コモンウェルス首長

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イギリス連邦
コモンウェルス首長
Head of the Commonwealth
任命イギリス連邦加盟国首脳英語版
創設1949年
初代ジョージ6世

コモンウェルス首長(こもんうぇるすしゅちょう、英語: Head of the Commonwealth)、英連邦首長[1]は、イギリス連邦の象徴的なトップである。1949年に創設され、以来イギリスの君主がこの役職についている。

歴史[編集]

イギリスはかつて七つの海を支配すると言われていた植民地帝国(イギリス帝国)を形成していたが、1840年にカナダドミニオン英語版自治領)となって以降その意味合いは変質しつつあった。1901年にオーストラリア、1907年にニュージーランド、1910年に南アフリカ、1921年にアイルランドが自治を獲得した[2]

1926年にはバルフォア報告書により、ドミニオン諸国は「王冠に対する共通の忠誠において結合され、ザ・ブリティッシュ・コモンウェルス・オブ・ネーションズ(イギリス連邦)のメンバーとして自由に連合」した、平等で従属しない存在であると定義された[3]1931年ウェストミンスター憲章によってこの方針は正式なものとなり、各ドミニオンでも採択された[3]

1947年インドがドミニオンとして認可され(インド連邦)、翌年にはセイロンスリランカ)がこれにつづいた。インド制憲議会英語版共和制を採択する一方で、イギリス連邦への残留を望んだため、イギリスの君主に忠誠を誓うというイギリス連邦の枠組みは大きく見直されることとなった。1949年コモンウェルス首相会議により、イギリスの君主は「独立構成国の自由な連合の象徴およびそのようなものとして」コモンウェルス首長とされることとなった[4]。これにより、連邦加盟国はイギリスの君主に対する忠誠義務から解放され、脱退の自由を得ることで主体性を確保できるようになった[5]

役割[編集]

コモンウェルス首長には正式な任務は存在しないが、イギリス連邦の統合の象徴として大きな役割を担っている[6]。1952年から70年にわたってコモンウェルス首長であったエリザベス2世は、コモンウェルスの首脳と会談し、諸国の国民と触れ合ってきた[7]

またイギリス連邦に加盟するための条件の一つとして、コモンウェルスの慣習と規範を受け入れることがあるが、その中には現職のコモンウェルス首長を首長として承認することが明記されている[8][9]

任命[編集]

就任しているのはこれまでイギリスの君主であるが、世襲ではない。2018年4月20日に、当時プリンス・オブ・ウェールズであったチャールズ3世イギリス連邦首脳会議英語版によってエリザベス2世の後継のコモンウェルス首長として指名された際には、イギリスのテリーザ・メイ首相とカナダジャスティン・トルドー首相がチャールズ3世の首長就任を事前に支持する声明を出していた。この際にメイはチャールズが「40年以上」英連邦を「誇りに思って支えてきたこと」から、首長としてふさわしいと述べている。またエリザベス2世はチャールズがいつの日か首長の地位を引き継ぐことを「切なる願い」であると述べていた[10][1]

一方で加盟国の間では、この地位を加盟国間で持ち回り制にすべきという案も存在していた[1]

歴代のコモンウェルス首長[編集]

在職者 在職期間
開始 終了
1 Georg VI England.jpg ジョージ6世
(1895年12月14日 - 1952年2月6日)
1949年4月26日/28日[注釈 1] 1952年2月6日
2 Elizabeth II in Berlin 2015 (cropped).JPG エリザベス2世
(1926年4月21日 - 2022年9月8日)
1952年2月6日 2022年9月8日
3 Charles, Prince of Wales in 2021 (cropped) (2).jpg チャールズ3世
(1948年11月14日 - )
2022年9月8日

注釈[編集]

  1. ^ ロンドン宣言英語版に基づく。

出典[編集]

  1. ^ a b c 英連邦の次の首長はチャールズ英皇太子に決定 女王の強い意向 - BBCニュース”. BBCニュース. BBCニュース (2018年4月21日). 2023年1月15日閲覧。
  2. ^ 松田幹夫 2001, p. 2.
  3. ^ a b 松田幹夫 2001, p. 3.
  4. ^ 松田幹夫 2001, p. 3-4.
  5. ^ 渡辺昭一イギリスのコモンウェルス体制の再編とインド (特集 イギリス帝国の脱植民地化のプロセス――カナダ,インド,アフリカ――)」『ヨーロッパ文化史研究 = The study of the history of European culture』第13巻、東北学院大学ヨーロッパ文化研究所、2012年、88頁、ISSN 18811914NAID 120006917152 
  6. ^ 松田幹夫 2001, p. 4.
  7. ^ 松田幹夫 2001, p. 4-5.
  8. ^ King CharlesIII is now head of the Commonwealth, but what is it?”. LeMonde (2022年9月9日). 2023年1月15日閲覧。
  9. ^ 鶴田綾「ルワンダのコモンウェルス加盟をめぐって」『中京大学国際学部紀要』第1巻、2021年、74頁、ISSN 2436-2875 
  10. ^ BBCNews (2018年4月20日). “Prince Charles to be next Commonwealth head”. BBC News. 2023年1月15日閲覧。

参考文献[編集]