タビビトノキ
タビビトノキ | ||||||||||||||||||||||||
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保全状況評価[1] | ||||||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) ![]() | ||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Ravenala madagascariensis Sonn. | ||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
タビビトノキ、オウギバショウ | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
Traveller's Tree |
タビビトノキ[3](旅人の木、学名: Ravenala madagascariensis)は、マダガスカル原産のバナナに似た植物である。オオギバショウ[3]やオウギバショウ(扇芭蕉)、あるいは旅人木(りょじんぼく)ともいう。英語名は"Traveller's Palm(旅人のヤシ)"だが、ヤシではなくゴクラクチョウカ科に属する。
概要[編集]
名称の由来は、葉柄に雨水を溜めるため、乾燥地帯の旅行者の飲料水供給源として利用されたからとも、また高木は葉が東西方向へ扇状に広がることから旅人に対するコンパスの役割を果たすからともいうが、ともに確かな定説ではない[4]。巨大な櫂状の葉が長い茎柄の先に扇状に平面に並ぶ。ストレリチア(ゴクラクチョウカ)の仲間だが、花は小さく目立たない。その特性や扇状の葉を展開する美しい特徴から、世界の熱帯及び亜熱帯地域で広く栽培され街路樹にも利用されている。乾燥地から湿地、水辺まで適応が広い[4]。マダガスカル航空の尾翼に図案化されている。
南部アフリカのゴクラクチョウカ属(Strelitzia)、南米のタビビトノキモドキ属(Phenakospermum)と非常に近しい。以前はこれらがバショウ科に分類されることもあった。
エリマキキツネザルが送粉者として知られており、花序の大きさや構造、及びキツネザルの選択性や摂食方法、鼻口部の長さなどを考え合わせると、彼らの間で共進化が起きたとみられる[5]。
分布・生態[編集]
マダガスカル固有種で、本来は海抜0メートルから1500メートルの湿潤林や草原、岩場に見られる[1]。2021年に発表された論文ではタビビトノキが分布するのはマダガスカルの中でも東部海岸の低地の沼沢地に限られており、島内のほかの場所に自生するものは同属の別種と見做されるようになった(参照: タビビトノキ属)[6]。モーリシャス、バングラデシュ、メキシコ(北東部、中央部、メキシコ湾地域、南西部、南東部)にも持ち込まれている[2]。
外形的特徴[編集]
生長にしたがって葉茎が落ち、幼木にはみられない茶色の丈夫な樹幹が現れる。
葉は舟の櫂のような形をしており、左右対称に並んで平面をなすため見た目は扇に似る。葉先は緑色だが、葉茎の付け根は黄色である[7]。
花の色は白。
栽培[編集]
日当たりのよい場所を好むが、大きくなるまでは日光を当てすぎない方がよい。生育期に窒素肥料を与えるとよく育ち、葉もよく茂る。樹高は平均で7メートルほどに達する。適度な水分の供給が必要である。
諸言語における呼称[編集]
タビビトノキ属[編集]
タビビトノキ属(オウギバショウ属[8]とも; Ravenala)はタビビトノキ1種のみからなる属であったが、2021年11月9日に分類見直し論文が発表され、既知のタビビトノキの分布域の確認等が行われると共に、以下に挙げる5種が新種として記載された[6]。なお、全てマダガスカルのみに分布する。
- Ravenala agatheae Haev. & Razanats.(ウィキスピーシーズ) - 島の北西部に分布。
- Ravenala blancii Haev., Jeannoda & Hladik(ウィキスピーシーズ) - タイプ標本はアンダシベ (ムラマンガ)で採取されている。
- Ravenala grandis Haev., Razanats., Hladik & P.Blanc(ウィキスピーシーズ) - 島の東部の高度200-500メートルの雨林に分布。
- Ravenala hladikorum Haev., Razanats., Jeannoda, P.Blanc(ウィキスピーシーズ) - タイプ標本の採取地は R. blancii と同じである。
- Ravenala menahirana Haev. & Razanats.(ウィキスピーシーズ) - 東部海岸が主な分布域と見られるが、島北東部の内陸部マルジェジなどでの目撃例も報告されている。
脚注[編集]
- ^ a b Andriamanohera, A.M. (2021). Ravenala madagascariensis. The IUCN Red List of Threatened Species 2021: e.T137831330A137904098. doi:10.2305/IUCN.UK.2021-1.RLTS.T137831330A137904098.en. Downloaded on 26 June 2021.
- ^ a b Govaerts, R. (2021). World Checklist of Strelitziaceae. Facilitated by the Royal Botanic Gardens, Kew. Published on the Internet; http://wcsp.science.kew.org/namedetail.do?name_id=260806 Retrieved 26 June 2021
- ^ a b 熱帯植物研究会 編「タビビトノキ Ravenala madagascariensis Sonn.」『熱帯植物要覧』(第4版)養賢堂、1996年、544頁。ISBN 4-924395-03-X。
- ^ a b 園芸豆知識・面白い名前編(米村浩次の花の世界)
- ^ Garbutt, Nick (2007). Mammals of Madagascar, A Complete Guide. A&C Black Publishers. pp. 170–175. ISBN 978-0-300-12550-4
- ^ a b Haevermans et al. (2021).
- ^ “Real Palm Trees”. Palm Tree Physical Appearance(Trunk and Foliage). 2009年3月19日閲覧。
- ^ 米倉, 浩司『新維管束植物分類表』北隆館、2019年、92頁。ISBN 978-4-8326-1008-8。
参考文献[編集]
- 英語
- Haevermans, Thomas; Hladik, Annette; Hladik, Claude-Marcel; Razanatsoa, Jacqueline; Haevermans, Agathe; Jeannoda, Vololoniaina; Blanc, Patrick (2021). “Description of five new species of the Madagascan flagship plant genus Ravenala (Strelitziaceae)”. Scientific Reports 11 (21965): 1–15. doi:10.1038/s41598-021-01161-1.