社会的制裁
この記事はその主題が日本に置かれた記述になっており、世界的観点から説明されていない可能性があります。(2012年4月) |
社会的制裁(しゃかいてきせいさい)とは法によらない社会構成員からの制裁行為。村八分などは社会的制裁の一例である。
学術上、社会的制裁は、刑事政策学等の分野で研究の蓄積がある。また、社会学や政治学では、逸脱行動と関連して概念の整理がなされている。
マスコミによる社会的制裁
マスコミが、犯罪を犯した人間に対して、メディアで実名報道を行ったり、その情報により個人攻撃(意識的、無意識的)が行なわれたりすることで、当該犯罪者が社会的に制裁されたとみなされる状況を作り出すことがある。メディア・リンチとも呼ばれる。
マスコミによる社会的制裁の影響は大きく、特に冤罪の場合は問題が大きい。「ペンの暴力」とも呼ばれる。そのため、報道においては多大の注意・慎重さが必要になるものであり、かつそのように求められている。
しかし、現実には、マスコミの不明瞭な基準によりプライバシーや捜査上機密の暴露がなされたり、偏向報道と思われる報道などにより無責任・不適切な社会的制裁が行なわれることがある。マスコミのメディア・リンチによって不適切な社会制裁がなされ、深刻な報道被害が引き落とされた代表例としては、ロス疑惑の被告(無罪)や松本サリン事件の第一通報者、海外の事例でもジョンベネ殺害事件における被害者の家族などが挙げられる。特に松本サリン事件・ジョンベネ殺害事件では捜査機関に逮捕されていないにもかかわらず、犯人視する報道が続いた。
マスコミの社会的制裁の手段としては他にも、卒業した中学校の卒業文集に収録された作文や、高等学校の卒業アルバム写真などを無理に拡大して載せることもあり(成長途上であり、その写真は犯行時の当人とは似ても似つかぬ容貌であることがほとんど)、それらを視聴率や販売・発行部数目当て、興味本位で流すマスコミのデリカシーの無さと相まって、正当性には疑いが持たれている。
そもそも私企業に過ぎないマスコミが社会的制裁の担い手となることに対しては異論も多い。
組織による社会的制裁
犯罪を犯したとされる人間が所属している組織(企業、学校など)が有罪判決の確定以前に懲戒解雇、退学などの処分を下すことがある。
行政機関による社会的制裁
行政機関による社会的制裁として、障害者の雇用の促進等に関する法律47条に規定されているように、行政指導などの不服従の事実が公表されることがある。情報提供としての公表と区別するために、制裁的公表と呼ばれることがある。
司法での扱い
裁判所が、社会的制裁を受けたことを量刑の減軽事由にすることがある。
関連文献
浅野健一『犯罪報道の犯罪』