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暗黒通信団(あんこくつうしんだん)は、理工学の愛好家が集う組織で、千葉県柏市に拠点をおく同人サークルである。英語名は The darkside communication group である。代表作は円周率だけを記した『円周率1000000桁表』。また「日本タイトルだけ大賞 2012夏の陣」では、定期刊行物『月刊円周率』2012年2月号が大賞を受賞している。

概要

ISBNを付与した同人誌を発行する同人サークルとして知られる。代表は星野香奈。多くのメンバーがハンドル名で活動している。作品の奥付では自らを「同人集合」と名乗っている。 成立年月は明らかにされていないが、1996年にコミックマーケットに初参加して以来、主に数表、珍書、実用書・学術書の分野で同人誌を発行する。実用書・学術書では数学物理計算機科学社会評論の分野で刊行されている。現在まで通算で300タイトル程度(書籍222冊、電子書籍65冊[1])の作品を刊行し、ほぼすべての作品を出版者として国会図書館に納本しており、同館で閲覧することができる。また一部の発行物は地方の公共図書館や英国図書館にも所蔵されている[2]。 活動開始以来コミックマーケットに参加しており、その参加ジャンルは一貫して評論情報である[3]。コミケットスペシャル4では円周率の朗読を行った[4]。東京大学関係者が学園祭企画として開催しているコミックアカデミーには第2回から毎回参加している。2013年からは毎年サイエンスアゴラにも参加している。[5][6]。 団員の定義は「自分が暗黒通信団員であると思っている者」とされ[7]メンバー同士であっても本名を知らない。構成員の人数も明らかにされていない。書籍制作の目的は読み手に苦笑いをさせることであり、これをカタカナで「イヤガラセ」と書くことで「嫌がらせ」と差別化をはかっているとされる。メンバーの一人である「シ」は同団の方針として「基本的に他者の批判はしない」ことや「エログロはやらない」ことをあげている[8]が、「童貞が教える 気持ちのいいセックス」「童貞が教える 妹とお風呂に入る方法」[9]などのやや卑猥な作品[10]も刊行している。前者については、女性産婦人科医の宋美玄が続編として「童貞に教える本当に気持ちのいいセックス」[11]を著した。ジュンク堂書店では池袋本店(2012年3月)、札幌店(2013年6月)、福岡店(2015年5月)、松山店(2015年5月)と頻繁にフェアがおこなわれている[12]。メンバーのシがEM菌擁護者である出口俊一の行為を批判した記事に対し、EM菌の利活用を推進する(株)デジタルニューディールのメールマガジンが名指しで批判している[13]

主要作品リスト

暗黒通信団の刊行物は数表類、珍書、実用書・学術書に分類できる。

数表類

数ある珍書刊行物の中でも100万文字程度の各種数表は評価されており、下記書籍版を含め、PDFがクリエイティブコモンズのライセンス下で同団のWebページよりダウンロードができる[14]

珍書

  • だから同人ヤクザは嫌われる『国会図書館にしかない本』発行後に国会図書館に納本した以外をすべて処分したもの[15][16]
  • シ『ソートされた本』
  • ザ・キカク『オビしかない本』国会図書館がオビを廃棄して保存することへの疑問をぶつける意図があったとされ海外向けニュースサイト[17]で紹介された。
  • Epsilon『シンドラーのリスト』(2008年刊行の『Epsilon著作全集』ISBN 978-4-87310-103-3 に収録)シンドラーエレベータが問題となったときに国土交通省の資料によって所在をまとめたもの[18]
  • シンキロウ『暗黒的出版論』書籍通販の際に送料を無料にするために端数調整するための本として刊行された[19]
  • ザ・キカク『入手困難』ISBN 978-4-87310-224-5
  • 真実のみを記述する会『BWTされた本』ISBN 978-4-87310-036-4
  • シンキロウ『暗黒的出版論―あるいはネット書店で1500円に満たない時に端数調整するための本』 「コンセプト自体は人をあざ笑うかのような愉快犯的なものなのだが、本文で書かれている出版に関する著者の考えは意外とまとも」と評されている[20]
  • シ『切られた本 韓国の人へ』ISBN 978-4-87310-209-2
  • 『魚臭い本』ISBNなし
  • 童貞王『我々はなぜ童貞なのか-横に長い本』ISBN 978-4-87310-032-6
  • ザ・キカク『カバーしかない本2』 ISBN 978-4-87310-004-3

実用書・学術書

  • 光成滋生『パターン認識機械学習の学習』同人誌としては珍しくジュンク堂池袋本店において販売数第1位となる(2012年7月の共同通信記事による)。さらに、2012年7月2日(月)~7月8日(日)の週間ランキングでジュンク堂書店の売り上げ総合1位となり[21]、同店でトークショーも行われた。
  • 中条蘭『C++フリーライブラリの使い方』CodeZineにて紹介された[22]
  • シンキロウ『32ページの量子力学入門』
  • シンキロウ『距離のノート』
  • 城間真鬼郎『立ち上がれ小学生 戦場を生きる真実の教科書』(書名は「立ち上がれ、小学生」とも)
  • 歩く電波塔の会キュゥべえに学ぶ営業テクニック』(書名は「キュゥべえの営業テクニック」[23]とも)

定期刊行物

  • 月刊円周率編集部 『月刊円周率』ISSN 1884-4464
  • 季刊生天目編集部 『季刊生天目』ISSN 2188-7632
  • 月刊体重グラフ編集部『月刊体重グラフ』(オンライン誌)ISSN 2186-9456

メンバー

秘密主義的な団体であるためメンバーは公表されていないが、以下は同人誌の作者として国会図書館で検索可能な名前である(明らかに人名でないものは省いた)。

  • 星野香奈(代表)
  • 牧野貴樹(元東京大学特任准教授)
  • シンキロウ(城間真鬼郎)
  • 嵐田源二
  • Projective X(塾講師)
  • 朝倉幹晴(駿台予備学校講師・船橋市議[24]
  • 宋美玄(医師)
  • 赤津豊(漫画家)
  • シーラ・アビリア
  • 成知瑠杏
  • 中条蘭
  • 柾葉進
  • Mmc
  • きむら秀一
  • 千洋誠
  • 光成滋生
  • 中沢学
  • 十六夜栞

沿革

  • 1996年 - 同年8月のコミックマーケット(「夏コミ」)に初参加し、12月の「冬コミ」にも参加。
  • 1997年 - 夏コミに参加(冬コミは落選のため参加できず)。
  • 1998年 - 夏コミに参加(冬コミは落選のため参加できず)。
  • 1999年 - 夏コミおよび冬コミに参加。同年8月に刊行された『ミニコミ魂』において紹介される。
  • 2000年 - 夏コミに参加(冬コミは落選のため参加できず)。同年4月および11月のCOMITIAにも参加。
  • 2001年 - 夏コミおよび冬コミに参加。同年11月のCOMITIAにも参加。
  • 2002年 - 夏コミおよび冬コミに参加。同年2月および5月のCOMITIAにも参加。
  • 2003年 - 夏コミおよび冬コミに参加。同年2月のCOMITIAや4月のコミックルネッサンスにも参加。
  • 2004年 - 夏コミおよび冬コミに参加。同年2月のCOMITIAや4月のコミックルネッサンス、11月の文学フリマにも参加。
  • 2005年 - 夏コミおよび冬コミに参加。同年5月のCOMITIAにも参加。
  • 2006年 - 夏コミおよび冬コミに参加。同年10月のCOMITIAにも参加。
  • 2007年 - 夏コミおよび冬コミに参加。
  • 2008年 - 夏コミおよび冬コミに参加。同年9月の「東京ブックマニアックス」にも参加。
  • 2009年 - 夏コミおよび冬コミに参加。同年3月の「東京とびもの学会」にも参加。
  • 2010年 - 夏コミおよび冬コミに参加。同年11月のコミックアカデミーにも参加。
  • 2011年 - 夏コミおよび冬コミに参加。
  • 2012年 - 夏コミおよび冬コミに参加。同年5月のCOMITIAや4月と11月のコミックアカデミーにも参加。「パターン認識と機械学習の学習」が週間ランキングでジュンク堂書店の売り上げ総合1位。同年9月にはジュンク堂書店池袋店にてトークライブを行う。日本タイトルだけ大賞2012夏の陣において大賞を受賞。
  • 2013年 - 夏コミおよび冬コミに参加。同年5月のコミックアカデミーや7月のアキバケット、11月のサイエンスアゴラにも参加。ジュンク堂札幌店でフェア。
  • 2014年 - 夏コミおよび冬コミに参加。同年11月のサイエンスアゴラにも参加。また同年9月に刊行された『ベスト珍書』において紹介される。「入手困難」が珍書大賞を受賞。
  • 2015年 - 同年1月の「珍書ビブリオバトル」や、3月のコミケットスペシャルに参加。同年2月に刊行された『ヘンな本大全』には暗黒通信団のメンバー「シ」との対談が掲載される。また同年6月にはロケットニュース24の記事において取り上げられる[25]。ジュンク堂書店福岡店・松山店・新静岡店・弘前中三店にてにてフェア。同年11月30日に日テレ「月曜から夜更かし」で「月刊円周率」が紹介された。
  • 2016年 - 秋コレ、秋コレおかわりに参加。ニフティ(株)主催「暗黒通信団を吊し上げる会」開催(3月14日)。

パフォーマンス

同人誌即売会

各即売会のルールの範囲で一般的なサークルとは異なった頒布をする場合がある。

  • 量り売り:同人誌を検定済の非自動はかりに載せ、1グラムあたり4円程度で頒布する。3月14日に行われたイベントでは1グラムあたり3.14円で頒布した。
  • 詠唱割引:サークルメンバーと対面状態で、円周率や素数や指定された乱数などを暗唱し、暗唱できた桁や個数に応じて割引を行う。
  • クーポン券:同人誌即売会において事前に公開したデザインのクーポン券で割引を行う。割引額は100円程度である。紙以外の媒体にプリントしたり割引額以上のコストを掛けてクーポンを制作する者が後を絶たず、同団のWebページでまとめられている。
  • 円周率詠唱:コミケットスペシャルなどでは、サークルメンバーが円周率を読み上げるパフォーマンスなどを行った。

その他イベント

  • 3月14日(円周率の日)に東京カルチャーカルチャーにてニフティ主催『暗黒通信団を吊す会』が開かれた(2016年)

暗黒通信団に対する評価

受賞等

  • 定期刊行物である「月刊円周率」の2012年2月号が日本タイトルだけ大賞2012夏の陣において大賞を受賞[26]
  • 「入手困難」は2014年の珍書大賞を受賞。
  • 出版者自らが本を裁断した形で提供した「切られた本」は2014年の珍造本大賞[27]

メディア露出

  • 円周率1000000桁表』はテレビ、ラジオ、Webニュースにて紹介されている。またテレビドラマにも使われている。
  • 月刊円周率2月号』はテレビにて数回紹介されている。
  • 2016年3月 KAI-YOU ニュースにインタビューが掲載された[28]
  • 2016年4月 イベニアにて紹介された[29]

コメント等

  • 1999年に刊行された『ミニコミ魂』の「暗黒通信団の本」の項では、「上手に琴線に触れてくるミニコミ」として『円周率1000000桁表』と『立ち上がれ小学生』が紹介されている[30]
  • ハマザキカクの著書『ベスト珍書』では「珍書の代名詞とも言える暗黒通信団の代表作」として『円周率1000000桁表』が取り上げられており、同団については「人の神経を逆撫でするかのようなパロディセンス、愉快犯気質には全く敵わない」とされている[31]
  • ホンシェルジュのインタビュー記事では、同団について「『売れるかどうか』を考えないでやっている」とした上で「そこがすごく刺激的で尊敬している」とし、「本のプロデュース側で一目置いている」とも述べている[32]
  • ゲームシナリオライターのとみさわ昭仁は「利益を得ることよりも購買者を笑わすことを選んだ心意気が嬉しい」と述べている[33]
  • 書店ではディスクユニオン北浦和店が「生きていく上で決して必要のない知識を、良心的な価格で提供し続ける正体不明な出版団体」[34]と述べている。


外部参考文献

以下は暗黒通信団自身による刊行物以外で言及されている文献である。

  • ハマザキカク『ベスト珍書 このヘンな本がすごい!』中央公論新社、2014年 ISBN978-4-12-150507-1
  • 『ヘンな本大全』洋泉社、2015年 ISBN978-4-8003-0577-0
  • 南陀楼 綾繁 『ミニコミ魂』晶文社、1999年 ISBN978-4-79494721-5

脚注

  1. ^ 2016年4月時点での国会図書館での検索による。
  2. ^ http://pdslogin2.bl.uk/pds?func=sso&institute=BL&calling_system=primo&url=http://explore.bl.uk:80/primo_library/libweb/action/login.do?afterPDS=true&vid=BLVU1&dscnt=1&targetURL=http://explore.bl.uk/primo_library/libweb/action/search.do?dscnt=0&tab=local_tab&dstmp=1435138623898&vl%28freeText0%29=%E6%9A%97%E9%BB%92%E9%80%9A%E4%BF%A1%E5%9B%A3&vid=BLVU1&fn=search&mode=Basic
  3. ^ http://ankokudan.org/d.htm?history-j.html
  4. ^ http://www.comiket.co.jp/info-c/CS4/kikaku/
  5. ^ http://www.jst.go.jp/csc/scienceagora/program/doc/report2013.pdf
  6. ^ https://www.youtube.com/watch?v=eIlm-BQoVqM
  7. ^ 『ヘンな本大全』 p.149
  8. ^ 『ヘンな本大全』 pp.149-151
  9. ^ 『ベスト珍書』pp.204-205
  10. ^ http://ankokudan.org/dl/pdf/pdf-imouto.pdf
  11. ^ http://www.amazon.co.jp/dp/4873101786/
  12. ^ http://ankokudan.org/d.htm?allhistory-j.html
  13. ^ http://dndi.jp/mailmaga/mm/mm151209.php
  14. ^ http://ankokudan.org/d.htm?mathlistindex-j.html
  15. ^ 『ヘンな本大全』 p.149
  16. ^ 『ベスト珍書』pp.152-153
  17. ^ http://en.rocketnews24.com/2015/06/08/mysterious-japanese-publishing-group-releases-book-with-pi-to-one-million-places/
  18. ^ 『ベスト珍書』p.113
  19. ^ 『ベスト珍書』p.148
  20. ^ https://cakes.mu/posts/12309 第四回 挑発し続ける暗黒通信団!『国会図書館にしかない本』など
  21. ^ http://developer.cybozu.co.jp/tech/?p=654
  22. ^ http://codezine.jp/article/detail/8375
  23. ^ 大人気アニメから学ぶ 営業テクニック本とは?」 webR25 2011年2月24日
  24. ^ 「円」「三角形」プロフィール欄による。
  25. ^ Preston Phro「Mysterious Japanese publishing group releases book with pi to one million places」 RocketNews24 2015年6月15日
  26. ^ http://www.sinkan.jp/special/title_only2012_summer/prize.html
  27. ^ 『ヘンな本大全』p.152
  28. ^ http://kai-you.net/article/26513 円周率すらイヤガラセ 謎の理数系サークル「暗黒通信団」突撃インタビュー
  29. ^ http://evenear.com/article/detail/397
  30. ^ 南陀楼綾繁ほか編『ミニコミ魂』晶文社、1999年、82頁。ISBN 978-4-7949-4721-5
  31. ^ ハマザキカク『ベスト珍書 このヘンな本がすごい!』中央公論新社、2014年、112-113頁。ISBN 978-4-12-150507-1
  32. ^ ハマザキカクの考える「珍書」とは」 ホンシェルジュ 2015年5月8日
  33. ^ http://www.excite.co.jp/News/reviewbook/20110214/E1297620799466.html
  34. ^ http://blog-kitaurawa.diskunion.net/bookunion/%E6%9A%97%E9%BB%92%E9%80%9A%E4%BF%A1%E5%9B%A3%E3%80%81%E5%A7%8B%E3%82%81%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82

外部リンク