中年の危機

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中年の危機とは、中年期特有の心理的危機、また中高年が陥る鬱病不安障害のことをいう。ミッドライフ・クライシスMidlife crisis)の訳語であり、ミドルエイジ・クライシスMiddle age crisis)とも表記されるが、 英語圏では前者のほうが一般的である。

中年期は働き盛り、熟年とも呼ばれ、1960年代までは人生の最盛期として認識されてきた[1]。1970年代より発達心理学では、中年期を大多数の大人が経験する人生の一つの段階として研究が進められ、臨床心理学などを含めて「中年期危機」という用語が用いられるようになった。

中年の危機は30代後半から40代にかけての中年の入り口で体験される他、現役引退期にも訪れやすい[1]

用語の混同[編集]

「中年の危機」という言葉は、中年期を迎えた個人が経験するアイデンティティ自己肯定感の変化、すなわち中年期の心理的危機と、中年期にありがちな個々のストレス要因とが混同される事が多い。本来の用法では前者を指すが、後者にも用いられる事がしばしばである。

中年の危機の要因[編集]

中年期の心理的な危機とそれに伴う臨床的な問題は、以下のような中年期特有のストレス要因の発生(すなわちストレスの発生)によって生じやすい[1]。しかし、ライフスタイルライフコースは多様であり、必ずしもこれらのみが原因とは言い切れない。

加齢による身体的変化
中年期には体力・運動能力の低下に加え、生活習慣病の罹患、性機能の低下や閉経更年期障害といった身体的変化を体験する。
家族ライフサイクルの変化
中年期の女性の心理的問題には子離れに伴うものが多い。夫婦共通の目標を見失うことで、父親・母親という役割によって成り立っていた夫婦関係を再確認する欲求が高まる。また、老年期の親の介護や、死別し残された親を引き取るなど、家族構成の再編成を迫られて危機が表面化する場合もある。
職場での変化
新技術の導入、年功序列制の揺らぎといった職場環境の急激な変化や、出世や能力の限界が見える挫折体験など。

中年期にはこれらの問題が一気に増え始める。人生前半期では獲得的・上昇的変化であったものが、中年期には喪失・下降的変化として体験される特質がある。中年期の変化によって生じる臨床的問題は、これらの要因による構造的葛藤と捉えることができる[1]

中年期の心理的危機[編集]

中年期の心理的葛藤は、以下のような感情や行動となって表れる。

  • 出社拒否などの職場不適応症、うつ病、アルコール依存症といった臨床的な問題[1]
  • 空の巣症候群
  • 自己の限界の自覚
  • 達成する事の出来なかった物事への深い失望や後悔
  • より成功した同輩・同僚に対する屈辱感・劣等感
  • 自分はまだ若いと感じたい、また若さを取り戻したいという思い
  • 一人になりたい、もしくは気心の知れた者以外とは付き合いたくないという欲求
  • 性的に活発になろうとする、もしくは逆に全く不活発になる
  • 自身の経済的状況や社会的ステータス、健康状態に対する憂鬱、不満や怒り
  • 人生の前段階で犯した過ちを正す、または取り戻そうとする

日本での状況[編集]

  • 中年が思い煩う時期という意味から、青年の思春期になぞらえて、第二の思春期、または思秋期(ししゅうき)などとも呼ばれることがある。
  • 男性で42歳、女性で33歳、37歳の厄年をこうした心理的危機が起こりがちな時期と捉え、両者を結び付けて論じられる事がしばしばある。
  • 日本では、不況やリストラの影響で年間自殺者数が3万人を超えた1998年〜2012年までの期間に、特に中高年男性の自殺率が急増したことから、注意喚起がなされている[2]。(日本の自殺を参照)
  • NHK特報首都圏』は、2010年9月に「ミドルエイジクライシス 〜30代ひずみ世代の今〜」というタイトルの番組を放映しており、その際、30代の引きこもり自殺就職氷河期世代の苦悩などを紹介した[3]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e 岡本 2005, pp. 198-201.
  2. ^ 男性更年期の心身医学 : 内科の立場から(男性更年期の心身医学)(第44回日本心身医学会総会)
  3. ^ NHK ミドルエイジクライシス 〜30代ひずみ世代の今〜

参考文献[編集]

  • 岡本祐子、二宮克美、子安増生(編)、2005、「中年」、『発達心理学』改訂版第3刷、 新曜社〈キーワードコレクション〉 ISBN 4788508923