オセアニアにおけるLGBTの権利

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オセアニアにおけるLGBTの権利
     同性婚が実施された      国外で行われた同性結婚を承認 (アメリカ領サモア)      同性のカップルを承認していない      憲法上で同性婚を制限(パラオ)      法律上で同性間の性行為を禁止
     同性婚が実施された

     国外で行われた同性結婚を承認 (アメリカ領サモア)      同性のカップルを承認していない      憲法上で同性婚を制限(パラオ)

     法律上で同性間の性行為を禁止
同性間の
性交渉
14か国中8か国で合法
12の地域のうち11の地域で合法
性自認/性表現 14か国中2か国で合法
12の地域のうち7つで合法
同性間の
関係性の承認
14か国中2か国で認められている
12の地域のうち8つで認められている
制限:
14カ国中1カ国で憲法上で同性婚が禁止
同性カップルによる
養子縁組の引受
14か国中2か国で合法
12の地域のうち7つで合法
同性愛者を
公表しての
軍隊勤務
軍隊を持っている6カ国のうち2カ国で公然と奉仕することを許可
12の地域すべてで許可
差別保護 14か国中7か国で保護
12の地域のうち8つで保護

オセアニアは他の地域と同様に、同性愛に関する法律が非常に多様である。ニュージーランドオーストラリアグアムハワイイースター島北マリアナ諸島ウォリスフツナニューカレドニアフランス領ポリネシアピトケアン諸島がLGBTコミュニティの重要な権利を承認する一方で、7つの国・地域は同性愛者に対して刑事罰を科している[1]。オセアニア全域で受け入れが拡大しているが、LGBTIコミュニティにとって、暴力と社会的不名誉は依然として問題となっている[2]。これはまた、同性愛が犯罪とされているパプアニューギニアソロモン諸島などの国でのHIV治療へのアクセスを含む医療の問題につながっている[3]

大英帝国は、太平洋の植民地を含む領土全体に保守的な社会的態度と反同性愛法を導入した[4]。この遺産は、その後の英連邦の大多数の国で存続している。オセアニアでのLGBTの権利への反対者は、反同性愛法自体が植民地時代の遺産であるにもかかわらず、それが伝統であるとし、同性愛は「西洋の悪習」であると主張している。いくつかのオセアニア諸国には、サモアファアファフィネ英語版サモア語: fa‘afafine)やトンガファカレイティ英語版マオリ語: fakaleiti)など、セクシュアリティとジェンダーの独特な地域の視点を反映する植民地化以前の古代の伝統がある[5]

国・地域別のLGBTの権利

オーストラリア[編集]

国: 同性間の性交渉 同性間の関係性の承認 同性結婚 同性カップルによる養子縁組の引受 同性愛者を公表しての軍隊勤務 反差別(性的指向) 性自認およびその表現の関連法
オーストラリアの旗 オーストラリア (クリスマス島 (オーストラリア)の旗 クリスマス島ココス諸島の旗 ココス諸島ノーフォーク島の旗 ノーフォーク島を含む) Yes 1994年に全域で合法
+ 国連の同性愛非犯罪化宣言に署名
Yes 州および連邦法で事実婚を容認

シビルユニオン政策:ACTTASVICNSW

Yes 2017年より合法 Yes/No 養子縁組を容認:ACTNSWWA
継子を容認:TAS
Yes 1992年より Yes 全ての反同性愛差別が禁止 Yes 全州および地域で法制化
ニュージーランドの旗 ニュージーランド Yes 1986年より合法
+ 国連の同性愛非犯罪化宣言に署名
Yes 2004年より合法 Yes 2013年より合法 Yes Yes Yes 全ての反同性愛差別が禁止 Yes 2006年より1993年の人権法の性差別条項が適用

メラネシア[編集]

国: 同性間の性交渉 同性間の関係性の承認 同性結婚 同性カップルによる養子縁組の引受 同性愛者を公表しての軍隊勤務 反差別(性的指向) 性自認およびその表現の関連法
東ティモールの旗 東ティモール (オセアニアに分類される場合もある。参考) Yes 1975年より合法[6]
+ 国連の同性愛非犯罪化宣言に署名
No No No 不明 No No
フィジーの旗 フィジー Yes 2010年より合法[6]+ 国連の同性愛非犯罪化宣言に署名 No No No 不明 No 全ての反同性愛差別を禁止した1997年の憲法が撤回された 不明
ニューカレドニアの旗 ニューカレドニア (フランスの海外県) Yes 合法 Yes 2009年より民事連帯契約 No No Yes フランス軍 不明
パプアニューギニアの旗 パプアニューギニア No 違法[6] No No No No No No
ソロモン諸島の旗 ソロモン諸島 No 違法[6] No No No 軍隊がない No No
バヌアツの旗 バヌアツ Yes 2007年より合法[6] No No No 不明 No No

ミクロネシア[編集]

国: 同性間の性交渉 同性間の関係性の承認 同性結婚 同性カップルによる養子縁組の引受 同性愛者を公表しての軍隊勤務 反差別(性的指向) 性自認およびその表現の関連法
グアムの旗 グアム (米国)未編入の自治的領域 Yes 1979年より合法 Yes 2013年より合法 Yes 2015年より合法 Yes 2002年より合法 Yes/No 2010年より合法 (完全実行ではない) Yes アメリカ本土に準拠 Yes アメリカ本土に準拠
ミクロネシア連邦の旗 ミクロネシア連邦 Yes 合法[6] No No No Yes/No 2010年より合法 (完全実行ではない) Yes アメリカ本土に準拠 Yes アメリカ本土に準拠
キリバスの旗 キリバス No 男性は違法
Yes 女性は合法[6]
No No No 軍隊がない No No
マーシャル諸島の旗 マーシャル諸島 Yes 2005年より合法[6] No No No Yes/No 2010年より合法 (完全実行ではない) No
ナウルの旗 ナウル No 男性は違法
Yes 女性は合法[6]
No No No 軍隊がない No No
北マリアナ諸島の旗 北マリアナ諸島 Yes 1983年より合法 No No No Yes/No 2010年より合法 (完全実行ではない) Yes アメリカ本土に準拠 Yes アメリカ本土に準拠
パラオの旗 パラオ Yes 2014年より合法+ 国連の同性愛非犯罪化宣言に署名 No No No 軍隊がない No No

ポリネシア[編集]

国: 同性間の性交渉 同性間の関係性の承認 同性結婚 同性カップルによる養子縁組の引受 同性愛者を公表しての軍隊勤務 反差別(性的指向) 性自認およびその表現の関連法
アメリカ領サモアの旗 アメリカ領サモア (米国)非自治的領域[7] Yes 1899年より合法 No No No Yes/No 2010年より合法 (完全実行ではない) Yes アメリカ本土に準拠 Yes アメリカ本土に準拠
イースター島の旗 イースター島 (チリ領) Yes 1998年より合法 No No No No No
クック諸島の旗 クック諸島 ( ニュージーランド自由連合) No 男性は違法
Yes 女性は合法[6]
No No No Yes ニュージーランド軍 No No
フランス領ポリネシアの旗 フランス領ポリネシア (フランスの海外県) Yes 合法 No No No Yes フランス軍 不明
ニウエの旗 ニウエ ( ニュージーランド自由連合) Yes 2007年より合法[6] No No No 軍隊がない 不明
ピトケアン諸島の旗 ピトケアン諸島 (イギリスの海外領土) Yes 1967年より合法 Yes 2005年よりパートナーシップ法 No Yes Yes Yes ほぼ全面的に反同性愛差別法により禁止
サモアの旗 サモア No No No No 軍隊がない No No
トケラウの旗 トケラウ諸島 ( ニュージーランド自由連合) Yes 2007年より合法[6] No No No 軍隊がない No No
トンガの旗 トンガ No 男性は違法
Yes 女性は合法[6]
No No No No No No
ツバルの旗 ツバル No 男性は違法
Yes 女性は合法[6]
No No No 軍隊がない No 不明
ウォリス・フツナの旗 ワリー・エ・フトゥーナ諸島 (フランスの海外県) Yes 合法 Yes 2009年より民事連帯契約 No No Yes フランス軍 不明

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ State Sponsored Homophobia 2016: A world survey of sexual orientation laws: criminalisation, protection and recognition”. International Lesbian, Gay, Bisexual, Trans and Intersex Association (2016年5月17日). 2016年5月19日閲覧。
  2. ^ “Gay rights in the Pacific – what still needs to be done?”. Asia Pacific Report (Pacific Media Centre). (2015年8月30日). https://asiapacificreport.nz/2015/08/30/gay-rights-in-the-pacific-what-still-needs-to-be-done/ 2018年1月15日閲覧。 
  3. ^ Gerber, Paula (2014年5月14日). “Why the Pacific islands are no gay paradise” (英語). Monash University. https://www.monash.edu/news/opinions/why-the-pacific-islands-are-no-gay-paradise 2018年1月15日閲覧。 
  4. ^ Smith, Harriet (2016年10月31日). “Australia's marriage-equality debate reverberates through the Pacific”. The Interpreter (Lowy Institute). https://www.lowyinstitute.org/the-interpreter/australias-marriage-equality-debate-reverberates-through-pacific 2018年1月15日閲覧。 
  5. ^ Hopgood, Sela Jane (2017年8月18日). “Cooks bill puts spotlight on Pacific's anti-gay laws” (英語). Radio New Zealand Pacific News (Radio New Zealand). https://www.radionz.co.nz/international/pacific-news/337461/cooks-bill-puts-spotlight-on-pacific-s-anti-gay-laws 2018年1月15日閲覧。 
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n State-sponsored Homophobia A world survey of laws prohibiting same sex activity between consenting adults
  7. ^ Sodomy Laws American Samoa”. Sodomylaws.org (N.A.). 2008年12月21日閲覧。