交響曲 (ワーグナー)

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交響曲 ハ長調(Symphonie、WWV.29)は、リヒャルト・ワーグナーが完成させた唯一の交響曲。ワーグナーには他にホ長調の交響曲があるが第2楽章冒頭までしか完成されておらず、また多くのスケッチが未完に終わっている。

作曲の経緯

ライプツィヒの聖トーマス協会のカントルであったクリスティアン・テオドール・ヴァインリヒのもとでの最初の作曲修行を終えた19歳のワーグナーは交響曲の作曲に着手し、すぐに完成させた。

初演

1832年11月、ディオニス・ウェーバー指揮、プラハ音楽院管弦楽団によって行われた。なお、ワーグナーは死の直前の1882年12月24日にヴェネツィアフェニーチェ劇場で行われた妻コージマの誕生日を祝う演奏会においてこの曲を指揮している。

自筆譜について

1833年1月、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団によって再演された際に自筆譜が紛失した。未だに発見されておらず、現在出版されている楽譜はパート譜をもとにアントン・ザイドルが作成したものに準拠している。なお、当時のゲヴァントハウスの指揮者であったフェリックス・メンデルスゾーンと失われた自筆スコアの関係が疑われているが、事実関係は確認されておらず、推測の域を出ない。

編成

フルート2、オーボエ2、クラリネット(B管)2、ファゴット2、コントラファゴットホルン(E管とF管)4、トランペット(F管)2、トロンボーン3、ティンパニ弦五部

作品の内容

若書きながら実にしっかりとした構成を持つ作品であり、ベートーヴェンに心酔し、交響曲作曲家を目指していた若き日のワーグナーの姿がはっきりと伺える作品である。

第1楽章 Sostenuto e maestoso-Allegro con brio

ハ長調ソナタ形式。54小節の序奏を持つ。冒頭、5小節にわたって和音の打撃がある。借用和音を多用して、緊張感を高めている。フルートクラリネットが半音階的に上下降する旋律を吹く。この旋律に基づいて序奏は構成されているが、11小節に新しい旋律も現れる。イ短調の属和音に終止し、ホ音を弦楽器のトレモロで引き延ばしつつアレグロに入り、ホルンによる信号風のモティーフと、弦楽器の付点リズムモティーフによる第1主題を提示する。堂々と確保され、また違った下降音形モティーフと、流れるようなモティーフによる第2主題が登場する。展開部においては4つのモティーフが細かく展開されるが、第1主題の付点リズムモティーフの力が強い。再現部はいきなりトゥッティで主題を提示して開始される。コーダ直前に現れる、短3度上行するモティーフは第2楽章の冒頭を暗示する。圧倒的なハ長調主和音打撃のうちに曲を閉じる。

第2楽章 Andante ma non troppo un poco maestoso

イ短調。A-B-A-B-Aのロンド形式。クラリネットによる音形で開始される。弦楽器などによってややふわふわと音楽は流れてゆくが、間もなくチェロに非常に息の長い主題が現れる。この部分は非常に薄い響きで書かれており、管楽器は和音で伴奏するだけである。冒頭の音楽が回帰すると突如B部分に入り、分厚い和声と金管・ティンパニによるファンファーレ風の音形を伴うやや行進曲風の堂々とした旋律が現れる。やがて不穏な響きとなり、弦楽器が忙しく動き回り、A部分が帰ってくる。再びB部分が現れ、冒頭の再現が行われ、ひっそりと曲を閉じる。

第3楽章 Allegro assai

スケルツォ。ハ長調。冒頭、休符をはさんでの和音打撃があり、そのまま細かく動き回る主題となる。おおらかに上行する主題も現れ、激しく展開される。トリオは木管群によるレントラー風の音楽。スケルツォが回帰し、トリオも回帰して、コーダに入る。スケルツォ主題による圧倒的な響きで終わる。

第4楽章 Allegro molto vivace

ハ長調。ソナタ形式。冒頭、ハ音の打撃があり、弦楽器に細かく動き回る第1主題が提示される。ニ短調など、様々な調の響きを持ちつつ盛り上がって確保されると、ポリフォニックな第2主題が木管群に登場する。展開部の前半は第2主題、後半は第1主題に基づき、幾度も盛り上がりながら再現部に突入する。コーダはピウ・アレグロと、やや速度を速め、第1主題による圧倒的な音楽となり、第1楽章冒頭の和音打撃の再現が行われ、ハ長調主和音が鳴り渡って堂々と曲を閉じる。

外部リンク