谷戸沢廃棄物広域処分場

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谷戸沢廃棄物広域処分場(やとざわはいきぶつこういきしょぶんじょう)とは東京都西多摩郡日の出町大字平井字谷戸にある廃棄物処理法で定められた廃棄物埋立最終処分場。多摩地域26市1町で処理された不燃ごみ、焼却灰の埋立が行われ、1998年(平成10年)4月に埋立が終了した。

この最終処分場は日の出町にあるが、日の出町内から排出される廃棄物は搬入されていない。

  • 日の出町内から排出される廃棄物は、あきる野市内にある廃棄物処理施設・廃棄物埋立最終処分場(西秋川衛生組合(あきる野市、奥多摩町、日の出町、檜原村の自治体)が管理運営する廃棄物処理施設)へ搬入されている。
  • 埋立中、埋立終了後ともに、浸出水(埋立地内に降った雨水が廃棄物層を浸透して出てくる水)に含まれる有害物質(重金属等)は不検出、基準値以下の状態にある。
  • ただし、浸出水には、焼却灰由来の(清掃工場の排ガス処理工程で用いられた)アンモニアが他県の埋立最終処分場と同等の濃度でみられている。

 谷戸沢処分場の埋立終了以降

廃棄物は、二ツ塚廃棄物広域処分場へ搬入されている。

  • 二ツ塚廃棄物広域処分場には、廃棄物処理法で定められた2つの施設(埋立最終処分場、エコセメント化施設)が稼働している。
  • 埋立最終処分場では、不燃ごみのみが埋立てられている。不燃ごみを搬入する廃棄物運搬車両は、1.1台/日の規模となっている。
  • エコセメント化施設では、焼却灰の焼成処理とその後の工程により、エコセメントの製造が行われている。

 東京都内(多摩地域)の埋立最終処分場

東京都内(多摩地域)で埋立中の内陸型最終処分場は2つである。

  • 西秋川衛生組合 第2御前石最終処分場
  • 東京たま広域資源循環組合 二ツ塚廃棄物広域処分場
  • 内陸型最終処分場のうち、福島第一原子力発電所事故由来の放射性セシウムが付着した焼却灰が埋立てられているのは、第2御前石最終処分場だけである。

歴史

  • 1980年11月:東京都三多摩地域廃棄物広域処分組合設立(その後、東京たま広域資源循環組合に名称変更)
  • 1984年4月:埋立開始
  • 1984年4月から13年間(1992年まで)地域振興費 3億/年とその他の補助金 を日の出町役場へ交付される。その後、10億円/年とその他の補助金 が交付されている。金額の引上額については、日の出町議会においても、活発な議論が行われ、共産党、自民党、その他の議員による全員の賛成採決で10億円の要求額が決定した。
  • 1996年に菅直人厚生大臣から環境調査の実施を指示する旨の命令が東京都(清掃局)へ通知された。東京都清掃局からこの通知を受けた広域処分組合において、学識経験者からなる第三者委員会が設立された。また、地元の日の出町地域においても同様に第三者からなる専門委員会が設立された。委員会の調査により、環境影響がないことと処分場の適正管理が認められた。
  • 厚生大臣や関係議員への要望は市民団体によるものであったが、要望の発端となった沢水の異変は、処分場周辺の山地にある住宅(屋外に設けられた洗濯機)からの排水と洗濯洗剤の泡という結末であった。その後、発端となった宅地の洗濯機は撤去され、沢水の水質は回復した。
  • 現在も毎月の環境調査と定期的な委員会は行われている。HPでの公表のとおり、当時から現在に到るまで、埋立最終処分場周辺への環境影響はみられていない。また、日の出町による環境調査もこれを端緒にし、循環組合の全額補助のもとに実施されている。


  • 1998年4月:埋立終了(埋立期間 15年)
  • 2012年1月:最高裁判所判決。周辺環境の影響はみられず、適正な管理運営が認定される。
  • 埋立終了後も廃棄物処理法と地元地域で定められた公害防止協定に基づく環境調査が継続的に行なわれ、適正な施設の管理と地元地域への報告公表が行なわれている。環境調査結果は四半期ごとに循環組合HPに公表されている。日の出町による環境調査(循環組合の補助金活用)においても、処分場敷地外の一般家庭等の井戸水、河川水において環境影響はみられない。また、河川においては、ホタル、カワセミの保全が行われ、その生息が安定的に確認されている。
  • 埋立終了後は、自然環境回復の取組と自然観察を含めた最終処分場について学ぶ見学会が行なわれている。
  • あきる野消防署による緊急事態用の消防用ヘリコプターの訓練や五日市警察による車両訓練用地としても活用できるよう提供されている。

概要

  • 東京都西多摩郡日の出町大字平井字谷戸
  • 用地面積約45.3ha
  • 全体埋立容量約380万立方メートル
    • 廃棄物埋立容量約260万立方メートル
    • 覆土容量約120万立方メートル
    • 処分場からの浸出水は処理施設で処理され、排水は日の出町が管理する下水道に放流

建設工程

3期に分けて実施。総額約125億円(用地買収費、補償費等含む)

  • 第1期:昭和57年7月~昭和59年9月
  • 第2期:昭和59年5月~昭和60年8月
  • 第3期:昭和60年7月~平成元年9月

廃棄物の埋立期間

昭和59年4月~平成10年4月6日

受入廃棄物

埋立廃棄物は、日の出町及び近隣自治会との公害防止協定により、以下に限定

  • 可燃性ごみ(焼却灰)
  • 破砕処理された不燃ごみ(15cm以下に粉砕されたもの)有害な処理困難物廃家電の受入はない。

地域振興費

  • 東京たま広域資源循環組合から日の出町役場への交付金
  • 3億円/年(昭和59年〜平成21年)
  • 10億円/年(平成22年〜平成31年)
  • 毎年、満額が日の出町役場に雑入されている。

地域振興費 日の出町 花火大会 

  • 東京たま広域資源循環組合から日の出町役場への支援金
  • 毎年100万円
  • なお、平成25年度(2013年度)は、降雨の影響により、花火の打ち上げは行われなかった。地元市民の支援金も含めて日の出町役場からの還付金はゼロ円であった。

その他の地域振興費 漁協組合 

  • 東京たま広域資源循環組合から日の出町役場が所属する秋川漁業協同組合へ補助金が交付されている
  • 1450万円/年(過去、2000万円/年)
  • 毎年、満額が漁協に雑入されている。
  • なお、最終処分場からの排水は下水道へ放流され、河川へ放流されていない。

その他の地域振興費 環境調査費

  • 東京たま広域資源循環組合から日の出町役場への交付金
  • 2000万円/年(上限額)
  • 調査は、一般住宅の井戸水の水質、山地の沢水や河川の水質、一般交通量の騒音振動が行われている。
  • なお、廃棄物処理施設からの排水は下水道へ放流され、廃棄物車両の交通量は安定している。

その他の地域振興費 土地使用料

  • 循環組合が所有する土地には、東京都庁、日の出町役場が所有している土地がある。
  • 土地使用料として(処分場の底地の使用料)、日の出町役場への支払いは、年間2300万円程度である。
  • なお、東京都庁への支払いは、無償(ゼロ円)である。

埋立終了後の跡地利用

自然回復

環境改善の措置と保全が毎年行なわれ、広葉樹とススキ野原を中心とした自然環境の復元が進んでおり、現在では国蝶のオオムラサキや、国内で絶滅の恐れがあるカヤネズミコサナエなどの生息が確認されている。また、谷戸沢処分場下流に生息するゲンジボタルを保全するための河川渇水対策として沢水雨水を溜める貯水池(清流復活の池)が造られ、2013年よりヘイケボタルが確認される。貯水池においては、葦やヤゴの保全が施されたビオトープが設けられる。またこの貯水池ではカワセミの飛来やカイツブリの営巣がみられるなど水辺環境の保全が行なわれている。トウキョウサンショウウオの保全は谷戸沢から敷地境界を越えたあきる野市山域まで広域な環境保全が行なわれている。2011年よりオオムラサキの放蝶会が毎年行なわれ、谷戸沢の自然回復を体験できる環境学習内容が設けられている。オオムラサキをテーマにした学習会は6月下旬から7月上旬まで実施され、多摩地域の小学校、一般見学者が参加できる。

近年では野鳥の観測が重点的に行なわれ、コチドリホオジロキビタキノスリフクロウの営巣と繁殖が確認されている。春季ではサシバの飛来、冬季ではルリビタキオシドリなどの季節鳥の生息が確認されている。処分場内は鳥の巣箱が設置され、自然環境との調和について毎年調査報告が行なわれている。2016年にフクロウによる営巣が確認された。フクロウを含めた自然回復に関する生態系の観察は、廃棄物処理施設としては先行した取組であったため、NHKなど複数の報道機関で、その内容が取り上げられる。フクロウ営巣用に設置された巣箱は、秋期から冬期にかけては、ムササビによる活用が確認されている。自然回復の定量的な観測として、巣箱に着目した生態移動の観測について、最終処分場の計画設計当時から継続して行われている。また、季節ごとの最新の知見については、見学者を対象とした説明会や、地元地域への定期的な報告などを通じて、学術機関と連携した報告も行われている。

サッカー場、アクセス道路

埋立完了地の中央部にはグラウンドを整備し、少年野球の試合に活用されている。 埋立完了地に天然芝のサッカー場が日の出町(東京都補助金活用)により整備され、日本サッカー協会の基準に基づく試合会場として国民体育大会(スポーツ祭東京2013)女子サッカーの試合が開催された。スポーツ祭東京2013の開催期間中は、日の出町役場からの要望により、道路沿線に花壇が循環組合により設けられた。 天然芝サッカー場の整備にあわせ、相沢沖覆土材敷地内に道路(アクセス道路)が整備された。この道路は日の出町役場が管理する町道に接続された。そのため、この道路区間のみが、循環組合により管理されている。覆土を運搬するために設けられた道路であるが、8時30分から20時まで一般車(2トン車以下の車両)が通行できるよう開放されている、舗装の施工は、大型車が通行する路盤施工となっているが、一般車両が通行するのがほとんどという状況である。道路完成後の周知期間中は、安全性を確保するため、警備員を配置した交通安全の対応が循環組合により行なわれた。道路には、不自然な間隔で工事用ガードレールが置かれている。これは、工事期間中に、日の出町役場の主要幹部からの要望をふまえたものとなっている。

谷戸沢記念館

平成16年5月に当時の管理センターを改修し、見学者用施設として谷戸沢記念館がオープンした。平成24年3月に展示室がリニューアルし、自然環境との調和について学術的な調査結果も閲覧できる。 平成26年5月に谷戸沢処分場30周年記念の式典が行われた。

循環組合は、谷戸沢記念館を環境学習の場として提供している。廃棄物の排出抑制、自然環境との調和についての環境教育にも力をそそぎ、埋立終了後の処分場としての有効活用が図られている。また、日の出町役場から推薦を受けた第三者からなる環境指導員制度を導入し、谷戸沢処分場建設までの経緯や処分場埋立終了後の自然環境回復を見学者が学べるように取り組んでいる。夏季と秋季に一般見学者を応募した季節見学会において夏季は野鳥の飛来、秋季は虫の鳴き声(カンタン等)の観察などが行なわれている。

谷戸沢サッカー場

  • 埋立最終処分場の第1期埋立地に建設された天然芝のサッカー場が市民により活用されている。
  • このサッカー場は、日の出町役場が、東京国民体育祭に合わせ、東京都補助金の活用により建設された。
  • 天然芝のサッカー場の維持管理費用は、日の出町予算において、1600万円/年が計上されている。
  • 使用料金(処分場の上地の使用料)は、一般市民が、1000円/時間または、6000円/時間 を日の出町役場へ支払う。
  • 土地料金(処分場の底地の使用料)は、循環組合が、処分場建設以来、日の出町役場へ約2300万円/年を支払う。

二ツ塚廃棄物広域処分場

二ツ塚処分場(ふたつづかしょぶんじょう)は、西多摩郡日の出町大字大久野字玉の内にある最終処分場で、谷戸沢の埋め立て完了に伴い事業が開始された。 東京たま広域資源循環組合を構成する市町村から排出された不燃ごみは、各市町村の施設において15cm以下に粉砕された後、二ツ塚処分場に不燃ごみが搬入される。廃棄物は、運搬車両から積み降ろし、展開検査後、埋立て覆土される。 東京たま広域資源循環組合を構成する市町村が管理する焼却施設から排出された焼却灰は二ツ塚処分場の敷地内にある焼成施設東京たまエコセメント化施設でリサイクルされエコセメントが製造される。エコセメントは主に多摩地域において建設用資材として活用されている。大型施設での活用事例として、東京駅や東京スカイツリーがある。

外部リンク