グラス・ガヴナン

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キャン(キアン)の魔法の牛と、赤毛の少年(バロールが化けている)[1]
Stephen Reid(挿絵)、T. W. Rolleston Myths and Legends、1910年

グラス・ガヴナンあるいはグラス・ガヴレンアイルランド語: Glas Gaibhnenn,[2][3] Glas Ghaibhleann[4]; 発音表記: Glos gov-nan[5], glas-gav-e-lan;[6]アイルランド英語: Glas Gaivlen[2], Gloss Gavlen[7])は、アイルランドの口承民話ケルト神話)に登場する豊穣の牝牛。

名前[編集]

グラス・ガヴレン Glas Gaivlen (音写)が元の採集話のままの表記だが、これをグラス・ガヴナン(アイルランド語: Glas Gaibhnenn[2][3])と訂正すべきと編者のオドノヴァン英語版が注釈している[2]。グロス・ガヴレン Gloss Gavlen (音写)がラーミニー英語版の採集話での表記である[7]

また Glas Gaibhneach という表記もオドノヴァンは別の文献で使っている(オカリーが書簡に書写)[8]。 さらなる異綴りに Glas Gamhain, Glas Gamhnach 等がある[9]

毛色[編集]

グラスは「緑色(の牝牛)」の意だとオドノヴァンは注釈する。だがグラス・ガヴナンは「鍛冶師の灰色(の牝牛)」というのがラーミニーの[10]、そして「鍛冶師ゴヴニュの灰色または虎毛英語版の牝牛」というのがリース英語版の解釈である[11]

また別の類話では、白い牝牛グラスダウリャカナ(?) Glassdhablecana (‘両脇が灰色な牝牛’の意)という設定になっている(W・H・マクスウェル英語版が投稿した短編)[注 1][14]。マキロップの事典は、語釈とはしていないが「緑の班のある白い牝牛」だと説明する[15]

このように、グラス・ガヴナンの「グラス」は毛色を指すものとして意見は一致するが。この単語の意味する色合いの幅が広いため、説明が様々になっている[注 2]

冠名とする語釈[編集]

~ガヴナンを「鍛冶師の(牝牛)」とラーミニーが解釈する一方[注 3][10]、鍛冶師ゴヴニュの名を冠した名であるととリースは一歩踏み込んで解釈した[11][注 4]

民話では、鍛冶師ガヴニン (Gaivnin)や[17]、ガヴィジーンなどの名で呼ばれているので[7]、それらだと持ち主名ともおおよそ一致する。

仔牛のない牝牛[編集]

だが、名前の後半の~ガヴナンは、アイルランド語 gamuin 「仔牛、当歳牛と解釈できると、教会史家で地誌作家のパトリック・パワー英語版神父が指摘する[9]

しかしカーティン英語版の説明は少し違っていて、類話の一つのグラス・ガナッハ Glas Gainach [18]という異綴りにみられる gaunach は仔牛でなく、「一歳牛をもつ母牛」の意味であり、つまり当年は出産していない牝牛との事を指すとする。さらに、グラス・ガヴラン Glas Gavlen (カーティンがドニゴール県から採集した民話での名前[19])について、gavlen は、「五年も生んでいない母牛」という意味であると、牛飼いから説明された[20]

概要[編集]

キアンが魔法の牛を獲得する試練の最中、または牛奪還のすべとしてバロールの娘と巡り合い、ルーの父親となる民話。いくつかの例が、アイルランド英語で朗誦されて19世紀に採集・記録された。これは正統な神話(中世の写本に残る古文学)ではなく、であるが、グレゴリー夫人に代表される再話版神話に織り込まれている。

アイルランドの伝承[編集]

グレゴリー夫人再話[編集]

グレゴリー夫人版[21]の筋書きはおおよそ次のようなものである。邪眼のバロールは、自分が孫に殺される運命だと手下のドルイド僧に予言される。これを受けてバロールは一人娘のエスリン英語版[注 5]をガラスの塔に幽閉[注 6]。同じ頃、「火の尾根」という名の城に[注 7]ゴヴニュ、サウィン(サヴィン)、キアンの三兄弟が住んでいた[注 8][注 9][注 10]。キアンが自慢の牛グラス・ガヴナンを持って鍛冶師のゴヴニウを訪ね、剣の作成を注文する間、もう一人の兄弟がバロールに騙されて牛を盗まれてしまう。キアンは、山のビローグというトゥアハ・デ・ダナーン神族の女ドルイド僧(魔女)に相談するが[注 11]、バロールが生きながらえる間は牛は戻らないと教わる。キアンはこの魔女が呼び起こした海風に乗って海峡を渡り、バロールの獄塔に侵入し、バロールの娘と契りを交わす。再話はここで娘が産み落とした子供・長腕のルーに焦点が切り替わるので、牛を取り戻せたか否かが不明である[3]

ラーミニー採集話[編集]

ウィリアム・ラーミニー英語版収集の民話、題名「グロス・ガヴレン The Gloss Gavlen」は、より後年に発表された作品だが、主人公名が神話と合致する都合上、先に紹介する。話は二部構成になっている[29]

前半は、大工のゴバン英語版(工匠ゴバン)が[注 12]強打のバラルという城主の依頼で豪勢な城を建設した[注 13]。しかし完成すると、バラルは大工に他人の城の普請をさせまいと、その殺害を計略する。すんでのところ助かったゴバンは、でたらめな名前の道具三式をバラルの息子に取りに行かせる。大工の妻は事態を察し、その子を人質のたてにとって、正当な給金と大工の無事な返還を要求する[7][注 14]

後半では、依頼主がまず最高の鍛冶の名匠と評される鍛冶師ガヴィジーンを招へいし[注 15]、鍛冶師は大工の入れ知恵で、一日二十樽の乳を出す牝牛グラス・ガヴレン(?)を報酬に求める。バラルは応じたものの、その牛がさまよったり逃げださずにするため必要な手綱を渡さなかった。そのため、鍛冶師は牛を見張りする剣士を募集しなくてはならず、その給金代わりに応募者には剣を鍛えてやっていた。[38]

この後半の主人公は、牛見張りに応募したコンチェの息子キアンという男だったが[注 16] 、しくじって牛を逃がしてしまい、鍛冶師に斬首されることになってしまう。しかし三日間の猶予を請い、牛の奪還に向かう。海岸に着くとなぜかマナナウン・マク・リルが小舟で迎えにきており[注 17]、キアンが得た獲物の半分を山分けにするという約束で、牛のありかの国に送り届けてもらう。まだ肉を生で食う習慣があるという、その極寒の地で、キアンはバラルの料理人として雇われる。そしてマナナーンの錠解きの魔法により、監禁されている娘との逢引を果たす。娘に子が生まれた頃、キアンはいとまを乞い、赤子と牛と手綱を抱えてマナナーンの小舟に乗り込む。バラルは気づいて大波や火炎の海原をおこすが、マナナーンが鎮めてしまう。マナナーンは約束の報酬として赤子をもらいうけて、これをドルドナ(Dul Dauna)と名づけて育てる[注 18]。この子はある日、船で通りかかったバラルにむかって投げ矢を投げつけてこれを殺してしまう[7][注 19]

なお、前半部分には、類話としてシュトラスブルクの時計英語版や、 アプレンティス・ピラー英語版(徒弟の柱)にまつわる伝説がある[29]

オドノヴァン採集話[編集]

こちらは別に採集された、粗筋がよく似た類話である。ガヴィダ、マク・サヴィン(マク・サウィン)、 マク・キニーリーという三兄弟が[注 20]ドニゴール県の沿岸に住んでおり、その海を隔てた向こうのトーリー島英語版には、相手を石化する目を前頭部と後頭部に持った恐ろしい盗人バロール(Balor)が住んでいた。三兄弟のうちガヴィダは鍛冶師で、「火の尾根」〔ドゥリム・ナ・テーネ〕に鍛冶場をかまえていた[注 7]

マク・キニーリー(キアンに相当)は地主で、グラス・ガヴレン(Glas Gaivlen)という、たいそう乳の出のいい牝牛を持っていた。バロールはドルイド僧から、孫に殺されるという運命の宣告を受ける。それが起こらぬよう、娘のエスネ (?)を塔に閉じ込める[注 21]。先祖によって建てられたその塔は「大塔(Tor More)」という名の大岩の上にあり、到達困難であった。バロールは、ある日ついに宝の牛を奪いに上陸した。マク・キニーリーは鍛冶師の兄弟に用事があり、牛の手綱をもうひとりの兄弟に預けていた。バロールは牛を引いているその男に向かって「後の二人はお前の鋼を全部使って自分たちの剣を作り、お前の剣は鉄で作ろうともくろんでるぞ」と嘘を吹き込み、その場を去らせた。兄弟らが気が付くと、バロールはすでに牛を奪って、島の海峡の半ばまで漕ぎ出していた。

マク・キニーリーには、山のビローグという女性の守護霊(リャナンシー)が憑いており、妖精女(バンシー)でもある彼女によれば、牛を取り戻すにはバロールをまず斃さねばならない。その手筈として、この妖精女は、嵐に乗せて島へと連れて行った。幽閉中の娘の世話役は十二人の侍女たちに限られており、塔は男人禁制だったため、妖精女は男を女装させて紛れ込ませた。男女は恋仲になり、三人の赤子が生まれてしまった。こちらの民話では牛が奪還されたか不明である。マク・キニーリーは、父親になったことが発覚しバロールに殺され、その血色が染みついた岩がいつまでも残った。三人の嬰児のうち、一人だけが救われて、鍛冶師ガヴィダの丁稚として育てられた。ある日、バロールがこの鍛冶場に槍を注文しに現れ、うっかり自分がマク・キニーリーを殺したことを自慢した。マク・キニーリーの遺児〇〇〇(名前は明かされないが、長腕のルーに相当する子)は、鍛冶作業にいそしむふりをしながら機をうかがい、赤熱した鉄棒をバロールの目に突き刺して敵討ちを果たした[2]

風土伝説とフィアナ伝説[編集]

アイルランド、クレア県の市町村英語版のひとつ、シャリー英語版にある、ドルメンらしき跡は、俗に「グラスの床」すなわち「青牛の床」 (Leaba-na-glaise) [44]と呼ばれており、鍛冶師の所有地だったと伝わる[44]。巷説では、その鍛冶師はマク・キニーリーか、ロン・マクリオヴァだったとされる[注 22][注 9]。同県には、「グラスの山」[注 23]ないし「グラスの丘」と呼ばれる地形もあり、その頂上あるいは中腹のドルメンは「グラスの岩」と呼ばれ[注 24]、この山の洞窟には鍛冶師ロンが住んでいた。これは小人(ドワーフ)だとも、アイルランドで最初に鋭利な武器を作った人とも語り継がれる[46]

オドノヴァンが記録した口承によれば[8]、ここに住んだという鍛冶師ロンは、トゥアハ・デ・ダナーン神族のひとりで、三つ手に片足、胸から生えた手で鉄を返し、両腕でそれを鍛錬する。すばらしい跳躍力の、その一本足で移動する。「ロンは長年の間、グラス・ガヴナハ(?)というかけがえのない牝牛によって養われていた[注 25]。その牛は、火事場から遠くないグラスの山で(放牧されて)牧草を食べていた。.. この牛は、スペインから盗んで来たものだったが..」数々の場所を転々して、ここ以外にその牛に満足に餌を与えるほど肥沃な地はアイルランドのどこにもなかった。「この牛は、どんなに大きな器を搾乳のために据えても乳で満杯に満たした」。牛が満たせない器が存在するかをめぐり、二人の女性が賭けをした。一人はざる(漉し器)を持ってきたのだが、牛乳はあふれかえり、七つの川を形成した。また「この牝牛の蹄は逆についていて、力づくでこの牛を奪おうという追跡者たちをかならず化かしてしまう」などとこの風土伝説はつづく。ロンはのちにフィン・マクールを訪ね、競争を申し出た。相手の俊足のキールテ(カイルテ英語版)は、「グラスの床」まで走り抜けるのに鍛冶師を出し抜いた[8][注 26]

民話例の一覧[編集]

いかに出版されている民話を列挙する。上では解析していないが、ジェレマイア・カーティン英語版編『Hero-Tales of Ireland』に三篇が所収される[50]。なおウィリアム・ジョン・グリフィズ英語版編『マソヌウイの息子マース英語版』(1928年)[51]に何本かの民話の要約が記載されている[4]

  • 「グラス・ガヴレン」(仮題).
原典:"Glas Gaivlen" トーリー島英語版在住 Shane O'Dugan より1835年に採集された口承民話[2]
  • 「バラルの伝説」
原題:"The Legend of Ballar". 1837年発表[52]
  • 「グロス・ガヴレン」
原題:"The Gloss Gavlen" アキル島英語版在住 John McGinty より採集された口承民話[7]。1884年以降に採集[53]
  • 「雌牛」
原題:"The Cow" コロフィン市在住の John Reagh O'Cahane より採集された口承民話[54][55][56]
  • 「エリンの刀鍛冶エリン・ガウと牝牛のグラス・ガイナッハ(?)」
原題: "Elin Gow, the Swordsmith from Erin, and the Cow Glas Gainach" ケリー県ディングル町の以東、イーグル山英語版在住 Maurice Lynch[18]
  • 「トーリー島のバロール」
原題:"Balor on Tory Island" ドニゴール県ゴータホーク英語版在住 Michale Curran[19]
  • 「邪眼のバロルと孫のルイ・ラヴァーダ」
原題:"Balor of the Evil Eye and Lui Lavada his Grandson" コネマラ地域在住 Colman Gorm[17]
  • 「バロルとマク・キンリー」
原題:"Balor agus Mac Cionnfhaolaidh" (アイルランド語版;上述「トーリー島のバロール」に近い)[43]

注釈[編集]

  1. ^ "the grey-flanked-cow"。 アイルランド語で dabh は‘牝牛’,[12]で damh が‘牡牛’、leaca が‘顔の側面、頬;丘の傾斜、坂’等の意[13]
  2. ^ アイルランド語の glas は、日本語の「青」が「グリーン」でも「ブルー」でもありうるし、さらに「グレー」も含む。
  3. ^ <ガウ(ガヴ)(アイルランド語: gobha, gabha‘鍛冶師’[16])に拠る。
  4. ^ オドノヴァンの版の民話だと、持ち主が鍛冶師ではないので、そのままではこの冠名語句的な解釈はできない。
  5. ^ グレゴリー夫人はEthlinnに訂正しているが、オドノヴァン採集話では Ethnea[2]
  6. ^ "ガラスの塔"はグレゴリー夫人の脚色。このトーリー島にはフォウォレ族コナン英語版の塔(アイルランド語: Tor Conaing) が建っていた場所という伝説が土着しており、トーリー島の名もそれにちなむとされる。バロールもフォウォレ族である。そして伝ネンニウスブリトン人の歴史』の記述に拠れば島にはガラスの塔が存在した[22]
  7. ^ a b 現今のドニゴール県ドラムナティニー[43]。"Druim na Teine, Ridge of the fire"。カーティン編「トーリー島のバロール」にも"druim na teine (hill of fire)"とみえる[19]
  8. ^ 綴りは Goibniu, Samthainn, Cianである。名前から"Mac"が除かれているなど、オドノヴァン採集の原話の名(後述)とは異なる。鍛冶師の兄弟は鍛冶の神と同名なのでゴヴニュとするが、古アイルランド式であり近代発音(ゴウニュ)ではない。
  9. ^ a b "mh", "th", "mhth"発音について。"mh"については、チャールズ・スクワイアはSamhain /'sa̯v-ïñ/「サヴィン」とするが、グレゴリー夫人は Sow-in 「サウィン」とする。"th"ではスクワイアは Scathah は /'skɑh-ɑx/ 「スカハアハ」とするが、グレゴリー夫人 Schathniamh Scau-nee-av とあり、前者は "th" を "h"、後者は母音扱いにしている[23][24]。"th"の古代発音はθ("thistle" の "th")であり12世紀ころ転じた[25][26]。"mhth"は歴史的綴りで本来/βh/(ヴヒィ?)の音価だったとあるが[26]、その細かい音写は省く。
  10. ^ 普通名詞としては、Ó Dónaill (1977)の辞書によれば"sámhthán" = "sabhán1" とある。同辞書にはこれを sabh の指小形で'小さな棒'の意味とする。しかし sabhán には'子狼、仔犬'の意味もあり[27]、アイルランドの姓"Ó Sabháin"の語源となっていて、この姓は Sawane; O Sawan; Savin等と英国化されている[28]
  11. ^ グレゴリー夫人は "Birog"、ローレストン "Biróg"。オドノヴァン採集話では"Biroge"で、後述のように守護霊である。
  12. ^ 原典は ゴバウン・シール Gobaun Seer とあるが、これは俗の表記で、正しいアイルランド語では Goban Sao(i)r である[30]。"Gobban the Builder"等と英訳される[31]。"saor, saer は古くは広義の'職人'の意だったが、のちに'大工、左官'を特に意味するようになった[32]
  13. ^ 原典はバラル・ベヴァン(?) Balar Beimann とあるが、これについては"Balar Beimann or ‘Balor of the Mighty Blows’"との説明がある[33]。ただし正しい古アイルランド語表記は"balcbeimnech"である[34][35]。"balc"は'強く'、"béimnech"は'打ちし、殴りし、切りし'等の意の形容詞[36]
  14. ^ 前半のここまでは類話があり、エドワード・ウォルシュ英語版が1833年に《ダブリン・ペニー・ジャーナル英語版》誌で発表している。ただし依頼主はバラルでなく某英国王である[37]
  15. ^ 綴りは Gavidjeen Go。"dj"は「ヂィ」音、Kontje の"tje"は「チェ」音とみなす。鍛冶師の普通名詞はアイルランド語: gabha; 古アイルランド語: gobaeであるが、"Gaivnin Gow"という異表記がカーティンが採集したうちの一篇にみられる[17]
  16. ^ Kian son of Contje。正しいアイルランド語表記は Cian mac Cáinte[4]
  17. ^ "Mananaun son of Lir"。
  18. ^ これはイルダナハ、つまり長腕のルーのあだ名の転訛とされる[39]
  19. ^ ラーミニーの話集例は、チャールズ・スクワイアも要約している。スクワイアは、ドルドナが"ポケットから"武器を取り出したことについて"ドニブルックの市の日の伝統も、どうやら太古の頃からあったことが偲ばれる"とコメントしているが[39]ドニブルックの市英語版というのは隠語で、"喧嘩"等の意味と辞書にあり、場合によっては"派閥間闘争"のこと[40][41]井村君江は別解釈をしている[42]
  20. ^ 綴りだがGavidaは音写とみられ、Mac Samhthiann (誤記)/Mac Samthainn はアイルランド語表記、主人公についてはアイルランド語表記Mac Cinnḟaelaiḋ (Mac Cinnfhaelaidh)と、英語式 "Mac Kineely"とが併記される。
  21. ^ Ethnea
  22. ^ Lon Mac Liomhtha; フィン・マックールの名剣マク・アン・ルーンの製作者。この líomhtha には'磨かれた、(剣などが)研ぎ澄まされる等の加工をされた'の意味であり[45]、Ó Dónaill (1977)の辞書のオンライン版"líomh"には発音音声が付属し、アルスター方言だと"リユ"→"マクリュワ"、コノート方言だと"リオヴ"→"マクリオヴァ"と判じた。
  23. ^ Slieve-n-glaise
  24. ^ Carrick-na-glaise
  25. ^ Glas Gaibhneach
  26. ^ 採集元は、クレア県コロフィン市在住の仕立て屋 John Reagh O'Cahane で[47]語り部シェンハ英語版、英語でシャナキーともいう)でもあった[48]; 話の筆記は O'Donovan 書簡, O.S.L. [Ordnance Survey Letters] p. 68 に記録されたので[49][47]O'Donovan 1997の一冊本に再掲されている。Borlase 1897, 3: 883–887に抜粋・注釈、Westropp 1895, pp. 227–229で翻案。

出典[編集]

脚注
  1. ^ Rolleston, T. W. (1911). “The Coming of Lugh”. Hero-tales of Ireland. Constable. pp. 109–112. https://books.google.com/books?id=yhcSAQAAIAAJ&pg=PA109 
  2. ^ a b c d e f g O'Donovan 1856, pp. 18–21, note s.(採集民話)無題。p. 18: "a cow called Glas Gaivlen [rectè; Gaibhnenn]"
  3. ^ a b c Gregory 1905, pp. 19–21(再話)
  4. ^ a b c Bruford (1966), p. 162.
  5. ^ Gregory 1905, p. 472
  6. ^ Heaney 1994, p. 246.
  7. ^ a b c d e f Larminie 1893, p. 1-9(採集民話)「グロス・ガヴレン」
  8. ^ a b c O'Donovan 1997, Ordnance Survey Letters所収、コロフィン在住 John Reagh O'Cahane の語った民話をオドノヴァンが筆記(transcribe)し、オカリーが書簡に書写した。Borlase 1897, 3: 883–887, "The Cow" に抜粋・注釈; Westropp 1895, pp. 227–229に翻案。
  9. ^ a b Power, Patrick (1917). Place-names and antiquities of S.E. Cork, Ireland. Dublin: Hodges. pp. 199, 205, 216. https://archive.org/details/placenamesantiqu02powe/page/216/mode/2up/search/gamhnach 
  10. ^ a b Larminie (1893), p. 251: "Gloss Gavlen" means simply the Grey (cow) of the Smith, gavlen being properly gavnen―(gaibhnenn) according to O'Donovan.
  11. ^ a b Rhys (1888), p. 319.
  12. ^ O'Reilly (1864) 辞書 "dabh"
  13. ^ Gabshegonal Ó Dónaill (1977)の辞書、"leaca"
  14. ^ Maxwell 1837, p. 527: "white heifer"
  15. ^ "Glas Ghaibhleann", Mackillop 1998 ed., Oxford Dictionary of Celtic Mythology, pp. 253–254: "Celebrated magical cow, white with green spots, whose inexahustible supply of milk signalled prosperity".
  16. ^ O'Reilly (1864) 辞書 "gabha", "gobha",
  17. ^ a b c Curtin (1911), pp. 296–311「邪眼のバロルと孫のルイ・ラヴァーダ」
  18. ^ a b Curtin (1911), pp. 1–34「エリンの刀鍛冶エリン・ガウと牝牛のグラス・ガイナッハ(?)」。語り部は p. 549
  19. ^ a b c Curtin (1911), pp. 283–295「トーリー島のバロール」
  20. ^ Curtin (1911), pp. 549–550.
  21. ^ 館野 2011によるこの第2巻・第1章の試訳がある。
  22. ^ Arbois de Jubainville, Henry (1903), The Irish Mythological Cycle and Celtic Mythology, Dublin: Hodges, Figgs & Co., p. 67, https://books.google.co.jp/books?id=7EPXAAAAMAAJ&pg=PA67&redir_esc=y&hl=ja 
  23. ^ Squire 1913, pp. 447–450
  24. ^ Gregory 1905, pp. 472–473.
  25. ^ "Pronunciation Guide (Old Irish / Modern Irish)", Mackillop 1998 ed., Oxford Dictionary of Celtic Mythology, pp. xxv–xxvii.
  26. ^ a b Ó Baoill, Dónall P. (2009). “6 Irish”. In Ball, Martin J.. Hero-tales of Ireland (2nd revised ed.). Routledge. ISBN 1134100345. https://books.google.com/books?id=lDZASvUihk0C&pg=PT193 
  27. ^ O'Reilly (1864) 辞書 "sabhan"
  28. ^ The Oxford Dictionary of Family Names in Britain and Ireland (2016), s.v. "Sabin"< Ó Sabháin < sabh 'cub'; e.g. Sawane; O Sawan; Savin.
  29. ^ a b Westropp 1917, p. 183.
  30. ^ “The Manufacture of Violins and Antique Furniture”, Irish Builder and Engineer  (Howard MacGarvey & Sons) 28 (636): 171, (15 June 1886), https://books.google.com/books?id=NDhJAQAAMAAJ&pg=PA171 
  31. ^ O'Curry, Eugene (1873), On the Manners and Customs of the Ancient Irish, 3, W. K. Sullivan, Williams & Norgate, p. 40, https://books.google.com/books?id=2B5aAAAAcAAJ&pg=PA40 
  32. ^ eDIL s.v. "saer (2)".
  33. ^ Squire 1905, p. 49.
  34. ^ Arbois de Jubainville 1903, p. 104.
  35. ^ Gruffydd 1928, p. 176.
  36. ^ eDIL s.v. "balc"; "béimnech (1)".
  37. ^ E. W. (Edward Walsh) (6 July 1833), “The Goban Saer”, The Dublin Penny Journal 2 (53): 8, JSTOR 30002866, https://books.google.com/books?id=C3g4AQAAMAAJ&pg=PA8 
  38. ^ Westropp (1917), p. 183, " the second part of the tale shows Balor questioning his victims as to the best smith to do the iron-work, Goban replies ‘the Gavidjeen Go’".
  39. ^ a b Squire 1905, p. 237.
  40. ^ Hurley, John W. (2007). Shillelagh: The Irish Fighting Stick. Caravat Press. p. 312. ISBN 978-1-4303-2570-3. https://books.google.com/books?id=ZrFMHmsMmWAC&pg=PA312. "euphemistically to mean a faction fight" 
  41. ^ Ó Maitiú, Séamas (Spring 1996). “Donnybrook Fair: carnival versus lent”. 2020年4月10日閲覧。
  42. ^ 参照:井村 1990『ケルトの神話』85頁。
  43. ^ a b Laoide, Seosamh (1913) [1909]. “XIII Balor agus Mac Cionnfhaolaidh”. Cruach Chonaill. Dublin: Chonnradh na Gaedhilge. p. 177. https://archive.org/stream/cruachchonaillti00lloyuoft#page/177/mode/2up , 本文 pp. 63–65
  44. ^ a b Borlase 1897, p. 883(O'Donovan が別途採集した土地伝説の要約を引用)
  45. ^ O'Reilly (1864) 辞書 "liomhtha"
  46. ^ Borlase 1897,"Lon Mac Liomhtha was reported to have lived on this mountain in a cave. He was represented as a dwarf, and as the first who ever made edged weapons in Ireland."
  47. ^ a b Westropp 1895, p. 227.
  48. ^ Borlase 1897, p. 887, note †
  49. ^ Borlase 1897, p. 884, note ‡
  50. ^ Brown, Arthur C. L. (August 1924), “The Grail and the English Sir Perceval. V”, Modern Philology 22 (1): 87–88, JSTOR 433319 
  51. ^ Gruffydd 1928, pp. 65–76.
  52. ^ Maxwell 1837, pp. 527–530.
  53. ^ Larminie 1893, pp. xxiii–xxv.
  54. ^ O'Donovan & O'Curry 1997.
  55. ^ Borlase 1897, pp. 883–887.
  56. ^ Westropp 1895, pp. 227–229.
参考文献

外部リンク[編集]