アメリカビーバー

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アメリカビーバー
アメリカビーバーのオス
アメリカビーバーのオス
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 齧歯目 Rodentia
: ビーバー科 Castoridae
: ビーバー属 Castor
: アメリカビーバー C. canadensis
学名
Castor canadensis Kuhl, 1820[2][3]
和名
アメリカビーバー[4]
英名
American beaver[3]
分布域
生息域(濃緑は在来種、薄緑は外来種)

アメリカビーバー (Castor canadensis) は、ビーバー科に属する2種の現存種のうちの1種である。[5] 北アメリカ原産であるが、南アメリカパタゴニアフィンランドなどの欧州諸国にも生息している。 アメリカカナダでは、単にビーバーと呼ばれるが、これはしばしば同じ齧歯類のヤマビーバーと混同される。また、ユーラシア大陸には、ビーバー科を構成するもう1つの現存種であるヨーロッパビーバー英語版が生息している。[5]カナダでは国獣[6]オレゴン州では、州の動物にそれぞれ指定されている。

分布[編集]

アメリカ合衆国カナダメキシコタマウリパス州[1]

模式産地はカナダ(ハドソン湾[3]

アルゼンチンティエラ・デル・フエゴ州)、ドイツフィンランドベルギールクセンブルクロシア移入[1]

特徴[編集]

北アメリカ最大の齧歯目であり、 世界でもヨーロッパビーバーと共に南アメリカカピバラに次いで大きい種である。平均体重はヨーロッパビーバーの方がわずかにアメリカビーバーより大きい。[7]成体の体重は 11〜32kgであり、おおよそ20kgが一般的である。例えば、ニューヨーク州ではオス成体のの平均体重は18.9kg、フィンランドではメスの成体の平均体重は18.1kgである。 オハイオ州では成体の平均体重は16.8 kgである。[8][7][9]ベルクマンの法則に従い、より寒冷な地域に生息するものほどより体重が大きい。その例として、ノースウエスト準州では成体の重さの中央値は20.5kgにもなっている。[10] 成体の体長は74〜90cmであり、尻尾を含めると、体長はさらに20〜35cmほど長くなる。さらに、昔の個体の体重は40kgを超え、50kg程に達していたという説もある。[11][12][13][14]

ビーバーは半水生哺乳動物であり、体にはその多くの特徴が見られる。尻尾はパドルのように大きく平らであり、後ろ足は大きく、水かきがある。一方で前足は水かきがなく、爪がある。水中でもよくものが見えるように目には瞬膜を持つ。水中にいる間は鼻腔と耳を閉じることができる。厚い皮下脂肪を持ち、冷水の中でも耐えられるようになっている。毛皮は普通は暗い茶色できめの粗く長い外側の毛ときめの細かく短い内側の毛からなる。生殖器近くの臭腺は毛皮の防水効果を高めるために油気のある物質を分泌する。この分泌物が海狸香である。絶滅寸前になるまでは、北はカナダのツンドラ地帯から南はメキシコ北部の砂漠地帯まで、東は大西洋から西は太平洋まで北アメリカのあらゆる場所に偏在していた。[15][16][17]

ビーバーは過去にはメキシコのコロラド川, バビスペ川サンバーナーディーノ川でも報告されていた。 [18][19][20]

サンフランシスコ湾頭で見つかったアメリカビーバーの頭蓋骨

生態[編集]

, アメリカビーバーの巣
アメリカビーバーのダム
泥や木の枝が少ない時は、石を使ってダムを作る。

ビーバーは夜行性の生物である。泳ぎが得意で、およそ15分間水中にいることができる。陸上では傷つきやすいため、多くの時間を河川の中で生活している。 尻尾は水面を叩いて仲間に危険を伝える役割と脂肪を蓄える役割をもつ。湖や河川、三角州付近にある巣は木や枝、石や泥で作られる。[21]巣は、水に囲まれた場所にあることもあれば、岸と陸続きであったり、或いは堤に穴を作っていることもある。ダムを池の中に作るときは、まず枝を山のように積み上げ、水中の枝を食べて巣の入口を作る。次に、巣の中の水面より上の部分に島を作り、内部が乾いてから巣を使い始める。 冬に近づくと、巣はしばしば泥が塗られるが、これが冷えるとコンクリートと同じくらいの固さとなり、巣の中の空洞を保っている。水の下に巣の入り口を作ることにより、捕食者から逃れることが出来る。湖や河川に水深の深くなる場所がある場合、土手に穴を掘って棲むこともある。ビーバーのダムは切り倒した木や木の枝、石、草、泥から作られる。内樹皮や小枝、若枝、木の葉はビーバーの餌にもなっている。[22] 強い切歯で木を切り倒す。 前脚は土を掘ったり、運搬に使ったり、物を置くのに使われる。いつどこにダムを作るのかは流水の音に影響される。ビーバー巣により作られた池は水鳥, などの棲み家となっている。また、このダムは、土壌浸食や洪水を減らす役割もある。しかし、ビーバーのダムは保守を必要としている。冬に備えるため大抵の場合秋にビーバーはダムを作ったり、修理を行う。北方の個体は、氷の下に呼吸のできる場所を確保するために巣の穴を修理せずにしたり、逆に巣に穴を作ったり、水位を下げたりする。1988年の研究では、カナダのアルバータ州では冬の間、巣の水が減ってもそれを直すビーバーはいなかったという。[23]ダムの付近では水が溜まるため、ビーバーの餌が供給される。主に木の葉や芽、内樹皮を食べる。ポプラを好むが、カバノキカエデヤナギハンノキサクランボレッドオークアッシュシデマツトウヒを食べることもある。[24] また、特に春の初め頃にはガマ, スイレンなどの水生植物も食べる。[25] 池が凍る地域では晩秋に枝に付くような食物を集め、枝を水底の泥にさすようにして水中で保存する。こうして冬でも食料を確保している。また、枝が水上に突き出ることで水の凝固を防ぎ、ここから巣の中へ戻れるようになっている。普通、ビーバーは2歳まで親離れをしない。コヨーテピューマが主な天敵である。[26] アメリカグマも時にはビーバーを捕食し、この時アメリカグマはビーバーの巣を前足で壊すこともある。[27][28][29]クズリカナダオオヤマネコ, ボブキャットイヌワシハクトウワシ[30]はビーバーの子どものみを襲う傾向にある。ヒグマアメリカワニは生活圏の違いからビーバーを襲うことはほとんどない。

繁殖[編集]

アメリカビーバーは年に1回子を産む。12月から3月、特に1月に12時間から24時間程度だけ発情期に入る。他の齧歯目と異なり、一頭の雄に一頭の雌のみがつく。妊娠期間は平均128日で3〜6匹の子を産む。[31] また、20%の2歳のメスは繁殖をするが、殆どのビーバーは3歳まで繁殖をしない。[32]

人間との関係[編集]

毛皮用に狩猟されている[1]。かつては乱獲により生息地および個体数が激減したが[33]、保護により現在は回復している[1]

日本では戦後の東山動物園(現在の東山動植物園)に初めて輸入され、1965年に上野動物園が日本で初めて繁殖に成功した[33]

出典[編集]

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  1. ^ a b c d e Cassola, F. 2016. Castor canadensis. The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T4003A22187946. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-3.RLTS.T4003A22187946.en. Downloaded on 04 December 2018.
  2. ^ Kuhl, Heinrich (1820). “Castor Canadensis”. Beiträge zur Zoologie und vergleichenden Anatomie. Frankfurt: Verlag der Hermannschen Buchhandlung. pp. 64–65. https://www.biodiversitylibrary.org/page/28230860. 
  3. ^ a b c Kristofer M. Helgen (2005). “Family Castoridae”. In Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (eds.). Mammal Species of the World: A Taxonomic and Geographic Reference (3rd ed.). Johns Hopkins University Press. pp. 842-843. http://www.departments.bucknell.edu/biology/resources/msw3/browse.asp?id=12600004. 
  4. ^ 川田伸一郎・岩佐真宏・福井大・新宅勇太・天野雅男・下稲葉さやか・樽創・姉崎智子・横畑泰志世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
  5. ^ a b Helgen, K.M. (2005). "Family Castoridae". In Wilson, D.E.; Reeder, D.M. Mammal Species of the World: A Taxonomic and Geographic Reference (3rd ed.). Johns Hopkins University Press. p. 842. ISBN 978-0-8018-8221-0. OCLC 62265494.
  6. ^ Official symbols of Canada. Government of Canada
  7. ^ a b Lahti, S., & Helminen, M. (1974). The beaver Castor fiber (L.) and Castor canadensis (Kuhl) in Finland. Acta Theriologica, 19(13), 177-189.
  8. ^ Müller-Schwarze, D., & Schulte, B. A. (1999). Behavioral and ecological characteristics of a “climax” population of beaver (Castor canadensis). In Beaver protection, management, and utilization in Europe and North America (pp. 161-177). Springer US.
  9. ^ Svendsen G. E. (1989). “Pair formation, duration of pair-bonds, and mate replacement in a population of beavers (Castor canadensis)”. Canadian Journal of Zoology 67 (2): 336–340. doi:10.1139/z89-049. 
  10. ^ Aleksiuk M., Cowan I. M. (1969). “Aspects of seasonal energy expenditure in the beaver (Castor canadensis Kuhl) at the northern limit of its distribution”. Canadian Journal of Zoology 47 (4): 471–481. doi:10.1139/z69-086. 
  11. ^ Home Page, Alaska Department of Fish and Game”. Adfg.state.ak.us. 2013年3月16日閲覧。
  12. ^ The Beaver – Life Tracks. Timberwolfinformation.org
  13. ^ Burnie D and Wilson DE (Eds.), Animal: The Definitive Visual Guide to the World's Wildlife. DK Adult (2005), 0789477645
  14. ^ Boyle, Steve and Owens, Stephanie (February 6, 2007) North American Beaver (Castor canadensis): A Technical Conservation Assessment. USDA Forest Service, Rocky Mountain Region
  15. ^ Morgan, Lewis H. (1868). The American Beaver and his Works. J. B. Lippincott & Co.. p. 32. https://books.google.com/?id=gY4-AAAAcAAJ&printsec=frontcover. 
  16. ^ Naiman, Robert J.; Johnston, Carol A. & Kelley, James C. (Dec 1988). “Alteration of North American Streams by Beaver”. BioScience 38 (11): 753–762. doi:10.2307/1310784. JSTOR 1310784. オリジナルのMarch 4, 2012時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120304035814/http://www.landscouncil.org/documents/Beaver_Project/Articles/Naiman_et_al_1988_alter_n_american_streams_by_beaver.pdf 2010年2月28日閲覧。. 
  17. ^ Christopher W. Lanman; Kate Lundquist; Heidi Perryman; J. Eli Asarian; Brock Dolman; Richard B. Lanman; Michael M. Pollock (2013). “The historical range of beaver (Castor canadensis) in coastal California: an updated review of the evidence”. California Fish and Game 99 (4): 193–221. https://nrm.dfg.ca.gov/FileHandler.ashx?DocumentID=78258 2016年9月27日閲覧。. 
  18. ^ Gallo-Reynoso, Juan-Pablo; Suarez-Gracida, Gabriela; Cabrera-Santiago, Horacia; Coria-Galindo, Else; Egido-Villarreal, Janitzio & Ortiz, Leo C. (2002). “Status of Beavers (Castor canadensis frontador) in Rio Bavispe, Sonora, Mexico”. The Southwestern Naturalist. https://ciad.academia.edu/JuanPabloGallo/Papers/590136/Status_of_beavers_Castor_canadensis_frondator_in_Rio_Bavispe_Sonora_Mexico 2011年11月25日閲覧。. 
  19. ^ Karla Pelz Serrano; Eduardo Ponce Guevara; Carlos A. López González. “Habitat and Conservation Status of the Beaver in the Sierra San Luis Sonora, México”. USDA Forest Service Proceedings RMRS-P-36. https://www.fs.fed.us/rm/pubs/rmrs_p036/rmrs_p036_429_433.pdf 2017年12月5日閲覧。. 
  20. ^ El Heraldo de Chihuahua (2017年12月5日). “Nice surprise: camera discovers that there are otters in Chihuahua”. El Sol de Mexico. https://www.elsoldemexico.com.mx/doble-via/ecologia/bonita-sorpresa-camara-descubre-que-hay-nutrias-en-chihuahua-385554.html 
  21. ^ Mapes, Lynda V. (2009年5月18日). “Scientist discovers beavers building prime salmon habitat in Skagit Delta”. The Seattle Times. http://seattletimes.nwsource.com/html/localnews/2009231736_beavers18m.html 2010年6月22日閲覧。 
  22. ^ Gallant, D.; Bérubé, C.H.; Tremblay, E. & Vasseur, L. (2004). “An extensive study of the foraging ecology of beavers (Castor canadensis) in relation to habitat quality”. Canadian Journal of Zoology 82 (6): 922–933. doi:10.1139/z04-067. http://www.colby.edu/academics_cs/courses/BI312/upload/ForagingBeaversHabitatQuality.pdf 2010年5月4日閲覧。. 
  23. ^ Donald G. Reid, Stephen M. Herrero and Thomas E. Code, "River Otters as Agents of Water Loss from Beaver Ponds," Journal of Mammalogy, February 1988.
  24. ^ Müller-Schwarze, Dietland & Sun, Lixing (2003). The Beaver: Natural History of a Wetlands Engineer. Cornell University Press. pp. 67–75. ISBN 978-0-8014-4098-4. https://books.google.com/books?id=eqIenKko3lAC. 
  25. ^ Young, Mary Taylor (August 13, 2007). Colorado Division of Wildlife: Do Beavers Eat Fish?”. 2010年9月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年5月18日閲覧。 wildlife.state.co.us
  26. ^ Thurber, J. M.; Peterson, R. O. (1993). “Effects of Population Density and Pack Size on the Foraging Ecology of Gray Wolves”. Journal of Mammalogy 74 (4): 879. doi:10.2307/1382426. JSTOR 1382426. 
  27. ^ The American Bear Association Home Page (Web Pages2/index)”. The American Bear Association. 2013年7月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年12月4日閲覧。
  28. ^ Adirondack Black Bears”. Environmental Information Series. 2018年12月4日閲覧。
  29. ^ Smith, D. W.; Trauba, D. R.; Anderson, R. K.; Peterson, R. O. (1994). “Black bear predation on beavers on an island in Lake Superior”. American Midland Naturalist 132 (2): 248–255. doi:10.2307/2426580. JSTOR 2426580. 
  30. ^ Beaver”. Study of Northern Virginia Ecology, Fairfax County Public School. 2013年1月3日閲覧。
  31. ^ Beaver Biology”. Beaver Solutions. 2013年11月22日閲覧。
  32. ^ Müller-Schwarze, Dietland & Sun, Lixing (2003). The Beaver: Natural History of a Wetlands Engineer. Cornell University Press. p. 80. ISBN 978-0-8014-4098-4. https://books.google.com/books?id=eqIenKko3lAC. 
  33. ^ a b 川田健「ビーバー(アメリカビーバー)」『標準原色図鑑全集 19 動物 I』林壽郎著、保育社、1968年、89-90頁。

外部リンク[編集]