ニムロド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
ニムロド。

ニムロドヘブライ語: נמרוד‎)は旧約聖書の登場人物で、『創世記』の10章においてクシュの息子として紹介されている。クシュの父はハム、その父はノアである。

『創世記』におけるニムロド[編集]

同時代の登場人物たちは概ね民族の代表者(族長)として記録されており、その名前はそれぞれの民族名をも兼ねているのだが、ニムロドの場合、そういった民族的な背景は触れられずに単なる個人名(正確には個人名ではなく反逆する者という意味)として記されている。また、単独で紹介された人物としては相対的に情報量が少ない。だが、同時代人が残した言葉により彼が狩人の英雄として有名であったことは今日でもよく知られている。その他、彼の王権がバベルウルクアッカド、カルネ(その所在はいまだに特定されていない)といった古代都市を含むシンアルの地、及びニネヴェカラ、レセン、レホボット・イール(この都市の所在も不明である)のあるアッシリア地方にまで広がっていたことが『創世記』(10章)では述べられている。また、『ミカ書』(5章)ではアッシリアについて預言する際、同地を「ニムロドの地」として言及している。

ミドラーシュにおけるニムロド[編集]

一方、ミドラーシュではよりネガティブな人物として想定されている。それは彼の名前が即、神に対する反逆を表明しているからである。つまり「ニムロド」とはヘブライ語で「我々は反逆する」を意味している。狩人としての彼の行為もまた、凶暴かつ残虐的に描写されている。なかんずくバベルの塔の建造においてはその企画発案者と見なされている。

ユダヤ人社会では比較的ポピュラーな個人名として通用している。

推定される歴史上の人物[編集]

古来、伝説上ニネヴェを建設したとされるニムスとニムロドを同一視する説があるが、最新の研究では、アッカドの狩猟農耕の神と讃えられたニヌルタ、あるいは、王名にその名を冠したトゥクルティ・ニヌルタ、あるいは、『シュメール王名表』にウルクの初代王として記録されているエンメルカルなどがニムロドと見立てられている。

芸術作品におけるニムロド[編集]

  • ダンテ・アリギエーリの『神曲』では、ニムロドは巨人の姿で登場し、地獄の第九圏において裁かれている。彼に下された罰は、他人には理解できない無駄話を永遠にしゃべり続けながら、彼には理解できない他人の無駄話を永遠に聞き続けるというものであった。これはもちろん、バベルの塔における言語の混乱という故事になぞらえてのことである。
  • ラディーノ語の民謡『ニムロド王の時代』、及び『祖父アブラハム』では、ニムロドとアブラハムの闘争について描かれている。アブラハムの誕生を占う吉兆の星を見たニムロドは、生まれてくる男児のすべてを惨殺するよう全土に布告する。しかしアブラハムの母は荒野へ逃亡し、そこで出産を果たす。アブラハムは成長するに至って一神教に対する信仰を宣言し、神の実在をニムロドに証明する。ニムロドは命じてアブラハムをかがり火の中に投下するのだが、彼は傷ひとつ負うことなく火の中から出てくるのであった。
  • 彫刻家のイツハク・ダンツィゲルは彫像「ニムロド」を制作し、土壌に根ざして生きる人間の崇高性を提唱するカナン主義の理想を具現化している。
  • アメリカスラングでは、愚かな人間を嘲る際の蔑称として「ニムロド」が用いられることがある。その由来は、バッグス・バニーの短編映画にて敵方の愚鈍な猟師を「ニムロド」と呼んでからかっていたことにあるのだが、旧約聖書におけるニムロドが優秀な猟師であったことを鑑みれば、皮肉であることが理解できるであろう。

陰謀論におけるニムロド[編集]

陰謀論の分野において、

ニムロドの誕生日は12月25日の日曜日とされ、それはバビロニアの大安息日でもあるとされる。したがって、クリスマスはイエスを祝うだけではなく、ニムロドの生誕を祝う日でもあるとされる。「Merry Xmas」の『X』という十字に似た文字は、二ムロドのシンボルとされ、merry Xmas は『Magical or Merriment Communion with Nimrod』という説がある[1]

日本でも高木慶太と芦田拓也が著書の中で、女大祭司であるニムロデの妻がタンムズという息子を奇跡的に妊娠したと主張し、人々に彼を救世主と説き、これが息子を抱く天の女王崇拝の原型となったとしている。「天の女王」を悪霊と捉え、世界各地の女神信仰と結び付けている。[2]

こうした話は、UFO宇宙人の地球来訪を信じるオカルト愛好者達にも受け入れられている。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Witchcraft and the Illuminati、10-12ページ、ジョン・トッド
  2. ^ 高木慶太、芦田拓也『これからの世界情勢と聖書の預言 改訂新版』いのちのことば社