社会的制裁

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社会的制裁(しゃかいてきせいさい)とは、によらない制裁行為であり[1]、規範から逸脱した者に対する心理的・物理的な圧力をいう[2]。学術上、社会的制裁は刑事政策学等の分野で研究の蓄積がある。また社会学政治学では逸脱行動と関連して概念の整理がなされている。

典型的な社会的制裁としては、共同体のルールに基づく「村八分」が挙げられるが、これは「共同絶交」に該当しそれによって特定の人物に損害を与えた場合は民事訴訟において「共同不法行為」と見なされることもある[3]

消費財を販売する企業による偽装表示事件などでは、消費者がその企業の製品を買うのを取り止める(不買)ことにより企業に社会的制裁を加えることができるが、公共交通機関電気会社など公共財を提供する企業の不祥事に対しては、消費者にとって乗り換える先がなく、同様の制裁は成立しにくい[4]。ただし、公害など生活に直結する社会問題の場合、不買は成立しなくとも、マスコミによる非難を受け企業トップが辞任に追い込まれるという形で制裁が行われる場合がある[4]

犯罪被疑者やその家族に対し、マスコミ、インターネット、地域社会等において非難が集中し、厳罰化を求める世論が高まることもある。しかし、社会的制裁は酌量の理由になって起訴猶予や減刑になる場合もあり、一時的な世間の処罰感情を満たすだけで本質的な解決にはならないという指摘もある[5]

組織による社会的制裁[編集]

犯罪を犯したとされる人間が所属している組織官公庁企業学校など)が有罪判決の確定以前に懲戒解雇諭旨解雇退学・除名などの処分を下すことがある。

行政機関による社会的制裁[編集]

行政機関による社会的制裁として、障害者の雇用の促進等に関する法律47条や新型インフルエンザ等対策特別措置法45条4項に規定されているように行政指導などの不服従の事実の公表や、小田原市市税の滞納に対する特別措置に関する条例第6条第2項に規定されているように法令や行政処分に違反した事実の公表がされることがある。このような公表は、情報公開を目的としているような情報提供としての公表と区別するために、制裁的公表と呼ばれることがある[6]

司法での扱い[編集]

裁判所が、社会的制裁を受けた(社会によって処罰された)ことを量刑の減軽事由にすることがある。一例としては、兵庫県議会議員が政務活動費についての虚偽報告書を作成し行使したことによって罪に問われた裁判で、神戸地裁は事件がマスコミに大きく取り上げられる状況が続いたことで被告人は社会的制裁を受けたと認めた。

関連文献[編集]

  • 浅野健一『犯罪報道の犯罪』[要文献特定詳細情報]
  • 天本哲史 『行政による制裁的公表の法理論』日本評論社、2019年。ISBN 978-4-535-52446-0 
  • 天本哲史「行政による制裁的公表の法的問題に関する一考察」『東海法学』第40巻、2008年、 75-114頁、 NAID 40016343243

脚注[編集]

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  1. ^ 日本国語大辞典,日本大百科全書(ニッポニカ), 精選版. “社会的制裁とは” (日本語). コトバンク. 2021年8月19日閲覧。
  2. ^ 第2版,世界大百科事典内言及, 日本大百科全書(ニッポニカ),デジタル大辞泉,世界大百科事典. “サンクションとは” (日本語). コトバンク. 2021年8月19日閲覧。
  3. ^ 【裁判・民事】自治会住民間による「共同絶交」が人格権を違法に侵害するものとして共同不法行為の成立が認められた裁判例(大阪高裁H25・8・29)千葉晃平法律事務所
  4. ^ a b 村松幹二/清水剛「企業に対する社会的制裁」、ジュリスト (No. 1228) 2002.8.1-15
  5. ^ 「上級国民」大批判のウラで、池袋暴走事故の「加害者家族」に起きていたこと現代ビジネス
  6. ^ Gyosei ni yoru seisaiteki kohyo no horiron.. Amamoto,Satoshi, 1979-, 天本, 哲史, 1979-. Nihonhyoronsha. (2019.12). ISBN 978-4-535-52446-0. OCLC 1138139427. https://www.worldcat.org/oclc/1138139427 

関連項目[編集]