医療保険

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医療保険(いりょうほけん)とは、医療機関の受診により発生した医療費について、その一部又は全部を保険者が給付する仕組みの保険である。

概要

高額の医療費による貧困の予防や生活の安定などを目的としている。長期の入院や先端技術による治療などに伴う高額の医療費が、被保険者の直接負担となることを避けるために、被保険者の負担額の上限が定められたり、逆に保険金の支給額が膨らむことで保険者の財源が圧迫されることを防ぐため、被保険者の自己負担割合や自己負担金が定められていたり、予め保障範囲が制限されていたりすることが多い。 強制加入の公的医療保険と、任意加入の民間医療保険の2種類に分けられる。

公的医療保険

公的医療保険は予め被保険者の範囲が行政によって定められている医療保障制度である。

多くの先進国でも公的な医療保険制度を用意しているが、対象者の範囲や財源方式については国により異なる。

  • アメリカにおいては、高齢者を対象としたメディケアや低所得者を主に対象としたメディケイドなどの公的医療保障制度があり、前者は連邦政府予算と自己負担金、後者は連邦政府からの補助金と州財源により運営されているが、社会的現役の人を対象とした制度は存在しない。クリントン政権当時に、大統領夫人のヒラリー・クリントンにより構想が練られたが、民間医療保険会社の強い抵抗に遭い頓挫した(映画『シッコ』も参照)。
  • イギリスでは税を財源とした国民保健サービス(NHS)と呼ばれる公的医療保障制度を国が運営しており、保険の仕組みを使っていない。
  • ドイツでは、一部の高所得者を除いて公的医療保険に加入することが義務づけられている。公的医療保険の保険者は疾病金庫(Krankenkasse)といい、職域保険と地域保険とが存在する。
  • 大韓民国では、国民健康保険公団を唯一の保険者とする公的医療保険制度である国民健康保険が設けられている。日本と同様、国民全員が加入する国民皆保険制度がとられている。
  • 台湾中華民国)では、中央健康保険局が一元的に管理する公的医療保険制度である全民健康保険が設けられている。日本と同様、国民全員が加入する国民皆保険制度がとられている。

民間医療保険

これに対して、民間医療保険は、任意加入であり、契約者の財産や所得に応じて、複数の保険会社が用意するメニューからプランを選ぶことが可能である。民間医療保険に期待される役割は、国ごとに大きく異なる。日本では公的保障の補助的役割を果たしており、任意加入である。アメリカ合衆国ではマネージド・ケアという民間医療保険が一般的である。マネージド・ケアは大きく分けてHMO、POS、PPOの三種類がある。多くの州では任意加入であるが、マサチューセッツ州では、何らかの医療保険への加入が義務付けられている。

なお、民間医療保険は任意加入であることから、自己の健康状態に不安がある人ほど保険加入のインセンティブを持つため、いわゆる逆選択により健康状態の不良な被保険者集団が形成されるおそれがある。特に手術給付金など、加入者が受診を選択できる保障でこの傾向が強い。また、保険金詐欺を目的に保険加入するといったモラルリスクの問題もある。

日本における医療保険の状況

日本における民間医療保険は、あくまでも公的な健康保険の補完である。すなわち公的医療保険によって生じる自己負担額分の補填や、差額ベッド代や交通費などの雑費、さらには休職による収入減少分などを補うことが目的である。悪性疾患と診断をされた場合の、「お見舞い金」という名目のものもある。診断結果、傷害の程度、手術の種類、通院や入院の日数などに応じて、定められた給付額が支払われるというプランが多い。民間の保険会社により販売されるものであり、直接の公的助成はないものの、支払った保険料は一定の条件のもとで所得税計算上の控除額(生命保険料控除)に計上できる。

第三分野保険」と分類されるこの分野は、主として米国への配慮から[要出典]外資系保険会社の独占が維持されていた。国内の保険会社は、生命保険などに付随する特約という形でのみ販売が可能であった。結果、一例として特定疾病保険の代表であるがん保険分野では、1974年に日本での営業を開始した米国のアメリカンファミリー生命保険(アフラック)1社による寡占状態となっていた。

2001年、米国との合意に基づいて第三分野保険分野が自由化が認められ、日本国内の生命保険会社損害保険会社の本格参入が初めて可能となった。その後、多数の保険会社がこの市場に参入した。2006年11月、外資系を含む多くの保険会社で、医療保険を中心とした第三分野保険における保険金の不当不払いが大量に行われていたことが明るみに出た。

日本の医療保険の種別

関連項目