太陽面通過
太陽面通過(たいようめんつうか)とは、ある天体にいる観測者から見て、見かけ上太陽の表面を別の天体が通過する現象である[1]。日面通過(にちめんつうか)や日面経過(にちめんけいか)、太陽面経過とも呼ばれる[2][3][4]。普通、地球から見て内惑星である水星または金星が太陽の表面を通過する現象のことを指す[1]。これは太陽と内惑星と地球が一直線に並んだときに見られるもので、地球では水星と金星でのみみられる天体現象である。水星、金星は太陽に比べ大きさがかなり小さいので小さな黒い点がゆっくり太陽の表面を移動していく形で観測される。
ヨハネス・ケプラーは、1627年に初めて金星の太陽面通過が1631年12月6日に起こると予想した(実際に起きたのは12月7日)。
金星の太陽面通過
[編集]金星の太陽面通過は122年、8年、105年、8年の周期でおきる。地球と金星の軌道の交差は6月と12月におきる。
水星の太陽面通過
[編集]水星の太陽面通過は、地球と水星の軌道が交差する5月と11月におきる。
- 1973年11月10日 - 日本では日没後のため観測できず
- 1986年11月13日
- 1993年11月6日
- 1999年11月16日
- 2003年5月7日
- 2006年11月9日
- 2016年5月9日 - 日本では日没後のため観測できず
- 2019年11月11日 - アメリカ、フランス、イスラエル、クウェートなどで観測[5]
- 2032年11月13日
宇宙船や人工衛星の太陽面通過
[編集]内惑星ではないが国際宇宙ステーションやスペースシャトル、スペースシャトルと修理の為捕捉されたハッブル宇宙望遠鏡が太陽面を通過する写真の撮影に成功した実例がある。
国際宇宙ステーションや人工衛星の太陽面通過は、たいてい1秒に満たないほど短い[6]。
惑星の太陽面通過も人工衛星などの太陽面通過も、地球上の視直径は小さく、月による日食のように暗くなることはない。宇宙空間の物体が地表で太陽を完全に覆い隠すには、例えば国際宇宙ステーションの高度では直径3350メートル以上の大きさである必要がある(緯度と太陽高度によってはさらに大きい必要がある)[6]。
その他の天体の太陽面通過
[編集]なお、かつて水星よりも内側の惑星ヴァルカンの実在が考えられていた時代には、これの存在を実証するには太陽面通過を捉える必要がある[7]といわれており、実際にヴァルカン発見を目的に太陽を観測する天文学者が存在していた。実際にはヴァルカンは存在しなかったが、この観測により近日点が太陽のすぐ近くにある小惑星や彗星がいくつか発見されている[8]ため、全くの無駄になったわけではなかった。
関連項目
[編集]出典
[編集]- ^ a b “世界大百科事典 第2版の解説 たいようめんつうか【太陽面通過 passage on solar disk】”. コトバンク. 株式会社日立ソリューションズ・クリエイト. 2016年6月4日閲覧。
- ^ “2012年6月6日 ~21世紀最後の「金星の太陽面通過」~(国立天文台)”. 国立天文台. 2016年6月1日閲覧。
- ^ “大辞林 第三版の解説 にちめんけいか【日面経過】”. コトバンク. 三省堂. 2016年6月4日閲覧。
- ^ “デジタル大辞泉の解説 にちめん‐つうか〔‐ツウクワ〕【日面通過】”. コトバンク. 小学館. 2016年6月4日閲覧。
- ^ “水星が太陽を横切る現象、世界各地で観測 次は2032年”. AFP (2019年11月12日). 2019年11月12日閲覧。
- ^ a b “ISS-Venustransit” (ドイツ語). astronomie.info. 2020年7月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2004年7月29日閲覧。
- ^ 仮のヴァルカンが実在するとしても太陽に近過ぎるため通常の観測は不可能と考えられていた。また皆既日食の発生中であれば観測可能と考えられ、皆既日食中にヴァルカンを狙って観測する者も存在したが、時期が限定されるためいつでもできるものではないのが難点であり、太陽が出ていればいつでも観測可能となる手段が必要だった。
- ^ 当時はヴァルカンと誤認され、後に別のものと実証された天体が複数存在する。