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新本格魔法少女りすか

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新本格魔法少女りすか』(しんほんかくまほうしょうじょりすか)は著者・西尾維新ライトノベル。雑誌『ファウスト』にて連載中。単行本は講談社ノベルスより現在3巻まで発売されている。イラストレーションは西村キヌ

全13話予定[1]。2006年に『新本格魔法少女りすか0』の刊行が予定されていた[2]が、現在の状況は不明。

概要

魔法少女ものに推理小説の要素を加えた作品である[3]。りすかの変身方法や変身に至る過程など、ハードな描写が多い。戦闘シーンでは、「強い魔法で敵を倒す」などではなく、「自分の魔法をいかにうまく使い敵を倒すか」というところに重点が置かれている。

執筆のきっかけは、講談社の編集者太田克史が魔女っ子ものによるメディアミックスを考えたことだった[4]。『ファウスト』が創刊される際、この企画を実現するために西尾に執筆が依頼され誕生したのが、太田が「『絶対アニメ化は無理』と涙した」と語る本作だった[4]

「一般的な魔法を小説で書いた時の嘘っぽさ」を緩和するための装置として、「クトゥルフ神話」が引用されている[5]。作中にはクトゥルフ神話に関する用語が登場し、単行本の冒頭にはクトゥルフ神話の作者H・P・ラヴクラフトの小説からの引用がある。魔法の設定もクトゥルフ神話を下敷きにしているとされる[5]。また、台詞回しに漫画『ジョジョの奇妙な冒険』に通じるところがあり[6]、作者は本作を「『新本格ジョジョ』と言っていいくらい」の気持ちで書いているという[6]


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


世界観

舞台は主に九州の佐賀県。魔法の国・長崎県とは巨大な城門によって隔てられ、長崎県との行き来は城門管理委員会によって管理されている。

長崎県には魔法使いと呼ばれる者が住んでおり、彼らは魔法と呼ばれる異能力を行使する。魔法は「使用者の『精神』を外側に向けて放出する行為」とされ、その魔法によって使用者がどのような人物か知ることができる。魔法使いによって魔法を授けられた人間は「『魔法』使い」と表記される。

魔法の発動を助ける技術として、魔法式(まほうしき)と魔法陣(まほうじん)がある。魔法式は、事前に術をかける対象に「式」を書いておき、呪文の詠唱時間を短くする技術。術者が近くにいなければ発動できない。魔法陣は、一定の条件がクリアされると発動する「陣」。魔法式と違い、術者が近くにいる必要はない。

あらすじ

「魔法使い」・水倉りすかと「魔法使い」使いの供犠創貴の2人は、りすかの父親・水倉神檎を探すために佐賀県を拠点とした「魔法狩り」を行っている。

様々な魔法使いとの接触・戦闘を通して、2人は徐々に水倉神檎に近づいていく。

登場人物

名前の横の「」はその人物が持っている称号など。

主な登場人物

水倉りすか(みずくら りすか)「赤き時の魔女」「魔法狩り」
長崎県森屋敷市出身で、運命干渉系の「魔法使い」。小学5年生。一応小学校には籍を置いているがほぼ不登校であり、自宅で魔道書の写しの作業を行っている。好みのタイプは恰幅のいい男性(関取体型)。趣味は相撲観戦。父親探しのため佐賀県に転校してきた。2年近く前から単独で「魔法狩り」を行っていたが、1年近く前に創貴に出会い、以後行動を共にしている。架空都市長崎県出身であり、日本語を覚えたのは最近であるため「○○なのが、○○なの」(例:私に優しくしてくれないのが、キズタカなの)といった、主語・述語の逆転した独特の言い回し(創貴曰く、「下手なドイツ語の訳みたい」な話し方)をする。彼女の血には水倉神檎によってあらゆる種類の魔法式が施されており、大抵の魔法ならば血を流すだけで施行できる。
属性(パターン)は「」、種類(カテゴリ)は「時間」、顕現(モーメント)は「操作」。自身の寿命を消費し、目標とする座標への移動にかかる時間や、ケガが完治するまでの時間を「省略」することができる。死に直面するほどの血を流すと1分間だけ17年後・27歳の自分になれる。17年後のりすかは、なるたびに性格は少し違うが共通して非常に好戦的である。またそれと同時に非常に強く、現在のりすかが使いこなせていない時間の魔法をいとも簡単に使いこなしている。
供犠創貴(くぎ きずたか)「『魔法使い』使い」
佐賀県在住の小学5年生。毎期クラス委員長を務める優等生である反面、自分以外の全ての人間を見下している傾向が強い。1年前に不登校であったりすかの家を訪問した際に彼女が普通ではないことを直感。それ以後彼女を重要な「駒」とみなし、近しい関係を保っている。夢は全ての人間を幸せにすることであり、そのためならばどんな犠牲も厭わない。父親には反発している反面、敵わないと認め尊敬している。
ツナギ / 繋場いたち(つなぎば いたち)
水倉神檎によって「魔法」使いにされた元人間の少女。2000年以上生きているらしい。りすか達との戦闘後「観察」のため、"繋場いたち"と名乗ってりすか達の小学校へ転校してきた。城門管理委員会の創始者であるが、目立った地位には就かず、孤高の前線部隊として活動している。水倉神檎に自身を殺してもらうために、彼の消息を追っている。2000年以上生きていることもあり経験豊富で、戦闘においては心強い仲間であるが、逆境に弱いという弱点も持つ。
属性は「」、種類は「分解」。体中に512の口をもち、その口に喰われたモノは魔力を分解・吸収される。
水倉神檎(みずくら しんご)「ニャルラトテップ
現在行方不明のりすかの父親。666の「称号」を持っていたが、そのうちのひとつ「赤き時の魔女」をりすかに与えたため、現在の「称号」は665個。海を渡れない「魔法使い」に海を渡らせる「箱舟」計画なるものを企んでいるらしい。
供犠創嗣(くぎ きずつぐ)
創貴の父親。佐賀県警の刑事。日本中の警察で彼に逆らえるものはいない。女性にモテる。結婚・離婚を5回繰り返していて、現在の6人目の妻とも別居中。全身真っ白の背広姿。甘いものに目が無く、カレーも甘いものが好きである。創貴とは距離を置いた関係。りすかのことはそれなりに気に入っているらしい。

魔法使い

高峰幸太郎(たかみね こうたろう)
地下鉄運転士。水倉神檎によって「魔法」使いになった。属性「」、種類「召喚」。真空・かまいたちなどを作り出せる。
影谷蛇之(かげたに へびゆき)「影の王国」「豚歌い」「鷲豚の輪廻」「赤豚紳士」「悪意の天才」
在賀織絵を攫った。水倉神檎の「ディスク」を守っていた一人。幼女を攫い衰弱死するまで「固定」し鑑賞するのが趣味。「城門」内で誘拐容疑により逮捕されたが、脱獄。「城門」の外へと逃亡した。赤い安全ピンのようなジャケットを着ている。
火住峠(ひずみ とうげ)「火祭り」
属性「」。水倉神檎の「ディスク」を守っていた一人。厳しい顔をした、身の丈2メートル近い大男。
水倉破記(みずくら はき)「迫害にして博愛の悪魔」
りすかの従兄妹。18歳の高校3年生。父親は水倉神檎の弟。属性「水」、種類「運命」、運命干渉系の魔法使い。彼の血には水倉神檎により魔法陣が施されていて、その血を浴びた人間は血を洗い流さないと死ぬまで不幸がつきまとう。

6人の魔法使い

「城門」を抜けた6人の魔法使い。水倉神檎、そして「箱舟」計画と何らかの関わりを持つ。

人飼無縁(ひとかい むえん)「眼球倶楽部」
それなりに背の高い、不健康そうな痩せた男で、板垣退助を思わせる重力に逆らった髭を生やしている。「○○。いや、××と言うべきかな?」という、今言ったことを直後に否定する言い回しをする。一人称は吾輩。目を合わせただけで相手を死に至らしめるという究極魔術「魔眼」の使い手であり、「魔眼使い」を名乗っている。
地球木霙(ちきゅうぎ みぞれ)「回転木馬」
属性「肉」、種類「増殖」。自己の体を好きなように改造・再生することが出来る。
蠅村召香(はえむら しょうか)「泥の底」
属性「」、種類「操作」、顕現「固定」。対象者本人に所有権がないものを完全に「固定」することができる。「固定」されたものはいかなる手段をもってしても動かすことができない。
塔キリヤ(とう キリヤ)「白き暗黒の埋没」
属性「」、種類「創世」、顕現「絶対矛盾」。運命干渉系・精神感応系の両方の性質を持つ魔法使い。対象者を「平行世界」(鍵曰く「パラレルワールド」)に引き込むことが出来る。ただしその際には彼本人もその平行世界にいなければならない。
結島愛媛(ゆいしま えひめ)「偶数屋敷」
武闘派の魔法使い。属性「」、種類「反応」、顕現「化学反応」。大気中の物質を利用して化学変化を起こさせる。主に炭素を「杭」にして、化学変化によって生じた熱を利用して射出する。
水倉鍵(みずくら かぎ)「ネイミング」
「魔法封じ」の能力を持つ人間。「6人の魔法使い」の一員ではあるが、実際には魔法使いではない。水倉家との血縁関係は無く、本人曰く「一応養子扱い」とのこと。「6人の魔法使い」の中で、一番水倉神檎に近い存在。外見は創貴達よりも少し幼いぐらいの男子。

その他

チェンバリン
りすかの忠実なる従僕。りすかの家の一階でコーヒーショップを営んでいるが、あまり繁盛はしていない。子供である創貴に対しても非常に丁寧な対応をする。りすかの手錠を作った。
楓(かえで)
創貴の有能な「持ち駒」。創貴に対し敬語を使う。
在賀織絵(ありが おりえ)
りすかと同じクラスの委員長。影谷蛇之に攫われた。才女で人気も高い。
椋井むくろ(むくい むくろ)
城門管理委員会の委員長秘書。女性。全身黒服姿(他の城門管理委員会の者も同様)。ツナギとは親しい方であった。
折口きずな(おりくち きずな)
創貴の4番目の母親。自称・属性「」、種類「知覚」の魔法使い。勘が非常に鋭い。創貴に大きな影響を与えた人物。「平行世界」の中で、創貴に現実への道を示した。

作品

巻数 収録内容 掲載誌 初版発行日付 ISBN
1 新本格魔法少女りすか 第一話 やさしい魔法はつかえない。 『ファウスト』Vol.1 2003年12月刊行 ISBN 4-06-179553-8 2004年7月5日 ISBN 4-06-182381-7
第二話 影あるところに光あれ。 『ファウスト』vol.2 2004年3月刊行 ISBN 4-06-179554-6
第三話 不幸中の災い。 書き下ろし
2 新本格魔法少女りすか 2 第四話 敵の敵は天敵! 『ファウスト』Vol.3 2004年7月刊行 ISBN 4-06-179430-2 2005年3月15日 ISBN 4-06-182432-5
第五話 魔法少女は目で殺す! 『ファウスト』vol.4 2004年11月刊行 ISBN 4-06-179446-9
第六話 出征! 書き下ろし
3 新本格魔法少女りすか 3 第七話 鍵となる存在!! 『ファウスト』Vol.5 2005年5月刊行 ISBN 4-06-179572-4 2007年3月20日 ISBN 978-4-06-182521-5
第八話 部外者以外立入禁止!! 『ファウスト』Vol.6 SIDE-A 2005年11月刊行 ISBN 4-06-179586-4
第九話 夢では会わない!! 『ファウスト』Vol.6 SIDE-B 2005年12月刊行 ISBN 4-06-179587-2
- 単行本未収録 第十話 由々しき問題集!!! 『ファウスト』Vol.7 2008年8月刊行 ISBN 978-4-06-378821-1 - -

脚注

  1. ^ 『ザレゴトディクショナル』168頁。
  2. ^ 『西尾維新クロニクル』74頁。
  3. ^ 『西尾維新クロニクル』62頁。
  4. ^ a b 『西尾維新クロニクル』82頁。
  5. ^ a b ユリイカ』2004年9月臨時増刊号、87頁。
  6. ^ a b ユリイカ』2004年9月臨時増刊号、182頁。