内臓逆位

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内臓逆位(ないぞうぎゃくい、Situs inversus)は、内臓の配置が、に映したようにすべて左右反対になる症状をいう。

内臓がすべて左右逆に配置されているだけであれば機能的には問題ないが、ほとんどの医師が逆位の患者の診療経験が無いため、病気や事故などによる診療や手術などが困難となる場合もある。

心臓など、非対称である臓器が左右対称になる症状は、内臓錯位(Situs ambiguus、ヘテロタキシー heterotaxy ともいう)として区別される。内臓錯位では、心機能不全など重篤な症状が現れることが多い。

カルタゲナー症候群[編集]

内臓逆位は、繊毛不動症候群 (Primary Ciliary Dyskinesia, PCD) またはカルタゲナー症候群 (Kartagener Syndrome) と呼ばれる症状と強い因果関係にあることが明らかとなっている。繊毛不動症候群の患者は、その約半数が内臓逆位を示す。

HFH-4 ノックアウトマウス[1]や DNAH5 変異マウス[2]は、繊毛の異常とともに半数が内臓逆位を示す。同じくマウスを使った研究によると、内臓の左右は発生初期の原始結節の活動によって決定される[3]。様々な脊椎動物顕微鏡観察結果によれば、胚の原始結節周辺では繊毛が高速で回転することによって水流が発生しており、これによって身体の左右が決定されるといわれる[4]。カルタゲナー症候群の個体は繊毛が存在しないため、水流を作り出すことができず、身体の左右がランダムに決定すると考えられている[5]

実在の人物[編集]

フィクション[編集]

  • ブラック・ジャック』 - 腹痛を訴える患者の男児が実は左右逆位だったという話がある。なお、ブラック・ジャックは臓器をピノコに持って貰った鏡に映すことで手術を成功させている。
  • 北斗の拳』 - 登場人物の一人サウザーに内臓逆位という設定がある。作中では、通常の北斗神拳による攻撃が効かず主人公のケンシロウが苦戦した。なお、東京理科大学の松野健治助教授の研究室で内臓逆位のハエが見つかった際、その遺伝子をこのキャラクターに因んで「サウザー遺伝子」(Myo31DFsouther)と命名している。[8]
  • ゴッドハンド輝』 - 他の病院からの依頼で移された全臓器が左右逆の患者の癌細胞摘出手術を行う。
  • 金田一少年の事件簿』 - 内臓逆位の犯人が明智警視を殺害するつもりで無意識に自らの心臓の位置と同じ右胸を刺したために、明智は一命を取りとめると言うシーンがある。
  • 最上の命医』 - 内臓完全逆位の子供に、肝臓移植を施す手術がある。ドナーは内臓が正位置の人だったため、移植する肝臓の向きを時計回りに90度変えて施術。
  • 太陽にほえろ!』 - 三田村邦彦演じるジプシー刑事。かつて左胸に銃弾を受けたが内臓逆位の体質のおかげで、左肺が機能を失うだけで一命を取りとめた。
  • メタルギアソリッド2』 - デッドセルの1人、フォーチュン。父と夫を殺したリボルバー・オセロットに自身の小型レールガンを向けたが、撃つ直前にオセロットにより左胸を撃たれる。しかし幸運なことに心臓が右にあったため即死を免れた。
  • 医龍-Team Medical Dragon-』 - 内臓完全逆位の生後9ヶ月の乳児患者のバチスタ手術に挑戦する話がある。
  • とっても!ラッキーマン』 - 主人公・ラッキーマンも、敵からの攻撃で左胸に致命傷を負うも、内臓逆位の体質のために一命を取り留めている。
  • ゴルゴ13』 - 題名"ワン ショット" にて内臓逆位の青年が登場。別冊ビッグコミック No.168のp170,2010年7月13日号。

脚注[編集]

  1. ^ Chen, J., H. J. Knowles, J. L. Hebert, and B. P. Hackett. 1998. Mutation of the mouse hepatocyte nuclear factor/forkhead homologue 4 gene results in an absence of cilia and random left-right symmetry. J. Clin. Invest. 102: 1077-1082. [1]
  2. ^ Heike Olbrich et. al., "Mutations in DNAH5 cause primary ciliary dyskinesia and randomization of left−right asymmetry", Nature Genetics 30, 143 - 144 (2002) doi:10.1038/ng817
  3. ^ Linda A. Lowe, Dorothy M. Supp, Karuna Sampath, Takahiko Yokoyama, Christopher V. E. Wright, S. Steven Potter, Paul Overbeek & Michael R. Kuehn, "Conserved left–right asymmetry of nodal expression and alterations in murine situs inversus", Nature 381, 158 - 161 (1996). doi:10.1038/381158a0
  4. ^ Yasushi Okada, Sen Takeda, Yosuke Tanaka, Juan-Carlos Izpisúa Belmonte and Nobutaka Hirokawa, "Mechanism of Nodal Flow: A Conserved Symmetry Breaking Event in Left-Right Axis Determination", Cell 121, 633-644 (2005).doi:10.1016/j.cell.2005.04.008 日本語による解説
  5. ^ 廣川信隆, 「細胞の分子1個1個の動きを目で見る」、武田シンポジウム講演要旨[2]
  6. ^ 朝刊5面『〈証言そのとき〉ボス、ときどき僕:2 すべて自己責任』”. 朝日新聞社 (2012年9月17日). 2013年4月25日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2012年9月18日閲覧。
  7. ^ 桜真琴の部屋へようこそ”. ベストビデオ1999年11月号. 2012年10月11日閲覧。
  8. ^ Shunya Hozumi, Reo Maeda, Kiichiro Taniguchi, Maiko Kanai, Syuichi Shirakabe, Takeshi Sasamura, Pauline Spéder, Stéphane Noselli, Toshiro Aigaki, Ryutaro Murakami and Kenji Matsuno, "An unconventional myosin in Drosophila reverses the default handedness in visceral organs", Nature 440, 798 - 802 (2006). doi:10.1038/nature04625