失われた世代

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失われた世代(うしなわれたせだい)、ロストジェネレーション(Lost Generation)とは

  1. 1920年代から1930年代に活躍したアメリカ合衆国の作家の一群。広義では、欧米諸国で第一次世界大戦に遭遇して、従来の価値観に懐疑的である世代も指す。 →本項で解説
  2. 1990年代にアメリカ合州国において薬物乱用犯罪を繰り返す10代の若者が社会問題となり、新たな失われた世代と呼ばれた。
  3. 1990年代以後のアフリカ諸国において学校教育を受けずに犯罪を繰り返す青年が社会問題となり、それらの青年を指して呼んだ。
  4. 日本1950年代太陽族世代や1990年代のバブル崩壊以降の就職氷河期世代の別称。

文学史における失われた世代Lost Generation)は、1920年代から1930年代に活躍したアメリカ合衆国の小説家を指す語である。広義では、欧米諸国で20代の時に第一次大戦に遭遇して、従来の価値観に懐疑的になった世代も指す。生年で見ると、1880年代中期から1890年代までに生まれた世代とされる。

概要[編集]

ヘミングウェイの息子バンビとガートルード・スタイン(1924年)

「ロストジェネレーション」という言葉は第一次大戦後の1920年代パリに滞在していたアーネスト・ヘミングウェイに対しガートルード・スタインが投げかけた台詞(You are all a lost generation. あなたたちは皆、失われた世代なのよ。)に由来し、酒や享楽に溺れる「自堕落な世代」を意味していた。ヘミングウェイがこの台詞を「日はまた昇る」のエピグラフに引用し広く知られるようになった。

第一次世界大戦後の当時、アーネスト・ヘミングウェイシャーウッド・アンダーソンジョン・ドス・パソス、画家のワルド・パース英語版シェイクスピア書店主のシルビア・ビーチ、詩人ではE・E・カミングスエズラ・パウンド、批評家ではマルカム・カウリーそしてスタイン自身など、パリで生活したアメリカ人の一群がいた。F・スコット・フィッツジェラルドもこの頃パリに旅行し、スタインらと交友を持った。

ヘミングウェイの「日はまた昇る」(1926年)やフィッツジェラルド「グレート・ギャツビー」(1925年)などの作品はロストジェネレーションの文学と呼ばれた。延いては、文学だけでなく、「第一次大戦後に青年期を迎えたアメリカ人」も指すようになった。

「ロスト」という語は「失った」という意味を持つ一方で、「迷子の」「行き場の無い」という意味も持つ。「ロストジェネレーション」は「失われた世代」と訳されるが、「迷子世代」「迷える世代」と訳される場合もある。この世代が、第一次大戦により、旧来の価値観に対する動揺や、戦死といった災禍に襲われた経験もまた、「ロストジェネレーション」という語を生んだ背景になっている。

ヨーロッパでは、ロストジェネレーションは「1914年世代」とも呼ばれている(1914年は第一次世界大戦の始まった年)。フランスでは「炎の世代 (Génération au Feu) 」とも呼ばれている。

特徴[編集]

アメリカ合衆国 世代
*=dates disputed, ^=Strauss and Howe
○○世代 期間
^Puritan Generation 1588 - 1617
Puritan Awakening 1621 - 1649
^Cavalier Generation
^Glorious Generation
^Enlightenment Generation
^Awakening Generation
1618 - 1648
1648 - 1673
1674 - 1700
1701 - 1723
First Great Awakening 1727 - 1746
^Liberty Generation
^Republican Generation
^Compromise Generation
1724 - 1741
1742 - 1766
1767 - 1791
Second Great Awakening 1790 - 1844
Transcendentalist Generation
^Transcendental Generation
^Gilded Generation
^Progressive Generation
1789 - 1819
1792 - 1821
1822 - 1842
1843 - 1859
Third Great Awakening 1886 - 1908
^Missionary Generation(英語)
失われた世代
Interbellum Generation(英語)(戦間期世代)
G.I. Generation(英語)
Greatest Generation(英語)
1860 - 1882
1883 - 1899
1900 - 1913
1900 - 1924
1911 - 1924
ジャズ・エイジ 1918 - 1929
ビート・ジェネレーション
Silent Generation(英語)
ベビーブーマー
Generation Jones(英語)
1914 - 1929
1925 - 1942
*1946 - 1964
1954 - 1965
Consciousness Revolution 1964 - 1984
ジェネレーションX
^13th Generation
MTV Generation(英語)
Boomerang Generation(英語)
*1965 - 1980
1961 - 1981
1974 - 1985
1977 - 1986
Culture Wars(英語) 1980s - present
ジェネレーションY
^Millennial Generation (Millennials)
ジェネレーションZ
^ニュー・サイレント・ジェネレーション
*1981 - 2000
1981 - 2000
*2001 - 2010 ?
1990 - 2009 ?

ロストジェネレーションの人々は、第一次大戦における大量の犠牲により、親世代が持つヴィクトリア期モラルに対して冷笑的になったとされる。また、第一次大戦に遭遇したが故に、社会と既成の価値観に絶望し、その中で生きる指針を失い、社会の中で迷った世代である。どの世代の例に漏れず、この例に該当する者と該当しない者の双方が存在した。

ロストジェネレーションは、20代の青年期を第一次大戦に蹂躙され、戦死したり、生き残ったが社会生活に支障を来たす負傷をした者も多い。40代に当たる1930年代には世界恐慌に遭遇し、50代を第二次大戦に蹂躙されるという、「貧乏くじ世代」であったとも言える。

ロストジェネレーションの子供世代はビート・ジェネレーションと呼ばれており、純粋なアメリカ文化と言われるジャズが花開いた時代(ジャズ・エイジ)に9歳までの時期を過ごしたが、10代の少年期を世界恐慌に蹂躙され、20代の青年期を第二次大戦に蹂躙されるという、これまた「貧乏くじ世代」であったとも言える。

ロストジェネレーションの人々の中には、当時のアメリカ文化がヨーロッパに存在する文明性を欠いていると考えた者もいた。彼らは「ローリング・トゥエンティーズ」と呼ばれる好景気に沸いていたアメリカを後にして、その時間の多くをヨーロッパ、中でもパリを中心に生活していた。この期間に生み出された文学作品の中に、後にアメリカ文学における傑作と目される作品も多い。

該当する人物[編集]

1883年 - 1900年生まれの人物の例を以下に挙げる。

代表的な文学作品には次のようなものが挙げられる。:

この時代に誕生したアメリカ大統領は次の2人である。

  • 1884年誕生 ハリー・S・トルーマン 任期1945年 - 1953年(1972年死去)
  • 1890年誕生 ドワイト・D・アイゼンハワー 任期1953年 - 1961年(1969年死去)

この世代に誕生した政治家は、1937年から1953年にかけて合衆国議会下院で、1943年から1959年には上院で、そして1941年から1967年まではアメリカ合衆国最高裁判所で多数派を形成した。

アメリカ人以外で、同じ時代に生まれた者[編集]

1880年代中期から1890年代まで(1883年 - 1900年)に生まれた世代は、「第一次世界大戦に遭遇した世代」でもある。日本で言えば、概ね明治10年代後半から明治20年代までの生まれ(1882年 - 1896年生まれ)が、この世代に該当する。

子供世代は概ね1910年代 - 1920年代の生まれに当たり、「世界恐慌第二次世界大戦に遭遇した世代」である。孫世代は概ね1940年代から1950年代の生まれであり、第二次世界大戦の最中か終結直後に生まれた世代である。曽孫世代は概ね1970年代から1980年代の生まれであり、1990年代の「アメリカニゼーション」と呼ばれるグローバル資本主義や世界的不況に遭遇し、日本で「ロストジェネレーション」と呼ばれているプレカリアートが世界的にも多い世代である。

以下に挙げるように、この1880年代中期 - 1890年代に生まれた人々には、第二次大戦を惹き起こしたり、関与した政治家が非常に多いが、彼らの経験が第一次大戦に根ざしている事は言うまでもない。

ベニート・ムッソリーニ東條英機蒋介石チャールズ・チャップリンアドルフ・ヒトラーホー・チ・ミンシャルル・ド・ゴール近衛文麿芥川龍之介毛沢東ニキータ・フルシチョフパウロ6世ハイレ・セラシエ1世エルヴィン・ロンメルゲオルギー・ジューコフヘルマン・ゲーリング岸信介アントニオ・サラザールクヴィスリングJ・R・R・トールキンバーナード・モントゴメリールカーチ・ジェルジアントニオ・グラムシマックス・ホルクハイマーナジ・イムレヤン・マサリクジョージ6世フリッツ・ラングルイス・マウントバッテンマルク・シャガールエーリヒ・マリア・レマルクジョアン・ミロボリス・パステルナークセルゲイ・プロコフィエフディエゴ・リベラフランツ・カフカオルダス・ハクスリー谷崎潤一郎ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインマルティン・ハイデッガー和辻哲郎などである。

南米・アフリカ・インド・イラク・フランス・オーストラリア[編集]

1990年代に、南アフリカやラテンアメリカ、インド・イラク・フランス・オーストラリアの教育を受けていないLost Generationが、武装し強盗や強姦を繰り返すことが世界的な社会問題となった。スタインが「You are all a lost generation.」と述べた時と同様に、「自堕落な世代」というニュアンスで用いられている。

  • The Politics of Education: South Africa's Lost Generation. (EJ429512) Author(s): Green, Max Source: American Enterprise, v2 n3 p12-15 May-Jun 1991
  • Children in the Streets: Latin America's Lost Generation. (EJ508908) Author(s): Rizzini, Irene; Lusk, Mark W. Source: Children and Youth Services Review, v17 n3 p391-400 1995

日本における「失われた世代」と語彙の違い[編集]

アメリカでは1990年代に、ドラッグに溺れ略奪や殺人などを繰り返す「新たな失われた世代 (New Lost Generation)」に悩まされ、文字の読み書きを教え、労働へ導くべきだという議論が繰り返された。

一方、日本でも2000年代に入り、一部のメディアを中心にバブル崩壊後の就職氷河期世代に対して「失われた世代 (Lost Generation)」という語が使われるようになったが、アメリカの上記のケースとはニュアンスがかなり異なるため、日本国外で話をするときには十分な説明を要する。労働問題に起因している点は同様であるが、日本国外で"Lost Generation"といえば、殺人強盗集団のような暴力的な青年のイメージがある(日本では必ずしも暴力的な集団を指しているわけではない)。日本の「失われた世代」は、アメリカでは「Generation Y」と呼ばれる世代に該当する。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

先代:
ミッショナリー・ジェネレーション
1860年-1882年
アメリカ合衆国の世代
失われた世代
1883年-1899年
次代:
戦間期世代
1900年-1913年