アイアイ
アイアイ | |||||||||||||||||||||||||||
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![]() アイアイ Daubentonia madagascariensis
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保全状況評価[1][2][3] | |||||||||||||||||||||||||||
ENDANGERED (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) ![]() ワシントン条約附属書I | |||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Daubentonia madagascariensis (Gmelin, 1788) [4][5] | |||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||
Sciurus madagascariensis | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
アイアイ[4][6][7][8] | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Aye-aye[3][4][5][7] | |||||||||||||||||||||||||||
アイアイ(Daubentonia madagascariensis)は、哺乳綱霊長目アイアイ科アイアイ属に分類される霊長類。現生種では本種のみでアイアイ科アイアイ属を構成する[5]。
分布[編集]
種小名madagascariensisは「マダガスカル産の」の意。
形態[編集]
頭胴長(体長)36 - 44センチメートル[7]。尾長44 - 53センチメートル[7]。体重2 - 3キログラム[7]。全身は、粗く長い体毛で被われる[4][8]。全身は黒い[7]。
耳介は大型[7][8]。歯列は門歯が上下2本、犬歯がなく、小臼歯が上顎のみ2本、大臼歯が上下6本の計18本[5][8]。門歯は伸び続ける[7][8]。指は細長く、特に第3指(中指)で顕著[4][8]。第3指が長いことが、独名Fingertierや中国語名の指猴・旧和名ユビザルの由来になっている[4]。第1指(親指)は平爪だが、第2 - 5指は鉤爪[4][8]。染色体数は2n=30[5]。
出産直後の幼獣は体重0.1キログラム[7]。
分類[編集]
属名Daubentoniaは、Louis-Jean-Marie Daubentonへの献名[4]。
アイアイ科の現生種は本種のみだが、2,000年前にはマダガスカル南部に大型(発掘された骨からは現生アイアイの2倍以上の大きさと推定される)の絶滅種ジャイアントアイアイDaubentonia robsutaがいた[4][7]。
1780年にP. Sonneratらによるマダガスカル島探検行にて、発見された[6]。元々Sciurus属(現在のリス属)として記載された[4]。門歯が伸び続けることから、19世紀になっても齧歯目の構成種と考えられていた[7]。乳歯の特徴がキツネザルのものと類似していることから、1863年に霊長目に分類された[6]。
生態[編集]
熱帯雨林や広葉樹林・乾燥林・マングローブ林・二次林などに生息する[3]。夜行性で[4][7]、昼間は巣の中で休む[3][8]。オスは他の個体と重複する広い行動圏内で生活するが、ノシ・マンガベ島での報告ではメスは他の個体と重複しない35ヘクタールの行動圏内で生活する[7]。オスは同性間で優劣の関係があると考えられ、オスが別のオスを避ける行動が観察された例がある[7]。メス同士では激しく争う[7]。
昆虫の幼虫、カンラン科の果実の胚乳、タビビトノキの花の蜜、樹皮、キノコなどを食べる[7]。門歯で樹皮やマンゴーの果実の繊維質・ココナッツの殻などに穴を空ける[8]。木の中にいる昆虫や果肉は、細長い中指でほじくりだして食べる[8]。
繁殖様式は胎生。妊娠期間は158日もしくは170 - 172日という説がある[7]。1回に1頭の幼獣を産む[7]。出産間隔は2 - 3年[3][5]。授乳期間は7か月[7]。メスは生後3 - 4年で初産を迎える個体が多い[3]。
人間との関係[編集]
名前の由来とされるheh hehはマダガスカルのいくつかの現地語で「知らない」の意もあり、本種の呼称を尋ねられた原住民が「知らない」と答えたのを呼称と勘違いしたとする説もある[5]。マダガスカルでの呼称はhay-hay、ahay、aiayがある[4][5]。
生息地では縁起の悪いもの、悪魔の使いとみなされることもある[7][8]。ココヤシ・マンゴー・ライチなどを食害する害獣とみなされることもある[7]。
森林伐採などによる生息地の破壊、不吉の象徴や作物の害獣としての駆除などにより生息数は減少している[3]。1960年代にノシ・マンガベ島に人為的に移入されている[3]。1975年のワシントン条約発効時から、ワシントン条約附属書Iに掲載されている[2]。
画像[編集]
参考文献[編集]
- ^ Appendices I, II and III (valid from 26 November 2019)<https://cites.org/eng> (downroad 17/04/2020)
- ^ a b UNEP (2020). Daubentonia madagascariensis. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. (downroad 17/04/2020)
- ^ a b c d e f g h i Andriaholinirina, N., Baden, A., Blanco, M., Chikhi, L., Cooke, A., Davies, N., Dolch, R., Donati, G., Ganzhorn, J., Golden, C., Groeneveld, L.F., Hapke, A., Irwin, M., Johnson, S., Kappeler, P., King, T., Lewis, R., Louis, E.E., Markolf, M., Mass, V., Mittermeier, R.A., Nichols, R., Patel, E., Rabarivola, C.J., Raharivololona, B., Rajaobelina, S., Rakotoarisoa, G., Rakotomanga, B., Rakotonanahary, J., Rakotondrainibe, H., Rakotondratsimba, G., Rakotondratsimba, M., Rakotonirina, L., Ralainasolo, F.B., Ralison, J., Ramahaleo, T., Ranaivoarisoa, J.F., Randrianahaleo, S.I., Randrianambinina, B., Randrianarimanana, L., Randrianasolo, H., Randriatahina, G., Rasamimananana, H., Rasolofoharivelo, T., Rasoloharijaona, S., Ratelolahy, F., Ratsimbazafy, J., Ratsimbazafy, N., Razafindraibe, H., Razafindramanana, J., Rowe, N., Salmona, J., Seiler, M., Volampeno, S., Wright, P., Youssouf, J., Zaonarivelo, J. & Zaramody, A. 2014. Daubentonia madagascariensis. The IUCN Red List of Threatened Species 2014: e.T6302A16114609. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2014-1.RLTS.T6302A16114609.en. Downloaded on 17 April 2020.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 岩本光雄 「サルの分類名 (その8:原猿)」『霊長類研究』第5巻 2号、日本霊長類学会、1989年、129-141頁。
- ^ a b c d e f g h i j k Aleta Quinn and Don E. Wilson, "Daubentonia madagascariensis," Mammalian Species, No. 740, American Society of Mammalogists, 2004, Pages 1-6.
- ^ a b c 岩野泰三 「指を箸に変えるまでの進化 アイアイ」『動物たちの地球 哺乳類I 5 キツネザル・ロリスほか』第8巻 41号、朝日新聞社、1992年、132-135頁。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 小山直樹 「アイアイ」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ8 太平洋、インド洋』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2001年、45、159頁。
- ^ a b c d e f g h i j k Alison F. Richard 「もっとも奇妙な霊長類,アイアイ」上原重男訳『動物大百科3 霊長類』伊谷純一郎監修 D.W.マクドナルド編、平凡社、1986年、27頁。
- 親指はなぜ太いのか―直立二足歩行の起原に迫る, 島 泰三, 2003
- どくとるアイアイと謎の島マダガスカル, 島 泰三, 1997