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軍鶏 (漫画)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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軍鶏』(しゃも)は、橋本以蔵原作・たなか亜希夫画による日本格闘漫画作品。

2008年ショーン・ユー魔裟斗主演で映画化された。

概要

普通の競技漫画とは趣が異なっており、自己修養やスポーツマンシップなどの近代体育的な価値観ではなく格闘の負の側面である暴力の手段としての要素や、90年代以降激変した日本社会の闇、人間心理の暗黒面を大きく取り上げているのが特徴。

最初は双葉社の『漫画アクション』に連載されていたが、同誌の休刊(リニューアル)に伴い『イブニング』に移籍した。なお単行本19巻以前が『アクション』掲載分、20巻以降が『イブニング』掲載分である。移籍に伴う諸事情により『アクション』掲載時終盤の数話は単行本として発行されることなくお蔵入りとなっていたが完全版発売の際に収録された。

2008年1月を境に、『イブニング』誌での連載が原因不明のまま休止していたが、後に作画担当のたなかが原作者の橋本を相手取り、著作権者がたなかである事の確認や単行本の著作権料を請求したためである事が明らかとなった[1]。当時の報道によれば、たなか側は「橋本は連載当初に大ざっぱなあらすじが書かれた原稿しか出しておらず、ストーリーやキャラクター設定、せりふなどすべて自分が行った」「軍鶏は自分が単独で創作した作品」と主張している(橋本側は弁護士に任せているとして、ノーコメント)。

たなかの公式サイトにあるブログ「すまねぇ…」には成嶋亮の人形の写真があり、 「久し振りだな、みんな。ナルシマ リョウだ。しばらく姿を見せてなかったが別に死んだわけじゃねぇ。ちょっとワケありでな。必ず戻って来るからな、待っとけよ。誰もオレを殺せやしねえ。」とコメントされていた。

2011年7月より、完全版のコミックが発売。7月26日に発売されたイブニング16号より裁判が解決したとして連載が再開。10月21日に発売された26巻からは「原作 橋本以蔵」のクレジットが外されている。

あらすじ

自分の両親を刺殺した優等生の少年・成嶋亮が少年院に入り、そこで出会った空手の達人・黒川健児に師事して「生き残るための空手」を身につけ出所してからは格闘界に入り、無軌道なバトルを繰り広げてゆく…。

一部・少年院編

有名私立高校に通う16歳の主人公・亮が、両親をナイフで突如惨殺した場面から始まる。その後少年院に入るが、院に入った「親殺し」という経緯、内気な性格、虚弱な体格などの要素から陰湿かつ残酷ないじめを少年院生や教官に受ける。しかし体育の教官である黒川健児に空手を習い始めたところから、亮は「殺されぬよう」成長していく。単行本1-2巻に収録。

二部・リーサルファイト編

少年院を出所し社会に出た亮は、刑務所で得た空手の腕と肉体を生かして裏社会で頭角を現した。(一部、過激な描写は単行本には未収録)暴力に明け暮れる毎日の中で、彼はあるきっかけから番竜会空手会長の望月謙介と知り合う。番竜会の主催する格闘技興行「リーサル・ファイト」を見た亮は自分の「生き残るための空手」とは対極のショーアップされスポーツ化された空手に衝撃を受け、リーサル・ファイトのヒーロー・菅原直人に対して憎しみをいだくようになる。直人との対決を望んだ亮は、番竜会軽量級トーナメント優勝、リーサル・ファイト横浜大会出場と、大会での実績を重ねつつ、番竜界に対して挑発を繰り返す。手段を選ばぬ挑発は、直人の恋人である船戸萌美のレイプにまで発展した。激怒した直人はついに対戦を承諾する。そして2人は数万人の大観衆が集まった東京ドームでついに対決のときを迎えた…。

三部・中国編

東京ドームでの戦いから半年、成嶋リョウは中国にいた。廃人となった妹のため、金のために戦い続けるリョウの前に新たな敵が現れる。その名は斉天大聖。凄まじい身体能力と中国拳法の前に為す術もなく敗北を喫したリョウは、復讐のため斉天大聖の師である陳老師のもとで修行をする。リョウの前に再び現れた斉天大聖は、陳老師を惨殺し妹弟子の燕を死に追いやった後、リョウと再び闘う。圧倒的に攻められながらも身につけた奥義によって勝利を収めるリョウであったが、戦いによって自らの醜さと闇の深さを改めて知ることとなる。

四部・グランドクロス編

ダンサーとしてバレエの世界で成功を収めた高原東馬。彼はある日、偶然テレビで眼にしたリーサル・ファイトでの成島亮の闘いに何かを感じ、格闘技の世界へと足を踏み入れる決意をする。当初、何の計画も無しに動いていた東馬であったが、天性の魅力と異常なまでの格闘センスを見せることにより、瞬く間に組み技系格闘技においてトップクラスの同志を獲得していく。一方、成島亮は未だ孤独な闘いを続けていた。鍛錬を怠ったことによる肉体の衰弱と技術の低下により、一般人並みの戦闘力に変わり果てていた亮。精神的にも追い詰められていく亮であったが、様々なきっかけにより、徐々にかつての牙を取り戻していく。グランドクロス当日、大観衆が見守るリング上でついに邂逅を果たした二人。トーマの光は、闇の底で喘ぐリョウに届くのか…?

人物

成嶋亮(リョウ)
本編の主人公。かつては東大合格確実と言われる程の優等生であったが、両親の「まとわりつくような生暖かい愛情」に自分の全てが吸いつくされることを怖れ、両親を刺殺。鯵ヶ崎高等少年院に送還される。少年院に送られてきた当初は非常に気弱な性格で、肉体も華奢であり、院生たちからの陰湿なイジメにより殺される寸前まで追い詰められるが、体育の特別講師を務める黒川から空手を習い、力をつけていくことで、別人のような凶暴な男へと変貌していく。少年院出所後は暴力団の準構成員となり、日夜ストリートファイトに明け暮れるなど、飽くなき暴力への本能に従い、獣の道を突き進んでいく。だが、一方で殺人という罪を犯さなければ手に入れられたはずの順風満帆な人生への未練を捨て切ることができずもがき苦しみ、格闘技団体リーサル・ファイトのスターとして富と名声を欲しいままにする菅原直人に嫉妬するようになり、表の格闘技界へと殴り込みをかけていく。リーサルファイトでの菅原戦時で身長172cm、体重76kg(但し、ステロイドによる強引な増量の結果であり、通常時の体重は凡そ60kg台半ば~70kg程度と推察される)元々左利き(今まで右利きだったのは幼少期に母親に矯正されたため)だったことを直人との試合中に思い出し、途中からサウスポースタイルで戦うようになった。リーサル・ファイトでの菅原との死闘後、覚せい剤中毒で廃人となった妹、夏美と再会。菅原との果たし合いを終えた後、夏美とトーキチの生活費を稼ぐために中国へと渡る。中国編では、山奥での修行により発勁を習得するが、グランドクロス編では使用していない。斉天大聖との戦いの後、しばらくして日本に帰国。クラブ「シスル」にて金を得るため戦いを続ける。不摂生と鍛錬を怠ったツケとして、グランドクロス編開始時は一般人レベルの戦闘能力に落ちぶれ、精神的にも追い詰められていたが、菅原との再会をきっかけとして立ち直り、大会に向けてコーチとして雇ったゴサクとの連日にわたる壮絶なスパーリングにより、総合格闘技の技術を会得する。
黒川健児
少年院で空手の指導者を務める空手家。自身もかつて思想テロに走って逮捕された囚人であり、元番竜会トップクラスの空手家であった。達人という枠を越えた独特の凄みを持つ人物で、その存在に今なお望月が畏怖するほど。少年院で亮と運命的な出会いを果たし、肉体的にも精神的にも殺される寸前であった亮に空手を仕込む。出所後、神尾の手引きによって、菅原直人との対戦に向け再び亮を指導することになり、独自の理論に基づく指導法で、娑婆のぬるま湯に浸かり少年院時代の鋭さを失っていた亮を再び殺人マシンへと作り変えていく。グランドクロスでは、ジンの要請を受けトーマサイドのセコンドとして登場。自身が育てた悪鬼リョウを成仏させることを「癒し」の力を持つトーマに託す。試合中、リョウの闇にトーマが呑まれ、自身の思惑が潰えたことを悟った後、会場の廊下で死亡した。

少年院編の人物

望月淳哉
亮と同日に鯵ヶ崎少年院へ送還された少年(後述の望月館長とは同姓だが、無関係)。気さくな性格で、親殺しとして院内すべての人間から忌み嫌われる亮にただ一人味方していた。出所後、亮の所属していた暴力団とトラブルを起こし逃亡するが、程なくして亮、トーキチらに捕まる。その後の行方は不明。
金山
亮と同日に鯵ヶ崎少年院へ送還された少年。屈強な体格と優れた格闘技術を持ち、院生たちを陰で仕切っている。鯵ヶ崎少年院に入ったのは初めてではなく、院内に畑を作ることを許可されるなど、当局からも特権を与えられている。少年院に送られてきた当初から亮を観察しており、空手との出逢いにより力を付けた亮を、出所後の自分のパートナーにしようと勧誘するも断わられ、争いになる。
院長
鯵ヶ崎少年院院長。亮の経歴に関心を示し、亮にイジメを行うよう院生たちを仕向けるなどする。黒川の指導により亮が力をつけていくと次第に亮を怖れるようになり、金山や黒川を使って亮を潰そうとするも、失敗に終わる。
マサ
少年院で亮が収監されていた房を仕切っていた少年。十代でありながら、なぜか中年男性のような風貌をしている(亮や望月を除く多くの院生に同じことが言えるが)。亮に性奉仕を強要したことで陰茎を食いちぎられ、これが物語序盤におけるハイライトシーンとなっている。
ヒロミ
亮と同房で生活していた少年。普段はオカマのような言葉づかいをするが、怒りに我を忘れると男言葉を使うようになる。トイレで亮に背中を刺されて以降少年院編には登場しなくなるが、後に新宿のバーで亮と再会する。

リーサルファイト編の人物

望月謙介
番竜会総帥。過去、空手を生産性のあるものにしたいと語っており、それはつまり空手のショーアップであった。商売人とも評され、物腰の軽い人物ではあるが一流派の総帥だけあって、亮を翻弄する空手の腕前を披露したこともある。
同期である菅原柾人をアクシデントとは言え再起不能にして、結果として死に追いやった負い目や責任から、息子の直人を引き取り、一流の空手家へと成長させて行く。柾人の件もあり、武道家が貧しくある必要はないと考え、番竜会の空手を世界へ知らしめる野心へと変えていく。
菅原が昏睡状態に陥って以降はヤクザのようなキャラクターとなり、凄みが増している。
菅原直人
番竜会の重量級の選手。同会主催の立ち技格闘技最強を決める格闘技大会「リーサルファイト」に出場している日本人最強の選手。
清貧を地でいった父親とは対照的に、都内のマンションに在住し、スポーツカーも所持する程、裕福な生活を送っている。
しかしながら、内面は根からの武道家であり、非常に硬派な人物である。拳を粉砕されても、痛みを耐え切り正拳を出し切るなど並々ならぬ根性の持ち主でもあり、スポーツマンとしても、武道家としても非常に優れた才能の持ち主。
無愛想に思える一面もあるが、一目見たトーマの肉体を見極め空手を薦めたり、海外での特訓の際にもコーチ陣と良好な関係を築いていたり、女優の恋人がいるなど、人間関係の形成も上手で、温和で優しい人物である。
最初は歯牙にもかけなかった亮が自分の恋人(船戸萌美)をレイプしたことを知り、マットの上で殺すために挑戦を受ける。同大会で亮を失神KOし勝利を収めたが、試合内容に納得がいかないため再戦(果し合い)を申し込む。その後、亮と無人の廃寺にてノールールで再戦。亮を仮死状態にまで追い込むが、蘇生した亮による後頭部への一撃により寝たきりの廃人のようになった。後に、亮は意識不明になりベッドで寝たきりとなった菅原の姿を見て愚弄し、拳を振るうが、その時に菅原は意識を回復し亮の拳を掴んで止めた。その後、亮に対する怨念を抱きながらリハビリを行っている姿が描かれた。
船戸萌美
人気女優であり、菅原直人の恋人。亮にレイプされた後、その復讐を菅原に託す。リーサルファイトでの試合後、行方をくらます。その後グランドクロスの会場に突如現れ、試合を目前に控えた亮をナイフで刺す。その際に、亮にレイプされたために妊娠・中絶したことが明かされた。
藤吉公平(トーキチ)
亮と同年代の若者で、暴力団の準構成員。情報屋としての能力を山崎に見込まれている。山崎の指示で亮と行動を共にするようになる。人当たりの良い性格で、亮も次第に彼に心を開き、信頼するようになる。現在でも数少ないリョウの理解者であり、リョウを正当に評価する人物。リーサル・ファイト直前に、亮がリーサル・ファイトに出場することと引き換えに山崎によって左腕を切り落とされる。その後は、廃人と化した夏美を亮から託され、その世話をする。
成嶋夏美
亮の実妹。亮の犯罪によって人生を狂わされ、15歳から体を売って稼ぐようになる。のちに薬物中毒によって廃人同様となり、とある施設にトーキチによってかくまわれている。夏美の人生を狂わせたことに対し亮は深い自責の念を感じており、中盤以降の亮は夏美の医療費を稼ぐことを最大のモチベーションに戦いを続けることになる。獣の道を突き進む亮をかろうじて人間たらしめているのは、この夏美の存在であるといえる。
神尾陽子
ベイテレビ所属のリーサル・ファイトの担当ディレクター。女性ながら、視聴率アップの為なら手段を選ばぬ野心家で、かつて重大犯罪を犯した亮にアンチ・ヒーローとしての価値を見出し、正統派スターである菅原直人の人気を磐石とする為の敵役として、亮を利用するための絵図を画策する。
山崎
暴力団員。地位は不明だが、若くしてそれなりの立場にあると推察される。亮やトーキチのボス。少年時代は野球少年であり、地区大会にて誤審をした審判に腹を立て、暴力事件を起こした過去をもつ。リーサル・ファイトを見に行く途中に敵対する暴力団に撃たれるが、そのまま東京ドームまで瀕死の状態で向かい、亮の試合を見届けて命尽きた。
大沢秀治
元番竜会所属の空手家。一線を退いた身とはいえ、その技量はストリートファイトに明け暮れ鍛えた亮を上回るほど。特に肘技に習熟している。強者揃いの番竜会の中でも実力を認められるほどの男が、新宿のボッタクリバーの用心棒となるまで堕落した理由を、本人は酒、タバコ、女、バクチにやられたと語るが、その発端はある大会での反則負けによって開かれたと思われる。輝ける才能を持ちながら、結果的に競争社会の敗者となってしまった大沢に、亮はある種の共感を覚える。が、大沢はすでに身体を重病に蝕まれており、亮の目の前で吐血して死亡した。
垣内陽介
番竜会の空手選手にして現役の東大生。亮と全国大会の決勝戦で戦う。空手については、「スポーツ」「人間関係も考えて明るくやらないといけない」という考えを持っている。選手としての実力は確かで、前述の考えを実行するために大会でも派手な一本勝ちを避け、わざとぎりぎりの判定勝ちを演出できるほどであり、正攻法の空手で亮を追いつめるが、転倒事故を装った亮の肘打ちで鎖骨を折られる。試合では肘打ちは反則だが、望月の判断により亮の勝利とされた。後に、リョウが稼ぎ場としていたクラブ「シスル」にて行われた観客参加型の催し物に参加する形で登場。その際には既に空手をやめてごく普通の社会人になっている。
岡原
 脚本家。神尾にリーサル・ファイトの舞台でリョウと菅原の対戦を実現させる計画「プロジェクトーR」の脚本執筆を依頼される。性格は怠惰であるが、文筆家としては一流の実績を持つ人物であるようで、物事の本質を鋭く突く発言を随所で見せる。経緯は一切不明だが、トーマ編では薬物の過剰摂取により自殺未遂を図っている描写が見られた。

中国編の人物

陳老師
中国某所の山奥で仙人のような暮らしをしていた老人。孤児だった劉と燕を引き取って育てた。心の闇を見抜けぬまま、図らずも育ててしまった怪物・劉を殺そうとした過去がある。体力の衰えによる身体能力の低下は激しいが、技は未だ衰えておらず、技術勝負だけなら劉と互角の実力を持っている。劉を倒すため、劉への復讐に燃える亮に中国拳法を伝授する。しかしすでに老いにより肉体は衰えており、吐血して倒れた所を劉に殺される。96歳。
老師の元で修行を積んでいた娘。夜に二胡(胡弓)を弾く。血縁はないが老師を実の親のように慕う。始めは亮に対して嫌悪感を抱いていた。共に修行をしていくうちに少しづつお互いにわかりあえてきた矢先に、劉の襲撃を受け、追い詰められ、愛用の二胡で喉元を刺し、自殺した。
斉天大聖
斉天大聖(孫悟空)を名乗る人物。常に京劇の面を被っている。その正体は陳のかつての弟子で燕の兄弟子・劉。赤子の頃、実の母に焼き殺されかけたが、偶然通りかかった陳老師に助けられる。その老師にもまた殺されかけ、右腕を斬り落とされた過去を持つ。面の下の顔は火傷によりほとんど皮膚のない無残な状態。用済みとなれば自らの弟子を殺すことも躊躇しない残酷な性格。上海の裏社会では勢力図の三分の一を掌握しており、余興として参戦している闘技場での戦いでは絶大な人気を誇る。隻腕でありながら、驚異的な身体能力と技量を持ち、闘技場で行われた初戦では亮に完勝し、「強さだけならスガワラと同じ」と言わしめた。山奥での再戦時もやはり圧倒的な強さで亮を追い詰めるが、亮の奇策によって発勁を突き入れられ吐血。自ら崖に身を投げて命を絶つ。
ランガー・ゲッソムリット
あまりに強すぎるがゆえ、ムエタイで試合を組まれなくなったタイ人。リーサル・ファイトでの闘いで亮に片目を潰され、上海の闘技場で犬を相手に闘うまでに堕ちる。貧民街に生まれた宿命として、その身を犠牲としても一家の大黒柱として家族を養わねばならないという強迫観念に囚われており、亮と再会した時にはすでに精神を病み、過去の記憶を喪失していた。闘技場で負った怪我が元で、亮に看取られながら死亡。後、ガソリンで亮に火葬にされるが、炎上した死体が執念で生き返ったかのように跳ね上がり亮を驚愕させた。

グランドクロス編の人物

高原東馬
天才バレエダンサー。親しい者からはトーマと呼ばれる。かつて自身を毒殺しようとした兄を、事実を知りつつも許してしまうほど穏やかな心の持ち主。ある日偶然テレビでリーサル・ファイトでのリョウと菅原の戦いを見たことから、リョウの存在を強く意識するようになる。潜在意識の中のリョウの呼びかけに応じ、リョウとリングで戦うことを決意。ダンサーとしての栄光を捨て去り格闘技の世界に飛び込むが、これまで人を殴ったことがなく、また殴るように言われてもどうしても殴れなかった。そのため、打撃技ではなく柔道やサンボなどの組技・投げ技を習得する。その才能は、その道の第一人者をして「測定不可能」と言わしめるほど。天性の魅力の持ち主で、関わった人間を次々と虜にし、自分の協力者としていく。また、黒川や夏美といった荒んだ心の持ち主にさえも、わずかな接触を試みるだけでたちどころに癒してしまう特殊な能力を持っている。作中で「天使のよう」と評されるなど、闇に堕ちていく描写のある亮とは対照的な描かれ方をしている。グランドクロスでの試合中、リョウの潜在意識に進入し、彼を救おうとするも、逆に圧倒的な負のパワーに呑まれてしまい、恐怖から錯乱状態に陥り、練習では使うことのできなかった打撃技を初めて使うようになる。
ジンちゃん
高原東馬の兄。異母兄弟で少年時にトーマを毒殺しようとしたことがあり、この時優しさに触れ本当の兄弟のように親しくなった。
大人になってからは父親の残した会社を大きくし、資金調達や会場の確保など経済面でトーマのバレエ公演をサポート。トーマの格闘技への転向は当初理解できないとし、困惑していたがその後徐々に受け入れるようになり、引き続きトーマのために様々なサポートをする。「グランドクロス」を開催するため望月と交渉する際、事前に「リーサルファイト」のスポンサーを抱きこんでおくなど、企業家として遣り手である様子。
久能真
通称「ポリバケツ」。東和テレビ主催の賞金トーナメント決勝戦で亮と戦う。8年間に渡るひきこもり生活を送っていたが、ある日突然PCの画面から現れた阿弥陀如来による命を受け、総合格闘技の世界に足を踏み入れる。派手な技はないが前記の信仰のためか異常に粘り強く、亮の打撃をまともに喰らってもまったく怯むそぶりを見せない。亮との試合後は、また元のひきこもり生活に戻ったようである。
大東烈心
番竜会初代総帥、大東鉄心の実弟。番竜会の裏組織である黒道着衆を束ねる。盲目ながら並外れた格闘技術を持ち、望月が心底恐れるほどの迫力と容赦の無さを持つ。望月の要請を受け、愛弟子である黒道着衆の中から選りすぐりの4人をグランドクロスへ送り込む。失明したのは、兄の鉄心に真剣勝負を挑まれた際、それを拒否するために自ら両目を潰したためである。
天源寺ゴサク
元総合格闘家。理論派で、それなりの素質も持っていたが、精神力の脆さが原因で選手として成功することはなかった。金と女に関していい加減で、公私問わず関わった先々でトラブルを起こしている。グランドクロス出場が決まった亮にスカウトされコーチとなる。驚くべき早さで上達していく亮の元から一度は逃亡するが、追いかけてきた亮の言葉に心を動かされ、亮と目標を共有するようになり、その目つきが変わっていく。
ヤブ医者
姓名不詳。新宿で主に裏社会の人間を相手に、モグリの医者として活動している。重度のアルコール中毒患者であるが止血の腕は本物。リーサル・ファイト及びグランドクロスにて、リョウのセコンドに付く。
・チームトーマ
トーマに惹かれて集まった4人の格闘家。グランドクロスにてリョウ×トーマの前座として黒胴着衆と対戦する。
吉岡大吾
日本柔道の最高峰とされる興道舎に所属する「平成の三四郎」の異名をとる天才柔道家。柔道世界選手権八連覇、オリンピック金メダリストという輝かしい実績を持つ。菅原に負けず劣らずの根っからの武道家で、スポーツドクターに「アスリートしてより、武人としてのファン」と言わしめる程。黒胴着衆との戦いでは、自らの柔の道を信じ、闇に堕ちるのを踏み留まる程の意志の強さを見せ付ける。根っからの武道家であるにも関わらず、誰にでも社交的で、様々な格闘技界の人物とも交流があり、柔道意外の様々な格闘技の知識も豊富。トーマの可能性に惹かれ、チームのメンバーを集めることにも大きく貢献する。グランドクロスでは黒胴着衆4号と対戦。圧倒的な体格差に劣勢となるが、柔軟なテクニックで対応する。最後は相手を脳天からマットのない床に叩き落としかけるが、本能的にそれを拒否し後頭部から落下させる。その後、四號が試合を放棄した為、勝利する。
イリューヒン・ヴァレリ
「ロシアの白虎」と呼称されるコマンドサンボの使い手。サンボ世界選手権は三連覇、柔道世界選手権でも優勝経験がある。吉岡の友人であるが、ライバル視している描写もある。吉岡の紹介を受けてトーマと対戦する。その際にトーマの才能を測定不可能と評価する。その後、イリューヒンのリクエストで上杉静と出会うきっかけとなる。グランドクロスでは参號と対戦。猛獣の如き猛攻で、参號を防戦一方に追い込む。しかし、顔面にカウンターで正拳突きを当てられ、より一層激しい猛攻を見せることになるが、心臓に正拳突きを放たれ心臓停止に追い込まれ敗北。その後、心肺蘇生が間に合い、一命は取り留める。
上杉静
神技と呼ばれる伝説の合気道、八紘流合気柔術の使い手。静は達人と呼ばれた上杉陽堂の孫であり、段位は二段。細身で端正な顔立ちをしており、表面は物静かで落ち着いた雰囲気を感じさせ、物腰も柔らかい。しかし、その内面では孤立の道を選んだ八紘流の実力がどれ程のものなのかを試したがっており、常に闘士を滾らせている。グランドクロスの大舞台でも戦いを楽しめる度胸を持ち合わせており、いざ勝負になると容赦のない戦いを見せ、戦場を想定した実践的で合理的な戦いを披露する。グランドクロスでは弐號と対戦。圧倒的な実力差を見せ付けたかのように見えたが、弐號の裏技によって、身体機能を一時停止させる針を打ち込まれ、行動不能に陥る。不測の事態とされ、ノーコンテスト引き分けとなる。
ファビオ・マルコス・サンシロオ
ブラジリアン柔術の使い手。祖父の紹介で、ブラジルから来日するも早々に不良との喧嘩で5人を打撲・骨折させ逮捕される。吉岡によって釈放され、トーマと出会い、その姿に魅了される。南米柔術選手権にも出場しているが、3年連続反則負けになっている。しかし、実力は祖父の折り紙付きで「最凶のおじいちゃん子」の異名を持つ。祖父が「育て方を間違えた」と語る程の悪童で、リョウに負けず劣らずの血の気の多さで、誰彼構わず喧嘩を売る程の凶暴さを持つ。グランドクロスでは壱號と対戦。腕十字で腕をへし折るが、その直後の壱號の顔面への踏みつけと膝蹴りにより戦闘不能となる。だが、腕を折った時点でレフェリーが試合をストップしていたので、試合結果自体はTKO勝ちとなる。その後の安否は不明。
・番竜会黒道義衆
番竜会の裏組織。番竜会の中でもごく一部の人間しかその存在を知る者はおらず、二十年もの間表の世界に現れることはなかった。その強さは超人的かつ無法。グランドクロスでは壱號から四號までが登場しており、本名は不明。
壱號
無痛症の持ち主。顔面の傷が酷い為、マスクを被って登場する。マスクの下は皮膚が焼け爛れた状態になっている。生まれて間もない頃に、何らかの事故により脳に著しい損傷を負うが、奇跡に一命を取り留める。結果として、全身の感覚を失い、痛みを感じない体になった。その為、死の恐怖などを感じることも無い。普段は都内でホームレス生活をしている描写がある。グランドクロスではサンシロオと対戦し、腕を折られながらも、反撃をしてサンシロオを倒すが、腕を折られた際に既に試合はストップされていた為、判定はTKO負けになった。
弐號
一見すると、中年の優男で、礼儀も正しい好人物に見えるが、その正体は烈心に神技と言わしめる程の裏技の使い手。およそ代表的な武器と言われるものから、細い糸のような金属まで、ありとあらゆるものを凶器として使う。また、薬品や毒などにも精通しており、相手を倒すためならそれらを武器に含ませて使用することも厭わない。普段は一戸建て住まいで、妻がいるごく普通の社会人生活を送っている描写がある。グランドクロスでは上杉静と対戦。終始劣勢を強いられる様に見える試合展開だったが、体の機能を一時的に停止させる薬品をしみこませた針をいつの間にか打ち込み、静の動きを止める。不測の事態とされ、試合の条件を満たさなくなった為、ノーコンテストとなる。
参號
顔に凍傷の様な傷がある初老辺りを思わせる男性。普段は雪の激しい地域で狩人をしている描写がある。参号はカウンターの天才で、一瞬の隙をついて、相手に致命的な一撃を与えることを得意とすることからハンターと呼ばれる。グランドクロスではイリューヒン・ヴァレリと対戦。ヴァレリの猛獣の様な攻撃を耐えしのぎ、絶妙なタイミングで心臓を正拳突きで射抜き、心臓停止状態に陥らせる。ヴァレリ戦で出した攻撃は正拳突2発のみ。
四號
対戦相手である吉岡と比較しても20センチ以上は身長の高い巨躯の持ち主。普段は日本ではないどこかの国のスクールバスの運転手をしている描写があり、他の黒胴着衆が日本人の様な風貌をしている中、四號は褐色の肌をしており、体躯も併せて日本人には見えない。中々本性を見せない他の黒胴着衆とは違い、口数も多く表情も豊かで人間味がある。対戦相手の吉岡にも敬意を払い、純粋に戦いを楽しんでいる。ファイトスタイルはベースは空手ではあるものの、巨大な体から繰り出す型にはまらない力任せに相手をなぎ倒す戦いをする。非常にタフな体をしており、脳天からマットに投げおとされても平然としており、右腕を破壊されても戦いを続け、マットのない床に後頭部から落とされても平然と立ち上がる程。グランドクロスでは四号の圧倒的なパワーと、吉岡の柔軟な戦いで一進一退の攻防を繰り広げるが、徐々に吉岡を追い詰めて行く。最後は、脳天からマットのない床の上に叩き落されそうになるが、本能的に脳天から落とすことを拒んだ吉岡に助けられる形となり、試合を自ら放棄した。

映画版

軍鶏-Shamo-
監督 ソイ・チェン
脚本 橋本以蔵
セット・カムイェン
製作 山内静夫
出演者 ショーン・ユー
魔裟斗
ディラン・クォ
音楽 パトリック・ロー
撮影 フォン・マン・ユン
編集 コン・チー・レオン
配給 アートポート
公開 2008年5月3日日本の旗
上映時間 105分
製作国 香港・日本
言語 広東語
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橋本以蔵の脚本を元にした香港・日本合作映画。ショーン・ユー、魔裟斗などの格闘技経験のある俳優によるアクションシーンが本映画の特色のひとつである。

橋本は「元々映画の企画だったが、先に漫画化された」とコメントしており[2]、映画の原作にたなか亜希夫はクレジットされていない。

キャスト

役名 俳優 日本語吹替
成嶋亮 ショーン・ユー 小西克幸
山崎 ディラン・クォ 東地宏樹
菅原直人 魔裟斗 魔裟斗
佐伯 石橋凌 石橋凌
黒川健児 フランシス・ン 山路和弘
望月謙介 ブルース・リャン 浦山迅
アニー・リウ 朴璐美
船戸萌美 テリー・クァン 川庄美雪
成嶋夏美 ペイ・ペイ 折笠富美子
神尾陽子 中島宏海 中島宏海

書誌情報

双葉社、アクションコミックス版

  1. ISBN 4-575-82383-X1998年11月12日発行
  2. ISBN 4-575-82394-51999年1月5日発行
  3. ISBN 4-575-82416-X、1999年4月12日発行
  4. ISBN 4-575-82432-1、1999年7月9日発行
  5. ISBN 4-575-82452-62000年3月28日発行
  6. ISBN 4-575-82488-7、2000年4月28日発行
  7. ISBN 4-575-82492-5、2000年5月22日発行
  8. ISBN 4-575-82499-2、2000年6月27日発行
  9. ISBN 4-575-82509-3、2000年9月8日発行
  10. ISBN 4-575-82525-2、2000年12月11日発行
  11. ISBN 4-575-82551-42001年3月26日発行
  12. ISBN 4-575-82572-7、2001年6月28日発行
  13. ISBN 4-575-82607-3、2001年10月28日発行
  14. ISBN 4-575-82627-8、2001年12月19日発行
  15. ISBN 4-575-82663-42002年4月18日発行
  16. ISBN 4-575-82709-6、2002年8月18日発行
  17. ISBN 4-575-82760-6、2002年12月12日発行
  18. ISBN 4-575-82816-52003年4月19日発行
  19. ISBN 4-575-82845-9、2003年7月19日発行

講談社、イブニングKCDX版

著者名は、巻之四までが橋本・たなか併記、巻之伍以降はたなか単独である。

講談社、イブニングKC版

著者名は、第25巻までが橋本・たなか併記、第26巻以降はたなか単独である。

20. ISBN 978-40635211392005年6月23日発行
21. ISBN 978-4063521146、2005年6月23日発行
22. ISBN 978-4063521283、2005年10月21日発行
23. ISBN 978-40635214052006年3月23日発行
24. ISBN 978-4063521597、2006年8月23日発行
25. ISBN 978-4063521696、2006年11月22日発行
26. ISBN 978-4063523812、2011年10月21日発行
27. ISBN 978-40635240242012年3月23日発行

脚注

外部リンク