退学

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退学(たいがく)とは、児童生徒学生が、卒業修了を待たずに学校を辞めること(自主退学)、あるいは労働者の「解雇」と同じく辞めさせられること(懲戒退学、退学処分)をいう。

日本

以下の種類がある。いずれの場合も、学生証の返納など幾つかの手続きを必要とする。

退学の種類

自主退学と懲戒退学

自主退学(じしゅたいがく)は、幼児・児童・生徒・学生、および、その保護者の意思で退学することである。

手続きとしては、幼児・児童・生徒・学生とその保護者(または保証人など)の連名により退学願が出され、学校内において審議した後に、校務をつかさどる校長から許可されることによって退学する。

懲戒退学(ちょうかいたいがく)とは、懲戒処分の一種であり、退学処分(たいがくしょぶん)、放校(ほうこう)、放学(ほうがく)などともいう。懲戒退学は、校長大学にあっては、学長の委任を受けた学部長を含む[1])が行う。一般に「学校をやめさせられる」とはこのことを指す。放校・放学は退学処分の意味で用いられることも多いが、実際は退学処分よりも重いもので、在校生であったこと自体が抹消されて、復学も認められなくなる。

懲戒退学は、学校教育法(昭和22年法律第26号)第11条[2]に基づいて行使される懲戒権に含まれ、懲戒退学を行うにあたっては各種の制約がある。

学校教育法施行規則には、懲戒退学の理由として「学費を支払っていない者」(滞納している者)は列挙されていないが、学費の未納は国立大学法人の設置する学校、および、私立の学校の場合は学則、公立の学校の場合は地方公共団体が所管する文書に基づいて、除籍となることがある。

日本の場合、退学自体は、競馬学校など学校教育法に基づかない各種研修所でも実例がある。

中途退学と満期退学

中途退学(ちゅうとたいがく)とは、修業年限として定められている期間を在学せずに退学することである。これに対し 満期退学(まんきたいがく)とは、修業年限として定められている期間以上を在学したものの卒業または修了に至らないまま退学すること(例:大学院に5年以上在学(休学・留学中などの期間を除く)したものの修了せずに退学する。つまり、大学院に5年以上在学(休学・留学中などの期間を除く)して退学したにもかかわらず、中途退学というのは誤用である。)である。特に大学院の博士後期課程・後期3年博士課程、一貫制博士課程などを退学した際に用いられることがあり、「単位取得満期退学」などのように、修了に必要な単位を修得していることも付記することが多い。1980年代以前は、提出した博士学位請求論文が評価されない場合がそれなりにあり、学生は、論文を提出した後に、博士の学位が授与されるという「修了」を迎えないまま退学した。このような時、在学し、研究指導を受けていたことを表すために「満期退学」と表記されることがある。

中途退学は、自主退学・懲戒退学のいずれの場合でも用いられ、満期退学は、通例、自主退学の場合のみ用いられる。

退学をめぐる背景

教育段階と退学の状況

  • 公立学校(公立の併設型中学校を除く)において義務教育としての教育が行われている児童・生徒には、懲戒退学とすることはできない(学校教育法施行規則第26条第3項)。ただし、他の学校へ転学する場合や、学齢(満15歳に達した日の属する学年の終わり)を超過しかつ本人の希望がある場合などに退学の扱いとなることがある。このような事由による退学はあるが、懲戒としての退学処分を行うことはできない。一方私立学校については、懲戒退学処分を受けたとしても公立学校に転入することが可能であることから、学齢児童・生徒に対する懲戒退学処分も認められている。「転校勧奨」などの名称で、退学に等しい処分が行われる場合もある。ただ外国人の場合義務教育の対象者に当てはまらないため 退学届を提出したら受理されることも有る。
  • 高等学校の場合だと、退学の例も見られる。現在の日本においては、いじめや各種の学校不適応などの問題から高等学校を自主退学することも生じやすく、1990年代以降は、退学後に学校で再度学ぶこともなく就職も行わない者(=ニート)が増加しているともいわれる。この場合だと(たとえ学歴が不問とされていても)大企業やホワイトカラー職種への就職は不可能となり、ブルーカラー職種への就職も困難となる。また、就職の際に提出する履歴書にも、(自主・懲戒問わず)退学も学歴として記載しなければならない。近年では学歴や大学ブランドよりも個人の素質や実力を重視した募集を行う企業が増えている。なお、高等学校を卒業する前に退学した者が大学入試を受験しようとする際、高等学校卒業程度認定試験(高認。旧「大検」こと「大学入学資格検定」)に合格する必要がある。この認定試験に合格することで初めて大学入試の受験資格が得られる。2006年度の文部科学省の調査では合格者の約半数が大学、短大、専門学校に進学したという結果も出ている。(2007年05月15日発表 [3]
  • 学校サイドによる退学処分とすると、当該の学生または生徒の将来の進路を阻むことになってしまう。処分を行う際、現場の教師、管理職、理事会、委員会などの間で議論が過熱することもしばしまある。また、該当の生徒がそのような立場に置かれた原因の公表、解明はされないことがある。退学者が出ることによって学校側のイメージが下がるということもあり、進路変更による退学や自主退学、転校と処理する、または公表しないことがある。各種統計における退学者の人数は氷山の一角に過ぎない。時にはそれが自主退学や転校の強要、無期限停学にして出席日数が足らずに留年、退学させるケースにつながることもある。強要罪が適用されたり、民法上の不法行為として損害賠償請求が認められることもある。この場合、子ども専門の相談窓口を設けている弁護士会法務局で相談することができる。
  • 一部の大学では、優秀な学生が、通常の課程では3年以上、医学・歯学・獣医学・臨床に関わる薬学を履修する課程では4年以上在学することで、大学院に1年または2年早い段階で進学できる場合がある(「飛び級」の類似例)。このケースでは早期卒業制度がある場合は卒業することができるが、早期卒業制度がない場合は大学を退学しなければならない。
  • バブル崩壊後の1990年代以降では、高等学校や大学などの区別なく特に私立学校においては、倒産や失業、リストラなどで親が学費が払えずにやむなく退学するケースが増えている。2007年の高校野球特待生問題では、奨学金の廃止により学費や部費、活動費が払えずに退学者が増えてしまうのではという懸念の声が上がった。

退学者の年間規模

高等教育(大学・短大・高等専門学校)の退学者だけでも、全国で年間13万人以上いると推定されている。 [3]

退学に対する評価

日本の場合、初等教育の課程(小学校の課程など)や前期中等教育の課程(中学校の課程、中等教育学校の前期課程など)では、大部分の生徒に対して義務教育が行われているため、転出などの場合を除き退学の例はめずらしい。ただし、現代の学校教育法昭和22年法律第26号)に基づかない教育制度においては、義務教育年限が異なり複線型学校体系であったこと等の理由から退学も相応に見られた。

[4]

中国

中国では、出産を理由とした退学処分が行われていた(学生の結婚、出産が2003年まで禁止されていたため)。政府は2007年8月に、既婚学生の出産を理由とした退学はしてはならないと規定し、併せて出産前後の休学を勧告した[5]

関連項目

脚注

  1. ^ 学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)第26条第2項
    懲戒のうち、退学、停学及び訓告の処分は、校長(大学にあつては、学長の委任を受けた学部長を含む。)が行う。
  2. ^ 学校教育法 第11条
    校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。
  3. ^ 外部リンク
    • 中退に関する基礎資料 第一章 中退の規模とリスク 第一節 中退の規模~年間13万人以上が高等教育を中退[1]
  4. ^ 外部リンク
    • 中退に関する基礎資料 第一章 中退の規模とリスク 第二節 中退のリスク~中退後約6割がずっとフリーターか無職[2]
  5. ^ 『出産理由の退学処分を禁止=既婚学生の権利認める』2007年8月4日付配信 時事通信

外部リンク

  • 中退に関する基礎資料 第一章 中退の規模とリスク 第一節 中退の規模~年間13万人以上が高等教育を中退[4]
  • 日本中退予防研究所