メイリオ

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メイリオ
様式 サンセリフ
デザイナー シーアンドジイ・河野英一・マシュー・カーター
制作会社 マイクロソフト
サンプル

メイリオ (Meiryo) とは和文ゴシック体フォントの一つである。

Windows Vista 以降のマイクロソフトOS に標準で搭載されており Windows XPWindows Server 2003 までの Microsoft Windows において利用されてきた "MS UI Gothic" に代わる、日本語版の新しいシステム用フォントとして提供されている。 Windows 7では、後述する "Meiryo UI" が限定的に採用され、Windows 8ではメイリオに代わって "Meiryo UI" が全面採用された。 Windows 10では、システム フォントとして "Yu Gothic UI" が新たに採用され、メイリオおよび Meiryo UI はシステム フォントではなくなった。

概要

Windows Vista 日本語版のシステム用フォントとして開発された。フォントファイル中にビットマップを持たず、レンダリングの際 ClearType の使用を前提として作成された新規なフォントである。

デザインはサンセリフゴシック体)系に属しており、直線部分と曲線部分がはっきりし若干膨らんだ印象の字形となっている。これは、横組みでの可読性を重視して作成されたものである。和文では、縦横比 95:100 という若干横長な字面になっている。

JIS X 0213:2004(以下「JIS2004」)に対応することによって、種々の互換性の問題が解決され、例えば、戸籍法施行規則に基づく全ての人名用漢字が支障なく使用できるようになっている。なお、JIS2004 に対応するその他のフォントとしては、MS ゴシック系 3 書体(MS ゴシック、MS Pゴシック、MS UI Gothic)および MS 明朝系2書体(MS 明朝、MS P明朝)が、株式会社リコーによって対応されている。これらは Windows XP などへも提供されており[1]、JIS2004 に対応していなかった Windows に JIS2004 との互換性を持たせることができる。

さらに、Windows 7に搭載されたバージョンからは、JIS X 0212にも対応するようになった。

「メイリオ(Meiryo)」の語源は日本語の「明瞭」に基づく。画面上で見ても印刷しても極めて明瞭で読みやすい所から、そう名付けられた。なおメイリョウでなく「メイリオ」であるのはエキゾチックな響きであること、および「メイリョウ」より1文字少なくて済むためであることが理由とされている[2]

デザインは、欧文部(ラテン文字)をマシュー・カーターが担当し和文部(漢字・仮名)を河野英一シーアンドジイが担当した[2]

なお欧文部はカーターがデザインしていた Verdana を基にリデザインされたものであり、和文部は Verdana を基調にデザインされた[3]。和文ではベースラインを少し高くするなどの工夫によって、和文と欧文が混在した文章での可読性を高めている。

MS ゴシック系統がレギュラーの1種類のみなのに対し、メイリオは、レギュラー、ボールド、イタリック、ボールドイタリックの 4 種類のフォントによるフォントファミリーを構成している。

メイリオのデザインに関し特筆すべき点

メイリオは欧文部がプロポーショナルフォント、和文部が等幅フォントになっているため、全体としてはプロポーショナルフォントになっている。

ボールドフォントはレギュラーフォントを単純に太らせるのではなく、若干異なる造型にしている。これは HTML などの文章で使用されることを想定し、本文に対して見出しや強調部分の印象を変え、メリハリを与えるためとされる[誰によって?]

和文には斜体表記を行う文化的背景がないという意見から、イタリックフォントはラテン文字部のみ提供されることになった(ページ後部の注意点を参照)。

真のClearType

メイリオは上述のように全てのサイズのフォント描画に ClearType 技術を使用し、極小フォント用にもビットマップを有していない。これは Windows システム用の日本語フォントとしては初めての試みである。

なお、MS ゴシック等の従来から提供されているフォントにおいては、可読性を確保するためとして、9pt 程度の小さいサイズにおいてビットマップフォントが表示された。しかしそのようなフォントではアンチエイリアスが効かないため、スムージングや、文字の見た目を美しくするために文字を構成する線の太さ・幅を調整するヒンティングの恩恵が得られず、他 OS に比べ美しさに欠ける、フォント作成のためのコストやファイルサイズが増大するといった問題を Windows が抱えていた。また従来の Windows においては、ビットマップが用意されていないフォントに対して単純にアンチエイリアスを有効にした場合には、極小フォントでは文字が潰れて読みにくくなるという難点もあった。

これに対し、メイリオには 9pt 前後の小さなサイズにおいても ClearType を併用して綺麗な表示を実現するために、膨大なヒンティングデータが盛り込まれている。このヒンティングにより、水平方向の線分が縦に並んでいる漢字も線分が間引かれて表示されるため、潰れることなく表示できる。

ただし標準の(ClearType ではない)アンチエイリアスを使用した場合、メイリオは OS や環境によっては一切アンチエイリアスが機能しない場合がある。

Meiryo UI

Windows Vista の後継 OS である Windows 7 では新たに Meiryo UI というフォントが導入された。リボン UI に最適化して開発されたフォントである[4]

Meiryo UI はメイリオと比較して行間が狭く、ひらがな及びカタカナの文字幅が MS UI Gothic のものに非常に近い。このため、これまでの MS UI Gothic に近い形で GUI のデザインが可能となるが MS UI Gothic との完全な互換性、すなわち単純にフォントを置換するだけでの置換可能性は持ち合わせていない。アルファベットの文字幅が現行のメイリオと同じである上、MS UI Gothic と比較すれば行間が非常に広いためである。

Meiryo UI は濁点や句読点がリデザインされ、ClearType のチューニングもなされている。したがって、Meiryo UI は単純に文字幅を狭くしたものではない。しかしそのために MS UI Gothic 特有の非等幅性に起因する「不揃い感」がそのまま残存しており、Meiryo UI はメイリオと同等の視認性やデザイン性を確保できているとは言い難い。

コントロール パネル項目の一部、ペイントワードパッドなどの同梱アプリケーションの一部など、Windows Vista で MS UI Gothic が使われていたユーザインタフェース要素の一部が、Windows 7 では Meiryo UI に置き換わっている。しかし大半のダイアログボックスなどでは、依然として MS UI Gothic が残っている。なお、Windows 7 のユーザーインターフェイスの大部分では、Windows Vista に引き続きメイリオが使われているため、全体としては Meiryo UI が見られるのはごく一部である。

2009年11月17日にマイクロソフトが Windows Vista/Server 2008 向けに Meiryo UI を含んだメイリオ フォント コレクションのアップデートを公開した[4]。全ての Windows Vista ユーザーにインストールを推奨するとしている。

Windows 8 日本語版のユーザインタフェースでは全面的に Meiryo UI が採用された。

注意点

メイリオは従来の日本語フォントである MS Pゴシックなどとは種々の相違点がある。

メイリオの全角文字がすべて固定幅のフォントである。また、行間も従来フォントに比べて広い。そのため、ウェブサイトなどで MS Pゴシックを想定してレイアウトしている場合にメイリオを使用すると、デザインが崩れるケースがある。CSSで"border-bottom"を使って下線を引くと、従来のフォントよりも低い位置に線が寄ってしまい、見かけ上不自然になる。"background-color"を指定した場合にも同様の問題が起こりうる。

メイリオのイタリック体フォントは、欧文部が斜体、日本語部が正体としてデザインされているため、フォント切り替えでイタリック表示を行うソフトウェアでは、日本語部を斜体表示することが出来ない。

メイリオは ClearType 固有の問題点をそのまま持ち(詳細は ClearTypeの短所を参照)、一部に表示の不自然さが見られる。例えば、9pt 程度の極小サイズでは例えば「電」や「載」等の一部の文字が不自然な字形になる。また、例えば Windows Vista のスタートメニューにおいて「検索」の「索」の字が「検」に比べて大きく見える、「名」という漢字が他の字に比べて縦長に見えるなど、漢字の高さが揃わない。この点については、Windows 7 に搭載された新バージョン(Windows Vista では前記アップデートバージョン)で多少の改善が図られている。Windows Vista での表示の問題点については、「メイリオ」をデザインした河野英一自身が認めている[5]

メイリオは ClearType による表示を前提として設計されている。そのため、ClearType が無効にされた状態でメイリオの小さいサイズの文字を表示すると想定した品質でレンダリングされるとは限らない。

メイリオにおいて従来の MS ゴシックにあたる等幅フォントは個別に提供されない。なお、メイリオ自体には各等幅グリフが含まれているので GID(Glyph-ID, グリフID)切替や直接入力に対応する環境では等幅フォントのように使うことが出来る。

メイリオでは従来の MS Pゴシックにあたる全角英数・ひらがな・カタカナも可変幅であるプロポーショナルフォントは個別に提供されない。なお、メイリオ自体には各プロポーショナルグリフが含まれているので GID 切替や直接入力に対応する環境では全角も可変幅であるプロポーショナルフォントのように使うことが出来る。

メイリオはフォントとしてはプロポーショナルフォントに属するが、フォント名に一部の TrueType フォントで採用されている等幅フォントではないことを示す「P」や「S」の文字が含まれていない。

旧版Windowsや他のOSでの使用

旧バージョンの Windows および他の OS においては以下のように環境にあわせたコンポーネントをインストールすることによりメイリオが使用可能になる。

脚注

関連項目

外部リンク