スライディング

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スライディング (Sliding) とは、地面に身体を擦り付けて滑り込むことである。

スライディングはスポーツで、目標とする位置に早く到達する、または確実に停止するなどの目的で使用される技術である。時として部やを強打したり、手を踏まれたり、他の人に接触したりして、怪我をする可能性もある危険な技術でもある。

野球等におけるスライディング

野球ソフトボールにおけるスライディングは、基本的には二塁・三塁の進塁・帰塁時と一塁への帰塁時に、主に以下のようなことを目的として行われる。

  • 塁を踏み越えてオーバーランしないように、かつ急減速するため
  • 低い位置から滑り込んで野手の触球されるまでの時間を稼ぎつつ、伸ばした手足で素早く塁に触れるため
  • 塁上の野手(特に捕手)から離れた位置で滑り込み、手だけで塁に触れて触球をかわすため
  • 野手との不要な衝突を避け、危険防止を図るため

このほかにも打者併殺打となりうる打球を打った際に、塁上の走者が野手による送球を邪魔する目的で野手に向かってスライディングすることがあるが、故意の守備妨害とみなされた場合はその走者がアウトになるだけでなく、打者走者もアウトになる。

フットファーストスライディング

二塁へのスライディング

進行方向に足を延ばして滑り込む方法。野球において単にスライディングと言った場合は通常こちらを指す。ストレートスライディングともいう。

足からの滑り込み(foot first slide , フット・ファースト・スライド[1][2][3][4])は、通常は右足が利き足の場合、進行方向に対してやや左側に体を傾け、右足を鋭く伸ばし、左足を折り畳んだ形で、左臀部から太ももにかけてをグラウンドに接する形で滑り込みを行う。選手によっては例えば送球の逸れた方向とは逆側に滑り込んで触球を遅らせる目的等、状況に応じてどちらの足でも滑り込めるよう練習をしている。

スタンドアップスライディング

フットファーストスライディングの応用で、足から滑り込んだ際、伸ばした足先が塁に触れると同時に折り畳んだ側の足で体を支え起こし、滑り込んだ勢いを利用して素早く塁上に立ち上がるスライディング技術。

自身が進塁しようとしている塁に送球されていないと思われる場合や、間違いなくセーフになるタイミングだが念のため素早く安全に塁上に停止したい場合等に行われる。

フックスライディング

フットファーストスライディングの応用で、畳む側の足を逆に外側に向けて畳み、畳んだ側の足の甲から脛の部分を塁に引っ掛ける形でのスライディング。体を塁から逸らして滑り込むことができるので触球を避ける目的で行われる。キング・ケリーが開発したとされる。

ヘッドスライディング

三塁にヘッドスライディングするリッキー・ヘンダーソン

ヘッドファーストスライディング(head first slide [1][2][3][4])ともいう。進行方向に対して両手を前に出しながら塁に飛びつくように頭から滑り込む方法。

ヘッドスライディングは足からのスライディング以上に危険を伴う技術であり、しばしば突き指や肩の脱臼など野球・ソフトボール選手にとって致命的な怪我に繋がることがあるため[5]イチロー福本豊など、走塁・盗塁の際これをあえて行わない選手もいる。また、桑田真澄は、怪我予防の理由以外にも、ヘッドスライディングが与える物理的な衝撃が成長過程の子供に大きな影響を与えるとし、ボーイズリーグ高野連に対して、ヘッドスライディングの禁止を提唱している。[6]

また、プロ野球では雨天による試合中断の際に、観客に対するパフォーマンスとして、雨水の溜まったビニールシートや泥の中へのヘッドスライディングを披露する選手がいる。日本では1990年代初頭にマット・ウィンタースが披露して以降広まった。諸積兼司も現役時からこれを得意としており、コーチ就任後にも何度か行っている。

打者走者の一塁へのヘッドスライディング

一塁を駆け抜けようとする打者走者

一塁へのヘッドスライディングは危険防止の意味と、駆け抜けた場合とどちらが早いかという点でしばしば議論の対象となる。

打者走者は一塁へ進塁する場合に限って、一塁に到達後に二塁へ進塁する意思がないと審判員が判断している限り、直ちに一塁へ戻ってくることを条件として、この離塁中にボールを持った野手に触球されてもアウトにならない。このため打者走者は一塁上で止まる必要がなく、スライディングは行わずにそのまま一塁を踏んで駆け抜けるのが基本とされている。そもそもこのルールの制定された経緯が、ベースを踏み合わせる際に無理に足を伸ばしたり、野手と交錯することによる怪我の危険を避けるためである。ただし、駆け抜ける場合も歩幅が合わず無理にベースを踏もうとした結果、脚部を負傷する例もある[7]

塁に触れるタイミングの面では、伝統的に「駆け抜けた方が早いに決まってる」と言われてきたが、近年はカメラによる比較から、ヘッドスライディングが上手な選手の場合、ヘッドスライディングの方が早いことが示されることも多く[8](桑田真澄は「昔はビデオやテレビを超スローとかで見れなかったので、イメージだけで伝えてこられたんですよね」と述べる)、実際にそのような研究結果も出されている[9][10]

その他、チームの士気を高めるために、一塁へのヘッドスライディングを行う選手もいる。また、日本の高校野球では明らかにアウトの場合でも(中にはアウトが既に確定していても)最後の打者が一塁にヘッドスライディングをすることがある。

メジャーリーグベースボールでは一塁へのヘッドスライディングは歓迎されない行為とされている[11]

サッカーにおけるスライディング

サッカーにおいては、他の選手のドリブルを逸らしたり、ボールを奪ったりする目的でスライディングタックルが行われる。

脚注

  1. ^ a b Legal slide:” (英語). eteamz. 2009年1月12日閲覧。
  2. ^ a b Slide” (英語). Open Site. 2009年1月12日閲覧。
  3. ^ a b General Rules - Sliding” (英語). North Miami Valley Baseball League. 2009年1月12日閲覧。
  4. ^ a b Sliding Rule - February 27, 2005” (英語). HTUA RULINGS. 2009年1月12日閲覧。
  5. ^ 10.8決戦では中日ドラゴンズ立浪和義が平凡な内野ゴロを一塁にヘッドスライディングをして内野安打にしたが、その際に肩を脱臼して退場した。立浪は、打者走者としての一塁へのヘッドスライディングは後にも先にもこの時だけで、思わずやってしまったということとと、負傷した左肩はついに完治せず、ネクタイを締めるときにも痛みが走ることがあったということを、引退後に刊行された自著『負けん気』に書いている(立浪『負けん気』文芸社、2010年。ISBN 978-4286088532 120-124ページ)。
  6. ^ スポーツ報知 2009年9月25日閲覧
  7. ^ 1995年5月23日広島東洋カープ前田智徳が一塁を駆け抜けた際に右アキレス腱を断裂。2004年8月24日アテネオリンピック準決勝では最後の打者となった谷佳知が一塁付近で転倒し右足を負傷など。
  8. ^ 2010年09月19日TBSテレビ「S-1」
  9. ^ ソフトボール競技の異なるスライディング技術による塁間所要時間の差
  10. ^ 淵本 隆文 (1995). “一塁ベースへのヘッドスライディングに関する動作学的分析”. 日本体育学会大会号h日本体育学会大会号. 
  11. ^ “The unwritten rules of sports -- in writing” (英語). Seattle PI. (2005年1月12日). http://www.seattlepi.com/othersports/207552_unwrittenrules12.html 2010年9月29日閲覧。 

関連項目