火輪

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火輪』(かりん)は、河惣益巳の漫画作品。「花とゆめ」で連載された。白泉社からコミックス全17巻、文庫版は全8巻が出版されている。

概要

舞台となるのは中国をモデルとした架空の異世界で、道教神話の神々(厳密に見ると独自の設定が付加されている)が存在している。物語のモチーフは封神演義。主人公は謎の出自を持つ半人半神の少年・琅亮(ラン・リーアン)。竜王剣の盗難をきっかけに中国と天界を写し絵のごとく進む物語。リーアンは四方将神の一柱・青龍である東海竜王の眷属として成長したが、彼の成人とともに、天界・地界は戦乱の世となっていく。

登場人物

主人公

ラン・リーアン(琅亮)
本作品の主人公。東海竜王の眷属として成長した出自不明の少年(1巻開始時、15歳前後)。白真珠の精である白玲の養い子で、「昇竜山の小竜(シャオロン)」として天・仙界に知られている。
人界に盗み出された竜王剣を取り戻すことを目的として舜の都に赴くが、それをきっかけに自身の出自を知ることとなり、乱世の中心へと巻き込まれることになる。
当然のように東海青竜王・敖広を「敖兄(アオけい)」と呼んで慕っている。これは破格なまでに特別扱いであり、「敖兄」と呼べるのは天界でも天帝・開のみである。
「竜王剣の三真珠」の長姉である黄金真珠の精・昱花と、竜王家・汎梨公主の末裔である地仙・望の子で「豎眼」を持つ「黄龍」にして「麒麟」。その血と能力は昱花の願いにより、広(竜族の血)と白玲(豎眼)によって封印されていた。更には、開を退位させ天帝に据えようとたくらむ竜吉に担ぎ上げられそうになった為、天界から離れようと海中を漂っていた際に、父・望の竜王召喚の呪により碧国に引き寄せられる(この時はまだ互いに関係を知らなかった)。広の異母妹・汎梨の末裔であり、白玲の子である開とは母方の疑似従姉弟で、望の異母弟・セイの一人娘の杏沙とは従姉妹である。後に、杏沙と結婚。
ヘイシャオがレン・白玲と共に地上を揺るがし、碧国海岸を干上げた末の騒動が解決し碧国へ帰った後は杏沙と新婚生活を送っている様子。

竜族

敖広(アオ・コアン)
四方将神の一柱、東の青龍。天界最古にして最強の一族である竜族の長。
リーアンの父親代わり・後見人でもある。白真珠の精である白玲に想いを寄せていたが、天仙界の平穏の為もあり、開を女性に「変態」させて妻となるよう求婚した。5千年愛し続けた白玲への想いは断ち切ったのか、我が子・開が広の妃となることを阻止しようとする白玲の嘲りには「どこにでも行かれよ、好きになさるがいい」と冷淡に返した。
実は「黄龍」であり、「豎眼」を持つ。しかし、その事実は父・祥、先帝、玄武の老大しか知らなかった(実の叔父・祐にも知らされていなかったが、紅(ホン)を始めとする竜族長老たちは広が彼らよりも「年長」である事から薄々気付いていた)。その為、先の天帝は広を養子に欲しいと祥に何度も申し入れ、何度も断られていた(祥のとっても唯一の嫡子の為)。
開(カイ)
現在の天帝。無限の神通力を持つという額の第三の目「竪眼」を持つ「黄龍」である。後に女性に変態して広の妃になる。広の父の弟である叔父・祐(ユウ)と、広の正妃に定められていた白玲の不義密通の末に間に生を受ける。「豎眼」を持つ「黄龍」であった為、嗣子のなかった先の天帝の実子とされることになった(そうしなければ即座に殺されるか、生涯幽閉しかなかった)。自身の出自は「竜王公主を母に持たない初の天帝」という他の天・仙界人と同程度のことしか知らなかった為、父が祐、母は白玲だと知らされた時はショックを受ける。が、4千年以上愛し続けた広を選んだ。祐と白玲に授かった命だという事実は認めるが、広を親の仇と憎むことはできぬ、愛することしか出来ぬと白玲に告げ、そばに居たいのであれば元の真珠玉に戻り眠れと諭して彼女を受け入れた。
広に「(白玲を)簪か頸鏈(首飾り)にでもして、いつも私の身につけている。この姿なら、あなたが見つめていても少しは妬かずにすむゆえ」と告げた。この後、本性に戻った白玲が開に抱かれているのを見たリーアンは、「白玲にとって俺は開の代わりだった、でも白玲に育ててもらって幸せだった」と感謝している。
祥(シアン)
広の父であり竜族の先代の王。三真珠を三方に分けるよう時の天帝に命じられた際、水晶宮に残すのは「次代の竜王妃=広の妃」とし、広本人の選択で白玲を選んだ。祐が白玲を妊娠させたと知った際、昇竜山に籠もらせて密かに出産させるよう命じ、産まれた子が開である。
黒韶とは、彼女が水晶宮にいた頃愛人関係にあった。彼女が天宮へ発ってすぐ、祐から「水晶宮に残るのが、彼女だったらどうする気ですか!」と咎められた際、「ならば、私が娶った」と答え、黒韶は彼の望み通りの女であり、黒韶も彼を愛していた。
祐(ユウ)
祥の弟で、広の叔父。白玲が甥・広の婚約者であること、広が白玲を愛し始めていることをわかっていながら、「白玲に愛されたければ、愛してほしいと願えばいいだけだ」と、白玲の真珠精としての特性(他者の思うようになる)を利用し、相思相愛になった。開の父親。祥の死後、本来は許されない身で竜王位を巡って広と対立して敗北、竜王剣で殺された。そのショックで白玲は千年、真珠態に戻っていた。
汎梨(ファンリー)
開誕生後、祥が「天帝妃となれる竜王公主が必要」として生まれた広の異母妹。本来の水竜の力だけではなく地竜の力も持っていた。開の婚約者だったが、地上に出た時に惹かれあった人間である戴曙(碧国の国主)に降嫁する。この後の碧の国主の一族は彼女の末裔である。
碧へ嫁ぐ直前、瑤池の昱花を密かに訪ねて「兄上と開陛下の関係はいずれ"天"を乱すことになるやもしれない。」と打ち明け、もしそうなったら、「兄上(広)を助けて差し上げて…」と頼む。それが昱花と汎梨の最後の対面となった。
人間になったため、既に故人。殯のために遺体を社の祭壇に安置しておいたら1日と過たぬうちに霧散してしまった。開の出自は知らない。戴曙(タイ・シュウ(後述))との結婚を報告する為、白玲を訪れた際、「竜王妃が未だにいないのは 誰のせい?」と詰った。
紅(ホン)
竜族長老の一人で、依緋(イフェイ(十妹)後述)の長兄。代々竜王家重臣を務める、紅家の当主。リーアンには好意的で、女に変態できると知った時は「我らが王の妃に下され」と望に懇願した(男に戻ったら竜王家の嗣子になればいい、とした)。広が開を妃にすべく水晶宮に連れ帰った際は、「狂われたか」と驚き、朱雀族滅亡に関しても開を論っていたが、開の出自と、実の両親よりも広を選んだ開の愛情を見て、受け入れた。
紅依緋(ホン・イフェイ)
竜族長・紅大人(ホンターレン)の十番目の妹である事から、「十妹(シーメイ)」と呼ばれている。火を操る「火竜」で、炎のごとき赤毛と紅玉のような瞳の持ち主。リーアンが幼い頃から想いを寄せており、成人後に夫婦になりたいと願っていたが、リーアンが従妹・杏沙(シンシア)と結婚したため、失恋。仲間と共に開が白玲の実子だと知り、彼女を討とうとした「黄龍」に変じたジンの攻撃に叶わぬと承知の上で立ちはだかり、リーアンに“炎華”の剣を持たせた[1]
銀芦(イン・ルー)
風竜で、白子(アルビノ)であり"涼風をまとった如き白い髪と白い肌"の持ち主。瑤池西王母に仕える、双子の姉がいる。
依緋の項にもある、ジンの竜王宮攻撃の際。リーアンに“風伯”の剣を持たせた。
卓堅(ツアオ・ケン)
地竜で、生まれつき視力が無いが、その体の一部を大地につけていれば、全世界を見通す能力の持ち主。

竜王剣の三真珠

白玲(パイリン)
白真珠の精。三真珠精の末妹にして「次代の竜王妃」として広の婚約者に定められていた。広の叔父・祐もまた彼女を愛したため、悲劇が起こった。公家のような引眉が特徴。
現天帝・開の実母。リーアンの養い親。白真珠のイメージどおり繊細で敏感な心を持ち、外からの影響を最も受けやすい性質を持つ。受け入れ切れない時は、元の真珠に戻ってしまうという不安定なものでもある。
瑶池で、開がリーアン(蟠桃の効果で白玲の姿を映した女性に変態していた)を斬ろうとし、それを庇った広を誤って竜王剣で斬ってしまった時のショックで正気を失い、竜王剣に嵌められていた白真珠は深紅に染まった。この後、開が不死である白玲を本性のうちに壊そうとして白真珠を手に取り、豎眼を開いた途端、深紅に染まった緋色の髪ながらも、再び人型を取った。髪が赤くなったのは、竜王剣が浴びた広の血の色である。
広が天宮に攻め入り、開に天帝位の退位を告げると共に求婚した直後、開が広に手を差し伸べようとした瞬間に怒りを爆発させ広に斬りつけた。開の退位直後、広の手により昇竜山にある氷室・蒼壁洞の『氷輪泉』に封じられた。
その後、広とジンの争いで氷室の氷が解け、目覚めて開を求めて水晶宮に戻る。祐を殺され、この上、開まで奪われたくないと黒韶に煽られ彼女に協力して水晶宮を震撼させる。しかし、広を守ろうとする開が力尽き倒れた為(神通力は無限だが、前日からずっと使い続けていたので身体への負荷が大きくなったものと思われる)、激しく動揺する。4千年、広を拒み続けてきたが、開はその間もずっと彼を愛し続けてきた為、白玲の怨嗟は拒絶された。そばに居たければ居れば良い、心があるからつらいなら真珠玉に戻ればいいと諭され、永遠に目覚めぬ"深遠の眠り"に就く。
昱花を「大姐(ターチェ)」、黒韶を「二姐(アルチェ)」と呼び、慕っている。
黒韶(ヘイシャオ)
黒真珠の精。仙人の淫心・情欲さえそそる美貌を持ち、また情深く艶冶な美女。幼い玉皇太子・開を誘惑したとして天宮を追放された(最初期は天界・仙界を追放された設定だったが、途中で変更された模様)。真相は、黒韶は開の特異性ゆえに白玲の子であることに気づき、祥が開の出自の秘密を守ろうとしていたことを知ったため、愛する祥の願いならば今度は自分が開とその秘密を守ろうとしたのだが、開の精神安定の方法として性関係を選んだことが「淫婦」とされ次期天帝の養育に差し障ると糾弾された。黒韶追放の際、真の事情を知らずに責めた昱花はそのことを後悔している。
天界追放後は「地上を乱せば天界も乱れる」という法則を成就させようと画策して人界に降り楊戩の従弟に当たる辰王朝の皇帝を誘惑したが、その時は新しい王朝(華王朝)の侵攻が早すぎた事などで地上を乱すまでには至らなかった。その数百年後に再び時の皇帝(華王朝皇帝)の寵妃となり、第四皇子・律(リュイ)を産んで死に、黒真珠に戻った。
水晶宮にいた頃は先の竜王・祥の愛人だった。律の死で復活を遂げ、水晶宮に戻った際、広に「眷属である貴女の遺恨を晴らすには、王として私はどうすればよろしいか」と問われ、祥によく似ている広に身代わりでもいいからと結婚を願う。しかし広が開を選んだことから、レンの協力を得て妖力封じの頚錬を外して白玲と共に水晶宮を揺るがし、碧国海岸を干上げてしまう。最後に広の「竪眼」を目の当たりにし驚愕する。永久に死ねない不死の身なればこそ、強い感情(祥への愛、幼い開への慈愛、天界への怨嗟)を必要としたが、広に生きたままの転生という可能性を教えられ、リーアン・広の「豎眼」の力で魂魄を引き剥がして冥府に送られる。その際、体=器は律の魂に譲り、レンと幸せになるよう、母らしい一面も見せている。
ストーリー上「天地双方の皇帝を誘惑し戦乱の種を植え付け育てた悪女」として描かれていたが、本来は慈愛溢れる女性であり、彼女の悲劇は祥が「情深く艶冶な美女」を望んだためだと広は考えている。
昱花(ユイホワ)
黄金真珠の精。清冽で謹厳なイメージの美女で、西の果てにある瑶池[2]で暮らしていた。瑶地での官職名は「九天玄女」。竜吉(ロンチー)を始めとする西王母の娘たちの養育係を引き受け(押し付けられ)た。特に竜吉からは「大姐(ターチェ)」(初期は姐々)と慕われていて、リーアンの母が昱花だと知った時にジンに「妾(わたし)にとっては、母以上じゃ!!」と号泣しながら打ち明けていたほどだった。
竜吉の追放を期に、人界へ下り洞府を開いて女仙となるが20年近く前。故・汎梨(前述)からの波動を受けた。そうして碧国へ向かい、東の碧国の公子・戴望(タイ・ワン)と出会って愛し合うが、18年前、突然姿を消した。リーアンの実母。
性格は謹厳実直で自他ともに厳しく、本性が真珠という鉱物である所為か心の機微に疎い面があったが、西王母の娘たちの養育や望との出会い、そしてリーアンを宿し産んだことによりかなり性格は丸くなっている。だが、性にはかなりオープンな面があり、「妾なんか会ったその日に、望と交尾したわよ」と語り、リーアンと望を慌てさせた。
自ら育てることができないリーアンを白玲に託したのは、彼女にも愛と心の機微を学んで欲しかったのではないかと西王母に推測されている。天宮に乗り込んだ際、開に「出自の知れない天帝に払う敬意はない」と発言したが、実際は、自分と望の子・リーアンが豎眼であった為、開も白玲(と祐)の子である可能性を疑い、開が自らの出自を知っているかを確かめる為だった。

その他の神仙

楊戩(ヤン・ジン)
清源妙道真君の仙号を持つ仙人で、主人公リーアンの師。
仙人になる前(人の頃)は武人だった。一千年前、華に滅ぼされた辰王朝の皇妹を母に持ち、皇帝就任の責から逃れる為玉鼎真人(仙人)に弟子入りした。
人間だった頃から、気の強い女性が好みで第6巻では「俺が惚れたのはいつもいつも、とびきり気の強い健康で澄んだ瞳(め)をした、娘ばかりだった」と語っていた。
かつて天帝・開に滅ぼされた鳳凰族の王で四方将神の一柱、南の朱雀の力と遺志を受け継ぎ、開と華王朝に復讐を誓った。しかし、所詮は他者の私怨ゆえに矛盾に苦しむ。回生にょって豎眼を得た後、開が不在のままだった天帝の玉座に座り、水晶宮に侵攻する。竜軍の抵抗を退けるが、「大人」になったことで潜在能力を完全に引き出したリーアンに敗れ、朱雀としての能力を代償として律の蘇生術を施し、仙人に戻り妻・竜吉の元に還った。
竜吉(ロンチー)公主
瑶池の金母(西王母)の娘(長女)でジンの妻。父は男仙の長・東王父。
その美貌で天界人を惑わしたという罪により天界を追放され、鳳凰山に棲んでいた。後にジンの子を身ごもり、母の後を継いで西王母となる。年1度の『幡桃会』で、開に瑤池の大斗閣を破壊された事で激怒。天宮に宣戦布告するに至った。
300年前。「斗閣の女たちの憩いの場」(竜吉談)となっている、温泉で湯に浸かっていたところ、偶然現われたジンと知り合う。ちょうどこの時、朱雀としての再生期を迎え、高熱を発していたジンに触れたところ、軽い火傷を負う。その直後、ジンが朱雀として再生するところを見届ける。
最終回で、斗閣の井戸があふれて大騒ぎになっているところ、ジンが戻り朱雀の力を失った事を打ち明けられるが、それでもいいと受け入れた。
胡勲(ホー・シュン)
四方将神の一柱、西の白虎。リーアンのよき友となる。リーアンからは「胡哥々(ホーココ)[3]」と呼ばれる。育ての親でもある昱花に慕情を抱いている。
昱花が天宮に乗り込み、白玲と再会した際、天宮を揺るがした時に開(前述)から叩き壊される寸前、広と共に制止し開との対決姿勢を示した。天帝である開に「貴様」と呼びつけるなど、礼儀は全くなっていない。
玄武(ゲンブ)
四方将神の一柱で北の王。霊亀族の長で最後の生き残り。リーアン曰く「でっかい亀」。古芳(後述)の体を借りて、リーアン達を自身が住まう鍾乳洞へと誘った。
己の死期を覚り、リーアンに亀甲宝珠を託す。
リーアンと広が鍾乳洞を訪れた時には、すでに息を引き取っており、リーアンが亡骸に亀甲宝珠をかざすと宝珠に呼応して消滅した。
朱雀(ぜんスザク)
六百年前鳳凰族の総帥で、玉鼎真人(後述)の長年の友人だった。天帝・開(前述)とはしばしば対立していて、「いつか、これが爆発するのでは」と天界中が案じていた。天帝に対して敵意を剥き出しにした原因は自身の激しすぎる気性だった。
ある日開から鳳凰族の火炎宮を急襲され、瀕死の状態で玉泉山にたどり着き、行をしていたジンに朱雀の力を託し、その瞬間燃え尽き消滅(死去)した。
悠明(ユーミン)
竜吉に仕える女仙。リーアンに想いを寄せる。
彼女がリーアンに渡した竜丹[4]が、彼の運命に大きな変化をもたらす事となった。
西王母(サイオウボ)
西の瑤池に住まう、西方を治める女神。正式名称・瑤池金母(ようちきんぼ)。
竜吉の母。夫は、蓬莱山に住む男仙の長・東王父
竜吉を産むと、その教育係として昱花を指名。黒韶天界追放を知った当時、天宮の処分が男たちの身勝手であること、真珠精であっても心を傷つけられることを憂慮していた。
現在は西王母の座を降り、東王父と悠々自適に暮らしている。開の出自は知らない。
先の天帝(さきてんてい)
天界を統べる長だったが、すでに故人。広(コアン)の父・祥(シアン)と叔父・祐(ユウ)兄弟の大伯父に当たる。「竜王族の三真珠」が引き起こした天変地異の一件で別れて暮らす事になった、三真珠の一人・黒韶を天宮で預かることに。
後宮の后妃たちとの間には、最期まで実子に恵まれなかった。子が出来ないのは天の竜族として濃すぎる血の弊害により限界に来ていた為。後に白玲が産んだ開(前述)を実子ということにして引き取り、後継に据えた。
晩年、玉皇太子となった開が黒韶を寵愛し、昼夜を問わず閨を共にしていることを案じるも真相を知らぬまま崩御した。
玉鼎真人(ギョクテイシンジン)
朱国の玉泉山に洞府を開く仙人。ジンの師父
第1巻序盤、リーアンから弟子入りを懇願されるが、天帝・開からの命で弟子入りを断った。だが、ジンが自分に無断でリーアンを弟子にした事で、破門を言い渡した。
第10巻では、ジンから反魂香を譲って欲しいと請われ、これに応じた。
東王父(トウオウフ)
東の蓬莱山に住まう、男仙の長。竜吉の父。
西王母共々、リーアンの出生時の事情を知っている(出生時、リーアンの髪色が金茶色だったことから、彼が一時幡桃酒を飲んだ際、女性に変態してしまった時に「もとに戻ったか」と話した。)。

人間

華王朝

リュイ(律)
華王朝の第四皇子で後に宰相となる。皇帝の寵姫だった黒真珠の精・黒韶の生んだ皇子として宮廷で育つ。容姿は黒韶と同じ。
黒真珠(=黒韶)を復活させる為、憎悪や怨嗟の“気”を集めるべく乱世を引き起こす。黒韶が自身の卵子をベースに造り出した一種のクローン体であるため、オリジナル体の黒韶が眠っている間、その目となり耳となって陰謀を巡らせた。しかし、黒韶とは別個の存在であり、異なる心を宿すことで黒韶の好み(祥)とは全く異なるレンに惹かれてゆく。
先の朱雀の復讐としてジンに殺されてしまうが、ジンの反魂術で再びレンの元に戻った。ジンもひきつるほどに嬉々として魂が戻ったため、口にせずとも深くレンを愛しているのは明白である。
レン・ソンツェン
華の将軍。西方で生まれ、売春宿で男娼として働かされていたが後に関の警護役人として登用、盗賊征伐の効により都へ召し出され皇子・律の護衛となった。
律を絶対の存在とし、彼(彼女)の為なら魂すら捧げられると言い切る。その本性ゆえ律(黒韶)に魅かれる者は多いが、男でも女でも構わないと言ったのは彼一人である。異父妹はアディリナ。
『地仙』の才があり、それ故無欲で純粋な性格。
淡国討伐の際、リーアンの手にかかり命を落とすが、律の行った反魂術によって、蘇生。最終回、ジンの反魂術で蘇生した律と再会を果たした。
寿(ショウ)
華王朝の第三皇子(妾腹)。己の武勇に慢心してしまうが、実際にはレンら周囲の者たちのおべっかによるところが大きい。「竜王君」と追従されている。粗暴で単純、嫉妬深い。律に唆されて正嫡の病弱な長兄と英明な次兄を殺害し、更には父帝を弑逆して皇帝を僭称、乱世を招く元凶となる。律曰く「昏君(愚王)」。
実は律の生母・黒韶が初恋の人だった。
林湊(リンツオ)
華の都にある、道観(道教寺院)・『鶴翼観』の観主で、レンの弟弟子。
レンが玉鼎真人(前述)から破門された事を知り、驚く。実は30年前(連載当時)、仙人になるため玉泉山で修行を積んでいたが、破門され途方に暮れて首都・舜をさまよっていたが、華皇帝の後宮へ上がったばかりの黒韶と知り合い、「そなたこのまま、一介の道士で終わりたいかえ?」と声をかけられ、黒韶が寵姫になってすぐにその計らいで、道観の観主に取り立てられた。
律と共謀し、北征が失敗に終わるようしょう国(後述)の母太后・シーシェ(後述)やしょう国重臣たちに呪詛(左道)をかけた。その事を玄武(前述)から知らされたジンに「仙界の掟を破った」罪により、誅殺された。
英(イン)
寿・律の異母兄(嫡腹)。桑締(後述)の従弟。
第1話と物語中盤回想シーンに登場。高齢の父帝と病弱で寝たきりの兄皇太子に代わり、宰相として華王朝の政を取り仕切っている。幼い頃、桑締と共に華国に留学中の望(後述)になついていて、彼が母国に帰る時には、桑締と共に泣いて引きとめた。
第1話で寿がリーアンとの武術の稽古に敗れた腹いせに、リーアンを捕らえて地下牢へ投獄した事を宋得(後述)から知らされ、助命・釈放を懇願されてリーアンを釈放。寿に「禁軍総帥の任を解く!!」と命じ、さらに謹慎処分を命じた。その事を恨み、かねてより自らの野心に火をつけた寿に斬殺された。
宋得(スントウ)
華の大学寮長官→『鶴翼観』道士。
第1話〜第2巻前半まで登場。若い頃は仙道を学び、「その折には娘々にも大変お世話になった」とリーアンへの協力を快く引き受けた。『竜王剣』をめぐって、リーアンが王宮で起こした騒ぎがきっかけとなり、大学寮長官の任を解かれ、投獄された。だが、律が寿に内密でこっそり釈放し、『鶴翼観』観主・林湊(前述)に預けられた。
その後は道士として暮らしていたが、リーアンが後宮に忍び込み、『竜王剣』を奪還しようとした件がきっかけとなり、捕らえられ、獄舎で拷問の末刑死した。

碧国

東海竜王家の汎梨公主を祖先に持つ。かつて碧国家では、竜族の血を純血のまま保とうとして血族婚を続けていたが(「時には、実の親子でも契った」(望談))、次第に健常な子供が誕生・成長しなくなり、ある時を境に一切の血族婚が禁じられた。だが、それから数百年後、時の国主・洋が従妹姫と恋をして望を儲け、その望の子・リーアンが同じく従妹である杏沙を愛し求婚する。杏沙もリーアンを愛しているものの、一族の掟の為に一度は求婚を拒絶したが、リーアンが人間ではなく完全な神族になることによって「人間としての血の親さ」を克服し、結婚した(作中では仮祝言と初夜まで)。

戴望(タイ・ワン)
竜王・敖広の妹・汎梨公主を先祖に持つ東の大国碧の公子。地仙。
文武ともに群を抜いて優秀で、若くして「竜王君」と呼ばれ、周りからは国主となる事を望まれていたが、庶子であることを理由に弟に国主の座を譲り、海辺の岩屋[5]へ隠棲した。それ故に地仙の力が目覚め、老いることが極度に遅くなっている。18年前、昱花と出会い愛し合った。乱世の中で自身の望まぬ立場に立たされる。
息子(娘)・リーアンを溺愛しており、同盟国主たちも呆れるほどの「親バカ」。
戴杏沙(タイ・シンシア)
綵の一人娘。リーアンの従妹。
碧国娘子軍を率いる。美人で気が強く負けず嫌い。先祖である汎梨公主に憧れを抱く。子供の頃、伯父・望の岩屋へ連れて行かれた時に望と初対面。だが、自分達といる時よりも父が嬉しそうな顔を見せることから、「それがシャクで」一度も伯父の膝に乗らなかったなどして、懐かなかった。
リーアンに対しては、初対面時、リーアンが女性体だったこともあり対抗心を抱いていた。後にリーアンと結婚する。
戴洋(タイ・ヤン)
碧の国主。望と綵の父。老獪で抜け目が無い。だがその反面、非常に涙もろい。望は洋が一族の禁忌[6]を破り、従妹姫との間に生まれた子だった。
リーアンと杏沙の祝言翌日。碧国の海岸が干上がっていた事に驚いた。
戴綵(タイ・セイ)
望の異母弟。正嫡の次男。兄を心から敬愛している。望を差し置いて国主の座に就くことを頑強に拒み、事あるごとに望の帰還を望んでいた。華軍との戦いで戦死する。
華との戦より半年前、妃が亡くなった直後、望の岩屋を突然訪れて酒を酌み交わしたが、酒に弱いにも関わらず最後まで素面だった。
杏沙の母(シンシアのはは)
回想シーンに登場。市井の出身で、綵が望の岩屋を訪ねるために碧の街を歩いていた時に知り合う。
父を除く周囲からは結婚を猛反対されたが愛を貫いて他に側室を置かず、仲睦まじい夫婦だった。だが、一昨年に亡くなった。
戴曙(タイ・シュウ)
回想シーンに登場。広の異母妹・汎梨の夫で、数百年前の碧の国主。
彼女との結納の際、碧国海岸と竜王宮を繋ぐ『水脈(みち)』と宮の主を招く言霊(ことだま)を、結納品として広から贈られた。

朱国

華王家の外戚。桑締の項にもある通り、寿・律の故・父帝の皇后は伯母に当たる。

桑締(サン・テイ)
南の大国・朱の国主。実はジンと、人間であった頃の侍女・阿茜(アチェン)との間に生を受けた子の末裔である。幼少の頃、華の王都・舜に留学しており、望と面識がある。寿・律の父帝の皇后は彼の伯母であるため、華朝の外戚でもある。
望を敬愛し、新帝国の皇帝に就けることを望む。息子と娘がいる[7]
怡敢(イ・カン)
朱国の将軍。ギョロ目に髭だらけのいかつい顔が特徴。有能な武人で、締のよき片腕。己の武勇に自信を持つが慢心はせず、リーアンに叩きのめされた時も素直に賞賛し、以後彼をすっかり気に入ってしまった。
阿茜(アチェン)
ジンがかつて人間であった頃、愛し合った侍女。ジンが玉鼎真人の誘いを受け、仙界入りするために辰(シン)を去り、その後辰が滅亡して皇宮が炎上。その時にジンの子を身篭っており、その産まれた子が桑締の先祖にあたる。
ジンが去ってすぐ、時の皇帝(ジンの従兄弟)に求婚されるが拒否。

淡国

同国(及び西方域)の出身者の容貌は西洋人風であり、名前も他の「姓+名」ではなく「名+姓」の西洋式で、漢字表記はされていない。

イシク・トゥル
西の大国淡の国主。レンの率いる華の淡国討伐軍をリーアンの手を借りて一度は退けるが、再度来襲した華軍に国諸共に滅ぼされる。
元々は先代淡国主の跡継ぎではない立場だったが、愛し合った侍女を父に奪われ、更に父の死後、彼女を後継者である兄が妻にしたいと望んだ事を知ったことから兄弟全員を殺害して国主の座に就いた。
第5巻終盤〜第6巻中盤。蘇生したジンに攻め入られ、アディリナ母娘が眠る霊廟で自害した。
アディリナ
表向きはイシクの異母妹だが、実はイシクと彼の侍女となった女奴隷(レンの母)との間に生を受けた愛娘。レンの異父妹に当たるが、彼がそれを知る事は無かった。生まれつき病弱で、レンの来襲直前に病没する。無自覚ながらリーアンの初恋の相手であった。リーアンに異父兄(レン)に会いたいと語るが、死に際には激しく拒絶するという不可解な反応でリーアンを困惑させた。
アディリナの母
イシクの侍女で初恋の人だったが、淡国城に買い取られた当初は夫を殺され、息子(レン)と引き離されたショックで一時的に口が利けなかった。だが、イシクの献身的な愛情で少しずつではあるものの、言葉を取り戻し彼に笑いかけるように。
しかし、先代国主であったイシクの父に奪われ、数ヶ月の後にアディリナを産む。実はレンの生き別れた母親だった。性別は違うが、レンと瓜二つだった。
亡くなる直前、アディリナに「ずっとイシクさまが好きでしたと、伝えて」と遺言する。
シュホン
レンがいた売春宿の用心棒のリーダー的存在。元々は、王都の禁軍士官であった。
成長しすぎて男娼として使い道のなくなったレンに武術及び兵学や史書(歴史)等を仕込み、さらに士官時代のツテを頼り、西方関の仕事に就けるよう推薦した。
正体は周辺地域を荒らしていた盗賊の頭目であり、取り締まりなどの情報を手に入れるためにレンを関所に送り込んだのだったが、それに気づいたレンに裏をかかれ一網打尽にされる。
自暴自棄から嘗てレンの生まれた村を襲い父を殺して母と引き離した事を語るが、逆上したレンに殺害される。
サジェル
イシクに仕える軍師。レンが淡国に攻め入ってきた時には、淡国軍の指揮を執った。
第5巻終盤〜第6巻中盤。チュイの反魂術で蘇生したレンが再び淡国へ攻め入り、ついに淡国城が陥落。アディリナ母娘が眠る、霊廟で最期の時を迎えたイシクと別れ、霊廟を出てすぐに自害した。

橡国

北の対立する別国との国境にあり、国境には大きな城壁がある。

古芳 (クーファン)
北の橡国の国主。まだ幼いため、母太后・シーシェが摂政として政冶を執り行っている。
北征のために橡国入りした寿帝を接待していたシーシェが寿帝の目に留まり寵愛を得ると、母親を奪われた腹いせに寿帝の宿舎をメチャクチャに荒らした。
橡国の重臣達が敵対していた別の国と密かに手を結び城へ攻め入られ、シーシェと共に逃げようとするが寿帝がシーシェだけを連れて脱出しようとした際、手に噛み付き抵抗するが、シーシェを奪われてしまう。
リーアンの制止を振り切り、泣きながらシーシェを捜し回り、炎上する城内を彷徨いながら焼死した。
シーシェ
古芳の生母。母太后として、古芳に代わり政冶を執り行っている。
林湊(リンツォ)の左道(呪術)にかかる前は貞淑な妻であり慈愛の母だった女性。
北征でやって来た寿帝の手がつき、寵愛を受ける。そのため、寿帝とは昼夜を問わず情事を繰り返していた。シーシェに溺れて寿帝が戦場に出陣しなくなったため、それを憂いた将軍たちに懇願されたレンに刃を向けられそうになる。
最後は重臣たちの裏切りに遭い、寿帝と共に城を出るが竜の力に目覚めたリーアンの落雷を受けて感電死する。

書籍情報

『火輪』白泉社(花とゆめCOMICS)

  1. 1992年8月25日 ISBN 4-592-12261-5
  2. 1993年1月25日 ISBN 4-592-12262-3
  3. 1993年6月25日 ISBN 4-592-12263-1
  4. 1993年11月25日 ISBN 4-592-12264-X
  5. 1994年4月25日 ISBN 4-592-12265-8
  6. 1994年7月25日 ISBN 4-592-12266-6
  7. 1994年11月25日 ISBN 4-592-12267-4
  8. 1995年3月25日 ISBN 4-592-12268-2
  9. 1995年6月25日 ISBN 4-592-12269-0
  10. 1995年9月25日 ISBN 4-592-12270-4
  11. 1995年11月25日 ISBN 4-592-12278-X
  12. 1996年3月25日 ISBN 4-592-12279-8
  13. 1996年7月25日 ISBN 4-592-12307-7
  14. 1996年10月25日 ISBN 4-592-12308-5
  15. 1997年2月25日 ISBN 4-592-12326-3
  16. 1997年6月25日 ISBN 4-592-12327-1
  17. 1997年9月25日 ISBN 4-592-12328-X 同時収録 熱砂流

『火輪』白泉社(白泉社文庫)

  1. 2005年5月15日 ISBN 4-592-88451-5
  2. 2005年7月15日 ISBN 4-592-88452-3
  3. 2005年9月15日 ISBN 4-592-88453-1
  4. 2005年11月15日 ISBN 4-592-88454-X
  5. 2006年1月15日 ISBN 4-592-88455-8
  6. 2006年3月15日 ISBN 4-592-88456-6
  7. 2006年5月15日 ISBN 4-592-88457-4
  8. 2006年7月15日 ISBN 4-592-88458-2

脚注

  1. ^ 「リーアンにそのような雑兵の槍など持たせぬっ!!」と槍に炎を向けていた。
  2. ^ 女仙達が住まう花園で、男性の出入りは基本的に厳禁。だが、年1度の『幡桃会』は、男性の出席が認められている。
  3. ^ 「哥々」は「兄貴」ほどの意味。
  4. ^ 天・仙界に伝わる薬。別名・「竜殺し」と呼ばれ、この薬は天界人や仙界人には重宝されるも、竜族にとっては命取りとなる(広談)。
  5. ^ 岩屋に所蔵してある巻物は、汎梨が生前遺したものとの事。汎梨の項にある通り、彼女の遺体を安置していたら霧散したため、「本来 精霊や妖(あやかし)に憑かれやすい」(昱花談)地仙の彼がこの数十年過ごしていられたのは、彼女の社にいたからである。
  6. ^ どんなに遠い血縁でも血族婚は禁ずる
  7. ^ リーアンが杏沙に失恋した直後、自身の娘との縁談を彼に薦めた。