女体化

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女体化(にょたいか)は、男性が突然女性の体になる架空の現象のこと(後天性女体化)、または元々女性であったという設定のパロディ(先天性女体化)。

商業作品の女体化[編集]

The logo for Ranma ½, written in a curvy, red font; its lower-case letters are padded by yellow circles.
The logo for Boku Girl, written in an angular, tilted font, in both katakana (cyan and magenta) and the Roman alphabet (black).
女性化を扱ったフィクション『らんま½』や『ボクガール』などは漫画の分野においてポピュラーである。

書籍小売業の芳林堂商店高田馬場店によれば、強制女性化は漫画の中で非常にポピュラーなテーマであり、ジェンダーの別を超えてよく売れるという[1]。これらの作品の中で、変身は一般的に、男性として描かれるキャラクターに女性のジェンダーの役割を押し付けるものとして描かれており、例えば『らんま1/2』と『ボクガール』はいずれも、主人公の身体が本人の意志に反して魔法のように女性へと変化する内容となっている[1][2]。そういった作品ではトランスジェンダーをテーマにしたものも多く、TS漫画と呼ばれることもある。TS漫画のジャンルには男性化の話も含まれているものの、女性化の話が大半である[3]

アダルトゲームにおけるTSものの先駆となった作品としては、怪しげな薬を飲んで美少女の外見になってしまった主人公をめぐるドタバタを描く『Xchange』が挙げられる[4]。一般向けのコンピュータゲームにおいては、カプコンの対戦型格闘ゲームヴァンパイア』の登場人物デミトリ・マキシモフは相手を一時的に女性化させるミッドナイトブリスという技を持っており[5]、後にこの技を受けたという設定の美少女フィギュアが発売された[6]。 また、SNKの女性キャラメインの格闘ゲーム『SNKヒロインズ Tag Team Frenzy』では女体化したテリー・ボガードが登場している[7]。また、八神庵の女体化バージョンであるミスX[注釈 1]やアリカの『ファイティングEXレイヤー』に登場するスカロマニア[9]の女体化バージョンもDLCとして登場している。

やおい系二次創作の女体化[編集]

漫画アニメなどの物語に登場する男性キャラクター同士の関係性に同性愛を読み込んで行われる二次創作(同人誌作成など)をやおいと呼ぶが、広義でのやおい系二次創作には男女の性愛や女性同士の同性愛を描いた作品も含まれるなどの多様性がみられる。そして、その中には定番ネタのひとつとして原作での男性キャラクターを女性に変化させて描く「女の子ネタ」があり、これは日本のアニパロ文化の歴史の中でも初期の頃から存在している[10]

やおい系二次創作では登場人物に対して「攻め」「受け」と呼ばれる役割分担が与えられるが[注釈 2]、「女の子ネタ」の作品では(しばしば女性的役割を担うと説明される)受けのキャラクターを女性化させて男性との性関係を描くだけでなく、(しばしば男性的役割を担うと説明される)攻めの男性キャラクターをも女性化させて描いたり、登場キャラクター全員を女性化させる場合もある[11]。受けと攻めの両方が女性化される場合、しばしば受けが身体的に未成熟な女性(少女)として、そして攻めが身体的に成熟した女性として描かれることが多く[12]。やおいに対する分析のひとつとして、それを消費している女性たちに内面化された女性嫌悪・女性性の否定の表れであるとする説があるが[注釈 3]西村マリは女の子ネタにおいて女性性についてマイナスイメージでない描き方がされていることが多いことなどを受け(出産育児を描いたものも定番として存在する)、それらの説に懐疑的な見方を示している[13]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ ミスXは2000年に発売された『SNK GALS' FIGHTERS』を初出としており、同作品においては八神庵の女装した姿として登場した[8]。『Tag Team Frenzy』では、女体化バージョンとは別に、庵の女装としてのミスXも登場している[8]
  2. ^ やおい#カップリングカップリング (同人)を参照。
  3. ^ やおい#論考を参照。

出典[編集]

  1. ^ a b 【あの書店に聞く!!】 学生の街・早稲田。目ききのいる書店のオススメは、ちょっとBLの香りも…!? 芳林堂高田馬場店”. このマンガがすごい!. 宝島社 (2014年6月12日). 2019年5月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月18日閲覧。
  2. ^ Finn, Charlotte (2015年9月8日). “Lost in Transition: On ‘Ranma 1/2′ and Owning Your Identity”. ComicsAlliance. Townsquare Media. 2019年6月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年7月7日閲覧。
  3. ^ 女体化から入れ替わりまで! 「TS(性転換)マンガ」8選”. IT Media (2015年7月9日). 2020年5月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月16日閲覧。
  4. ^ 森瀬 2010, p. 75.
  5. ^ 株式会社インプレス (2013年2月12日). “「ヴァンパイア リザレクション」のキャラクター紹介 気高き魔の眷属「デミトリ」と影と彷徨うリビドー「モリガン」”. GAME Watch. 2020年10月24日閲覧。
  6. ^ 『CAPCOMFIGHTINGJam』のミッドナイトブリスTYPEが全6種+?でフィギュアに!”. 電撃オンライン (2005年10月3日). 2020年10月24日閲覧。
  7. ^ 「テリー・ボガード」が女体化!? 「SNKヒロインズ」に参戦決定”. IT Media (2018年8月3日). 2020年7月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年7月23日閲覧。
  8. ^ a b 「SNKヒロインズ Tag Team Frenzy」,本作の原点となった「SNK GALS' Fighters」から“ミスX”が参戦。DLCキャラクター第3弾として11月中旬に配信”. www.4gamer.net. Aetas (2018年10月26日). 2020年11月14日閲覧。
  9. ^ 『SNKヒロインズ Tag Team Frenzy』に“スカロマニア”が女体化参戦!”. Game*Spark. イード (2018年9月28日). 2020年11月14日閲覧。
  10. ^ 西村 2001, pp. 130–131.
  11. ^ 西村 2001, pp. 131-132、134、137.
  12. ^ 西村 2001, p. 134.
  13. ^ 西村 2001, pp. 134–137.

参考文献[編集]

  • 西村マリ『アニパロとヤオイ』太田出版、2001年。ISBN 978-4872336436 
  • 森瀬繚「エロゲー人の基礎知識 Vol.13 “男の娘パラダイス!?”」『メガストア』2010年6月号、コアマガジン、2010年4月17日、73-78頁。 
  • 渡辺由美子 「ショタの研究」『国際おたく大学―1998年 最前線からの研究報告』 光文社、1998年。ISBN 978-4334971823

関連文献[編集]

関連項目[編集]