ブラームスの小径
ブラームスの小径(ブラームスのこみち)は、東京都渋谷区神宮前あるいは原宿にある竹下通りと平行に走る通りである[1]。
1960年代半ばに暗渠化された小径[2]で、時間の経過とともに独特の雰囲気を持つ場所として発展し、レンガ調の石畳や建物、緑が広がる様子は、ヨーロッパの町並みを思わせる情緒ある空間を作り出している[3]。
歴史
[編集]1960年代、この場所には明治神宮の「清正井(きよまさのいど)」から菖蒲田、南池を経て、渋谷川につながる小川が流れていた。周囲の水田を潤す灌漑用水として利用され、近所の子どもたちの格好の遊び場でもあった。その小川を東京オリンピックの頃に下水道管とともに埋め立て、暗渠となり、現在「ブラームスの小径」と名づけられた幅およそ2メートル、全長150メートルの細い通りの姿になった[4]。
1976年頃に洋館が建設され「ブラームスの小径」と名付けられた[5]。洋館建設当時は、飲食店の営業許可が取れなかったため、サロンとして使用されていた。その後1996年頃に、飲食店の営業許可が下り、フレンチレストラン「Jardin de LUSEINE(ジャルダン・ド・ルセーヌ)」として営業[6]。
2016年から、フレンチレストラン「La BOULETTE(ラ・ブーレット)[7]」として営業されており[8]、周辺のアンティークなセレクトショップや、レストラン、カフェなどと共に、情緒ある雰囲気の原宿の隠れた観光スポットとなっている[9]。
名称
[編集]ブラームスの小径は、フランソワーズ・サガンの小説『ブラームスはお好き』に由来し、フランソワーズ・サガンと小径に面した洋館レストラン「Jardin de LUSEINE(ジャルダン・ド・ルセーヌ)」の初代オーナーが名付けた[10][11][12]。オーナーによると「ゴロが良かった」からとのこと[13]。二人をつないだのは翻訳者の朝吹登水子と言われている[14]。
レストランの前には、名称の大元の由来であるドイツの作曲家ヨハネス・ブラームスの胸像が置かれている[15]。
周辺
[編集]竹下通りと平行しており、フォンテーヌ通り、モーツァルト通りを経由し明治通りに接続する[16]。
渋谷区景観計画では、渋谷区を象徴する景観の一つとして「歩行者が主役の道路沿道に住商が共存する景観」を挙げており、その具体例として原宿駅からブラームスの小径を抜け、旧渋谷川遊歩道を経て渋谷駅へと至る街並みを紹介している[17]。
2020年6月に開業した新複合施設「ウィズ原宿(WITH HARAJUKU)」の施設内を通ることで、竹下通りを経由せずに原宿駅側から直接ブラームスの小径へアクセスすることが可能となった[18]。
最寄駅はJR山手線の原宿駅、東京メトロ千代田線・副都心線の明治神宮前駅、東京メトロ半蔵門線・銀座線の表参道駅[19]。
「日本国内はもとより今や世界中から人が集まるカワイイ文化の発信地原宿竹下通り」[20]と称し、ファッションアイテムや雑貨、スイーツなどのお店が集まる竹下通りと対照的に、洋館「ルセーヌ館」で営業するフレンチレストランや石畳が醸し出す雰囲気から、原宿の穴場と称される[16]。
言及等
[編集]バリー・アイスラーはジョン・レイン・シリーズの2作目『雨の影』(2004年)において、主人公ジョン・レインが原宿を気に入っている理由として、「竹下通りのような人だらけの猥雑な路地と、優雅なティーハウスやアンティークショップが並ぶブラームスの小径が隣り合って存在している街は、東京くらいのものだろう」と綴っている[21]。
原宿で生まれ育った家城定子は『原宿の思い出』(2002年)において、子どもの頃に竹下通りの辺りに流れていた小川では子どもたちが魚捕りをしていたが、今では暗渠になってブラームスの小径と呼ばれていると述べ、「そこ(ブラームスの小径)を歩むたびに、子どもの頃のせせらぎが聞こえてくるようです」と綴っている[22]。
2021年に公開された映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』は渋谷や原宿が舞台となっているが、主演の森山未來は映画公開時のインタビューで「1996年頃に舞台稽古のために上京した際、ブラームスの小径にあったお抹茶屋さんに母親とよく行った」と語っている[23]。
ビブラフォン弾き語りシンガーソングライターである森岡万貴の4枚目のアルバムとなる『合わせ鏡』(2017年)の1曲目に「ブラームスの小径」がある[24]。
出典
[編集]- ^ “【渋谷区】ブラームスの小径 (こみち) 原宿竹下通りの裏道から消えていく昔の面影(渋谷ライダー) - エキスパート”. Yahoo!ニュース. 2024年7月25日閲覧。
- ^ “水のない水辺から・・・「暗渠」の愉しみ方」第7回 水のない水辺に残る水ー渋谷川水系ー”. 2024年9月2日閲覧。
- ^ “まるでヨーロッパ!?原宿の穴場「ブラームスの小径」レポート”. 2024年9月2日閲覧。
- ^ 『山手線29駅 ぶらり路地裏散歩』株式会社学研パブリッシング、2011年4月5日、35頁。
- ^ “【渋谷区】ブラームスの小径 (こみち)昔の面影が消えゆく原宿竹下通りの大人な裏道”. 2024年9月2日閲覧。
- ^ “原宿 ブラームスの小径のアンティークな空間 ラ・ブーレット”. 2024年9月2日閲覧。
- ^ “ラ・ブーレット (La BOULETTE)”. ラ・ブーレット (La BOULETTE). 2024年9月2日閲覧。
- ^ “Restaurant La BOULETTE(ラ ブーレット 原宿)の求人”. 求人飲食店ドットコム (2023年12月29日). 2024年9月2日閲覧。
- ^ “原宿のインスタ映えスポット!「ブラーラムスの小径」 まとめ”. 2024年9月2日閲覧。
- ^ “まち・いち”. 日本経済新聞. (1986-09-16).
- ^ “ホットゾーン”. 読売新聞. (1988-01-21).
- ^ “伊藤病院周辺さんぽ 第4回”. Voice (伊藤病院) (第53号): 18. (2016-03-01) .
- ^ 梅津時比古 記者 (1985-08-27). “夏みつけた 9”. 毎日新聞.
- ^ “初・ブラームスの小径”. 浅野美帆子の”うふふ” (2019年9月20日). 2024年9月2日閲覧。
- ^ “まるでヨーロッパデート気分!?原宿の穴場「ブラームスの小径」レポート”. レッツエンジョイ東京 (2016年12月2日). 2024年9月4日閲覧。
- ^ a b “まるでヨーロッパ!?原宿の穴場「ブラームスの小径」レポート”. Let's ENJOY TOKYO, Inc. 2024年9月2日閲覧。
- ^ “渋谷区景観計画(全文)第1部 景観マスタープラン”. 2024年9月2日閲覧。
- ^ “原宿駅前に新複合施設「ウィズ原宿」オープン、イケアやユニクロ出店&イベントホールも”. ファッションプレス. 2024年9月2日閲覧。
- ^ “ラ・ブーレット/アクセス”. ラ・ブーレット. 2024年9月2日閲覧。
- ^ “竹下通り公式マップ”. 竹下通り商店会. 2024年9月2日閲覧。
- ^ 川本 三郎『ミステリと東京』平凡社、2007年10月20日、44頁。ISBN 978-4582833775。
- ^ 家城定子『原宿の思い出』株式会社講談社出版サービスセンター、2002年4月25日、149頁。ISBN 4-87601-619-4。
- ^ “SPECIAL INTERVIEW "MIRAI MORIYAMA" 映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』”. 東急ホテルズ&リゾーツ株式会社. 2024年9月2日閲覧。
- ^ “Maki Morioka Discography”. BLUE BEAR record label. 2017年2月7日閲覧。