トリクロサン

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トリクロサン
Triclosan
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特性
化学式 C12H7Cl3O2
モル質量 289.54 g mol−1
外観 白色固体(結晶粉末)
密度 1.49 g/cm3
相対蒸気密度 4.6 x 10-6 mm Hg (20°C)
融点

55〜57 °C
131〜135 °F
328〜330 K

沸点

120 °C
248 °F
393 K

への溶解度 10 mg/L (20°C)
酸解離定数 pKa 7.9
屈折率 (nD) 68.69 m3 · mol-1
薬理学
生物学的利用能 1
消失半減期 21 時間
危険性
安全データシート(外部リンク) MSDS
EU分類 有害 Xn 環境への危険性 N
主な危険性 警告
への危険性 強い刺激(区分2A)
皮膚への危険性 刺激(区分2)
NFPA 704
1
2
0
引火点 162.2 °C
324.0 °F
435.3 K
半数致死量 LD50 ラット(静注):
19 mg/kg
ラット(経口):
3,700 mg/kg
ラット(経皮):
9,300 mg/kg
ウサギ(経皮):
9,300 mg/kg
識別情報
CAS登録番号 3380-34-5
PubChem 5564
DrugBank DB08604
KEGG D06226
ChEBI
ATC分類 D08AE04,D09AA06 (WHO)
出典
PubChem
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

トリクロサン英語: triclosan)は、医薬部外品薬用石鹸うがい薬食器用洗剤練り歯磨き脱臭剤、手の消毒剤、及び化粧品など、様々な場面で使用されている、一般的な家庭用の抗菌剤である。アメリカではその効果への疑問や健康リスクからトリクロサンを含む一般用抗菌石鹸の販売は禁止されている[1]

トリクロサンは高濃度では、複数の細胞質細胞膜を標的に殺生物剤英語版として作用する。低濃度では、エノイル酵素に結合し、脂肪酸合成を阻害することにより、静菌的に作用する。脂肪酸は、細胞膜を構築したり再生するために必要である。ヒトはENR酵素(エノイル[アシル輸送タンパク質]レダクターゼ (NADH))を持っていないため影響を受けないとされる。

殺菌効果について[編集]

アメリカでは、トリクロサン含有の製品は40年も前から市販され、2,000種以上もの石鹸の他に、歯磨き粉や掃除用洗剤、プラスチック製品や化粧品などにも使用されている。

2013年、動物研究では、トリクロサンが甲状腺女性ホルモンエストロゲン男性ホルモンテストステロンなどに影響を与える可能性や、一般的な抗生物質に対する薬剤耐性を強化してしまう可能性が指摘されている[2]

2016年、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、2016年9月2日に、トリクロサンやトリクロカルバン英語版など19種類の殺菌剤を含有する抗菌石鹸は、通常の石鹸と比べて優れた殺菌効果があるとは言えない上、免疫系に打撃を与えるリスクがあることを発表し、2017年9月に一般用抗菌石鹸の販売を禁止した。[3]

2018年、トリクロサンはマウスの腸内細菌に影響を与えその結果大腸炎や大腸がんを増加させることが報告された。[4]

環境への影響[編集]

トリクロサン自身は常温でダイオキシン類に化学変化することは無いと考えられているが、ダイオキシンの発生が懸念されるような低温焼却炉ではトリクロサンがダイオキシン類に転化する可能性が示唆されている。

関連項目[編集]

脚注[編集]