介護保険

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介護保険(かいごほけん)とは、介護を事由として支給される保険。公的介護保険と民間介護保険があり[1]、民間介護保険の保障内容には介護一時金や介護年金などがある[2] 。介護保険支給対象となる介護サービスについて基準に基づき計算された報酬が介護報酬である。

狭義には、社会の高齢化に対応し、2000年(平成12年)4月1日から施行された日本の社会保険制度。財源は、被保険者の納付する保険料だけでなく、国・都道府県・市町村による負担があるという特徴を持つ。

以下では、日本の公的介護保険制度について記述する。

概要

高齢化核家族化の進展等により、要介護者を社会全体で支える新たな仕組みとして2000年4月より介護保険制度が導入された。日本の制度は、おおむねドイツの介護保険制度をモデルに導入されたと言われている。介護保険料については、新たな負担に対する世論の反発を避けるため、導入当初は半年間徴収が凍結され、2000年10月から半額徴収、2001年10月から全額徴収という経緯をたどっている。

制度の目的の一つに社会的入院の解消があり、在宅介護(居宅介護)を促す意図があった。実際には24時間サービスを提供する介護職の不足などから重度要介護者の在宅介護は困難なことが多い。また、年々増える要介護高齢者の増加もあり「入所施設の不足」が、制度導入以来解消されていない課題となっている。

介護サービスの利用にあたって、まず被保険者が介護を要する状態であることを公的に認定(要介護認定)する必要がある。これは、医療機関を受診した時点で要医療状態であるかどうかを医師が判定できる健康保険と対照的である。要介護認定は認定調査の結果をもとに保険者によって行われ、要支援1・2、要介護1〜5の7つの段階に分けられる(法律上、要支援認定と要介護認定は区別され、要支援の場合、利用できる介護サービスが限定される)。これをもとに、どのような介護サービスを組み合わせて利用するかコーディネイトするのが介護支援専門員である。

具体的には、要介護者の家族にとって、実際に介護がはじまるまでに、慣れぬ者にとっては煩雑な事務手続きと、数週間の手続き期間が必要である。介護保険を利用したいと思う者またはその家族は、まず自治体に対し、介護保険制度の要介護認定の申請が必要で、主治医の意見書が必要となる。認定調査員が介護の必要な本人に面接し、実際に介護を要することを確認し、調査報告書を認定審査会に提出する。認定審査会は通常複数の医師や保健福祉関係者によって構成されている。認定審査の結果、要介護度(たとえば要介護3)や介護保険負担限度額の認定が行われ、「要介護3」などと記入された介護保険被保険者証が発行される。それを持って、ケアプランを作成できる事業所へ連絡すれば、介護支援専門員が介護プランをたててくれる。それによって、介護保険サービスが受けられる。実際に介護が開始されるまでに家族が接触する、市町村の職員、医師、市町村の調査員、介護施設(介護サービス事業者)のケアマネージャーのどれも直接に介護に携わるわけではなく、介護サービス事業者の介護士や看護師が介護支援の担い手である。

健康保険の場合、医療機関でただちに健康保険を利用した医療が受けられるのと違い、いきなり介護施設(介護サービス事業者)に行っただけでは、介護保険を利用した介護は受けられない。まず保険者による要介護認定が必要で、そのような仕組みにより保険財源の使用に制限を設けている。

介護サービス事業者については、厚生労働省により開設基準が定められており、都道府県から指定を受ける必要がある。介護サービス事業者は、利用料の1割を利用者から徴収し、残り9割を各都道府県に設置されている国民健康保険団体連合会へ請求し、給付される。国民健康保険団体連合会は9割の給付費を保険者から拠出してもらい運営する仕組みとなっている。

保険者

保険者は原則として市町村及び特別区であるが、厚生労働省が広域化を勧めてきたことから、広域連合一部事務組合で運営されているケースも多い。保険者が小規模であるほど、予防による財政効果が目に見えやすいが、安定した経営が難しい。

被保険者

満40歳以上の者が被保険者となる。65歳以上を第1号被保険者といい、40歳から65歳未満の医療保険加入者を第2号被保険者(医療保険に加入していない者(例:生活保護法による医療扶助を受けている場合など)は第2号被保険者ではない)という。原則として保険者(市区町村又は広域連合)の区域内に住所を有する者を当該保険者の被保険者とする。

適用除外施設

法律で定める特定の施設に入所している者は介護保険の適用を受けない。これらの施設を適用除外施設といい、その設立又は設置の根拠となる法律等において介護サービスと同等なサービスを提供することが予定されているため、重ねて介護保険制度によるサービス提供をする不都合を回避するために規定されている。

住所地特例

ある被保険者が別の保険者の区域内にある住所地特例施設に入所した際に、その施設に住所を移した場合、引き続き従前の保険者の被保険者となる。施設に他の保険者の被保険者が入所することにより給付費の負担増とならないようにするために設けられている措置。

財源

介護給付費の財源は、公費と保険料で賄われ、その比率は50%ずつである。 財源の内訳は、原則、国25%、都道府県12.5%、市区町村12.5%、第1号被保険者保険料(以下「第1号保険料」)19%、第2号被保険者保険料(以下「第2号保険料」)31%(2006年(平成18年) - )である。当初は国50%、都道府県25%、市区町村25%であった。

第1号保険料と第2号保険料の比率は人口構成比により政令によって規定される。

(参考)
2000年(平成12年)度 - 2002年(平成14年)度 第1号保険料(17%) 第2号保険料(33%)
2003年(平成15年)度 - 2004年(平成16年)度 第1号保険料(18%) 第2号保険料(32%)

国の25%のうち5%部分については調整交付金として交付される。これは要介護となるリスクが高い後期高齢者加入割合や各保険者内の高齢者の所得格差を調整するものである。自治体関係団体は調整交付金を25%の外枠にするように求めている。

2006年(平成18年)の改正で、介護保険施設にかかる費用費に関して国20%、県17.5%と負担割合を調整している。給付費が大きくなる介護保険施設の指定・開設権限が都道府県にあるため権限者が負担すべきという考え方の現れである。

保険料

保険料額

第1号被保険者の介護保険料は3年に1度策定される介護保険事業計画における介護サービスの供給量等に基づき、保険者毎に基準の保険料が設定され、被保険者の所得状況等に応じて、課せられる。現在の全国平均月額(第4期、2009年(平成21年) - 2011年(平成23年)度)は4,160円であり、北海道平均月額は3,984円である(第3期、2006年(平成18年) - 2008年(平成20年)度は4,090円、第2期、2003年(平成15年) - 2005年(平成17年)度は3,293円)。 第2号被保険者の介護保険料は、全国の給付状況に基づき、国が各医療保険者毎の総額を設定し、それに基づき医療保険者毎に額を設定する。

徴収方法

第1号被保険者は原則として、年金(社会保険庁等)からの特別徴収となる(特別徴収ができない場合は普通徴収)。特別徴収された保険料は社会保険庁等を通じて、保険者に納められる。 第2号被保険者は、加入している医療保険の保険料と併せて徴収される。

住所地特例施設

給付の種類

保険給付の種類として介護給付と予防給付が主な柱である。介護給付は要介護認定を受けた者が受ける給付であり、予防給付は要支援認定を受けた者が受ける給付である。また、市町村が条例により独自の給付(市町村特別給付)をすることも可能である。

第1号被保険者は、介護(寝たきりなどで入浴・食事や排泄などの日常生活動作への介護)や支援(家事や身支度などの日常生活での支援)が必要な時、介護保険を適用してのサービスが受けることができる(自己負担1割)。

第2号被保険者は、特定疾病のために介護が必要になった場合に、介護保険のサービスを受けることができる。

問題

介護保険が始まった2000年度から2009年度末までに、介護報酬の架空請求・水増し請求で市区町村が返還を求めた金銭は98億円に上っていて、なおかつそのうち10億円以上が回収できていないことが、2011年2月に分かった[3]。また、2009年度に介護報酬の不正請求などで行政処分を受けた介護事業所は150以上に上っている[4]

脚注

  1. ^ 福一由紀 「介護保険とは?All About、2008年9月30日。
  2. ^ 松浦建二 「介護保険って何を保障してくれる保険なの?All About、2007年6月27日。
  3. ^ 2011年2月23日の朝日新聞朝刊6面
  4. ^ 2011年2月23日の朝日新聞朝刊6面

関連項目

外部リンク