ターロウ・オブライエン
ターロウ・オブライエン(Turlogh Dubh O'Brien)は、ロバート・E・ハワードが創造した架空のキャラクター。「黒いターロウ」(ブラック・ターロウ)の異名をもつ。
11世紀のアイルランドの戦士。人種はゲール人。色黒の若者で、斧術の達人。西暦1014年のクロンターフの戦いに参戦した後に、氏族を追放されて放浪の身となる。主に、デーン人ヴァイキングと死闘を繰り広げる。
登場作品
- バル=サゴスの神々(未訳) - 『ウィアード・テイルズ』(WT)1931年10月号に掲載。
- 暗黒の男 - WT1931年12月号に掲載。
- 灰色の神が通る - "Spears of Clontarf"のリメイク。1962年のアーカムハウスの単行本『漆黒の霊魂』収録。ターロウは非主役。
- The Shadow of the Hun - 未完の草稿。没後1975年に公開された。
- Spears of Clontarf - 未発表作品。1978年に公開された。"The Cairn on the Headland"と『灰色の神が通る』の2作品にリメイクしている。
作品内の時系列は、『灰色の神が通る』『暗黒の男』『バル=サゴスの神々』の順となっている。
灰色の神が通る
はいいろのかみがとおる。原題は英: The Twilight of the Grey Gods。アーカムハウスの1961年の単行本『暗黒の霊魂』に収録された[1]。没後発表作品。日本では2007年に論創社の単行本『漆黒の霊魂』に三浦玲子訳で刊行された。三浦訳では「ターロフ」と表記される。
西暦1014年のクロンターフの戦いを題材とした歴史戦記小説で、ファンタジー要素が入っている。ターロウは非主役。
あらすじ(灰色の神が通る)
エリンErin(アイルランド)で、ゲール軍とデーン軍が対峙し、前代未聞の会戦の火蓋が切られる。逃亡奴隷コンは、「隻眼の灰色の男」に会い、ダブリンで戦いがあることを聞かされる。コンはゲール軍に馳せ参じ、ダンラングの部隊に加わる。
敗走するデーン軍に、ゲール軍は追い打ちをかける。ムローはシグルトを討ち取るも、戦死する。ダンラングも死ぬ。ターロフはメイルモアを殺す。乱戦の中で、コンは因縁あるトルヴァルド・レーヴンを見つけ、討ち取る。ブライアン王は、ブロディ―ルを討ち取るも、致命傷を負う。
戦いの後で、コンは再び灰色の男を幻視する。ターロフは、アイルランドの権勢は移り変わり、敗れたヴァイキングの神オーディンは去るのだとごちる。
登場人物(灰色の神が通る)
- ゲール軍
- ダルカシアン家のアイルランド軍、スコットランド高地人、西部のコノート、ミースなどの混成軍。
- ブライアン・ボルー王 - 73歳。
- ムロー王子 - ブライアン王の長男。ダンラングとコンの将。
- ターロフ(ブラック・ターロフ) - ダルカシアン家の勇猛な戦士。斧使い。
- ダンラング・オハーディガン - トール族。コンを麾下に加える。
- クラグレアのイーヴィン - 滅びつつある一族デ・ダナーンズ人(ダーク族)の少女。ダンラングの恋人で、ブライアン王にも謁見できる。ダンラングに戦いに行かないよう説得する。コルムラーダのもとに行き挑発する。
- コン - ゲール人奴隷の少年。売られた先で主人を殺して逃亡した。戻って来て、クロンターフの戦いでゲール軍に参戦。
- マラキ・オニール王 - ミースの王。ブライアン王に昔の恨みがあり、ブロディ―ルに裏切りを唆されている。コルムラーダの元夫。
- デーン軍
- ヴァイキングを中心とする大軍団。
暗黒の男
あんこくのおとこ。原題は英: The Dark Man。WT1931年12月号に掲載された。日本では2015年にナイトランド叢書の単行本『失われた者たちの谷』に中村融訳で刊行された。中村訳では「ターロウ」と表記される。
剣と魔法の冒険歴史小説。ブラン・マク・モーンのシリーズとクロスオーバーしており、ブランの最期が言及されている。
あらすじ(暗黒の男)
ブリトンの支配者は、時代を重ねてピクト人、ローマ人、ブリトン人、ゲール人と移り変わっていき、11世紀にはデーン人ヴァイキングの侵略を受ける。また他所では、ピクト人のブラン信仰の下級司祭グロクが、像を盗み出す。
従兄弟の策謀で氏族(クラン)を放逐されて放浪の身となったターロウは、モイラ姫がトールフェルの海賊団にさらわれたことを知る。弱体化した一族には奪還に割く余力がない。ターロウは漁師と交渉して舟を手に入れ、航海に出る。雪の中を小舟で、航路はコナハトからヘブリデス諸島まで[注 1]という、遭難必至の暴挙であった。
道中の島でターロウは、未知の人種7人とデーン人15人が争い全滅している現場に遭遇する。「小柄な者たちが」「粗末な武器で」「倍の人数を誇る略奪者どもを相手に」相討ちという、尋常ならざる状況である。5フィート(1.5メートル)ほどの高さの<暗黒の男の像>が転がっており、ターロウは彼らが彫像を守って死に物狂いで戦い抜いたことを察する。ターロウは彫像の正体を知らなかったが、彼らの王であり神であったのだろうと結論付け、彫像を拾う。航海を再開すると、神像の加護からか舟は霧や波を物ともせず進むようになる。
ターロウの舟がトールフェルのスカリ(館)に到着したとき、ヴァイキング達は宴会を催していた。ターロウが隠れて潜入の機会を窺っていると、海賊2人が<暗黒の男>の像を持って歩いてくる。ターロウは舟が見つかったと焦るも、それよりも2人が神像の持ち運びに難儀していたことの方に驚く。ターロウが軽々と運べた物を、屈強なヴァイキング2人が重量に耐えかねているのはどういうことか。ターロウはスカリに忍び込む。
<暗黒の男>の像が運び込まれた宴会場で、トールフェルは花嫁をめとると宣言する。だが連れてこられたジェローム司祭とモイラは拒否し、モイラはトールフェルを罵り短剣で自害する。ターロウは怒りにかられて、死の覚悟で躍り出る。多勢に無勢であったが、ピクト人戦士たちが乱入してターロウに加勢してきたことで、不利が覆る。ターロウはアセルステインを倒し、トールフェルを討ち取り、モイラを看取る。ターロウはアセルステインにとどめを刺そうとするが司祭が止める。
ピクト首長ブロガルが名乗り出、<暗黒の男>はピクトの神であり、自分たちは盗まれた像を取り返すために来たことを告げる。また像にはブラン王の霊魂が宿っており、ゆえに自分たちはブランに気に入られたターロウを助けたのだと説明する。ヴァイキングは女子供まで皆殺しにされ、ピクト人たちは像を回収して引き上げ、司祭は異教徒であるアセルステインの手当てをし、ターロウはあてのない旅に出る。
登場人物(暗黒の男)
- ゲール人
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- ターロウ・ダブ - 主人公。「黒いターロウ」と称される。色黒の若者で、斧術の達人。オブライエン一族から追放され、放浪の身。追放されてなお同胞意識が強い。モイラを救出するための旅の道中で、<暗黒の男>の像を拾う。
- モイラ - ダルカシアン一族族長の娘(≒アイルランドの王女)。ターロウの幼馴染。トールフェルに略奪される。
- ジェローム - キリスト教司祭。結婚式を行わせるために拉致された。
- 漁師 - ターロウをいぶかしむも、最終的には小舟を譲る。
- ヴァイキング(デーン人・北方人)
- ピクト人
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- <暗黒の男>ブラン・マク・モーン - ヴァルシア王カルの友である「槍使い」ブルールの子孫。古代ピクトの大王であり、死後に神として祀られた。神像には魂が宿っており、認められた者のみが軽々と持ち上げることができる。
- ブロガル - ピクト人の首長。
- ゴナル - <暗黒の男>の司祭長。白髯の老人。グロクを監視しており、ブランがターロウを気に入ったことを知った。
- グロク - <暗黒の男>の下級司祭。像を盗んで逃げるが、北方人海賊に遭遇し殺される。
関連作品(暗黒の男)
バル=サゴスの神々
バル=サゴスのかみがみ。原題は英: The Gods of Bal Sagoth。WT1931年10月号に掲載された。日本では未訳。
ターロウが、離島の古代王国バル=サゴスに漂着し、前作で敵であったサクソン人の戦士アセルステインと行動を共にする。
脚注
注釈
出典
- ^ 論創社『漆黒の霊魂』序文 3-4ページ。