たぬき (麺類)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
イギリス・ブライトンのたぬきそば
イギリス・ロンドンのたぬきうどん
東日本暖簾わけ店のたぬきそば(食品サンプル)
大阪の立ち食いそば屋のたぬきそば(食品サンプル)

たぬきそばたぬきうどんは、蕎麦うどん料理の一種[1]である。地方によって呼称や調理法が異なる(#各地方の特徴にて詳述)。 ネギ鳴門巻などを入れる場合もある[2]。これを冷やしたものは「冷やし たぬきそば・冷やし たぬきうどん」と呼ぶ[3]

歴史[編集]

大正時代[4]東京揚げ玉を無料で出していたところ人気となり、東京では後に有料となったことから地域差が生まれた。戦時中にはパーッと広がる様子から「バクダン」とも呼ばれた[4]

古川ロッパは、エッセイ「うどんのお化け」で、たぬきうどんについて以下のように述べている[5]

又、たぬきというのもある。これは、何かと思ったら(昔は、あんかけを、たぬきに称していたようだが)揚げカスを、載っけた奴であった。それなら、つい先頃まで、ハイカラうどんと称していた筈である。

語源[編集]

語源には諸説ある。蕎麦や饂飩の「たぬき」が表す料理は地方によって異なる料理を示す事もありそれぞれ異なる説もある。

  • 天かすを入れたものをたぬきと称する事に関する説
    • タネ抜きの転訛であるとする説
    天ぷらの「タネ」を入れない(タネを抜いた)揚げ物の「タネヌキ」であり[6]、そば屋で「ぬき」を頼むと天ぷらそばのそば抜き(そばつゆに天ぷらだけが入っている)が出てくるのと同様で、「タネ抜き」を語源に「たぬき」とした説[7][8][9][10]
    • きつねそば・きつねうどんに比べてかけ汁の色合いが濃く濃厚な味付けであることに由来するとみる説[8][10][11]
    • 世田谷区(キヌタ)家で始めたキヌタソバがその始まりだという説[12]があり、「きぬた」を逆さに読んだ。
    • 天かすの印象が腹を膨らませた「たぬき」の様子を連想させることに由来するという説[2]
  • 油揚げを入れたそばの語源に関する説
    • うどんの麺の白に対して、そばの麺の黒を「たぬき」に例えたとする説[13]
    • 関西においては、そばよりうどんが一般的に好まれているとされる事を元にして「うどんからそばに化けた」事から「たぬき」と呼ばれるようになったという説[13]
    • 関東において、江戸後期のある店でイカのかき揚げの衣に対して具が小さいものが出され、それがたぬきに化かされた感じがすることから「たぬき」と呼ばれるようになったという説[14]

各地方の特徴[編集]

地方によって名称や特徴が異なり[15]、下記に記述する。

北海道[編集]

過去に北海道ではかき揚げをのせたものをたぬきと称すると書かれた文献もあるが[16]、昭和の時代から北海道でもたぬきそばは天かすを入れたそばであり、かき揚げを乗せたそばはかき揚げそばと称するのが一般的である。

東日本[編集]

東日本において、「たぬき」は一般には揚げ玉(天かす)をのせたものを指し、たぬきそば・たぬきうどんは、かけよりも価格は高く設定されていることが多い[17]。蕎麦屋によっては、揚げ玉を「たぬき」として売っているところがある[注 1]

石川[編集]

たぬきうどんは、揚げ玉入りのうどんであるが、金沢市では京都と同じたぬきうどんを出す店もある。

京都[編集]

京都では刻んだ油揚げの上からを掛けたうどんを「たぬき」と呼ぶ[11][19][20][21]。大阪で一般的にいわれる「たぬき」とは異なるため、単に「たぬき」とだけ注文された場合には店側がうどんのものかそばのものか念を押すことがあるとされる[20]。 「京風うどん」を提供する全国丼ぶりチェーン店『なか卯』の天かす・揚げ玉入りうどんは「はいからうどん」が商品名。

大阪[編集]

大阪では油揚げを乗せた「そば」を「たぬき」と呼ぶ[11][19]。油揚げは甘辛く味付けしたものである(当地のきつねの台を蕎麦にしたものが「たぬき」[20])。大阪周辺の立ち食いうどん店などでは天かす(関東では揚げ玉)は無料で提供されている事がある[17]

中四国・九州北部[編集]

この地域では「ハイカラうどん」という名で売り出している店もある[17]。なお、「はいから」はいわゆる「きつねうどん」の別称でもある[22]

関西以外 関西
 きつね
  • 油揚げの甘煮をのせたそば又はうどん
    (きつねうどん、きつねそば)
  • 油揚げの甘煮をのせたうどん(けつね、しのだ)
 たぬき
  • 揚げ玉をのせたそば又はうどん
    (たぬきうどん、たぬきそば)
  • 京都:刻んだ油揚げ[注 2]と青ねぎをあんかけにしたうどん又はそば
  • 大阪:油揚げの甘煮またはキザミをのせたそば
 ハイカラ

  -

  • 揚げ玉をのせたうどん又はそば[注 3]
 きざみ

  -

  • 刻んだ油揚げをのせたうどん又はそば

即席めん[編集]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ 胡麻油と白絞油の油を使用し、天ぷらとは別に作り上げたもの[18]
  2. ^ 通常、甘煮ではない素の油揚げが用いられる。
  3. ^ 前述のように、揚げ玉は無料でのせられる店も多いため、特に料理名を付けないこともある。

出典[編集]

  1. ^ 新明解国語辞典第7版(2012、三省堂)
  2. ^ a b 『衣食住語源辞典』東京堂出版 p.195 1996年
  3. ^ “冷たいカップ麺”はおいしいのか!? 日経ウーマンオンライン【食のトレンド発掘隊】、2012年7月11日
  4. ^ a b そば屋メニュー紹介「たぬきそば」 日本麺類業団体連合会/全国麺類生活衛生同業組合連合会
  5. ^ 古川緑波. “うどんのお化け” (日本語). www.aozora.gr.jp. 2022年2月19日閲覧。
  6. ^ 「天かす」項目内の「「天かす」と「揚げ玉」」の節参照
  7. ^ 小麦粉のある風景「うどん」「そば」にしひがし 財団法人製粉振興会
  8. ^ a b 植原路郎著・中村綾子改訂『蕎麦辞典 改訂新版』東京堂出版 p.153 2002年
  9. ^ 平川陽一編『今さら誰にも聞けない500の常識』廣済堂文庫 p.247 2003年
  10. ^ a b 岡田哲著『たべもの起源事典』東京堂出版 p.280 2003年
  11. ^ a b c 岡田哲編『コムギ粉料理探究事典』東京堂出版 p.191 1999年
  12. ^ 新明解国語辞典第5版(三省堂)
  13. ^ a b 平川陽一編『今さら誰にも聞けない500の常識』廣済堂文庫 p.248 2003年
  14. ^ 札埜和男『大阪弁「ほんまもん」講座』2006年、新潮社、p171
  15. ^ 参考:たぬきときつね 複数サイトを参照しメーリングリストや掲示板からの意見をまとめたもの
  16. ^ どんぶり探偵団・編『ベストオブ丼』文春文庫・97頁
  17. ^ a b c 大谷晃一著『大阪学』新潮文庫 p.60 1994年
  18. ^ たぬき(あげ玉)”. そば 富泉. 2020年5月30日閲覧。
  19. ^ a b 岡田哲著『たべもの起源事典』東京堂出版 p.281 2003年
  20. ^ a b c 大谷晃一著『大阪学』新潮文庫 p.247 1994年
  21. ^ 第127回みんなが愛する庶民の味 京のおうどん - KBS京都『京のいっぴん物語』、文中に「たぬき」の説明
  22. ^ 岡田哲著『たべもの起源事典』東京堂出版 p.126 2003年
  23. ^ 参考 : 食品のグッジョブ!SOULE

参考資料[編集]

  • 『蕎麦辞典』
  • 『そば・うどん百味百題』

関連項目[編集]

外部リンク[編集]