戦力外通告

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戦力外通告(せんりょくがいつうこく)とは、主にプロスポーツにおいてチームに所属する選手に対して、すでに自チームの戦力構想かられていることを通告すること。選手契約の解除や選手整理を意味する言葉である。

身体能力の低下、怪我・病気、あるいは成績の伸び悩みや試合で起用されなくなったなどの理由で自チームの戦力構想から外れた選手に行われる。主にベテラン選手に対して行われることが多いが、若くして戦力外を通達される選手もいる。その裁量は状況によって多様である。

また複数年契約の途中であっても結果が伴わなければ中途での契約解除(事実上の戦力外)とする場合もある。その場合、特約がない限り複数年契約で約束された残りの年俸は支払われる。

日本プロ野球における戦力外通告

日本のプロ野球の場合戦力外通告は公式には任意引退自由契約といった区別がある。

支配下登録選手の契約期間は2月1日から11月30日までと定められており、翌年度も継続して契約を希望する場合は、11月末日までに日本野球機構(NPB)に提出される次年度契約保留選手名簿に記載される必要がある(この名簿は12月最初の平日に公示される)。翌シーズンに契約を結ばれない選手は11月30日付で自由契約選手として公示される。戦力外の選手はこれを以って正式に自由契約[1]となるが、直前に通告されたのでは多くのチームで編成が終了しており、秋季キャンプなども終了している時期であるほか、選手にとってもシーズン終了後の教育リーグや秋季練習・秋季キャンプなどに参加する必要がない[2]ことから、他球団への入団機会確保などの目的で事前に翌年度の契約を結ばないことを通知することを制度化しているものである。なお、戦力外通告を受けて引退を決意した選手が任意引退選手として公示されることもある[3]ので、任意引退と戦力外通告による自由契約は、一概に線引き出来るものでもない。

球団からの戦力外通告はそれら公式の手続きから最大で2か月近く、遅くとも1か月以上先立って行われる。2008年(平成20年)9月19日日本プロフェッショナル野球組織日本プロ野球選手会との間で下記の通り戦力外通告に関するルールが取り決められた。同時に、野球協約を超える減俸を承諾するか否かの選択を選手に通告する時期も、この期間になされなければならなくなった(選手が承諾しなければ球団はその選手の保有権を失う)。なお、これらの協定は選手会に所属していない外国人選手には適用されない。

ちなみに、この制度が定められたきっかけとなったのが2006年(平成18年)、当時オリックス・バファローズに在籍していた中村紀洋の契約更改をめぐるトラブルである。同年の故障をめぐる本人と球団の考え方の擦れ違いから契約更改交渉が越年し、翌2007年(平成19年)1月に決裂して自由契約となった中村を獲得しようとする球団がなかなか現れなかった。結局、キャンプイン後の2007年2月に中日ドラゴンズと育成選手契約をしたが、各球団の翌年度の編成完了後に追加で戦力外となった選手が最悪の場合路頭に迷う可能性を明るみにする結果となった。

戦力外通告の後も、育成選手として残留したり(支配下登録の選手を翌年度から育成選手契約に切り替える、または1回の契約あたり最長3年とされている育成選手契約の期間が満了する場合も、上記の期間に自由契約とすることを通知する必要がある)、12球団合同トライアウトなどを経て、他チームと契約をして活動再開する場合もあるが、他のどのチームとも契約できなかった場合か、契約を行わずに引退を宣言した場合、選手としては実質引退となる(たまに、翌年以後のシーズン開幕後に他球団あるいは再度前球団と契約できた例もある)。なお、自由契約(予定)選手との契約は、第1回トライアウト終了後から解禁される。

プロサッカーにおける戦力外通告

Jリーグなどプロサッカーにおいては、戦力外通告の同義語で「ゼロ円提示」と報道される場合もある。この「ゼロ円」は翌シーズンの年俸の額を意味するが、選手側がそれを受け入れて年俸ゼロ円でクラブに残留することは出来ず、必ず移籍または現役引退を選択しなければならない。通常の場合、選手が移籍すると移籍金が移籍先のクラブから移籍元のクラブに支払われるが、ゼロ円提示の場合は移籍金が不要である。ゼロ円提示の通告期限はリーグ全日程終了の5日後である。

メジャーリーグにおける戦力外通告

メジャーリーグ(MLB)では、年俸調停権を持つ選手が12月の所定の日付までに球団から翌年の契約を提示されなければ『Non-tender FA(ノンテンダーFA)』と呼ばれる自由契約状態になり、これが戦力外通告に近い(ただし戦力外ではなく、再契約を前提とした年俸再交渉を行なうためになされる場合も多い)。

また、『Designated For Assignment and put on waivers(割当除外及びウェーバー公示)』略して『DFA』と呼ばれる処置も存在する。DFAはメジャー契約を結ぶ40人枠から選手を外すことを意味し、「別の選手を40人枠に入れるため」や、「マイナー・オプションが切れた選手やマイナー降格拒否権を持つ選手を25人枠から外したい場合」などの目的でなされる場合も多く、日本プロ野球のように解雇または放出を前提とする戦力外通告とは意味合いがやや異なる。

DFAとなった選手に対しては、10日間以内に以下のいずれかの手続きがとられる。

通常、選手はウェーバーにかけられる。ウェーバー公示期間中に他球団が獲得意思を示し、交渉が成立した場合、年俸などの契約内容をそのまま引き継ぐ形で選手が移籍する。ウェーバーはDFAの日から7日以内に公示しなければならない。
所属球団と他球団の交渉によりトレードが成立した場合、移籍が可能である。ただし、メジャー在籍歴が10年以上で且つ当該のチームに5年以上在籍している選手はこのトレードを拒否することもできる。

上記による移籍が成立しなかった場合は以下のいずれかの手続きがとられる。

その選手と改めてマイナー契約を結び、傘下マイナー組織に残留させる。基本的に選手側に拒否権はないが、メジャー在籍歴が5年以上の選手、または以前にDFAによるメジャー契約解除の経験がある選手はこのマイナー契約を拒否することができる。拒否した場合は自由契約フリーエージェント)、拒否かつ引退を申し出た場合はそのまま引退となる。
  • 自由契約
所属球団からマイナー契約の申し出がなかった場合、あるいはマイナー契約を拒否した場合、自由契約となる。
MLB公式サイトでは所属球団にマイナー契約の意思がない場合は"(球団名) released (選手名)."(訳:(球団名)は(選手名)を自由契約とした)、選手がマイナー契約を拒否した場合は"(選手名) elected free agency."(訳:(選手名)はFAを選択した)と表現するので上記の違いは分かるようになっている[4]
  • 引退
自由契約を行わず、自ら引退を申し出た場合は、そのまま引退となる。

関連項目

脚注

  1. ^ ただし、戦力外通告を受けた選手は、以後契約期間内であっても「元・○○(所属球団)」と扱われることが多い。
  2. ^ ただし、戦力外通告を受けても、その後の試合に帯同し出場する選手もいる。
  3. ^ その場合でも、任意引退選手の公示から3年後の11月30日をもって自由契約選手とみなされる。
  4. ^ Transactions | MLB.com”. MLB.com. 2015年7月29日閲覧。