シコルスキー S-64
シコルスキー S-64
エバーグリーン・ヘリコプターズ社のS-64E
シコルスキー S-64 スカイクレーン(Sikorsky S-64 Skycrane)は、アメリカ合衆国のシコルスキー社で開発されたアメリカ陸軍のCH-54 タルヘの民間向けモデルの双発クレーンヘリコプターである。現在はS-64 エアクレーンがエリクソン・エアクレーン社で生産されている。
開発
[編集]シコルスキー時代
[編集]S-64は、「空飛ぶクレーン」の試作機S-60の拡大版として設計された。S-64は、4,050shp(3,020kW)のJFTD-12A ターボシャフトエンジンで6枚のメインブレードを駆動しており、1962年5月9日の初飛行に続き、西ドイツ陸軍での評価のために2機が製造された。西ドイツは発注しなかったが、アメリカ陸軍が6機のS-64Aを発注した(名称はCH-54A タルヘ)。少数のS-64Aと派生型のS-64Eがシコルスキー社により民間市場向けに製造された。
エリクソン時代
[編集]元々はシコルスキー社の製品であったが、1992年にエリクソン・エアクレーン社が型式証明と製造権を購入した。
その時からエリクソン・エアクレーン社がS-64の製造者かつ世界最大の運用者になり、機体・計器類の1,350箇所以上を変更してペイロードを引き上げた。貨物用以外にも派生型として森林火災用の消防機S-64Eを製造し、イタリアの森林警備隊や韓国の山林庁などに採用された。また、アメリカ軍が20トン水上基地の要求に合致する新エンジンを搭載したエアクレーンを再導入できるように既存のCH-54 タルヘを再生すると同様に新たなS-64も製造している。エリクソン・エアクレーン社では販売以外にもパイロットと機体の貸し出しも行っている。
エリクソン・エアクレーン社には各々のS-64に固有の名前を付ける伝統があり、最も有名なのはエルビス(Elvis)である。シラー・ブラザースの様なほかの運用会社もこれに倣い、自社のS-64Eに"Andy's Pride"と名付けた。S-64E オルガ(Olga)は、カナダ、トロントのCNタワーの頂部を設置する際に使用された。
派生型
[編集]シコルスキー スカイクレーン
[編集]エリクソン・エアクレーン
[編集]エリクソン・エアクレーンでは、より貨物の吊り下げに特化した改造を施している。
前の操縦席からは直下が見えにくいため、操縦席の後方にある後方監視席から操縦できるようになっており、貨物の上げ下ろし時に微調整が可能となった。後部操縦席には張り出しキャノピーを追加し、180度の視界を有する。直下の視界を確保するため、操縦桿はフライ・バイ・ワイヤによるサイドスティックとなっている。
- S-64E
- CH-54A タルヘに10,000リットル入りの消火剤タンクを取り付けた消防機。
- S-64F
- イタリア森林警備隊向けの消防機。
- CH-54Bのエンジンをプラット・アンド・ホイットニー JFTD12-5Aに換装。
運用
[編集]- エリクソン・エアクレーン
- エバーグリーン・ヘリコプターズ - S-64Eを1機。
- ヘリコプター輸送サービス - CH-54AとCH-54B。
- シラー・ブラザース カリフォルニア州ユバシティ - S-64Eを2機。
- カナディアン・エアクレーン ブリティッシュコロンビア州 - S-64Eを1機、S-64Fを1機。
- 森林警備隊 - S-64Fを4機。
以前の運用
[編集]事故
[編集]- ジプシー・レディ - 2006年遅くにカリフォルニア州ローズバレーに墜落[3][4]。修復され再就役。
- シャーリー・ジーン - 2007年4月26日にイタリアで墜落[5]。機体は焼失した[6]。
- オーロラ - 前の所有者のコロンビア・ヘリコプターズ社の拠点であるオーロラ空港に因んで命名[2]。2004年8月26日、飛行中の事故により登録抹消[7]。
性能・主要諸元
[編集](S-64E)The International Directory of Civil Aircraft [8]
- 乗員:3名(操縦士、副操縦士、後方操縦士兼監視員)
- 搭乗員:5名まで
- 搭載量:9,072kg(20,000lb)
- 全長:21.41m(胴体)(70ft 3in)
- 全高:5.67m(18ft 7in)
- 主回転翼直径:21.95m(72ft 0in)
- 円盤面積:378.1m²(4,070ft²)
- 空虚重量:8,724kg(19,234lb)
- 最大離陸重量:19,050kg(42,000lb)
- 発動機:2×プラット・アンド・ホイットニー JFTD12-4A(T73-P-1) ターボシャフトエンジン、4,500shp(3,555kW)
- 超過禁止速度:203km/h(126mph、109knots)
- 航続距離:370km(230mi、200NM)最大燃料と予備燃料
- 巡航高度:2,743m(9,000ft)
- 上昇率:6.75m/s(1,330ft/min)
登場作品
[編集]アニメ
[編集]- 『ポケットモンスター ベストウイッシュ』
- ロケット団の装備として登場。CH-54 タルヘに装備されたものと類似したモジュールを装備している。
- 『ポケットモンスター THE ORIGIN』
- ロケット団の装備として登場。外見は『ベストウイッシュ』に登場したものに準じている。
ゲーム
[編集]- 『Just Cause 2』
- 「H-62 Quapaw」の名称で本機とUH-1が混ざった外見の輸送ヘリコプターが登場する。
- 『グランド・セフト・オートシリーズ』
映画
[編集]- 『ソードフィッシュ』
- 劇中でバスを吊り運ぶ
関連項目
[編集]- シコルスキー・エアクラフト
- CH-54 (航空機)
- en:List of surviving Sikorsky CH-54s
- CH-53 (航空機)
- CH-53E (航空機)
- CH-47 (航空機)
- Mi-10 (航空機)
- Mi-6 (航空機)
出典
[編集]- ^ HAI Rotornews
- ^ a b Helispot photo
- ^ NTSB report in pdf
- ^ Inciweb - Helitanker Accident At Rose Valley
- ^ http://www.dgualdo.it/isead-report.htm Helicopters area of dgualdo.it (report excerpts in Italian)
- ^ NTSB report — NYC07WA152
- ^ NTSB report — WAS04WA012
- ^ Frawley, Gerard: The International Directiory of Civil Aircraft, 2003-2004, page 195. Aerospace Publications Pty Ltd, 2003. ISBN 1-875671-58-7