スーパーカミオカンデ

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スーパーカミオカンデ英語: Super-Kamiokande)とは、岐阜県飛騨市神岡町(旧吉城郡)旧神岡鉱山内に設置された、東京大学宇宙線研究所が運用する世界最大の水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置である[1]Super-K と略されることもある。

概要[編集]

スーパーカミオカンデに設置されている光電子増倍管国立科学博物館の展示)

小柴昌俊東京大学名誉教授ノーベル賞受賞研究の元となったカミオカンデと同じ原理で、大きく高性能化されている。50,000トンの超純水を蓄えた直径40m、深さ41.4mのタンクと、その内部に設置した浜松ホトニクス社製の11,200本の光電子増倍管からなり、カミオカンデよりも性能が大幅に上がっている。この光電子増倍管でチェレンコフ放射を観測することにより、様々な研究を行う。

1996年にスーパーカミオカンデが稼動したことにより、カミオカンデはその役目を終え、カムランドとして生まれ変わった。

目的[編集]

主な目的は、次の通り。

ニュートリノの性質の研究
ニュートリノの質量やそれらの混合行列に関する詳細な分析を、大気ニュートリノ、太陽ニュートリノ、人工ニュートリノなどを用いて研究している。ニュートリノが質量を持っている場合には世代間の混合が生じる。これはニュートリノ振動と呼ばれる現象である。一例をあげると、飛行中の電子ニュートリノがミューニュートリノへ変化する。このニュートリノ振動を詳しく調べることにより、ニュートリノ同士の質量の2乗の差を測定できる。また、ニュートリノと反ニュートリノの振動の違いを測定することにより、ニュートリノの混合行列に含まれる複素数の位相も決定できるかもしれない。ニュートリノに質量があることが明確となった今、このような詳細な研究はニュートリノになぜ質量があるのかなどを理解するためには必要不可欠なことである。
ニュートリノ宇宙物理学
カミオカンデによる超新星からのニュートリノを観測することに成功したことは、超新星の理論の妥当性を裏付けるものであった。超新星は重い元素を生成するのに極めて重要な役割を果たしているため、我々を形作る元素がどのように生成されてきたかを理解するのに大事な研究である。他にも太陽からくるニュートリノを観測することで、太陽のような星の理論的な理解が高い精度で可能となってきた。最近では宇宙での高エネルギー現象がニュートリノを発生している可能性があったり、超新星爆発起源の残存ニュートリノを探索するなど、活発な研究が進められている。
大統一理論の実験的検証
旧カミオカンデ建設当時に大統一理論の有力な候補と考えられていたSU(5)理論の予想する陽子の寿命は1030 - 1032年であったが、2004年現在まで陽子崩壊は観測されず、陽子の寿命は1034年以上であることが分かった。これにより、SU(5)理論は否定された。なお、"大統一理論"という考え方が否定されたわけではない。スーパーカミオカンデにおいても、陽子崩壊の観測が引き続き行われている。

名称[編集]

陽子崩壊観測を主目的としたカミオカンデは、Kamioka Nucleon Decay Experiment(神岡核子崩壊実験)の略した名称だった。

上記の目的に加え、ニュートリノによる天体観測を当初から目的のひとつとしていたスーパーカミオカンデは、Super-Kamioka Neutrino Detection Experiment(超神岡ニュートリノ検出実験)とSuper-Kamioka Nucleon Decay Experiment(超神岡核子崩壊実験)の双方を略した名称となっている。

スーパーカミオカンデを、東京大学宇宙線研究所附属神岡宇宙素粒子研究施設と紹介する文献もあるが、正確には東京大学宇宙線研究所附属神岡宇宙素粒子研究施設に存在する「装置の名前」がスーパーカミオカンデである。同施設はスーパーカミオカンデを中心に、ニュートリノや陽子の研究を行うための施設となっている。

歴史[編集]

1991年12月に空間の掘削を開始。建設には旧神岡鉱山の運営者であった三井金属三井造船が参画した[2]。1993年8月に深さ40mの円柱状に掘り下げる工事が完了。1995年中頃にタンクの建設が完成。1995年6月から光電子増倍管の取り付け作業と電子回路への接続が行われ、同年12月に完了した。以後、2か月以上を要して5万トンのタンクを純水で満たし、1996年4月1日0時に完成した[3]

Super-Kamiokande I[編集]

1996年4月1日0時から後述の破損事故までの時期を Super-Kamiokande I (SK-I) と呼称する[3]。1998年には地球の反対側から飛来する大気ニュートリノの数が少ないことを示し、ニュートリノ振動の確たる証拠を世界に発信した。これにより、スーパーカミオカンデ実験グループはこの年の朝日賞を受賞している。1999年には世界初の長基線ニュートリノ実験K2Kを開始し、大気ニュートリノで発見されたニュートリノ振動の検証に成功した。2001年にはカナダのSNO実験の結果と合わせ、太陽から来るニュートリノも振動していることを発見した[3]

これらの実験で検証されたニュートリノ振動に関する業績によって梶田隆章が2015年度のノーベル物理学賞を受賞している。

Super-Kamiokande II[編集]

2003年8月27日東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設にて内閣総理大臣小泉純一郎(右端)らにスーパーカミオカンデを説明する東京大学名誉教授小柴昌俊(左端)

2001年11月12日11時01分に光電子増倍管の70%を損失するという大規模な破損事故が発生した。光電管爆縮時の衝撃波による連鎖破壊で、原因は補修作業時の負荷で基部にクラックが入ったためとされている[4][5][6]。 破壊された数量の光電子増倍管の生産には約4年を要するため、2002年光電子増倍管にプラスチックカバーを被せる防爆措置を行った上で、予備を加えた5,200本の光電子増倍管を再配置し、部分復旧された。これを「Super-Kamiokande II」と呼称する。この破損事故の震動は、近くの高感度地震観測網 (Hi-net) 神岡観測点 (KOKH) において観測されている[7]

Super-Kamiokande III[編集]

2005年7月より、スーパーカミオカンデの完全再建計画の実行が東京大学本部を通じて文部科学省によって承認され、同年10月から観測を中止して破損光電管の交換作業を開始、2006年4月にほぼ完了した。2006年7月11日に建造時と同数の光電管を備えた「Super-Kamiokande III」として観測を再開した。

Super-Kamiokande IV[編集]

2008年夏には、さらなる性能向上のために、信号読み出し回路の総入れ替えを行った。以降を「Super-Kamiokande IV」と呼ぶ。

事業仕分けの影響[編集]

2009年11月、民主党が行った行政刷新会議事業仕分けにおいて「国立大学運営費交付金(2)特別教育研究経費」の交付額についての評定がなされた。仕分けグループによる評定の結果、「廃止6名、縮減6名、要求どおり2名」となり、予算の縮減が決定した。この評議では研究の意義などは一切議論されず、ただ単純に予算全体を一括して縮減すべきであるという判断がなされた。実験代表者の鈴木洋一郎は、予算の縮減による影響で観測が止まってしまう可能性もあり、そうなると稀有なニュートリノの検出を逃してしまうこと、測定器の質を維持できなくなることなどによって、世界トップとなった日本のニュートリノの研究のはずが二流、三流となってしまうと主張している[8]

実験の成果[編集]

本実験施設と KEK-PS(陽子加速器)を用いたニュートリノ振動実験によって、ニュートリノに質量があることが世界で初めて確認された。この発見により2015年梶田隆章ノーベル物理学賞を受賞した。今後は、J-PARC の大強度加速器を用いた同実験によって、ニュートリノの正確な性質について明らかになる。

本実験プロジェクトでは、今後も太陽ニュートリノ観測、宇宙由来ニュートリノ観測、陽子崩壊観測[注 1]、また東北大学がカミオカンデの跡地に設置したカムランド検出装置とも、密接に連携しニュートリノ物理学を発展させる予定になっている。また、国際プロジェクトとして進められている、ニュートリノ観測網の一部として、今後も素粒子物理学の重要な実験装置となる。

今後の計画としては、スーパーカミオカンデの20倍の規模(タンク体積100万トン)になるハイパーカミオカンデの建設計画(2025年の実現を目指す)が検討されている[9][10]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 陽子崩壊に関しては、現在も検出ができていない。上述にもあるが、大統一理論が否定されているわけではなく、陽子崩壊がもしも生じるとするならば、どれだけの期間なのか等の観測をこれからも実施する予定である。なぜならば、観測期間が延びれば延びるほど、たとえ極小の確率であっても検出が可能になるためである。

出典[編集]

  1. ^ 実験概要|スーパーカミオカンデ 公式ホームページ”. 東京大学宇宙線研究所. 2015年10月16日閲覧。
  2. ^ 三井と「宇宙」”. 三井広報委員会. 2015年10月16日閲覧。
  3. ^ a b c スーパーカミオカンデの歴史”. 東京大学宇宙線研究所. 2015年10月16日閲覧。
  4. ^ スーパーカミオカンデ事故等報告(平成13年11月22現在)”. 東京大学宇宙線研究所. 2015年12月4日閲覧。
  5. ^ スーパーカミオカンデ事故原因究明等委員会報告”. 東京大学宇宙線研究所. 2015年12月4日閲覧。
  6. ^ 衝撃の光センサー破損事故”. 高エネルギー加速器研究機構. 2015年12月4日閲覧。
  7. ^ Hi-netが観測したスーパーカミオカンデ事故による震動”. 防災科学技術研究所 (2011年11月22日). 2015年10月13日閲覧。
  8. ^ 行政刷新会議、事業仕分け作業ワーキンググループが、「スーパーカミオカンデによるニュートリノ研究」を含む経費を予算縮減と評定”. 東京大学宇宙線研究所 (2009年11月26日). 2015年10月9日閲覧。
  9. ^ “「ハイパーカミオカンデ」実現へ 素粒子観測「スーパー」の20倍”. 中日新聞. (2015年1月29日). オリジナル2015年2月2日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150202020033/http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2015012902000241.html 2015年1月31日閲覧。 
  10. ^ “ハイパーカミオカンデ”. ハイパーカミオカンデ ホームページ. http://www.hyper-k.org 2015年1月31日閲覧。 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

座標: 北緯36度25分 東経137度18分 / 北緯36.417度 東経137.300度 / 36.417; 137.300