董昭

董 昭（とう しょう、156年－236年）は、後漢末期から三国時代の魏の政治家。字は公仁。子は董冑、弟に董訪。済陰郡定陶県の人。

経歴

熟練した策略家

才能・知略に優れていた。孝廉に推挙され、廮陶の県長、柏人の県令に任じられた。袁紹は董昭を参軍事とした。当時、公孫瓚の勢力が盛んで、鉅鹿太守の李邵をはじめ、鉅鹿郡の大半も公孫瓚に味方しようとしていたが、董昭は計略を用いてこれを鎮めた。つづいて魏郡で反乱が起き、当時の魏郡太守は殺害された。董昭は袁紹の命令で魏郡太守の事務を引きつぎ、謀略を用いて反乱を鎮圧した。

弟が張邈の幕下であったため、張邈と不仲であった袁紹が讒言を聞き入れて董昭を処罰しようとしたので、董昭は出奔し、長安の朝廷に仕えようとしたが、張楊に引きとめられた。兗州の曹操が長安に使者を送り、その使者が張揚の領内を通過したため、張楊は董昭に対応を相談した。董昭は曹操の才能を認め、誼を通じておくよう、張楊に進言した。張楊はそれを受け入れ、使者の通過を許し、添え状を付記し便宜を図ったため、曹操と張楊は親しくなった。

196年、献帝が長安を脱出し、東遷した際、董昭は朝廷に赴き議郎に任命された。張楊、韓暹、楊奉、董承の諸将が不仲になると、楊奉を唆し曹操を頼ることを勧め、曹操に鎮東将軍、費亭侯を得させ、自身も符節令に任じられた。曹操が洛陽に来ると董昭は楊奉を騙して都を許昌に移すように曹操に進言し、献帝を許昌に移す策略を提案した。曹操はその通りにし、楊奉が遅参している間に献帝を許昌に移した。献帝が曹操の庇護下に置かれると、曹操に仕え、198年には河南尹となった。

魏国の建設に尽力

旧主の張揚が部下の楊醜に殺害される事件がおきた。その部下の一部は袁紹を頼っていたが、その説得に赴き降参させ、冀州の牧となった。劉備の叛意を見抜いていたが、曹操には進言が受け入れられず、果たして劉備は徐州で反旗を翻した。曹操は徐州を平定後、董昭を徐州の牧に任命している。

袁紹の部下の顔良が東郡に侵攻してきた際には、魏郡の太守に任命され、袁紹が派遣した魏郡太守を親族を使い説得し投降させた。官渡の戦い後、曹操が袁紹の遺児の袁尚を追い鄴を落とした際に、董昭は諫議大夫に任命された。曹操が袁尚を追って、烏桓へ遠征した際は、平虜・泉州の運河を整備し、海上運送・運河を使った兵糧輸送を行いこれを支援した。千秋亭侯、司空軍祭酒となった。

五等級の爵位制度の復活を進言し、また、曹操に九錫を得させ、魏公、魏王へ推戴し、魏国の建設に尽力した。219年、劉備配下の将軍関羽が曹仁を攻撃した際は、孫権の裏切りをわざと両陣営に知らせる計略を提案、徐晃に実行させ、結果、関羽を敗走させた。

魏の重臣

曹丕（文帝）が魏王になると将作大匠となり、帝位につくと大鴻臚となり、222年には弟に関内侯が与えられ、所領の一部が分け与えられ、自身も侍中に転じた。同時期に侍中に任命された者に蘇則がいたが、蘇則は漢王朝への忠誠心が強い人物であったため、魏建国のために働いた董昭を嫌悪した（蘇則伝）。

222年、征東大将軍曹休や征南大将軍夏侯尚が、呉の領内深くへ侵攻することを求めてきた際は、突出を控えるよう進言し、それらはいずれも的を射ていた。文帝は董昭の軍略を激賞した。224年、成都郷侯・太常となり、光禄大夫・給事中に転任した。226年、太僕となったが、それまでずっと文帝の東征の伴をしていた。

曹叡（明帝）が皇帝になると、楽亭侯、衛尉となり、千戸の所領を得、そのうち百戸を分割し子に関内侯の爵位と共に与えられた。

230年には司徒代行となり、232年には正式に司徒になった。軽重浮薄の輩が世に跳梁跋扈しており、これを除くべきだと明帝に上奏し、多くの者の公職追放が実行された。これには諸葛誕も含まれている。

81歳で死去し、亭侯とおくりなされた。

子の董冑は、郡の太守や九卿を歴任した。

三国志演義

小説『三国志演義』では、初登場時は献帝の洛陽帰還のときであり、菜食主義者で、自ら飢饉の時でも血色が良いのはこのためだと語っている。