買い物難民

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買い物難民(かいものなんみん)とは、郊外型の大規模店との競争、地元における専門店の有無、深刻な不況による経営難などから従来型の商店街や駅前スーパーなどの店舗が閉店することで、その地域の住民(特に原付自動車を運転できない人々や、インターネットを利用できない人々など)が生活用品などの購入に困るという社会現象、またはその被害を受けた人々を指す言葉。「難民」という言葉に対して買い物弱者という言葉を使うケースもある。[1]

地元店舗の衰退原因

地元住民における、住宅地の徒歩・自転車圏内での小売を担ってきた商店街や駅前スーパーの衰退の原因として、

  • 商店街の魅力の喪失。
    • 大規模店の進出、競争、後継者問題による小規模な個人商店の撤退、またそれによる商店街の衰退
  • 商店街中核店舗の喪失。
    • 大規模店(スーパー、百貨店など)や、地元スーパーの不況による撤退、あるいは建て替えによる(下記の理由も絡む)移転・郊外化
    • 大型の郊外型ショッピングモールの台頭と、それによる駅前周辺の過疎化(交通の便の良さ、借地代金で劣る)
    • 建物への新しい要求(バリアフリー化や大型無料駐車場、防災性能など)への対応不備、老朽化。
  • 他地域との競争(都市部に集客される)。
    • ニッチ市場(おたく)向けの店舗(アニメ同人ショップパソコンショップなど)や、ブランドショップなど特殊な「専門店」の実店舗は、需要と採算の都合から人口の密集した都市部(県庁所在地政令指定都市などの繁華街)だけにしか出店されず、それ以外の「」や「郡」には出店されない(人口が数万人程度の「市」に出店しても利益が出ず、店舗の維持費などで経営が圧迫される)。
    • そのため、(特に県庁所在地から離れた)地元の住民は、多少遠くても「そこにしかない商品」(「地元にない店」の商品)を買い求めるべく、都市部にある実店舗まで向かうことになり、地元のスーパーマーケットには来店しなくなる(あらゆる店舗が集中する、都市部にとって集客要因になる)。
      • 業者や商品によってはインターネットによる通信販売での購入も可能であるが、全住民がインターネットに接続する機器や環境を有するわけではないうえ、価格に送料・代引手数料が上乗せされる。

などが挙げられる。また従来の店舗の大小で競争する形式だけでなく、「駅前スーパー」対「郊外型ショッピングモール」など大規模店舗同士による競争、中にはアメリカウォルマートの事例のように、

  1. 大規模店が出店する
  2. 経営を圧迫された地元の商店街が衰退する
  3. その後、不採算を理由にその大規模店も閉店する
  4. 結果として地域の商業活動が破壊され、当地域の住民が買い物難民となる

というケースもあり、主にモータリゼーションが高度に発達し、消費者の行動範囲が広い地方でこの傾向は強まっている。

それまでの商店やスーパーが設置されていた住宅地は、人口そのものについては横ばいか、わずかな減少に留まっており、購買人口はそれほど減少していない。購買層の高齢化により、食欲の旺盛な子どもや中高生、勤労者の居る世帯と食が細い高齢者だけの世帯とでは食料類の購入額は決定的に差があり、購買人口が減少していないのに商店・スーパーが撤退する理由の一つとなっている。

また、全国商店街振興組合連合会(全振連)に加盟する商店街の店舗も、2009年平成21年)3月末で11万0,961店となり、最盛時の1997年(平成9年)に比べて約4万2,000店も減少しており、商店街自体も400か所近くが減少しており[2]、商店街の「シャッター通り」化や身近な店の消失は、特に高齢者などの交通弱者に影響を与えている。[3]また日本国内でも、商店街衰退の原因となった大型店舗が撤退することで、上述したアメリカのウォルマート撤退のケースと同様の問題が生じることもある。

脚注

  1. ^ 茨城新聞、2011年2月21日
  2. ^ 河北新報2009年10月1日
  3. ^ 「需要がない」「採算がない」などの理由で買い物難民を放置することは、場合によっては生存権幸福追求に関わる権利の侵害ともなりうる。海外アニメ「サウスパーク」の「Grey Dawn(邦題:自由の国のシルバー暴走族)」には「あまりの事故の多さに高齢者の免許剥奪条例を制定した結果、自動車局の職員が買い物難民にする気かと高齢者から抗議を受ける。それに職員が老人ホームに入れと返すと別の高齢者が「死んだ方がマシ」と発言する」と、この問題を皮肉に扱った内容がある。

関連項目

外部リンク