ウェイバー公示

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ウェーバー公示から転送)
ナビゲーションに移動 検索に移動

ウェイバー公示(ウェイバーこうじ)とは、プロスポーツにおいて、契約期間中にチームが支配権を放棄(waive, 英語発音: [weɪv])する選手(waiver, 英語発音: [ˈweɪvər])を公表する手続きである。

プロ野球[編集]

日本プロ野球[編集]

セントラル野球連盟もしくはパシフィック野球連盟のいずれかに加盟している球団が、契約拘束期間である2月1日から11月30日の間に選手との契約を破棄する場合は、所属連盟にその旨を申請し必ず本手続きを行う。手続き完了後すぐに当該選手は公示され、譲渡を望む球団による申し込みを待つことになる。ただし公示より3日以内なら球団が申請を取り消しできる。複数の球団が譲渡を申し込んだ場合は、同一連盟所属球団が優先され、さらにその中で公示から1週間後時点(シーズン前の場合は前シーズンの成績)での勝率の逆順で優先される(ウェイバー方式)。1週間後までに申し込みがあれば譲渡先球団が確定され、一律400万の譲渡金を以て当該選手の移籍が決定する。公示より1週間の間に譲渡を希望する球団が現れなければ、当該選手に対する旧球団の保有権は消滅し、公示上は自由契約選手となる。

しかし自由契約選手となった時点で二軍三軍戦を含めシーズンの残り試合に一切出場できなくなる上、他の球団と契約することができるようになるのはシーズンオフの12球団合同トライアウト終了後という問題点がある。特に開幕後早い段階でウエイバー公示を出されて獲得希望球団が現れない事態になると、他球団に対して獲得をアピールする場が失われるばかりか、キャリアにブランクが発生しその選手の将来という意味で致命的なマイナスとなってしまう。

ただし選手側に契約条項などに対する違反があった場合は例外で、コミッショナー日本野球機構会長)の承認を得てそのまま自由契約とするか、コミッショナーに報告して制限選手・資格停止選手・出場停止選手・失格選手のいずれかにする措置を取る(統一契約書第26条「球団による契約解除」)。

ウェイバー公示による移籍はトレード、途中入団の期限以降でも認められている。2003年には7月22日中日ドラゴンズを解雇されウェイバー公示されたエディ・ギャラード7月28日横浜ベイスターズに移籍(当時の期限は6月30日)、2017年には北海道日本ハムファイターズからウェイバー公示されたルイス・メンドーサ8月31日阪神タイガースへ移籍(当時の期限は7月31日)した実例がある。また育成選手としての再契約を前提に、中日ドラゴンズ金本明博をウェイバー公示としたものの、選手会の抗議によってリーグ側が野球協約違反を承知の上で公示を取り下げている。

なお、毎年11月30日に提出される次年度選手名簿及び保留者名簿から選手を外した場合は、契約満了による退団と見なされ一連のウェイバー公示は成されず、その選手は即座に自由契約となる。ドラフトを経て入団した選手は任意引退を除けば基本的にはこの扱いを受けることになる。最後に日本人選手のウェイバー公示が行われたのは、前出の金本を除けば2005年秋にされた中日の戦力外6選手となっている。

野球協約や統一契約上では、「ウエイバー」と表記されている。(野球協約115条~124条参照)[1]

日本球界初のウェイバー公示による移籍選手は、ディック・ディサ1964年大毎近鉄)である。

MLB[編集]

メジャーリーグベースボール(MLB)において、ウェイバー自体は原則一般非公開で行われ、MLB機構を通じて各球団に公示される。ウェイバーは目的別に下記4種類に分かれ、選手の支配権放棄を表明する目的だけに留まらない[2]

  1. (Irrevocable) Outright Waivers
    • 選手を傘下マイナーリーグ球団に残留させることを視野に入れて行うウェイバー。通常、DFA(選手を40人枠[3]から外す措置)の後に行われる。
  2. Unconditional Release Waivers
    • 選手の保有権を無条件で放棄したい場合に行うウェイバー。トレード拒否権を持つ選手はOutright Waiversできないため[4]、そのような選手の場合もこちらのウェイバーが行われる。
  3. Optional Waivers(2017年以降は不要)[4]
    • マイナー・オプションが残っており、且つMLBデビューから3年以上経過している選手をマイナー降格(40人枠に残したまま26人枠から外す)させたい場合に、義務化されているウェイバー。
    • 2017年施行の新労使協定にて、上記ケースでのウェイバーは不要となった[5]
  4. Trade Assignment Waivers(2019年以降は廃止)[6]
    • トレード・デッドライン(例年7月31日)以降のシーズン期間中でのトレードや、その駆け引きを目的としたウェイバー。
    • 2019年以降、トレード・デッドライン以降の(ウェイバーを利用した)トレードは全面禁止となり、無用となった[7][8]

ウェイバー公示期間中(47営業時間内)に他球団から獲得申し込み (Claim off) を受けた場合、公示期間内に相手球団に対して以下いずれかを行わなければならない。

  1. その選手を譲渡する
    • 年俸など現在の契約内容は譲渡先球団がそのまま引き継ぐ。なお獲得球団は所属元球団にいくらかの手数料を支払う[9]
    • Unconditional Release Waiversの場合、選手は譲渡先球団への移籍を拒否して自由契約 (FA) を選択できるが、その際は所属元球団に対する残り契約期間分の年俸請求権も失う。
  2. その選手を含むトレードを行う
    • トレード・デッドライン以降のシーズン期間中は不可。
    • 必然的に、選手がトレード拒否権を持たない、またはトレード拒否権を行使しないことも条件となる。
  3. ウェイバー公示を取り下げる[6]
    • Outright Waiversは取り下げられない。
    • 各選手につき、1シーズンで1度しか取り下げられない。

複数の球団から獲得申し込みがあった場合はその時期により、以下の優先順位で権利獲得球団が決まる。

  1. 11月11日から4月30日まで(またはシーズン開幕から30日経過するまで)
    • 直前シーズンで最も勝率の低かった球団。
  2. 上記期間後から7月31日まで
    • その時点で今シーズンの勝率が最も低い球団。
  3. 上記期間後から11月10日まで
    • その時点で今シーズンの勝率が最も低い球団。ただし同一リーグ内の球団が最優先。

獲得申し込みがなく、公示期間が終了してウェイバーを通過 (Clear Waivers) した場合、球団は選手に以下いずれかの手続きを取ることが可能になる。[10]

  1. (Optional Waivers の場合)マイナー降格
  2. (Outright Waivers の場合)マイナー契約[11]
    • 選手と改めてマイナー契約を結び (Outright Assignment) 、傘下マイナーリーグの球団に残留させる。ただし、ロースター在籍期間 (MLS = Major League Service time)[12]が3年を超える選手、または以前にOutright Waiversの経験がある選手はこのマイナー契約を拒否することができる[13]
  3. (Optional Waivers 以外の場合)自由契約 (FA)
    • Unconditional Release Waiversの場合、必ず自由契約 (Release) となる。
    • Outright Waiversの場合、球団にマイナー契約の意思がなければ自由契約 (Release) となる。選手がマイナー契約を拒否した場合も自由契約 (elected free agency) となる。選手が拒否権を行使せずマイナー契約を結んだ場合でも、以降40人枠へ復帰できなかった場合はシーズンオフ中に自由契約を選択できる[14]
    • ウェイバー通過後に自由契約となった選手と契約する場合、獲得球団はMLB最低保証年俸額[15]を残りのシーズン分の日割り計算で支払うだけでよい。なお、それ以前の契約は有効で契約年俸から最低保証年俸を差し引いた金額を所属元球団は別途支払い続けなければならない。

※以上、2017-2021年まで有効な新労使協定上の規定。

プロバスケットボール[編集]

NBA[編集]

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ 日本プロフェッショナル野球協約2016”. 日本プロ野球選手会. pp. 25-26 (2016年). 2017年4月5日閲覧。
  2. ^ Transactions Primer”. ESPN.com. 2016年5月3日閲覧。
  3. ^ 日本プロ野球の支配下選手登録に相当
  4. ^ a b Transaction Glossary” (英語). Cot's Baseball Contracts. 2020年11月24日閲覧。
  5. ^ 「Optional Waiversでの公示中選手には、獲得申し込み (Claim off) をして奪ってはいけない」という不文律が各チーム間で合意されており、事実そのようなケースも無かったため、2016年以前から形骸化していた規定と言われている。/ Brian Michael (2018年8月2日). “How MLB Waivers Work” (英語). Phillies Nation. 2020年11月24日閲覧。
  6. ^ a b Andrew Simon (2017年8月2日). “Deals not done: A guide to waiver trades”. MLB.COM. 2019年3月15日閲覧。
  7. ^ 2018年までは、ウェイバーを通過させればトレード期限日以降のシーズン途中でも40人枠内の選手をトレードすることが可能だったため、8月以降はしばしばトレードの交渉や駆け引きを目的としたTrade Assignment Waiverが行われていた(後述の通り1回だけウェイバーを取り下げることができるため、「他球団の獲得意思を探る」「(第三者の球団に)本当にトレードしたい選手が誰なのか分かりにくくする」などの目的で、トレードで放出するつもりなど全くない主力選手たちも極秘裏にウェイバー公示されることが頻繁にあった)。2019年から、トレード期限日以降の40人枠内選手のトレードは、ウェイバーを通過させた場合でも禁止となった。
  8. ^ Anthony Castrovince (2019年3月14日). “Rule changes coming this year and next”. MLB.COM. 2019年3月15日閲覧。
  9. ^ Unconditional Release Waiversの場合は1ドル、Outright Waiversは20,000ドル(2018年現在)
  10. ^ Everything MLB Fans Need to Know About the MLB Waiver Trade Deadline”. bleacher report (2015年8月1日). 2016年5月3日閲覧。
  11. ^ 40人枠外で選手と締結する契約の通称
  12. ^ MLSはレギュラーシーズン中、その選手がアクティブ・ロースター(負傷者リスト登録中期間や各種出場停止期間も含む)に登録されていた日数をもとに算出され、年間172日間以上登録されればMLS1年 (MLS=1.000) 換算となる。表記上は1日でMLS=0.001、171日で0.171、172日で小数点が繰り上がり1.000となる。
  13. ^ Outright Waivers” (英語). MLB.com. 2019年11月21日閲覧。
  14. ^ Major League Baseball Transactions Glossary” (英語). Chicago Cubs Online. 2020年11月24日閲覧。
  15. ^ 2020年時点では563,500ドル。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]