書記

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書記(しょき)とは、本来は記録などを残すために文字を書き記すこと、また、書き記したもの、その記録のことを指す語である。また、記録などを残すために文字を書き記す職業またはその職務にあたる者を指す。さらに特定の立場にある者の肩書や団体の幹部職の立場を表す名前に転用されている。

概要

書記とは、本来は記録などを残すために文字を書き記すこと、また、書き記したもの、その記録物のことを指す語である。記録物を指す用法としては「日本書紀」の例がある。

また、記録などを残すために文字を書き記す職業またはその職務にあたる者についても書記の呼称で表されることが多い。古来は右筆(ゆうひつ、または祐筆と表記)、執筆(しゅひつ)とも言われた。

一方、この職務を指す用法としての「書記」から派生し、特定の立場にある者の肩書や団体の幹部職の立場を表す名前にも転用されている。この用法での「書記」について以下にまとめている。

政党における書記

共産主義政党においては最高幹部がこの名で呼ばれることが多い。その筆頭である党の書記長(かつて存在したソ連東ドイツ)や総書記(中国)は最高権力者にあたる役職の名称となっている[1]北朝鮮ベトナムでは同義の役職名として「秘書」(朝鮮語: 비서ベトナム語: Bí thư漢字表記)があるが、日本語中国語では「書記」と訳すことが一般的である。英語ではsecretaryと表記され、直訳すれば「秘書」であるが、アメリカの国務長官を “Secratary of State” と表記するように、「長官」ないし「大臣」といった意味も含まれている。

ソビエト連邦共産党の中央委員会書記は数名しか置かれず、その筆頭である書記長または第一書記は事実上の国家最高権力者だった。

会議の議事をまとめる書記がなぜ役職名になったのかいくつか説があるが、ヨシフ・スターリンの地位に由来するというのが有力な説となっている[1]。ソビエト連邦共産党ではスターリン以外の党幹部は民衆への演説を重視してデスクワークを雑用とみなして嫌っており、スターリンが党の「雑務」を引き受けることになった[1]。しかし、この「雑務」の中身は地方幹部の人事や資金の調達などであり、これらの決定権を掌握したことで最終的に書記が党の最高権力者の地位になったとされている[1]

労働組合における書記

労働組合の専従職員らを指すこともある。労働組合の三役とは、委員長、副委員長、書記長をいう。

地方政府における書記

日本

地方自治法

地方公共団体議会事務局や選挙管理委員会監査委員事務局に置かれる職員をいう。書記は、議長、選挙管理委員会又は代表監査委員が任免する。書記の身分の取扱いについては、地方自治法に定めがあるもののほかは、地方公務員法の定めるところによる。

  • 議会事務局(地方自治法138条)
  • 選挙管理委員会(地方自治法191条)
  • 監査委員事務局(地方自治法200条)

漁業法

漁業法の規定により、海区漁業調整委員会(漁業法137条6項)及び内水面漁場管理委員会(漁業法173条)に書記を置くことができるとされている。

イタリア

イタリアでは県やコムーネに首長の県知事またはシンダコ(sindaco)が任命した書記が置かれる[2]。書記は議会や理事会に対する助言・補助を行い、議会や理事会の議事録を作成するほか、地方団体が関与する契約書を作成する[2]

教育機関における書記

書記は、大学職員の職階を示すものとして私立大学を中心に用いられる事が多い。位置づけは各大学によって差があるが、基本的には肩書きを持たない一般職員を示す。

脚注

  1. ^ a b c d 瀧澤中『悪魔の政治力』経済界新書、2012年、102-103頁。 
  2. ^ a b イタリアの地方自治”. 一般財団法人自治体国際化協会. 2020年12月28日閲覧。

関連項目