缶切り

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Jizwf (会話 | 投稿記録) による 2012年4月22日 (日) 04:21個人設定で未設定ならUTC)時点の版であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

固定刃型缶切り

缶切り(かんきり、英語 tin opener、can opener)とは、缶詰を切断しながら開封するために用いる道具である。

概要

1810年イギリスのピーター・デュラントの発明による缶詰はハンマーのみ、戦場では銃剣によって開封されていたが、1858年アメリカ合衆国のエズラ・J・ワーナーにより、缶詰に突き立て、引き廻し開ける缶切りが発明された。その約10年後、缶の縁を切る方式が発明された。缶切りの発明以前は、無理にこじ開けることによる銃剣やナイフの破損といった問題も見られた。

家庭用の缶切りは、缶を切る機能のみで作られていることは少なく、コルクスクリュー栓抜きプルトップ起こし(プルタブ起こし・プルタグ起こし)等が付属していることが多い。栓抜きの機能も合わせ持つ缶切りは、道具の両端にそれぞれ栓抜きと缶切りが位置するため、この道具を指して栓抜きと呼ばれる場合もある。

缶切りは、使用者の利き手の違いに対応するため、右利き用と左利き用とがあり、一般に市販されているものの多くは右利き用であるが、少数ながら左手用も存在する。アーミーナイフでも缶切りの付属する物は多いが、こちらも右手用・左手用の両モデルが存在する(一部メーカーのみ)。

清涼飲料水では1960年代ごろより、1970年代後半よりは小型の缶でもプルトップ(プルタグ)の採用が(イージーオープン缶)すすみ、大抵は缶切りを用いなくても開栓可能となっているため、一般における缶切りの利用頻度は減少している。かつて缶にプルトップがついていなかった時代には、缶詰を買ってきたのはいいが、缶切りが無かったので開けられなかったという失敗談があった。

しかしプルトップは、缶詰の耐衝撃性を低める要素であり、またコスト的にも不利で僅かながら商品価格を押し上げる要素でもあるため、未だプルトップ未採用の缶詰もそれなりに流通しており、一般の家庭では一個や二個は必ずと言って良いほどに常備されている。陸上自衛隊戦闘糧食 I型のように、軍事用で空中投下を前提としている為にプルトップの使えない缶詰では、やはり缶切りが必要であるため、缶に缶切りが付属している場合もある。

分類

アーミーナイフの缶切り
左・押し切りタイプ
中央・引き切りタイプ
右・一般的缶切り(引き切り)
回転刃型缶切り(上面用)
回転刃型缶切り(側面用)
コンビーフ用の缶切り

通常、缶切りはてこ式ねじ式とに分けられる[1]。このほかコンビーフ缶の巻取式などがある[1]

てこ式

鋭利な金属製の刃と、缶の縁(リム)にひっかける金具から構成され、手動で缶の縁を移動しながら円周方向に蓋を切断していく形式(固定刃型)である。

てこの原理を用い、少ない力で大きな切開力を生み出しており、作用点は刃の切断点で、支点が縁の引っ掛かりであるが、力点は支点の両側にあるタイプと、缶上部に向かって伸びているハンドル部分のみのタイプがあり、後者は押し下げるタイプと押し上げる(引き上げる)タイプの物がある。

缶を切る方向では、押して切るタイプと引いて切るタイプがある。たとえばスイスアーミーナイフに付属の缶切りの場合、ウェンガー社のものは引き、ビクトリノックス社のものは押しタイプである。

切断面が鋭利なギザギザになるため、缶の縁の内側に不用意に手をかけた場合、指先に怪我をする場合がある。切り取った蓋の扱いにも同様に注意を要する。

ねじ式

ローラー状のブレードと缶の縁に引っかける金具から構成され、ハンドルを回すことにより蓋を切開していくもの(回転刃型)。缶の上面を切断するタイプと、側面を切断するタイプがある。

上面を切断するタイプ
この機構を電動化した電動缶切りが、欧米家庭で普及している。これを模したものがアメリカ映画バック・トゥ・ザ・フューチャー』の冒頭シーンに、タイマー仕掛けでドッグフード缶詰を開ける用途で登場する。
側面を切断するタイプ
蓋の接合部の側面を切断するタイプは、切屑が缶の中に入りにくい特徴がある。

巻取式

コンビーフ缶用のもの。あらかじめ缶の周囲に付けた極浅い溝(傷)に沿って、缶の外装を帯状に巻き取る為に使用するもの。一部で、巻取鍵などと呼ばれる。缶に溶接・引きちぎりで取り外すか、あるいはシールで貼り付けで付属しているため、単独での販売はされていないし、一般にはその都度使い切りで再利用もされない。まれに缶から脱落して開ける前に行方不明になることもあり、この場合にはラジオペンチなど、他の工具で代用する事がある。

開缶器

開缶器(穴あけ器)
昔の缶飲料には穴あけ用の缶切りが付属しており、これを使用して缶に小孔を穿ち、内容物を飲用していた。缶飲料にはプルトップが広く普及したため、現在ではこの形式の缶飲料は発売されていない。この穴あけ器は飲料メーカー名が刻印されていたため、一部でコレクションの対象になっている。
開缶器(Vカッター)
一斗缶等の角にV字形の穴を開け、内容物を取り出せるようにするもの。空気孔と流出用の孔を空けるために使用される。

電動缶切り

缶の上部にセットしてスイッチを入れると、電動で缶切り作業が行われる器具も市販されている。

脚注

  1. ^ a b 『Cook料理全集9 かんづめ料理と冷凍食品』 p.177 千趣会 1976年

関連項目