魔法瓶

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魔法瓶の構造
魔法瓶の構造

魔法瓶(まほうびん、Thermos、Vacuum Flask)とは保温性の高い容器で、中に入れたものを長時間にわたり保温できる。主にスープやお茶などの食品、飲料を保温するのに用いられる。保温瓶とも呼ばれる。

持ち運び用の水筒型と据え置き用のポット型がある。前者は耐衝撃性能を向上させたアウトドア用品、後者は湯沸かし機能を付けた電気ポットがある。また魔法瓶の構造をマグカップに応用して、冷めにくくした製品もある。

概要

家庭用の魔法瓶
魔法瓶のポット

水筒ポットなどに用いる。持ち運びできる水筒は温かいお茶やスープ、氷水などを入れて行楽に用いる。これを応用して、ご飯を暖かいままにできる弁当容器も作られている。お湯と生卵を魔法瓶にいれておくことで温泉卵を作ったり、小豆などの豆類とお湯を入れることでふやかして下ごしらえしたりすることもできる。この使い方がもととなったものが、保温調理鍋である。

日本工業規格に携帯用及び卓上用魔法瓶が規定されている(JIS S 2006 まほうびん)。家庭用の魔法瓶は日本の家庭用品品質表示法の雑貨工業品の一つである[1]。国内で販売される製品[2]の外装等には「保温効力 ○○度以上(6時間)」など、これに基づいて品質表示される[3]

構造・原理

魔法瓶は二重構造になっており、内層と外層との間の空間真空になっている。ガラス製の場合、真空側の面はメッキが施されており鏡面になっている。

容器の中に入れたものが冷めてしまう(あるいは温まってしまう)のは、熱伝導によって内容物の熱が触れている容器の内壁に移動し、そこから容器の外壁を通して容器の外に逃げてしまうからである。また熱放射により熱が電磁波として容器に吸収されたり、外へ逃げてしまうことも原因である。この2点を防ぐために、工夫が凝らされたものが魔法瓶である。

熱伝導を防ぐ
物体と物体が接触している部分から熱が逃げるため、容器を二重構造にし、その間を真空にすることで熱の移動を遮断する。ただし容器を二重にしても外層によって内層は支えられているため接点が存在し、完全に熱伝導を防ぐことはできない。また、完全な真空状態を人為的に作り出すことはできない(一般に言われる真空とは「極めて低圧の状態」)ため完全な熱伝導の遮断は非常に難しい。
熱放射を防ぐ
内容物のエネルギーが電磁波の形をとった放射として逃げるのを防ぐには、鏡面による反射を利用している。これによって、放射された電磁波を内容物に戻し外へ出さなくすることができる。ただし完全な鏡面というのは実際には存在していない(実際には9割程度の反射率)なので、残りは主に内層に吸収されてしまう。そのため完全な熱放射を防ぐことはできない。

据え置き型のポットなど容量の大きい物は特に水中のカルシウム分が沈積しやすいので、定期的に落とす必要がある。物理的にこすって落とそうとするとガラスまで傷つけて破損しやすくなるので、クエン酸などを主成分とする洗浄剤や酢酸を使って落とすのが良い。

歴史

日本からの魔法瓶

1881年ドイツのアドルフ・フェルディナント・ヴァインホルトが液化ガスの保存用に製作した壁間の空気を抜いた二重壁のガラス瓶がその原型である。また1891年イギリスデュワーは液体酸素保存用に金属製の二重壁容器を製作、次いで内側にメッキを施した二重壁ガラス瓶を製作した。これは彼の名をとってデュワー瓶Dewar flask)と呼ばれる。1904年には、ドイツのテルモス社が商品化に成功し、商品名は「テルモス」(サーモス)である。

1909年、日本に初めて魔法瓶が輸入される。これはびんに栓をするだけの単純なものであった。1911年、大阪の日本電球が国産品第1号を開発し、同社が商標登録した魔法瓶という名称が、一般に用いられる。1978年、日本の日本酸素株式会社(現大陽日酸)によりステンレス製の真空断熱魔法瓶が開発される。これ以前にもステンレス製の魔法瓶はアメリカで開発されていたが、粉末の断熱材を使用していた。

メーカー

象印マホービンタイガー魔法瓶ピーコック魔法瓶工業など。これらはいずれも大阪府に本拠地を置いている。またその他部品メーカーも大阪府に多くあり地場産業となっている[4][5]

前項の「サーモス」のブランド名を世界各国で展開しているサーモス社(Thermos L.L.C.)については、イギリス・アメリカ・カナダのサーモス各社は1989年に大陽日酸(当時の日本酸素)によって買収されている[6]

脚注

関連項目