阿部一二三

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阿部 一二三
基本情報
ラテン文字 Hifumi ABE
原語表記 あべ ひふみ
日本の旗 日本
出生地 兵庫県神戸市
生年月日 (1997-08-09) 1997年8月9日(22歳)
身長 167㎝
選手情報
階級 男子66㎏級
所属 日本体育大学
段位 四段
 
獲得メダル
柔道
世界柔道選手権
2017 ブダペスト 66kg級
2018 バクー 66kg級
2019 東京 66kg級
グランドスラム
2014 東京 66kg級
2016 チュメニ 66kg級
2016 東京 66kg級
2017 パリ 66kg級
2017 東京 66kg級
2018 エカテリンブルグ 66kg級
2018 大阪 66㎏級
世界ジュニア
2014 フォートローダーデール 66kg級
世界ジュニア団体
2014 フォートローダーデール 66kg級
ユースオリンピック
2014 南京 66kg級
世界カデ
2013 マイアミ 66kg級
アジアユース
2012 台北 60kg級
2016年8月19日現在
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阿部 一二三(あべ ひふみ、1997年〈平成9年〉8月9日 - )は、兵庫県神戸市出身の日本柔道家。階級は66kg級。身長167cm。血液型はO型。組み手は右組み。得意技は背負投袖釣込腰。柔道四段を取得。日体大に在学[1][2][3]。憧れの柔道家はオリンピックの60㎏級で3連覇を果たした野村忠宏[4]。兄が一人おり、3歳年下の妹である阿部詩も52㎏級で活躍している。2018年の世界選手権では兄妹同時に世界チャンピオンとなった[5][6]。2020年春からはパーク24への所属が内定している[7]

経歴[編集]

小学生時代[編集]

6歳の時にテレビで柔道を見て「かっこいい」と思ったことがきっかけで、兵庫少年こだま会において柔道を始めた。最初のうちは練習に行きたくないと壁にへばり付いて駄々をこねるなどよく怖がって泣いていたことから、2歳年上の兄も一緒に道場へ付き添っていたものの、そのうち泣かなくなると兄は辞めていった[5][8]。妹の詩によると、長兄は3人兄弟の中でもっとも柔道センスがあると言われていたが、中学入学後は水球の道へ進んだ[9]。小学校3年の時に女子選手の鍋倉那美に投げられて負けたのが悔しくて、消防士の父親と本格的なトレーニングに取り組むようになった[10]。近所の公園で重さ3kgのメディシンボールを横や後ろに投げて体幹を鍛えるなどすると、技の切れも増していったという[2][4][5]。それでも鍋倉に勝てず悔し涙を流していたこともあって、鍋倉に勝利するために信川厚が柔道部の監督を務める神港学園神港高校へも出稽古に赴くことになった[11]。また、小学校5年の時には後に妹も世話になる松本純一郎からパワーに頼らない基本に忠実な柔道の指導を受けたことで、強さの下地がつくられたともいう[12]。その後、鍋倉と引き分けることもあったが、ついに勝つまでには至らなかった。また、全国少年柔道大会全国小学生学年別柔道大会など全国大会への出場も果たせなかった[5][8][13]

中学時代[編集]

神戸生田中学へ入学してから頭角を現すと、2年の時には全国中学校柔道大会55kg級で優勝を飾った。3年の時には60kg級に出場してオール一本勝ちで2階級制覇を達成した[2]。さらにアジアユースでも優勝した[14]。この時点ですでに将来の日本代表エース候補とみなされていた[15]

高校1年[編集]

小学生の時から指導を受けていた神港学園神港高校へ進学すると、66kg級に階級をあげた[16]。入学当初は全国レベルの強豪校と言えない神港高校へ行ったことで潰れるとの風評も立てられた。しかし、全ての練習が阿部中心に組まれる阿部シフトの下で順調に力を付けて行くことになった[12]。1年の時には全日本カデで優勝を果たして、17歳以下の世界一を決める世界カデに出場するが、決勝でグルジアのコバ・ムチェドリシビリに技ありで敗れた[17]全国高校選手権には66kg級が設置されていないことから1階級上の73kg級に出場すると、決勝でバルセロナオリンピック71kg級金メダリスト古賀稔彦の長男である大成高校1年の古賀颯人に有効を先取されるも、その直後に小外刈で逆転勝ちして優勝を飾った[18]

高校2年[編集]

2年になると、4月の全日本カデで2連覇を果たした。8月のインターハイでは6試合全てを一本勝ちして優勝を飾った。今大会での圧倒的な勝利に全日本代表監督の井上康生は「高校生(のレベル)を凌駕している」、代表コーチの鈴木桂治も「ちょっと半端じゃない勝ちっぷり」と称賛した[19][20]。続くユースオリンピックではオール一本勝ちで優勝を成し遂げた[21]。9月の全日本ジュニアでも優勝を遂げた[22]。10月の世界ジュニアでは初戦で前年の60㎏級で優勝した韓国のアン・バウルを指導1で破るなどして決勝まで進むと、3歳年上であるロシアのエゴール・ムグドシャンと対戦して先に技ありと有効を取って大きくリードしながらも、終盤に技ありを立て続けに取られて合技での逆転負けを喫して2位に終わった[23][24]。団体戦では決勝のグルジア戦を始め、全試合に勝利してチームの優勝に貢献した[25][26]。11月の講道館杯では決勝で日体大2年の西山祐貴を技ありで破り、石井慧以来10年ぶり4人目の高校生での優勝を成し遂げた(高校2年での優勝は史上初)[27][28]。12月のグランドスラム・東京では準々決勝で世界選手権3位であるウクライナのゲオルグリー・ザンタラヤを技ありで破ると、準決勝では世界選手権を3連覇しているパーク24海老沼匡と対戦して、先に有効を取られるも終盤に技ありを取り返して優勢勝ちを収める金星を挙げた。決勝でもイスラエルのゴラン・ポラックを有効で破り、男子では史上最年少となる17歳118日にしてグランドスラム大会を制覇することになった。優勝インタビューで阿部は「うれしいです。準決勝は一番やりたかった世界チャンピオンの海老沼さんに勝てて自信になりました。(きょうの柔道に点数を付けると)100点ですね」と語った[29][30]。かくの如き活躍に対して阿部は、小学生時代から教わっていた気心の知れた指導者のいる地元の神港学園高校へ進学したからこそこれだけの成績を残せたと語っている。また、筋肉が硬くなってケガをしやすくなるとの理由からウェイトトレーニングは行わず、柔道に必要な筋力は普段の練習で身に付けているという[5]。2015年2月にはグランプリ・デュッセルドルフに出場するが、3回戦で2014年のアジア大会で優勝したモンゴルのダワードルジ・トゥムルフレグに技ありで敗れた[31]

高校3年[編集]

3年になると、4月の選抜体重別では準決勝で東海大学4年の高市賢悟後袈裟固で敗れて3位に終わった[32]。7月にはグランプリ・ウランバートル決勝で地元のダワードルジと対戦すると、技ありを先行しながら逆転の一本負けを喫して2位にとどまった[33]。なお、JOCからネクストシンボルアスリートに選ばれた[34]。8月のインターハイでは昨年に続いて6試合全てを2分以内で一本勝ちして2連覇を成し遂げ、自身18回目の誕生日を勝利で飾ることになった[35][36]。10月のグランプリ・タシュケントではオール一本勝ちで優勝を飾った。なお、この際にIJFから神童と評された[37][38]。しかしながら、11月の講道館杯では準々決勝で天理大学4年の丸山城志郎巴投げで有効を取られて3位に終わり、2連覇はならなかった。これによりグランドスラム・東京にも来春のヨーロッパ遠征にも選ばれず、リオデジャネイロオリンピック代表は非常に厳しくなった[39][40]

大学1年[編集]

2016年には日体大に進学した。4月の選抜体重別では準決勝で海老沼と対戦して技ありと有効を取ると、さらには背負落で投げて完勝した。決勝でも昨年の講道館杯で敗れた丸山を指導2で破って今大会初優勝を飾るも、過去の実績から海老沼がリオデジャネイロオリンピック代表に選出された。しかしながら、試合後の強化委員会では阿部が海老沼を終始圧倒したことから海老沼の代表に疑問を呈する声が、強化委員長の山下泰裕を始めとした複数の強化委員から上がった。阿部の今後の伸びしろを考慮して、チャンスを与えるためにアジア選手権ワールドマスターズなど残りの国際大会に出場させて、様子を見た上で代表を改めて決定すべきだとの声も出た。海老沼のように過去の実績で代表にほぼ内定していたような選手でも、今大会であまりにも酷い負け方をした場合は事実上の内定を取り消すことを提案した強化委員もいた[41][42][43]。なお、その後の稽古で左膝靱帯を損傷したために、アジア選手権の出場を取り止めた[44]。7月のグランドスラム・チュメニでは準決勝でパーク24竪山将に技ありで勝つと、決勝では地元ロシアのアンザウル・アルダノフに指導1を先取されるも技ありで逆転勝ちして優勝を飾った[45]。11月の講道館杯では準々決勝で明治大学4年の橋口祐葵に袖釣込腰で敗れるなどして7位にとどまった[46]。12月のグランドスラム・東京では決勝で橋口を背負落で破って講道館杯の雪辱を果たして、今大会2年ぶり2度目の優勝を飾った。なお、妹の阿部詩も52kg級で2位となり、兄妹でのメダル獲得となった[47]。2017年2月のグランドスラム・パリでは準決勝までオール一本勝ちすると、決勝ではアルダノフを攻めあぐねたものの終了間際に袖釣込腰で技ありを取って優勝を果たした[48]

大学2年[編集]

2年の時には4月の選抜体重別決勝で過去2戦2敗の高市を大外刈で破ったのを始め、オール一本勝ちして大会2連覇を飾り、世界選手権代表に選出された[49][50]。なお、日本スポーツ振興センター(JSC)による海外における強化活動の支援対象に、柔道選手としてコマツ芳田司とともに選ばれた[51]。5月から2ヶ月ほどオリンピックチャンピオンであるイタリアのファビオ・バシレが日体大に練習に来ていたが、乱取りには応じようとしなかったという[52]。世界選手権前の合宿ではリオデジャネイロオリンピック73kg級金メダリストである旭化成大野将平と乱取りするが、何度も投げられて結局一度も大野を投げることができなかった。それでも以前よりは大野相手にマシな稽古が積めるようになったという[53]。8月の世界選手権では3回戦で技あり3つを取って優勢勝ちした以外は、準々決勝で受けが強いことで知られるウクライナのゲオルグリー・ザンタラヤに技あり2つを取った後に背負投で完勝するなど全て一本で決勝まで勝ち上がると、ロシアのミハイル・プリャエフを袖釣込腰で破って20歳にして世界チャンピオンとなった。大会前に公言していたオール一本勝ちでの優勝はならなかったが、6試合のうち5試合で一本勝ちとなった[54][55]。試合後のインタビューでは、「研究されても、その上をいく選手にならないといけない。何をされても絶対に負けない強さを身につけたい」とコメントした。なお、IJFは阿部の優勝に関して、「東京2020の顔が、柔道界の新たな顔になった」と評した。また、男子代表監督の井上康生は阿部について、「古賀(稔彦)さん以来のスーパースター。全世界に存在感をアピールできたと思う」、「彼が大きく輝くのは東京五輪。もっと伸ばせる要素があり、成長していける」と語った。日体大柔道部の部長で65kg級の元世界チャンピオンである山本洋祐は、「10年に一人の逸材。古賀(稔彦)、野村(忠宏)に続く選手。投げるタイミング、投げる技術、身体的な能力、バランス、すべてを兼ね備えている」と述べている[56][57][58]。今大会優勝したことで初めて世界ランキングの1位にもなった[59]。10月の体重別団体では出場した3試合全てに一本勝ちするも、チームは準決勝で東海大学に敗れて3位だった[60]。12月のグランドスラム・東京では準々決勝で過去2戦2敗だったダワードルジをGSに入ってから技ありで破ると、準決勝でも国士舘大学4年の磯田範仁に背負投、決勝では丸山を大内刈でそれぞれ破って、52kg級で優勝した妹の詩との兄妹優勝を果たした。世界選手権と今大会で優勝したために、規定により2018年の世界選手権代表が内定した[61][62]。なお、2017年の世界ランキング年間1位となり、5万ドルのボーナスを獲得した[63]。2018年1月にはドイツやオーストリアへ3週間ほどの単独武者修行に出向いた。また、カヌー競技においてライバルの飲み物に禁止薬物を混入した事件を受けて、「海外の選手が僕の飲み物に何か入れてくる可能性がなくはない。気をつけたい」とコメントした[64][65]。3月のグランドスラム・エカテリンブルグでは決勝で地元ロシアのヤクーブ・シャミロフを袖釣込腰の技ありで破って優勝した[66]

大学3年[編集]

3年の時には、4月の体重別はすでに世界選手権代表が内定していたために出場しなかった。大会後、世界選手権代表が正式に決まった[67]。なお、妹の阿部詩も世界選手権52㎏級代表に選ばれた。過去に兄弟での世界選手権同時出場はあったが、兄妹での同時出場は史上初となる[68]。一方、野村忠宏が設立した「Nextend(ネクステンド)」とマネジメント契約を結んだ。大学在学時にマネジメント業務を委託した初めての柔道選手ともなった[69]。7月のグランプリ・ザグレブでは準々決勝でモンゴルのドフドン・アルタンスフに開始早々の肩車で敗れるも、その後敗者復活戦を勝ち上がって3位になった。なおこれにより、2015年10月のグランプリ・タシュケント初戦に勝利して以来続いてきた国際大会での連勝記録が34で止まった。また、2015年7月のGPウランバートル決勝でダワードルジに敗れて以来続いてきた対外国選手の連勝記録は29でストップした。試合後には、「これが世界選手権じゃなくてよかった。まだまだ強くなる。世界選手権で最高のパフォーマンスができる」とコメントした[70][71][72]。今大会では低い姿勢から繰り出される肩車や横落に反応しきれなかったために、その点の課題克服にも取り組むことになった[73]。9月にはJOCとシンボルアスリートの契約を結んだ[74]世界選手権では準々決勝でザンタラヤを合技、準決勝ではアン・バウルをGSに入ってから技ありでそれぞれ破った。決勝ではカザフスタンのエルラン・セリクジャノフを内股で破って2連覇を達成した。妹の詩も優勝したことから、史上初の兄妹同時優勝となった。試合後のインタビューでは次のように語った。「自分は一本を取る柔道だが、状況に合わせて勝ち切れた。一つの成長だと思う。2連覇をすること以上に兄妹での優勝が目標だった。記録をつくれて良かった。妹が先に優勝し、より覚悟を持って決勝に臨めた」「東京五輪も同じ日に(試合が)あると思う。五輪できょうだい優勝したい思いが、より強くなった」。一方、IJFの実況も務める元世界チャンピオンのニール・アダムスは、「間違いなく最高のテクニシャンであることを証明した。すべての柔道家が見習う手本だ」と阿部を称賛した[6][75][76][77]。なお、今大会で兄妹優勝したことにより、52㎏級の妹と同時に世界ランキング1位になった[78]。10月の体重別団体では準々決勝と準決勝で貴重な一本勝ちを収めてチームを決勝へ押し上げると、筑波大学戦では田川兼三と引き分けたものの、2勝2分の成績でチームの初優勝に貢献した[79][80]。11月のグランドスラム・大阪では準決勝まで全て一本勝ちするも、決勝では丸山にGSに入ってから巴投げで技ありを取られて2位に終わった。これにより、昨年に続く世界選手権代表内定はならなかった[81]。なお、2年連続で世界ランキングの年間1位となり、1万ドルがIJFから授与された[82][83]。2019年2月のグランドスラム・パリを前に今年は負けなしでいきたいと語っていたが、その初戦で世界ジュニアチャンピオンであるイタリアのマヌエル・ロンバルドに肩車で技ありを2つ取られて一本負けを喫した。なお、ロンバルドはイタリア代表チームのゼネラルマネージャーである村上清が秘密兵器と考えていた選手だった。試合後には、「思っていた以上に相手が研究してきている。自分の技が全然かからない」「もう負けは許されない。もっと強くならないといけない」とコメントした[84][85][86]

大学4年[編集]

4月の体重別では決勝で丸山に13分23秒もの戦いの末に浮技の技ありで敗れて2位にとどまるも、世界選手権代表には選出された[87][88][89]。なお、JOCより引き続きシンボルアスリートに選出された[90]。8月に東京で開催された世界選手権では準々決勝の技あり優勢勝ち以外は全て一本勝ちして準決勝で丸山と対戦すると、指導2をリードしながらGSに入ってから浮技で技ありを取られて、今大会3連覇はならなかった。3位決定戦ではロンバルドにGSに入ってから一旦は返し技で一本を取られるもそれが取り消しになると、直後に釣腰で一本勝ちして3位となった[91][92]。なお、3回戦で中国選手と対戦した際に頭突きを食らって右目を負傷したが、これが敗れた原因ではないという。また、「悔しい。妹は優勝で自分は3位。兄として情けない」ともコメントした[93]。妹が2連覇を達成したことについて、「今日はお兄ちゃんとして情けないのはあったけど、一柔道家としてあのプレッシャーの中で勝つのはすごい。心の底からおめでとうと言いたい」と述べた。一方で妹は、「お兄ちゃんが負けたのは悔しいけど、まだ道はあると思う。もう一度私を引っ張ってもらえる存在になってほしい」と思いやった[94][95]。9月には兄妹揃ってアディダスと契約を結んだ[96]

世界ランキング[編集]

IJF世界ランキングは4885ポイント獲得で4位(2019年9月2日現在)[97]

  • 世界ランキングの年度別変遷
2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
順位 33 18 6 1 1

(出典[1]JudoInside.com)。

人物[編集]

  • 一二三という名前は「一歩一歩進んでいってほしい」という両親の思いから名付けられた[98]
  • 小学生時代は鍋倉那美に結果として1度も勝てなかったが、その悔しさをバネに世界チャンピオンにまでなったので、今の自分があるのも鍋倉のおかげだと世界選手権初優勝直後に出演したテレビ番組のとくダネ!で語っている[8]。なお、小学生時代は鍋倉のことを「那美ちゃん」と呼んでいたが、その後は「鍋倉」と呼ぶようになった[100]
  • 2020年の東京オリンピックに妹の詩と兄妹代表になれば同じ日の試合に出場することになるので、兄妹同時金メダルの獲得を狙っている。さらには憧れである野村が達成したオリンピック3連覇を上回る4連覇を目標に掲げている[98][99][101]
  • 好きな言葉は、「努力は天才を超える」[98]
  • 愛称は柔道界のひふみん

柔道スタイル[編集]

右組みからの背負投や体落、袖釣込腰などを得意とする。技に入った瞬間のインパクトを決め手に、一発の重みで相手を投げきるのを特徴としている。本人によれば、子供の頃から取り組んできた背負投こそがメインの技であり、そこから発展していったのが袖釣込腰や背負落風の体落であるという。また、小学生の時からチューブやメディシンボールなどでインナーマッスルを鍛えてきたこともあって体幹の強さには自信を持っている。そのため多少無理な態勢からでも担ぎ技などを仕掛けることができる。袖釣込腰の名手で知られたシドニーオリンピック81kg級金メダリストの瀧本誠も驚嘆するような仕掛けを繰り出して見せる。小さい頃から野村忠宏に憧れていたこともあり、野村の背負投の入り方などを特に研究して、そのための打ち込みなどの基本練習を小学生時代に徹底したことが後に技の切れを存分に発揮することににつながった。さらには、それまで得意にしていた相手の懐に入り込んでのしゃがみこみの背負投が、高校1年の時に出場した世界カデの決勝において上背のある外国選手に通用しなかったことを契機に、高い姿勢からでも入れる背負投を本格的に身に付けていった。当の野村は阿部の高く入る背負投について、理にかなっていない強引でへたくそな技だとしながら、にもかかわらず決めることができるのは凄いことだとコメントしている。なお、接近戦に強さを発揮するダワードルジにも接近戦から技を仕掛けることができたので、そのような戦法にもある程度の自信を有している。練習の中で付けていく柔道力こそが必要だと考えているので、ウェイトトレーニングは行っていない[16][102][103][104][105][106]。阿部をサポートする強化スタッフの岡田隆は、阿部の筋肉に無駄は一切なく肩や体幹は世界トップレベルの強さであり、おまけにケガもしにくい体質だと指摘している。また、他の日本選手と違いリミッター(制御装置)がきれているので力を出し切る能力に長けているとの説明も加えた。一方、寝技が嫌いであまり練習をしてこなかったが、大学に入ってからは柔道の幅を広めるためにきっちり取り組むようになった[107]

戦績[編集]

60kg級での戦績

66kg級での戦績

(出典[1]JudoInside.com)。

有力選手との対戦成績[編集]

(2019年12月現在)

対戦成績
国籍 選手名 内容
日本の旗 海老沼匡 2勝
日本の旗 丸山城志郎 2勝4敗
日本の旗 橋口祐葵 3勝2敗
日本の旗 高市賢悟 1勝2敗
ウクライナの旗 ゲオルグリー・ザンタラヤ 3勝
ジョージア (国)の旗 バジャ・マルグベラシビリ 3勝
ロシアの旗 ミハイル・プリャエフ 2勝
大韓民国の旗 アン・バウル 2勝
アラブ首長国連邦の旗 ダワードルジ・トゥムルフレグ 1勝2敗
モンゴルの旗 ドフドン・アルタンスフ 1勝1敗

(参考資料:ベースボールマガジン社発行の近代柔道バックナンバー、JudoInside.com等)。

IJFワールド柔道ツアーにおける獲得賞金一覧[編集]

大会 開催日 順位 獲得賞金
世界カデ 2013年12/10-8月9日 1/2位 850ドル
世界ジュニア 2014年12/10-10月23日 1/2位 1,120ドル
グランドスラム・東京2014 2014年12/10-12月5日 1/優勝 4,000ドル
グランプリ・ウランバートル 2015年12/10-7月3日 1/2位 1,600ドル
グランプリ・タシュケント 2015年12/10-10月1日 1/優勝 2,400ドル
グランドスラム・チュメニ2016 2016年12/10-7月16日 1/優勝 4,000ドル
グランドスラム・東京2016 2016年12/10-12月2日 1/優勝 4,000ドル
グランドスラム・パリ2017 2017年12/10-2月10日 1/優勝 4,000ドル
2017年世界柔道選手権大会 2017年09/11-8月30日 1/優勝 20,800ドル
グランドスラム・東京2017 2016年12/10-12月2日 1/優勝 4,000ドル
2017年世界ランキング 2017年12月18日 優勝 50,000ドル
グランドスラム・エカテリンブルグ2018 2018年12/10-3月17日 1/優勝 4,000ドル
グランプリ・ザグレブ 2018年12/10-7月27日 1/3位 800ドル
世界選手権 2018年9月21日 優勝 20,800ドル
2018年世界ランキング 2018年12月17日 優勝 10,000ドル
世界選手権 2019年8月26日 優勝 20,000ドル
総計 / 15大会 152,300ドル
  • 日本選手の場合は、獲得賞金の半分は全柔連の取り分となっていたが、2013年3月からは競技者規定が改訂されて、賞金は全額選手が受け取れることになった[108]。2014年7月からはIJF主催の各大会でコーチにも賞金が支給されるようになったために、選手の賞金が従来の2割減となった[109]

TV出演など[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c 「柔道全日本強化選手名鑑 2019」近代柔道 ベースボールマガジン社、2019年4月号
  2. ^ a b c オール一本、再び全国制す 神戸生田中の阿部選手
  3. ^ 阿部一二三選手 特別昇段”. 講道館. 2017年12月28日閲覧。
  4. ^ a b アスリート:柔道・阿部一二三選手 練習量は誰にも負けない /兵庫
  5. ^ a b c d e 「解体新書 阿部一二三」近代柔道 ベースボールマガジン社、2015年2月号
  6. ^ a b 阿部兄妹が初の同時V!一二三「2連覇より兄妹での優勝が目標だった」 世界柔道 サンケイスポーツ 2018年9月21日
  7. ^ 阿部一二三、来春パーク24へ=「最高の環境と体制」-柔道 時事通信 2019年6月3日
  8. ^ a b c d 柔道界の“ひふみん”阿部一二三選手が生出演!小さい時は女子に負けていた!?
  9. ^ 「解体新書 阿部詩」近代柔道 ベースボールマガジン社、2017年2月号 32頁
  10. ^ 阿部一二三を投げた女子、鍋倉「東京で金」狙う 神戸新聞 2016年1月20日
  11. ^ 世界王者を倒した高校2年 阿部一二三 強さの理由 TVでた蔵 2014年12月8日
  12. ^ a b 【世界柔道】強すぎる阿部一二三“怪物誕生”のルーツと秘話
  13. ^ 「解体新書 鍋倉那美」近代柔道 ベースボールマガジン社、2016年2月号 24-27頁
  14. ^ 2012年アジアジュニア・ユース選手権大会
  15. ^ 「次世代を担う新鋭たち」近代柔道 ベースボールマガジン社、2013年2月号 9頁
  16. ^ a b 【東京への道】阿部一二三、神港学園で磨いた「両手でつかむ」柔道 世界カデ敗戦で「高く入る技」目覚め 産経新聞 2018年5月21日
  17. ^ World Championship Cadets - Miami
  18. ^ 小川2世が無差別級制覇=全国高校柔道 時事通信 2014年3月20日
  19. ^ 阿部、五輪へ続く一本道 完全制覇、超高校級 東京新聞 2014年8月4日
  20. ^ 柔道:リオへ新星 男子66キロ阿部オール一本V スポーツニッポン 2014年8月4日
  21. ^ 男子66キロ級阿部がオール1本で大会金1号 スポーツニッポン 2014年8月18日
  22. ^ 阿部、男子66キロ級優勝「リオ五輪も視野に入れている」/柔道 サンケイスポーツ 2014年9月13日
  23. ^ 玉置が優勝=柔道世界ジュニア 時事通信 2014年10月24日
  24. ^ Junior World Championships, Fort Lauderdale 2014 DAY 2
  25. ^ 世界ジュニア 日本が男女とも団体V 産経新聞 2014年10月27日
  26. ^ Junior World Championships, Fort Lauderdale 2014 DAY 5
  27. ^ 阿部一二三、初V…柔道講道館杯男子66キロ級 読売新聞 2014年11月8日
  28. ^ 講道館杯 阿部が10年ぶり高校生V デイリースポーツ 2014年11月8日
  29. ^ 17歳阿部が初優勝=近藤は浅見破り連覇-柔道GS東京 時事通信 2014年12月5日
  30. ^ 【柔道】17歳一二三「100点です」グランドスラム初V スポーツ報知 2014年12月5日
  31. ^ 17歳阿部は3回戦敗退 柔道のドイツGP スポーツニッポン 2015年2月20日
  32. ^ 海老沼3年ぶりV、高藤、阿部ら敗退 柔道  日刊スポーツ 2015年4月5日
  33. ^ 志々目がGP大会で優勝…高校生の阿部は準優勝/柔道 サンケイスポーツ 2015年7月3日
  34. ^ シンボルアスリート及びネクストシンボルアスリートが決定
  35. ^ 柔道66キロ級、阿部が連覇=高校総体 時事通信 2015年8月9日
  36. ^ 阿部一二三、オール一本勝ちで連覇!東京五輪「絶対に優勝」 スポーツニッポン 2015年8月10日
  37. ^ 大島、阿部が優勝=柔道グランプリ 時事通信 2015年10月2日
  38. ^ Tashkent Grand Prix 2015, Uzbekistan - DAY ONE
  39. ^ 朝比奈が3連覇=阿部は3位-講道館杯柔道 時事通信 2015年11月7日
  40. ^ 阿部、重圧に屈す=講道館杯柔道 時事通信 2015年11月7日
  41. ^ 柔道五輪代表に近藤亜美、松本薫、大野将平ら発表 日刊スポーツ 2016年4月3日
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  104. ^ 阿部一二三インタビュー
  105. ^ 史上最年少日本一! 柔道家・阿部一二三が“男前”な本当の理由
  106. ^ 乱入!野村氏「ヘタクソ。でも決める」憧れ先輩、阿部の強さ語る
  107. ^ バズーカ岡田が語る、阿部一二三の強さの理由
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外部リンク[編集]