阿部一二三

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阿部 一二三
基本情報
ラテン文字 Hifumi ABE
原語表記 あべ ひふみ
日本の旗 日本
出生地 兵庫県神戸市
生年月日 (1997-08-09) 1997年8月9日(26歳)
身長 168㎝
選手情報
階級 男子66㎏級
所属 神港学園神港高等学校
段位 初段
獲得メダル
柔道
グランドスラム
2014 東京 66kg級
世界ジュニア
2014 フォートローダーデール 66kg級
世界ジュニア団体
2014 フォートローダーデール 66kg級
ユースオリンピック
2014 南京 66kg級
世界カデ
2013 マイアミ 66kg級
アジアユース
2012 台北 60kg級
2014年12月5日現在
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阿部 一二三(あべ ひふみ、1997年8月9日 - )は、兵庫県神戸市出身の、日本柔道家である。階級は66kg級。身長168cm。血液型はAB型。段位は初段。組み手は右組み。得意技は背負投袖釣込腰。現在は日体大に在学[1][2]。憧れの柔道家は野村忠宏[3]。なお、3歳年下の妹の阿部詩も全国中学校柔道大会52kg級で優勝するなど活躍している[4]

経歴

6歳の時にテレビで柔道を見て「かっこいい」と思ったことがきっかけで、兵庫少年こだま会において柔道を始めた。最初のうちは怖くてよく泣いていたことから、2歳年上の兄も一緒に道場へ付き添っていたものの、そのうち泣かなくなると兄は辞めていった[4]。小学校3年の時に女子選手の鍋倉那美に負けて悔しい思いをしたことで、消防士の父親と本格的なトレーニングに取り組むようになった[5]。近所の公園で重さ3kgのメディシンボールを横や後ろに投げて体幹を鍛えるなどすると、技の切れも増していったという[2][3][4]。ただ、小学生時代は全国大会へ出場するまでには至らなかった。神戸生田中学へ入学してから頭角を現すと、2年の時には全国中学校柔道大会55kg級で優勝を飾った。3年の時には60kg級に出場してオール一本勝ちで2階級制覇を達成した[2]。さらにアジアユースでも優勝した[6]

神港学園高校へ進学すると、66kg級に階級をあげた。1年の時には全日本カデで優勝を果たして、17歳以下の世界一を決める世界カデに出場するが、決勝でグルジアのコバ・ムチェドリシビリに技ありで敗れた[7]全国高校選手権には66kg級が設置されていないことから1階級上の73kg級に出場すると、決勝でバルセロナオリンピック71kg級金メダリスト古賀稔彦の長男である大成高校1年の古賀颯人を小外刈で破って優勝を飾った[8]

2年になると、4月の全日本カデで2連覇を果たした。8月のインターハイでは6試合全てを一本勝ちして優勝を飾った。今大会での圧倒的な勝利に、全日本監督の井上康生は「高校生(のレベル)を凌駕している」、代表コーチの鈴木桂治も「ちょっと半端じゃない勝ちっぷり」と称賛した[9][10]。なお、阿部は中学時代から将来のエース候補とみなされていた[11]。続くユースオリンピックではオール一本勝ちで優勝を成し遂げた[12]。9月の全日本ジュニアでも優勝を遂げた[13]。10月の世界ジュニアでは決勝で3歳年上であるロシアのエゴール・ムグドシャンと対戦すると、先に技ありと有効を取って大きくリードしながらも、終盤に技ありを立て続けに取られて合技での逆転負けを喫して2位に終わった[14][15]。団体戦では決勝のグルジア戦を始め、全試合に勝利してチームの優勝に貢献した[16][17]。11月の講道館杯では決勝で日体大2年の西山祐貴を技ありで破り、石井慧以来10年ぶり4人目の高校生での優勝を成し遂げた(高校2年での優勝は史上初)[18][19]。12月のグランドスラム・東京では準々決勝で世界選手権3位であるウクライナのゲオルグリー・ザンタラヤを技ありで破ると、準決勝では世界選手権を3連覇しているパーク24海老沼匡と対戦して、先に有効を取られるも終盤に技ありを取り返して優勢勝ちを収める金星を挙げると、決勝でもイスラエルのゴラン・ポラックを有効で破り、男子では史上最年少となる17歳にしてグランドスラム大会を制覇することになった。優勝インタビューでは、「うれしいです。準決勝は一番やりたかった世界チャンピオンの海老沼さんに勝てて自信になった。(きょうの柔道に点数を付けると)100点です」と語った[20][21]。かくの如き活躍に本人も、トップレベルの強豪高校ではなく地元の神港学園高校へ進学したからこそこれだけの成績を残せたと語っている。また、筋肉が硬くなってケガをしやすくなるとの理由からウェイトトレーニングは行わず、柔道に必要な筋力は普段の練習で身に付けているという[4]。2015年2月にはグランプリ・デュッセルドルフに出場するが、3回戦で昨年のアジア大会優勝者であるモンゴルのダワードルジ・トゥムルフレグに技ありで敗れた [22]

3年になると、4月の選抜体重別では準決勝で東海大学4年の高市賢悟後袈裟固で敗れて3位に終わった[23]。7月にはグランプリ・ウランバートル決勝で地元のダワードルジと対戦すると、技ありを先行しながら逆転の一本負けを喫して2位にとどまった[24]。なお、JOCからネクストシンボルアスリートに選ばれた[25]。8月のインターハイでは昨年に続いて6試合全てを2分以内で一本勝ちして2連覇を成し遂げ、自身18回目の誕生日を勝利で飾ることになった[26][27]。10月のグランプリ・タシュケントではオール一本勝ちで優勝を飾った。なお、この際にIJFから神童と評された[28][29]。11月の講道館杯では準々決勝で天理大学4年の丸山城志郎巴投げで有効を取られて3位に終わり、2連覇はならなかった[30][31]

2016年には日体大に進学した。4月の選抜体重別では準決勝で海老沼と対戦して技ありと有効を取ると、さらには背負落で投げて完勝した。決勝でも昨年の講道館杯で敗れた丸山を指導2で破って今大会初優勝を飾るも、実績からリオデジャネイロオリンピック代表には選出されなかった[32][33]

IJF世界ランキングは766ポイント獲得で18位(16/5/2現在)[34]

戦績

60kg級での戦績

66kg級での戦績

(出典[1]JudoInside.com)。

脚注

  1. ^ a b 「柔道全日本強化選手名鑑 2016」近代柔道 ベースボールマガジン社、2016年4月号
  2. ^ a b c オール一本、再び全国制す 神戸生田中の阿部選手
  3. ^ a b アスリート:柔道・阿部一二三選手 練習量は誰にも負けない /兵庫
  4. ^ a b c d 「解体新書 阿部一二三」近代柔道 ベースボールマガジン社、2015年2月号
  5. ^ 阿部一二三を投げた女子、鍋倉「東京で金」狙う 神戸新聞 2016年1月20日
  6. ^ 2012年アジアジュニア・ユース選手権大会
  7. ^ World Championship Cadets - Miami
  8. ^ 小川2世が無差別級制覇=全国高校柔道 時事通信 2014年3月20日
  9. ^ 阿部、五輪へ続く一本道 完全制覇、超高校級 東京新聞 2014年8月4日
  10. ^ 柔道:リオへ新星 男子66キロ阿部オール一本V スポーツニッポン 2014年8月4日
  11. ^ 「次世代を担う新鋭たち」近代柔道 ベースボールマガジン社、2013年2月号
  12. ^ 男子66キロ級阿部がオール1本で大会金1号 スポーツニッポン 2014年8月18日
  13. ^ 阿部、男子66キロ級優勝「リオ五輪も視野に入れている」/柔道 サンケイスポーツ 2014年9月13日
  14. ^ 玉置が優勝=柔道世界ジュニア 時事通信 2014年10月24日
  15. ^ Junior World Championships, Fort Lauderdale 2014 DAY 2
  16. ^ 世界ジュニア 日本が男女とも団体V 産経新聞 2014年10月27日
  17. ^ Junior World Championships, Fort Lauderdale 2014 DAY 5
  18. ^ 阿部一二三、初V…柔道講道館杯男子66キロ級 読売新聞 2014年11月8日
  19. ^ 講道館杯 阿部が10年ぶり高校生V デイリースポーツ 2014年11月8日
  20. ^ 17歳阿部が初優勝=近藤は浅見破り連覇-柔道GS東京 時事通信 2014年12月5日
  21. ^ 【柔道】17歳一二三「100点です」グランドスラム初V スポーツ報知 2014年12月5日
  22. ^ 17歳阿部は3回戦敗退 柔道のドイツGP スポーツニッポン 2015年2月20日
  23. ^ 海老沼3年ぶりV、高藤、阿部ら敗退 柔道  日刊スポーツ 2015年4月5日
  24. ^ 志々目がGP大会で優勝…高校生の阿部は準優勝/柔道 サンケイスポーツ 2015年7月3日
  25. ^ シンボルアスリート及びネクストシンボルアスリートが決定
  26. ^ 柔道66キロ級、阿部が連覇=高校総体 時事通信 2015年8月9日
  27. ^ 阿部一二三、オール一本勝ちで連覇!東京五輪「絶対に優勝」 スポーツニッポン 2015年8月10日
  28. ^ 大島、阿部が優勝=柔道グランプリ 時事通信 2015年10月2日
  29. ^ Tashkent Grand Prix 2015, Uzbekistan - DAY ONE
  30. ^ 朝比奈が3連覇=阿部は3位-講道館杯柔道 時事通信 2015年11月7日
  31. ^ 阿部、重圧に屈す=講道館杯柔道 時事通信 2015年11月7日
  32. ^ 柔道五輪代表に近藤亜美、松本薫、大野将平ら発表 日刊スポーツ 2016年4月3日
  33. ^ “東京五輪の星”18歳・阿部、丸山を破り初V スポーツニッポン 2016年4月4日
  34. ^ World ranking list

外部リンク

関連人物 園田烈努(柔道家) 炭多翔太(空手家・柔道家) 神港学園柔道部