ベルリン・ディフェンス

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ベルリン・ディフェンス
abcdefgh
8
a8 black rook
c8 black bishop
d8 black queen
e8 black king
f8 black bishop
h8 black rook
a7 black pawn
b7 black pawn
c7 black pawn
d7 black pawn
f7 black pawn
g7 black pawn
h7 black pawn
c6 black knight
f6 black knight
b5 white bishop
e5 black pawn
e4 white pawn
f3 white knight
a2 white pawn
b2 white pawn
c2 white pawn
d2 white pawn
f2 white pawn
g2 white pawn
h2 white pawn
a1 white rook
b1 white knight
c1 white bishop
d1 white queen
e1 white king
h1 white rook
8
77
66
55
44
33
22
11
abcdefgh

ベルリン・ディフェンス (Berlin Defence) は、チェスオープニングの1つで、ルイ・ロペスの変化の1つである。右図がベルリン・ディフェンスの基本形で[1]、基本形までの手順は1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6である[2]

主な変化[編集]

4.0-0 Nxe4 5.Re1 Nd6 6.Nxe5 Be7 7.Qh5 Nxe5? 8.Qxe5 Nxb5 9.Qxg7! Rf8 10.a4! Nd6 11.Nc3 Nf5 12.Nd5! f6 13.Qxh7 d6 14.Qg6+[3]

この手順は1973年ランサローテ島で対局されたリュボミィル・リュボエビッチリカルド・カルヴォ戦のものである[4]。14手で白のリュボエビッチが勝った[4]

白は4手目で最も早くキャスリングを完了できる(キャスリングにはゲーム開始から最低4手かかるため)[5]。 白の4手目は他に4.d3[6]、4.d4[6]、4.Bxc6[6]、4.Qe2[6]と指す手がある。4.d4と指すと4.… ed 5.0-0 Be7 6.Qe2 0-0 7.e5 Ne8 8.Rd1 d5と進行する[7]。黒は4手目でポーンを1つ得するが[7]、白はクイーンまたはルークをeファイルに持ってきて黒のキングを直撃できるので形勢は悪くない[7]

黒の4手目では他に4.… Be7[6]、4.… Bc5[6]、4.… d6[6]と指す手がある。

白の5手目では他に5.Qe2[6]や5.d4[6]と指す手がある。5.d4と指すと5.… Be7 6.Qe2 Nd6 7.Bxc6 bc 8.de Nb7 9.Nc3 0-0と進行する[1]。この変化の黒の5手目で5.… edと指すのは6.Re1 d5 7.Qxd4で黒がポーンを2個得するもののe4のナイトが白のルークにピンされるので白が指しやすい[7]。同じく黒の5手目で5.… Nd6と指すのは6.Bxc6 dc 7.de Nf5 8.Qxd8+ Kxd8 9.Nc3で白が有利[7]。一方白の6手目で6.d5と指すのは6.… Nd6 7.Ba4 e4!で黒が優勢[7]。黒の6手目では6.… d5と指す手もあり[7]、以下7.Nxe5 Bd7 8.Bxc6 dcと進行する[7]。黒の7手目で7.… dcと指すのは8.de Nf5 9.Rd1 Bd7 10.Nc3 0-0 11.Ne4で白が有利[7]

黒の5手目で5.… d5?と指すと6.Nxe5!と指され白が有利[6]。5.… Nf6と戻っても6.Nxe5 Be7 7.d4 0-0 8.Nc3で白が指しやすくなる[8]

黒の6手目では他に6.… Nxe5と指す手もある[9]。以下7.Rxe5+ Be7と進行する[9]。なお6.… Nxb5??と指すと7.Nxc6+とディスカバードチェックされ黒はクイーンを取られてしまう[9]

白の7手目は次に8.Qxf7#のチェックメイト狙い[9]。他に7.Bd3[9]、7.Bf1[9]、7.Nc3[9]と指す手がある。

黒の7手目で7.… Nxe5?としたのが敗因。7.… Nxe5?の代わりに7.… 0-0とキャスリングすれば8.Bd3と次に9.Qxh7#の狙いを持った手を指されても8.… f5で黒が十分に指せる[10]

黒の8手目で8.… 0-0とキャスリングすると9.Qxe7とクイーンの交換になる。黒がここで9.… Re8とクイーンの交換を避けると10.Qxd8とビショップを損する[11]。黒は10.… Rxe1+???と指すことは出来ない[11]。d8のクイーンでe8のルークはピンされているためこのルークは縦に動くことは出来ない[11]

白の9手目は次に10.Qxh8#のメイト狙い[11]。ここで9.Qxb5と駒を取り返すと黒に9.… 0-0とキャスリングされ白の攻撃は止まってしまう[11]

黒がメイトから逃れるには9手目で9.… Rf8と指すしかない[11]。e7のビショップはピンになっているため9.… Bf6とは指せない[12]

白の10手目で10.d4と指すと10.… d5 11.Bg5 Be6とe1のルークによる攻撃を止められてしまう[13]。10.a4!なら11.Ra3から11.Rae3とeファイルにルークを2つ並べることも可能[13]

白の11手目で11.d4或いは11.d3と指すと黒に11.… Nf5と指され[13]、白が12手目でクイーンを動かした後12.… d5と指され[13]、さらに13.… Be6と指される[13]

黒の12手目で12.… Nxg7??とクイーンを取ると13.Nf6#!で白の勝ち[14]。黒は12.… f6以外のどのような手を指しても白は次の一手でメイトにすることが可能[14]

白の13手目で13.Nxf6+とチェックをかけるのは13.… Rxf6 14.Qxf6 d5とキングの逃げ道を作られた上白が駒損なので白が良くない[14]

黒の13手目で13.… Nd6或いは13.… Nd4とf5のナイトを逃げると14.Rxe7+以下メイトになる[15]

白に14.Qg6+と指され黒のカルヴォはビショップ得のまま投了した[16]。黒がこの後14.… Rf7と守っても15.Nxf6+ Kf8 16.Qg8#でチェックメイト[16]。14.… Kd7と逃げても15.Qxf5+ Ke8 16.Qh5+! Kd7 17.Rxe7+ Qxe7 18.Nxe7とクイーンを取り白の楽勝形である[16]。この手順中15.… Kc6と逃げると16.Nxe7+ Kb6 17.Qb5#で白の勝ち[16]。16.… Kd7の代わりに16.… Rf7と守るのは17.Nxf6+以下チェックメイトになる。さらに17.… Qxe7のところで17.… Kc6と逃げるのは16.Nb4+ Kb6 17.Qb5#でやはり白の勝ち[16]

参考文献[編集]

脚注・出典[編集]

  1. ^ a b 『定跡と戦い方』、59-60頁。
  2. ^ 『定跡と戦い方』、57、59-60頁。
  3. ^ 『やさしい実戦集』、44-49頁。
  4. ^ a b 『やさしい実戦集』、43-49頁。
  5. ^ 『やさしい実戦集』、196頁。
  6. ^ a b c d e f g h i j 『やさしい実戦集』、44頁。
  7. ^ a b c d e f g h i 『定跡と戦い方』、60頁。
  8. ^ 『やさしい実戦集』、44-45頁。
  9. ^ a b c d e f g 『やさしい実戦集』、45頁。
  10. ^ 『やさしい実戦集』、45-46頁。
  11. ^ a b c d e f 『やさしい実戦集』、46頁。
  12. ^ 『やさしい実戦集』、46-47頁。
  13. ^ a b c d e 『やさしい実戦集』、47頁。
  14. ^ a b c 『やさしい実戦集』、48頁。
  15. ^ 『やさしい実戦集』、48-49頁。
  16. ^ a b c d e 『やさしい実戦集』、49頁。
  17. ^ ISBNコードは新装版のもの。