には、千切りや手でちぎったキャベツを添える。中信地方の名物料理として提供する店もある。
名前の由来については、現在二つの説がある。
- 塩尻市の居酒屋「山賊」を元祖とする説で、店の横には「元祖山賊焼」の石碑が立っている。前身である「松本食堂」店主の祖父夫婦が、第二次世界大戦前後のいずれかの時期に考案したという[1]。
- 松本市の食堂「河昌」による「山賊は物を取り上げる=鶏揚げると語呂を合わせた」とする説[2]。
ご当地グルメとしてPR活動が本格化したのは2000年代から。松本市では松本食堂事業協同組合青年部が主導して、山賊焼を出す店に2009年からのぼり旗を掲示。2012年には「松本山賊焼応援団」が結成され、持ち帰り用ににおいを抑えるためショウガを入れるなど松本風独自の基準を設けた。
塩尻市では市役所が音頭をとって2010年、「材料は骨付き鶏肉」「ニンニクを効かせた醤油だれに漬け込む」「片栗粉をまぶして揚げる」という3つのこだわりを制定。2012年に「しおじり山賊焼の会」が発足した。
前後して両市では協力関係も築いており、2010年に松本大学も加わって「山賊焼を考える会」が発足。現在は毎年3月8日を塩尻市の、翌9日を松本市の「山賊焼の日」として、地元住民や観光客がはしごできるようイベントを開いている。
山口の「山賊焼」[編集]
もう一つは、骨付きの鶏もも肉を一本丸ごとオーブンやグリル、炭火等でニンニク風味の照り焼き風のたれに絡めてあぶり焼きにしたローストチキン風の料理。西日本の多くの地域では山賊焼と言いえば通常こちらの料理を指す。単に「(骨付きに限らず)鶏肉の照り焼き風」を山賊焼きと称することもある。
山口県岩国市玖珂町にあるレストラン「いろり山賊」で供されることで知られる。「いろり山賊」はかつて広島市内にあった居酒屋「的場大学」がルーツで、昭和20年代にはすでに「山賊焼」がメニューとしてあったといい、「山賊焼の元祖」を自称している[3]。
その他[編集]
「山賊焼」「山賊焼き」の商標は、食肉用調味料大手の日本食研が保有している[4]。同社の販売している「山賊焼のたれ」の調理方法では、「鉄板で焼いた鶏肉にたれをからめながら煮詰める」という、山口の山賊焼きに類似したレシピを紹介している。
関連項目[編集]
脚注[編集]
- ^ “食ナビ/長野・揚げ物なのに「山賊焼き」1枚鶏肉 丸ごと豪快に”. 日本経済新聞夕刊. (2017年2月14日)
- ^ “山賊焼きの由来”. 河昌. 2012年8月30日閲覧。
- ^ “的場大学 ~山賊発祥の地~”. 2017年4月14日閲覧。
- ^ 商標について -日本食研公式サイト内